第52話 コルン視点(5)

 ディアが寝息を立て始めて三〇分。午後一〇時を回った。


 ディアは体調が悪い私を案じて宿を取って休暇にしてくれたのだから早く寝なければならなかったのに私の方は心臓が高鳴りすぎて寝るどころじゃなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ディアに抱き着かれちゃった。な、なんであそこで突き飛ばしちゃったんだろう。私のバカ……。あのまま、キスして私も大人なんだぞってところを見せたかったのに私の意気地なし。キクリは簡単にしてたんだから、私だってできるはず……」


 私は寝返りを打ち、仰向けで私の気も知らずにのんきに寝ているディアを見た。


「……寝顔、可愛い。今ならキス出来るけど、寝ている相手を襲うなんて情けなさすぎる。というか、あの男、私がこれだけ好き好きって言う雰囲気を出しているのに、全然気づかないんだから本当に何なの。フィーアに鼻の下を伸ばしやがって。わ、私だって胸くらい……」


 私は自分の胸に手を当てる。あまりの絶壁に絶望した。


「こ、こうなったら変身魔法で体を弄った方が速いんじゃ。いや、見せかけじゃ意味ないでしょ。はぁ、私もフィーアくらい成長していたらなぁ。ディアなんて簡単に篭絡できたのに……。でも、私といたら安心するかぁー。えへへ……、エヘヘへ……」


 私はディアの方にころころと転がっていく。すぐ真横に来て、彼の体に抱き着いた。


「はぁ……、ディア、私も安心するよ……。どうしよう一緒にいればいるほど好きになっちゃう……」


 私はディアのにおいや温もりを直接得て、年相応のむらむらを得てしまった。


「うう……、わ、私、魔法使いなのに……、ゴブリンみたいに盛ってないのに……」


 私だって年頃の一八歳、何ならもうすぐ一九歳……。女の子の日(生理)は子供体質だからか酷くないが毎月ちゃんと来るのだ。

 年相応の性欲はあるわけで毎日でも発散しなければ生活がままならない。

 ただ、好きな相手がこんなに間近にいたら盛っちゃうのも無理はないだろう。体と心が一致してディアを欲しがってしまっている。私がこんな性格だと知ったらディアに引かれるかもしれない。だから、隠し通さなければ……。


「ディア……、好き、好き、好き……。私が誰よりもディアのことが好きなの……。私、ディアになら襲われても全然かまわないんだよ……」


 私は眠っているディアに内心を小声で呟く。

 つるつるの子供の頬にキスして心臓が高鳴り、彼の手を股に挟んじゃう。小さいのに男らしいゴツゴツした手だった。

 数カ月前に訪れた大森林の聖なる泉で見た彼の全裸が頭から離れない。三八歳とは思えないほど凛々しい体だった……。

 無駄な脂肪が一切無く、古傷や浮き出た筋肉、血走った血管によって男らしさが各段に上がっていた。

 あそこがちっさいなんて言ったけど、私が他の男の下半身なんて見たことないし、大きいか小さいかなんて判断できなかったから捻くれた精神が逆の言葉を吐いてしまったのだ。


 あの時のディアを想像しながら内ももを擦り合わせると小さな手が股に擦れる。そのたび、体の奥がきゅんきゅんしてどうしようもない。これが盛った女の性か……。


「あぁ……、駄目……。こんなことしちゃ駄目なのに……」


 私は寝ているディアを使って気持ちよくなろうとしていた。

 ディアは冒険者ゆえ、寝つきがすこぶるいい。一度寝たら危機感が無ければ滅多に起きないと今までの冒険中にわかっていた。

 ディアを利用して鬱憤を晴らした回数は数知れず。性に目覚めたころから彼との夜を想像したり、名前を連呼したりしながら破廉恥な行為を取ってしまうことがしばしば……。

 学園にいたころ、私は魔法が使えるだけのガキンチョ扱いばかりされていた。そんな私を仲間として認めてくれて沢山頼ってくれて一緒にいると安心するなんて言われたあげく抱き着かれてちょっと大人扱いされたら心臓が持つわけない。


「年齢なんて関係ない……。見た目なんてどうでもいい……。私は心からディアが好きなの……」


 私は腰をくねらせてディアの手が良い所に当たるように調節する。夜のせいでたかが外れ……盛った。

 途中でふと我に帰り、ベッドから出て銀貨を数枚持つ。

 脱衣所で服を全部脱いで下着を持ち、シャワー室に駆け込んだ。銀貨を硬貨投入口に入れ、シャワーを出し、頭からぶっかける。

 今、魔法を使ったら暴発する可能性があったので仕方なくお金を使った。


「うう……。ディアは冒険者パーティーを組んでいる間、誰とも付き合う気はなさそうだし、今、告白したら迷惑がかかる。何としてもディアの呪いを解いて引退と同時に告白したい。じゃないと……、私の心が持たない」


 あ、汗のせいでぐっちょりと湿った下着を洗い、全身にシャワーを浴びる。それだけで気分がすっきりした。だが、銀貨を入れた枚数が多かったのか、止めようにも止まらない。


「…………ちょ、ちょっとだけ」


 私はシャワーを股に掛ける。すると刺激が強すぎた。あまりにも破廉恥な声を出してしまった。

 冷え切ったシャワー室でペタンコ座りをしながらガクガクと痙攣し、暖かいお湯を漏らした。


「う、うぅ。さ、最悪。私がこんなふうになっちゃったのは全部ディアのせいだ。私を助けまくって心をがっちり掴みやがって。私ばっかりディアの虜になっちゃってるのが腹立つ。ディアも私を想像しながらあそこを弄りやがれ」


 私は下半身を洗い、シャワー室を出た。


「ディア、子供になってから一度も発散していなんだよな。やっぱり、呪いの影響かな。辛いのかな。いや、辛くないからしていないのか」


 私は下着を新しい品に変え、脱ぎ捨てた寝間着を着る。

 その後、ディアの隣に寝ころび、彼の寝顔を見ながらにやにやしていた。気が付くと猿の子供のようにディアの体に抱き着いていた。

 ディアから安心感を得ると夢心地になり意識がほどけていく。いつの間にか深い眠りに落ちていた。

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