第8話 再会
「はぁ、はぁ、はぁ……。大剣が重い……。だが、あれだけ動いたはずなのに筋肉痛がしない。やっぱり子供の体は柔軟だな」
俺は屋敷から出た。すると、銀剣を持った冒険者達を引き連れたロリっ子魔法使いの姿が見える。
「はぁ、はぁ、はぁっ。あ、あれ? 邪気が消えてる……。どういうこと?」
「おーいっ! コルン! 無事だったか!」
俺はコルンに向って手を振った。
「え……? 誰……。子供?」
コルンは冒険者達を止め、魔法の杖を持ちながら俺のもとに歩いて来る。
「コルン、俺だ。ディア・ドラグニティだ」
俺はネックレスの先に付いている金板を見せる。金級冒険者の証なので俺だと気づくはずだ。
「え……。う、嘘でしょ……。あ、あなた。リッチね! ディアの服を奪って肉体まで!」
コルンは泣きながら、魔法の杖を俺の眉間に付き着ける。
「ち、違う! 俺は本物だ! 金級冒険者三八歳、好きな食べ物は肉、好みの女は巨乳と巨尻! お前の名前はコルン・ティアラ。正義感ばかり強くビビりで弱虫、好きな食べ物はイチゴ!」
「ほ、本当にディアなの……。ほ、ほんとに、ほんと? 嘘じゃない?」
コルンは杖先を地面に向け、顔をくしゃくしゃにしながら俺に抱き着いてきた。
「うわああああああああああっ! 良かった! 良かったよ!」
コルンが俺よりもほんの少し大きくなっていたため、俺は包み込まれるように抱き着かれている。こいつがなぜ泣いているのかわからないが、心配してくれていたようだ。
「もうっ! ディアのバカ! あんな相手に一人で戦うとか自殺行為もいいところじゃない! 私が犯した失敗の尻ぬぐいなんかで死なれたら、私、私は……一生後悔してた……」
「はいはい、もう、泣くなって。俺はこんな体になっちまったが生きてる。コルンの華々しい初戦は逃走って形になったが、今回の件を胸に刻んで次も頑張れ。俺は特級のリッチを狩った金級の冒険者って言う拍が付いた状態で冒険者を辞められる。それだけで儲けものだ」
「もう……。超強力な呪いを付けられてるのに、良い気になっちゃって……」
「え? 俺、そんなに強力な呪いが掛かっているのか?」
「うん……。えっと『鑑定』」
コルンは魔法の詠唱を呟く。瞳が輝き、俺の状態を見た。
「やっぱり。『パルディアの呪い』と言う呪いの状態異常が掛かってる。効果は三〇年、歳が食べられたみたい。若返るって言う呪いは初めて見たし、特級のリッチから受けた呪いだから、そう簡単に解呪は出来ないと思う」
「そうか……。まさか、一生このままなんてことないよな……」
「無くは無い。一生成長しないかもしれないし、逆に、もっと若返って消えちゃうかもしれない。呪いだから、三〇年経ってもう一度同じ状態に戻るのかもしれない。どのみち、解呪しないとディアは満足いく死に方は出来ないと思う……」
「はぁ……。まじか」
俺は髪を掻き、やっと隠居生活を送れると思っていたが、そう簡単にいかないみたいだ。
「とりあえず、今回の依頼は達成だ。アンデッドが残っているかもしれないから、他の冒険者にお願いして駆除してもらえ」
「わ、わかった。私も後始末をしてくる」
コルンは他の冒険者と共に、廃墟内にの残っていた三級以下のアンデッドを全て討伐し、三〇年前の依頼を完遂した。
俺とコルンは商人の護衛と言う名目でフルンクリンから王都まで運んでもらう契約を結んだ。体が小さくなってからの戦闘は至難を極めたがコルンの援助魔法で肉体を強化し、ある程度大剣が振れる状態まで持って行けることがわかった。
「じゃあ、コルン、俺は寝る。何かあれば、起こせ」俺は、火の番をコルンと変わる。
「うん、任せておいて」コルンはコクリと頷いた。俺は安心して眠りにつく。
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