第5話 11日目~14日目

レオ「そうか・・・そんなことが・・・」

あれからしばらくしてアリシア達は寮に帰ってきた。アリシアは戻ってからすぐにレオに先程の出来事を報告した。

レオ「分かった・・・報告ありがとう」

アリシア「ええ…」

レオ「リオンは・・・しばらくそっとしておいた方がいいだろう・・・心の整理をつける時間が必要だ」

リオンは戻って来るや否や何も言わずに自室に篭ってしまい、その後一度も出てきてはいなかった。

アリシア「そうね…それと修斗は大丈夫かしら…」

怪物を倒した後、修斗は直ぐに脇腹を抑えて動けなくなってしまった。どうやらあの時リオンを庇って怪物から受けた傷はかなり深かったようだ、修斗の脇腹からズボンの裾にかけて気づいた時には血で真っ赤に染まっていたらしい。穂乃果の話では内臓が傷ついている可能性もあるそうだ。今は治療を受け、医務室で眠っている。

レオ「穂乃果が治療をして、ロザリアも治療魔法をかけてくれたらしい。おそらくは大丈夫だ」

アリシア「修斗・・・あんなに酷い怪我をしたのに無茶して・・・」

レオ「・・・」

霊華「大きな嘴を持った鳥のような怪物…今までそんなやつ見たこともなかったのに…」

レオ「たまたま俺達が出会ってなかったのかそれとも…」

霊華「日が経つごとに新しい怪物が現れるようになる…」

今の状況ではどちらであるかと言う確証を得ることはできなかった。

レオ「どちらにせよこれからの探索はより一層、注意を払って行う必要があるな」

アリシア「そうね…」

レオ達がそんな話し合いを続ける中…

湊「はっ・・・だから言ったのによ」

話を陰で聞いていた湊はそう呟いた後、自室に戻って行った。

結局その日のうちに修斗が目を覚ますことは無く、またリオンも部屋から出てくることは無かった…

12日目

木々が生い茂る森の中・・・

「はぁ…!はぁ…!」

二人の生徒、一人は黒髪のポニーテールで鋭い目つきの、もう一人は長い白髪の中性的な顔立ちをした生徒が、まるでなにかから逃げるかのように森の中を走っていた。

白髪の生徒「うっ!」

白髪の生徒が途中でバランスを崩し転倒する。

黒髪の生徒「!霊仙(れいせん)!」

黒髪の生徒がすぐに霊仙と呼んだ生徒に駆け寄る。

霊仙「私を置いて行ってくれ!紅羽(くれは)」

紅羽「そんなことできるわけないだろ!」

紅羽と呼ばれた生徒は直ぐにそう答える。

霊仙「足をくじいてしまったんだ…もう走れない…」

紅羽「だったら担いででも連れてく!ほら早く肩を・・・」

霊仙「だめだ!そんなことをしてたら奴らに追いつかれ・・・!」

「アオーン!!!」

森の中に狼の遠吠えが響く。

紅羽「!くそ!もう追いついて・・・」

霊仙「紅羽!行くんだ!私のことはいい!早く!」

紅羽「・・・置いていくなんて私にはできない!」

霊仙「紅羽!」

紅羽が霊仙の前に立つと同時に、何匹もの狼の姿をした怪物が姿を現す。

紅羽「っ!・・・来るなら来い!」

紅羽がそう叫ぶと同時に彼女の右腕が燃え上がる!

紅羽「これでも・・・くらえ!」

燃え上がった右腕から火球を生成し怪物達に投げつける!

しかし飛来してくる火球の速度は人間には脅威になり得ようとも、怪物達にとってはあまりにも遅すぎた…

怪物達はいとも簡単に火球を避け、そのまま紅羽へと飛び掛かる!

紅羽は咄嗟に避けることもできない。

霊仙「紅羽!危ない!」

紅羽「!ッ!」(やられる!)

紅羽がそう覚悟し目を閉じたその時!

ズバッ!

「キャイン!」

飛び掛かってきた怪物が突如鳴き声を上げ、地面に倒れる・・・

紅羽(・・・?)

紅羽がゆっくりと目を開ける・・・

「良かった何とか間に合ったみたいだな」

霊仙「あなたは・・・!」

そこには金髪の刀を持った男子生徒・・・

紅羽「!会・・・長?」

レオが立っていた。

レオ「君たち、大丈夫か?」

霊仙・紅羽「会長!」

レオ「無事なようで良かった、後は任せておけ!」

レオは怪物達に向かって刀を構える!

一匹の怪物が遠吠えを上げ、レオへと飛び掛かるが…

パン!

乾いた発砲音が響き、怪物の腹部を弾丸が貫いた。怪物はそのまま地面に倒れる。

「レオ!」

直ぐに発砲した人物が姿を現す。

レオ「光!」

光「あんた一人で突っ走りすぎなのよ!まったく!」

光は開口一番レオにそう叫んだ。

レオ「すっすまない・・・」

そんなこと言っている間にほかの怪物達も一斉に遠吠えを上げ襲い掛かってくる!

一匹の怪物が口を大きく開け光に飛び掛かるが・・・

「アイシクルショット!」

そんな声とともに氷の氷柱が飛来し、怪物の開いた口に見事に命中した!

怪物は口から脳天にかけて貫かれ絶命する!

光「ナイスよ!グレイ」

グレイ「良かった、間に合ったみたいで」

光「他の奴らは?」

グレイ「大丈夫、もう皆来てるから」

グレイの言葉の通り、他の怪物がレオ達に飛び掛かろうとした時二人の生徒・・・エレンと美春が現れる。

エレン「これでもくらえ!」

エレンは尖ったいくつかの木の枝を、猛スピードで超能力を使って投げつける!

飛び掛かろうとした怪物は空中では避けることができず直撃し、そのまま木々にはりつけにされる!

一方美春は・・・

美春「夢咲流・・・」

美春の刀が白く輝く!

美春「乱れ桜!」

いくつもの剣閃が瞬き、怪物達が切り裂かれる!

美春「ふう・・・」

エレン「会長!大丈夫?」

レオ「ああ、いいタイミングで来てくれた、このままあの怪物達を蹴散らすぞ!」

エレン達四人がうなずく。

怪物達は無謀にもレオ達に飛び掛かっていくが、次々と彼らによって倒されていく。そして・・・

レオ「これで最後だ!」

レオが最後の怪物を切り伏せ、怪物を全滅させた。

紅羽「すごい・・・」

紅羽は彼らの強さにあっけにとられていた。

レオ「ふう・・・」

レオが刀に付いた血を払い、紅羽たちの方を見る。

紅羽「・・・あ!その・・・助けてくれてありがとう」

霊仙「私からも礼を言わせてくれ、本当にありがとう」

レオ「礼なんていらないさ、君たちが無事でよかった」

レオはそう言って微笑んで見せる。

光「それで?あんたたちここで何してたの?」

光が紅羽たちにそう質問する。

紅羽「私達・・・その・・・あるところに向かってって・・・そしたらあの怪物に途中で襲われて・・・」

レオ「どこに行くつもりだったんだ?よかったらそこまで送っていこう」

光「ちょっとレオ、こいつらにそこまでするの?」

レオ「彼女たちは怪我をしてる、次に怪物と出くわしたらそれこそ終わりだ。放ってはおけない」

光「あんたは相変わらずお人好しね・・・まったく」

レオ「それで?どこに行くつもりだったんだ?」

再びレオが二人にそう質問する。

紅羽「その・・・」

紅羽が言いづらそうにしているのを察し、霊仙が口を開く。

霊仙「私たちは君たちの寮に行くつもりだったんだ」

美春「私たちの寮に?・・・残念ですが分けられる食料はあまりありませんよ」

霊仙「そうじゃないんだ・・・こんなことを言うのは図々しいかもしれないが。私達を助けてほしいんだ。      もう少し詳しく言うと・・・私達を君たちの仲間に入れてほしい」

・・・

レオ「ここならゆっくり話せるだろう、君たちの寮で何があったのか話してくれ」

あれからレオ達はあそこで話すのは危険だと考え、一度寮に戻ってきていた。

霊仙は足を捻挫しているということもあり、今は医務室で穂乃果の治療を受けている。

紅羽とはあまり大人数だと話しづらいかもしれないことを考慮し、美春とエレン、レオの三人で紅羽の話を聞くことにした。

紅羽「うん、私たちの寮もこのデスゲームが始まってから何とか生き残ろうと努力してたんだ、でも・・・     日に日に食料も水も減って行って、このままじゃ底を尽きるのも時間の問題だった。それで最初に私たちの寮にいた未来(みらい)が会長のところに助けを求めに行こうって言ったんだ」

未来・・・その名前をレオは知っていた。星乃未来(ほしの みらい)。この学園の三年生で、赤い髪の少し背の低い可愛らしい少女であり、とにかく明るく素直な人物と言うのが、レオが持つ彼女のイメージだ、確か彼女には真道玲奈(しんどう れな)と九条咲(くじょう さき)と言う名前の特に仲の良い友人がいたのを覚えている。咲は白髪のお淑やかな生徒で、玲奈は黒髪の寡黙な生徒だった。

美春「ちょっと待ってください」

美春が紅羽の話を中断させる。

美春「それならどうしてレオが協力を求めに行ったときにそれに応じなかったんですか?」

紅羽「協力?その・・・一体何のことだ?」

紅羽はそのことを知らないといった様子だ。

美春「嘘をつかないでください、レオはあなたたちの寮にもいって・・・」

レオ「美春」

美春「?」

レオ「行ってないんだ」

美春「え?」

レオ「俺は・・・彼女たちの寮にはいっていない」

美春「そうなんですか!?だって・・・どうして・・・あ!」

レオ「そうだ、俺は彼女たちの寮に向かう前に・・・撃たれてしまったんだ」

本来であればあの時、幸実に撃たれなければ次の目的地は彼女たちの寮だったのだ。

美春「そういえば・・・そうでしたね」

紅羽「その・・・何かしてたのか?」

レオ「いや・・・詳しいことはまた別の機会に話そう、続けてくれ」

紅羽「分かった」

紅羽は再び寮での出来事を話し始める。

紅羽「最初はそうしようと思ったんだけど・・・会長達の寮と私たちの寮はかなりの距離が離れてるから、途中で怪物達に出くわすかもしれないって話になったんだ。私たちの寮で戦えるのなんて私か…玲奈ぐらいしかいなかったから、私達が行けば怪物達に出くわしても何とかなるかもしれないけど、寮に怪物が責めてきたら終わりだし、途中で私達に何かあってもまずいからって・・・結局話は平行線のまま進まなかったんだ」

紅羽は先ほどのように炎を操ることができ、玲奈と言う生徒も確か古武術の達人だったはずだ、確かにこの二人だったら怪物とは戦える。だがそれ以外の生徒はレオが思い出せる限り、怪物と戦えそうな生徒はいなかった。

紅羽「それで・・・近くの寮に助けを求めに行くって案も出たんだけど・・・他の生徒に襲われたって話も出て、結局それもなしになったんだ。でも食料も水もどんどん減って行ってそれで・・・玲奈が森に食料と水を一人で探しに行くって言いだしたんだ」

エレン「一人で!?さすがに危険すぎるよ!」

紅羽「私もそう思ったんだ、だから私も一緒に行くって言ったんだけど・・・私まで行ったら寮に怪物が来た時に守れる人がいないって言われて、結局玲奈は大丈夫だって言って一人で食料と水を探しに行ったんだ・・・でも玲奈は帰ってこなかった・・・一日・・・二日・・・いくら待っても帰ってこない。私は痺れを切らして玲奈を探しに行ったんだ・・・それで・・・」

紅羽はカバンから何かを取り出しそれを机に置いた。

それは・・・血まみれの学生手帳だった。

紅羽「森に入ってしばらく先に行ったところで・・・これと・・・上半身だけになった・・・玲奈の・・・」

紅羽はその時の凄惨な光景を思い出したのか過呼吸になりかけてしまう。

レオ「落ち着け!大丈夫だ、無理に話さなくていい」

エレン「落ち着いて、大丈夫だから。ゆっくり息を吸って・・・」

エレンが紅羽の背中を優しくなでながらそう語りかける。

紅羽はなんどか深呼吸をしたのち落ち着きを取り戻す。

紅羽「うん、もう大丈夫・・・ありがとう」

エレン「良かった・・・」

紅羽「それで、私は寮にこれだけ持って帰ったんだ。でも・・・このことはみんなには言えなかった。でもみんな何となく私の様子を見て察したんだと思う。もう玲奈は帰ってこないって。未来は・・・認めようとはしなかったけど」

それもそうだろう、未来にとって玲奈は最も仲の良い友人の一人だったのだ、彼女が死んだなんて・・・考えたくもなかったのだろう。レオはそう思った。

紅羽「それでそのあとにもう一人、銃を持ってるやつがいたんだ。どこで手に入れたかは分からないけど…そいつも森に行って…帰っては来なかった。結局森で食料を探すのは危険すぎるってことになって、近くの寮に助けを求めに行くことにしたんだ・・・でも間違ってた・・・止めるべきだったんだ・・・いや・・・せめて・・・私が行くべきだった」

なにか言葉にするのもつらいようなことがあったこと、そしてそれに対する後悔の念が、紅羽の口調から三人は感じ取れた。

紅羽「近くの寮に向かったのは・・・咲とそれから健(たける)の二人だった」

健・・・確か黒髪の眼鏡をかけた生徒で、IQ200以上の天才少年だったはずだ。

紅羽「咲は戦えないけど不思議な力を持ってたから・・・怪物に出くわしたりしても大丈夫だって言って、健も話し合いなら任せてほしいって言って、二人は近くの寮に助けを求めに行ったんだ・・・それで・・・直ぐには帰ってこなくて、夜が明けたころに・・・二人は帰ってきた・・・帰って来たんだ・・・死体になって・・・帰ってきた・・・!」

三人「!?」

紅羽「健は銃で頭を撃ち抜かれてた・・・咲は・・・裸にされて・・・そこら中に・・・乱暴にされた跡があった・・・一体・・・どんなことをされたら・・・あんな・・・あんなに・・・苦痛に満ちた表情で・・・死ぬことになるのかな・・・?」

エレン「酷い・・・そんなのって・・・」

レオ「・・・」

レオは何も言わなかったがその手は血管が浮き出るほどに、握りしめられていた。

美春「やっぱり・・・それって・・・」

紅羽「ああ・・・殺された!殺されたんだ!!!あいつらに!咲と健は!殺されたんだ!!!」

紅羽は感情が爆発したのか叫ぶように涙を流しながらそう言った。

レオ「誰だ・・・誰がそんなことしたんだ?」

紅羽「あいつらだ・・・虎鉄・・・轟虎鉄(とどろき こてつ)!あいつとその仲間が殺したんだ!!!」

レオ「轟虎鉄・・・!あいつが・・・!」

轟虎鉄その名前はレオだけでなく、美春やエレン、いやこの学園の生徒であればほとんどが知っているほどの悪名高い生徒だった。カツアゲや恫喝など犯罪まがいのことを平気で行い、磁器を操るといった凶悪な能力を持っていたため誰も手を付けられず、学園一の問題児だった。

レオも彼の行いを止めるために何度も彼と対峙したことはあるが、彼を止めることはできなかった。結局学園の副校長の教育(物理)を受けてからはおとなしくなったと聞いていたが、そうではなかったようだ・・・

美春「確かにあいつだったらやりかねませんね」

エレン「でも副校長に怒られたからはおとなしくなったって聞いてたけど・・・」

紅羽「おとなしくなんてなってるもんか!あいつはずっと待ってたんだ!誰の目も届かないところで、好き勝手出来る時を!復学なんてさせるべきじゃなかった!」

レオ「・・・それでその後は・・・」

紅羽「その後・・・?はは・・・最悪だったよ・・・そんなことになって、結局水も食料も何も手に入らなかった!それどころか同級生がこんな形で殺されたんだ!みんなおかしくなっちまったよ・・・特に未来は・・・泣いていると思ったら急に笑い出したり・・・完全に気が狂ってた・・・それどころか・・・」

紅羽は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに話の続きを始める。

紅羽「これを私のカバンから見つけちまったんだ・・・よりにもよってその次の日に・・・」

そう言って血まみれの学生手帳を紅羽は指さす。

紅羽「これを見て、未来は理解しちまったんだ・・・玲奈はもう帰ってこないって・・・それを知った瞬間・・・未来は・・・拳銃で・・・自分の頭を・・・!」

そこまでしゃべった紅羽は、そのまま泣き崩れてしまった。

エレン「紅羽ちゃん・・・」

レオ「分かった…もうそれ以上は話さなくていい・・・君たちの身に起こったことは・・・よく分かった・・・」

紅羽「うう・・・ヒック・・・グスッ・・・なんで・・・なんでこんなことに・・・なんで・・・!」

紅羽が彼女たちの死にここまで悲しむのは理由があった。

それはこの合宿が始まった初日までさかのぼる・・・

紅羽は未来達とはそれこそこの合宿が始まるまで話したことがなかった。

そもそも紅羽はこの鋭い目つきからか、今にいたるまで女子達からは怖がられ、この学園に入ってからは根も葉もない噂も流されて、友達すらほとんどいなかった。唯一仲が良かったのはこの学園に入学したときに話しかけてきた霊仙だけだった。

だけどこの合宿で、未来達…と言うよりも主に未来が紅羽にはなしかけてきていた。紅羽は最初、どうして自分に話しかけてくれるのかも分からなかった。

どうすればいいか分からず、紅羽は「自分と話していたらありもしない噂を流されるからやめた方がいい」と言ってしまった、

紅羽は一瞬後悔したが、自分と関わっておかしな噂をされるようになるよりはこの方がいいと思った。

しかし未来はそんなことお構いなしと言ったように紅羽に話しかけ続けた。次第に紅羽も未来に心を開いて話をするようになっていき、気づいた時には彼女の友人である玲奈と咲の二人も会話をするようになっていた。

最終日の夜。未来が外で女子会をすると言って紅羽を部屋から連れ出した。

未来に連れられて外に出ると、木の枝を重ねそれを石で円状に囲んだ簡素な焚き火があった。

未来は「ここで焚き火を囲んで女子会をします!」と言った。

紅羽が周りを見るといるのは、自分と未来、玲奈と咲の四人だけだった。

紅羽は「4人だけ?」と質問した。

咲は「はい、私達の寮は女性の方は少ないですし、他の方は寝たいとおっしゃっていたので」と答えた。

どうやら本当にこのメンバーだけのようだ。

この女子会自体、未来のわがままで行うことにしたらしい。

玲奈は気を利かせて、別に付き合わなくてもいいといってくれたが、紅羽は彼女達の女子会に付き合うことにした。

未来は焚き火に、きりもみ式で木の枝と板で火をつけようとしたが失敗し、紅羽は能力を使って火をつけた。

火がついた焚き火に、どこから持ってきたのか切り株を椅子がわりにして囲むようにして座った。

そして未来はマシュマロを取り出し、綺麗に洗った木の枝を刺してみんなに配った。

未来は「一度でいいからやってみたかった」と言い、はしゃぎながらマシュマロを焼いていた。

紅羽も未来と同じようにマシュマロを焼いて食べた。この時のマシュマロは今まで食べたどんなマシュマロよりも甘くて美味しかった・・・

それからは四人でいろいろなことを話した。自分達のことや、学園でのこと、将来についてなど色々と・・・

途中で未来が、紅羽と玲奈は似ているといった。どうやら寡黙でいつもムスッとしているところが似ているらしい。

紅羽自身はそんなことはないと思ったが、他人から見た自分はそんな感じのようだ・・・

それを聞いた玲奈は、「誰がいつもムスッとしてるですって~!」といって未来の頬を両手でつねった。

未来が頬をつねられながら「ごめんなひゃい〜」と謝っているのを見てつい笑ってしまった。

笑った紅羽を見て、未来は「やっぱり笑ってる紅羽ちゃんは可愛いよ」と言った。

紅羽は初めてそんなことを言われ、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になる。

未来は続けて「恥ずかしがってる紅羽ちゃんも可愛い〜」と言ったそして玲奈が、「からかわない」といって再びグニグニと頬をつねった。

そんな光景を見てやっぱり可笑しくなって笑った。そして紅羽は思い切ってどうして自分に話しかけてきたのかを聞いた。

未来は「昔の自分に似てるから」と答えた。

意外だった、今の未来からはそんなこと想像もできなかったからだ。しかし彼女もこの学園に入って最初は根暗で友達なんて一人もいなかったらしい。

一人で寂しそうに座ってるのを、咲と玲奈が話しかけたことで3人は友達となり、未来も今のような明るい性格になったらしい。

未来は咲と玲奈が話しかけてくれたことが変われたきっかけになったと言い、自分と同じような状況の紅羽を今度は自分がなんとかしてあげたいと思い。話しかけてくれたらしい。そして咲と玲奈もそれに協力していた。

紅羽は今まで他人からこれ程の優しさを受けたことはなく、とても嬉しかった。あまりの嬉しさに気がつけば目から涙が溢れていた。

未来は一瞬嫌だったのかと慌てたが、紅羽はそのことを伝えると、未来も咲も玲奈も嬉しそうに笑ってくれた。

紅羽は3人にこう尋ねた、「私と友達になってくれる?」と。

3人は「もちろん」と答え未来は「そもそも私達はもう友達だしね」と言ってくれた。

それを聞いてまたうれしくなって泣いてしまった。

どうやら紅羽自身、自分が思うよりも涙脆いようだ。

こうして女子会は幕を閉じた。

紅羽はこの合宿を通じて3人と仲良くなり友達になることができた…

いや正確に言えばもう一人いた。それは健だ。

紅羽自身とは特段仲がいい訳ではなかったが、霊仙と健は仲が良かった。恐らく似たもの同士だからだろう。

二人とも歳不相応の難しいことを言う様子はそっくりだった。

そして霊仙は、友達の少ない紅羽の友達になって欲しいと勝手に頼み、健はそれを承諾した。

一応それから話すようにはなったので一応…友達にはなれたのだろう。

とにかくこの合宿で4人も友達を作ることができた。そしてこれを機にきっと自分も変わることができると紅羽は思った。

学園での生活は残り少ないけれど、彼らといればきっととても楽しいものになると…そう思った…だけど……

怪物が…虎鉄が…玲奈を…咲を健を…そして未来を…全部奪った。全部奪われたのだ…

紅羽「……ごめん…しばらく…一人にして」

レオ「分かった…何かあったら呼んでくれ…行くぞ」

レオは二人を連れて部屋の外に出て行った。それからもしばらくの間・・・部屋からは紅羽のすすり泣く声が聞こえ続けていた・・・

エレン「うう・・・こんなの酷すぎる・・・あんまりだよ・・・なんで紅羽ちゃんたちがあんな目に合わなくちゃいけないの?」

美春「運が悪かった・・・という言葉で片づけるにはあまりにも酷すぎますね・・・様々な要因が重なってしまった結果、最悪の結末を招いてしまったのでしょう・・・それで・・・どうしますか?」

美春がレオに質問する。

レオ「どうする・・・とは?」

美春「虎鉄のことです、あいつはこの状況を利用して好き放題しています。それに紅羽の話が正しければ虎鉄はすでに・・・二人の生徒を殺めています」

レオ「・・・今は奴らに関わるべきじゃない・・・」

エレン「放っておくってこと!?二人も同級生が殺されてるんだよ!?このまま放っておいたらもっと・・・!」

レオ「分かってる!」

レオが声を荒げる。

エレン「ッ!」

レオ「だがな!下手に奴らと関わって皆を危険にさらすわけにはいかないんだ!それにな・・・エレン、お前は同じ学園の生徒と戦えるのか?言い方を変えよう・・・同じ学園の生徒と・・・殺し合えるのか?」

エレン「こっ殺し合うって・・・そんなおおげさな・・・」

レオ「・・・奴らと関わるということはそう言うことだ・・・それだけの覚悟がなければ殺される・・・今まで俺達を襲ってきた奴らには明確な殺意はなかった・・・だが奴らにはきっと・・・それがある」

美春「どうしてそこまで言い切れるのですか?」

レオ「俺は知っているからだ・・・特に虎鉄は・・・そういうやつだ」

美春はその言葉を聞いて、今まで幾度となく学園内で対峙してきたレオは、虎鉄のそのような本性を見抜いていたのだと思った。

レオ「だが…だからと言って放っておくべきじゃないことも分かってる…来るべき時が来たその時には…必ず対処する」

エレン「・・・分かった・・・」

エレンはまだあまり納得していなさそうだったがそう答えた。

レオ「・・・霊仙とも話をする、ついてくるかは・・・好きにしてくれ」

レオはそう言って医務室へと向かって言った。

美春とエレンは何も言わずその後ろをついて行った・・・

医務室にて・・・

レオ「怪我の調子はどうだ?」

霊仙「特に問題はないよ、ただ捻挫しただけだからね。それに彼女達に治療もしてもらったしね」

霊仙は穂乃果とロザリアの方を見ながらそう言った。

レオ「そうか・・・それなら良かった」

霊仙「それで・・・私にはなんの用なんだい?」

レオ「君にも話を聞いておこうと思ってな・・・」

霊仙「私にも・・・と言うことは、もう紅羽には話を聞いたんだね?」

レオ「ああ、君たちの寮で起きた出来事のことはおおかた聞いた」

霊仙「なら彼女が話した通りだね、その出来事の後、私と紅羽は寮を出て君たちの寮に向かったんだ、そして・・・あの怪物に襲われた」

霊仙はあの時のことを思い出す。

霊仙「本当に幸運だったよ、もしも君たちがたまたまあそこを通りかかってなかったら・・・今頃私たちは・・・怪物の胃の中だっただろうね。どうやら神様はまだ私たちを見放したわけじゃないらしい、神様がいるならもう少し早く助けてほしいところだけどね・・・なんてね」

霊仙はそう言って冗談っぽく笑った。

霊仙「ともかく、もう一度お礼を言わせてほしい。本当にありがとう」

レオ「礼はいい、助け合うのは当然のことだ」

霊仙「そういってもらえると助かるよ・・・それで・・・再三にはなってしまうんだけど・・・」

レオ「言わなくてもいい、もちろん俺たちは君たちを受け入れる。今日から俺たちは仲間だ」

レオはそう言って霊仙に手を差し出す。

霊仙「!ありがとう、やっぱり会長たちのところに来て正解だった」

霊仙はレオの手を受け取った・・・

霊仙「そういえば紅羽は今どうしてるんだい?」

美春「彼女は今、部屋にいます・・・しばらくは一人にしてほしいそうで・・・」

霊仙「なんだって!?一人で!?」

美春「なっ何かまずかったでしょうか!?」

霊仙の予想外の反応に美春は驚く。

霊仙「えっと・・・ごめん!すぐにでも私を彼女のところに連れて行ってくれ!」

レオ「なにかあるのか!?」

霊仙「向かいながら話すよ!」

レオ「分かった!」

レオは霊仙をおんぶする。

レオ「それで・・・一体どうしたんだ?」

霊仙「実は彼女・・・一度自殺しようとしたんだ」

レオ「なっ!?」

霊仙「あの日・・・未来さんが自殺した日・・・紅羽もその後を追おうとしたんだ。その時は何とか私が止めたのだけれど・・・今日あの時の話をしたのなら・・・もしものことがあるかもしれない・・・大丈夫だとは思うんだけど・・・」

レオ「そうだったんだな・・・」

そうして紅羽がいる部屋の前に着いた。

部屋からは・・・まだ紅羽のすすり泣くような声がかすかに聞こえていた。

その声を聞いてレオ達は少し安心する。どうやら最悪なことにはなってなさそうだ。

レオは部屋に入り、霊仙を紅羽の近くの椅子に座らせた。

霊仙「ありがとね、会長」

レオ「ああ、それじゃあ俺たちは行くよ、何かあったら呼んでくれ」

霊仙「分かった」

レオ達は部屋を出て行った。

紅羽「霊仙・・・うう・・・」

霊仙は紅羽を優しく抱きしめた。

・・・

それからしばらくたった夕方ごろ・・・

医務室で修斗は目を覚ました。

目を覚ました修斗は何もせず…と言うよりも怪我のせいで何もできずただ医務室の天井を見つめながら、あの時のことを思い返し続けていた。

そして、自分の怪我の心配などは一切せず、ただ…

修斗(傷はいつか治る…例えそれが重傷だとしても…どれ程の痛みを伴うものであっても…ですが心の傷は?例えどれだけ腕の良い名医であろうと、どれだけ素晴らしい魔法であっても…心の傷というのは治すことができない。時間が癒してくれると言うが、果たして…大切な友人を失ったという心の傷を癒すのにどれだけの時間がかかるのだろうか?)

そんなことを考え続けていた。

コンコン

医務室のドアをノックする音が聞こえてくる。

穂乃果「はーい」

穂乃果がドアを開ける。

穂乃果「どちら様…アリシアさん?どうしたんですか?」

訪ねてきたのはアリシアのようだ。

アリシア「いえ、ちょっと・・・修斗の様子を見に来ようと思って・・・」

穂乃果「あ!それならちょうど良かったです!実はさっき修斗さん、目を覚ましたんですよ」

アリシア「ほんと!?」

穂乃果「あ!ちょっと・・・!」

アリシアは一目散に修斗のところへ向かう。

アリシア「修斗!」

修斗「お嬢様?」

アリシア「良かった・・・目を覚ましたのね」

アリシアは安堵の息をもらす。

修斗「ご心配なされていたのですか?」

アリシア「当たり前よ!だってあなたは私の・・・従者・・・なんだから」

修斗「お心遣いありがとうございます、そして・・・申し訳ありません、このような失態を晒してしまって・・・」

アリシア「謝る必要なんてないわ!ともかく、あなたが目を覚ましてくれてよかった・・・」

アリシアは心から安堵したようにそう言った。

アリシア「そうだ!ずっと寝ていたんだからお腹がすいてるんじゃないかしら?ちょっと待ってって直ぐに食べられるものを持って来るから!」

修斗「え?いや?私は・・・」

修斗が何かを言おうとしたのを無視してアリシアは医務室を飛び出して行ってしまった。

それからしばらくして・・・アリシアは焼き魚などがのった皿を持って戻ってきた。

アリシア「それじゃあ早速・・・」

アリシアは箸で魚の身をとりだす。

修斗「あの・・・お嬢様?何をなさろうとしているんですか?」

アリシア「なにって・・・食べさせてあげようと思って・・・」

修斗「いえ別に自分で食べられますが・・・」

アリシア「だめよ!今のあなたは絶対安静って穂乃果に言われたんだから!」

修斗「ですが・・・わざわざお嬢様の手を煩わせなくても、穂乃果さんに頼めば・・・」

アリシア「なによ!私に食べさせられるのは嫌だとでもいうの!?」

修斗「そういう訳ではございませんが・・・」

アリシア「なら別にいいでしょ///ほら口を開けて」

アリシアは頬を少し赤らめながら箸を修斗の口元へと持っていく。

修斗「分かりました・・・」

修斗は諦めて口を開け、アリシアに食べさせてもらう。

アリシア「どう?骨とか入ってない?」

修斗「大丈夫です」

アリシア「それなら良かったわ」

アリシアはそのまま修斗に食事を食べさせ続ける。

そんな様子を見ていた穂乃果は・・・

穂乃果(ああ!いいですね!主人と従者の恋!私そういうの大好物です!はぁはぁ!)

と、よだれを垂らしながらその光景に見入っていた。

ロザリア「あの・・・?穂乃果さん?」

そんな穂乃果の様子を隣で見ていたロザリアはただ困惑するしかなかった・・・

それから少しして食事を食べ終わった後・・・修斗はこう話を切り出した。

修斗「そういえばリオンさんの様子はどうですか?」

アリシア「リオン?リオンは・・・」

アリシアは少し言いづらそうな様子だったが・・・

アリシア「ずっと部屋から出てきてないわ」

そう答えてくれた。

修斗「そうですか・・・ずっととはどれぐらいですか?」

アリシア「大体丸一日ぐらいかしら・・・食事は一応とってはいるみたいなんだけど・・・」

修斗「・・・やはりそうなってしまいましたか・・・まあ、そうですよね・・・大切なご友人を目の前で失った傷がそう簡単に癒えるとは思えません」

アリシア「・・・」

修斗「時間が必要ですね・・・しかし・・・」

アリシア「?」

修斗「我々が生き残るには彼の力が必要不可欠です・・・立ち直れればいいのですがそれが無理な場合は・・・ともかくもう少し様子を見る必要がありますね」

アリシア「そうね・・・立ち直れれば・・・いいのだけど」

アリシアはリオンと自分の現状が重なっているように見える・・・

アリシアもリオンも目のまで大切な友人を失った・・・違う点を挙げるとするならば・・・

リオンは庇われたのに対して・・・

アリシアは・・・

アリシア「私は・・・」

彼女を・・・

アリシア「遥を・・・」

「見捨てた」

アリシア「!?」

アリシアは後ろを振り向く。

修斗「お嬢様?どうかされましたか?」

アリシア「いっいえ・・・何でもないわ」

修斗「そうですか・・・」

アリシア(今・・・確かに遥の声が・・・いえ・・・ありえないわ・・・幻聴よ・・・しっかりして・・・私!)

アリシアは心の中でそう否定するが・・・耳には先ほどの遥の声が残り続けていた・・・

そのころ一方エントランスでは・・・

霊仙「それじゃあまず自己紹介をしようか、私は調月霊仙(つかつき れいせん)、これからよろしくね。それと一応・・・こんな顔をしているが、私はれっきとした男だから間違えないようにね」

調月霊仙

幻想学園の三年生

特徴的なのはその中性的な顔立ちで、何も知らなければ女性だと勘違いしてしまうほどである。実際、そのことを知らない男子生徒から何度か告白された過去を持つ。

性格は物腰柔らかだが、歳不相応の難しい話をしたり、変な知識を持っているなど、一部の生徒からは変人扱いされている。

紅羽「えっと・・・明空紅羽(あけぞら くれは)、その・・・よろしく」

明空紅羽

霊仙と同じく幻想学園の三年生

目つきが生まれつき鋭く、口下手なのも相待って同じ女子生徒からは怖がられ、友達はほとんどいない。

また実は学園の裏番なのではないかと噂されているが、真偽は定かではない。

陸上部に所属しており、運動神経には自信がある。

炎を操る能力を持っている。

霊仙「紅羽、もう少し明るく自己紹介したらどうだい?ごめんね、彼女は口下手で・・・」

紅羽「うっうるさい!///」

新しく仲間になった二人が自己紹介していた。

レオ「ああ、これからよろしくな!」

光「私たちの仲間になったからにはしっかり働きなさいよ~」

グレイ「光、変なことを言わない」

光「いたっ」

グレイが光の頭をこづいた。

フレア「よろしくね~!」

霊仙「うん、よろしくね」

グレイ「そうだ会長、彼らにもあのことを教えておいた方がいいんじゃないかい?」

レオ「そうだな、二人とも今から話すことを驚かずに聞いてほしい」

紅羽「なっなに?」

二人が真剣な面持ちになる。

レオ「実は俺は・・・吸血鬼なんだ!」

紅羽・霊仙「・   ・   ・」

紅羽「は?」

霊仙「本当なのかい?」

紅羽は困惑して言葉が出ないという様子だが、霊仙はどちらかと言うと興味があるといったような様子に見えた。

レオ「困惑するのは分かる、だが今から証拠を見せよう」

そう言ってレオはタブレットを使い吸血鬼の姿になる。

紅羽「ほっ本当だったの・・・」

霊仙「!・・・」

二人は驚愕した様子だ。

特に霊仙はわなわなと震えている・・・

レオ「まあ・・・驚愕するのも無理はないだろう」

霊仙「な・・・」

レオ「な?」

霊仙「なんて光栄な日なんだ!!!」

レオ「!?」

皆「!?」

突然霊仙が歓喜の声を上げ、皆が驚く。

霊仙「まさか本当に吸血鬼に会えるなんて!君達のような種族に会えるなんて本当に光栄だよ!」

霊仙はとても興奮した様子でそう言った。

レオ「なっ何を言っているんだ?」

突然の霊仙の豹変ぶりに今度はレオ達が困惑する。

霊仙「君は知らないのかい?吸血鬼の伝説を!」

レオ「でっ伝説?なんだそれ?」

レオは全く知らないといった様子だ。

田中「そもそも吸血鬼自体伝説の存在みたいなもんだろ」

霊仙「まっまあそうなんだけど…ともかくその伝説によれば吸血鬼は世界を救った英雄なんだ!」

レオ「いっ一体どんな伝説なんだ?」

霊仙「それはかつて・・・それこそ今から数千年も前の話…かつてこの地上には、人間以外にも様々な種族が存在していた・・・勿論吸血鬼も、彼らは地上の支配者になるために日夜争い続けていた」

光「なんかありがちな設定ね…」

真鈴「黙って聞くんだぜ」

霊仙「そんなある日、一人の預言者がある予言をした。その予言とは・・・かつてこの世界を支配していた邪知暴虐の闇の王・・・ボロス!奴がこの世に蘇り世界を滅亡させるというものだった!」

田中「・・・ゲームのオープニングか?」

霊仙「予言によって世界が絶望に満ちたその時!ある一人の吸血鬼の青年が立ち上がった!彼の名はアラン!彼はボロスを打ち倒すため世界各地を回り、争い合うあまたの種族を一つにまとめ上げた!そして時は満ちた…ついにこの世にボロスが蘇ったのだ!アランはあまたの種族を率いてボロスへと立ち向いそして!・・・彼らはボロスに勝利した!アランと言う英雄を代償に・・・アランは自身の命を代価にボロスを封印したのだ。ボロスが封印され、あまたの争い合っていた種族達はアランを英雄とたたえ、争い合うことをやめた。こうして彼の活躍によって世界に平和が訪れたのだった・・・」

レオ「・・・」

霊仙「どうだい?これが吸血鬼の伝説だよ」

レオ「その・・・なんというか…壮大な伝説だな」

レオはなんと言いっていいか分からないと言ったような表情でそう答えた。

田中「俺が昔やってたゲームに似てるな」

真鈴「リオンもやってたvampirequestてゲームか?」

田中「それ!」

どうやら似たような設定なゲームがあるらしい。

光「でもしょせん伝説でしょ?」

霊仙「いや!実はこの伝説は実際に起きたことなんだ!」

光「実際に起きたことって・・・証拠は?」

霊仙「証拠?それなら目の前にいるじゃないか!」

霊仙が目の前を指さす。

レオ「目の前?・・・まさか俺か!?」

霊仙「そう!吸血鬼である君の存在!それこそがこの伝説が事実であったというゆるぎない証拠なんだー!」

霊仙は興奮した様子でそう叫んだ。

紅羽「・・・ごめん、霊仙、たまにこうなるんだ」

美春「大変ですね」

紅羽「うん…」

霊仙「ともかく!君に会えたことはとても光栄なことなんだ!そうだ!ぜひ握手してくれ!」

レオ「あっああ・・・」

レオは霊仙と握手する。

光「はぁ…ばかばかしいわね。もしその伝説が事実ならどうして今他の種族?はいないのよ、あんたの話が本当なら吸血鬼だってもっといるはずでしょ?それにその伝説だってもっと知られてるはずでしょ?でも私たちはそんな話聞いたことがないし」

エレン「たっ確かにおかしいような・・・」

皆が霊仙の方を見る。

霊仙「その質問の答えは君たち自身だ」

光「は?私達?何言ってるの・・・」

霊仙「君たちはなんだい?なんという種族だい?」

光「なにって・・・人間よ」

霊仙「人間!そう人間さ!他の種族がおらず、この伝説が知られていないのは全て人間の仕業さ!」

光「私達の仕業って・・・」

霊仙「実はこの話には続きがある。ボロスとの戦いが終わり世界には平和が訪れたんだ・・・しかしその平和はとても短いものだった。なぜならそれは・・・人間が地上の支配者になるために侵略を始めたからだ。ボロスとの戦いで多くの種族が疲弊し数を失っていた。人間も例外ではなかったのだけれど・・・人間はその脅威の繁殖力であっという間に数を増やしそして、他の種族が疲弊しているのを機に進行を始めた。そしてあっという間に地上は・・・人間が支配するようになったんだ。アランが作り上げた平和は・・・人間によって破壊された。そして人間達は自分達の行いを隠すために、ありとあらゆる種族の記録を抹消したんだ。アランの伝説も例外ではなかった」

田中「次は陰謀論者みたいなこと言い始めたぞ・・・」

佐藤「う~んとてもじゃないけど信じられる話じゃないね…」

美春「ですが一概に嘘だとは言い切れません。千歳家のこともありますし…」

霊仙「千歳家?君は千歳家のことを知っているのかい?」

美春「ええ…と言うよりもあなたこそ千歳家のことを知っているんですか!?」

霊仙「うん、知っているよ、人間を超える遥に長い寿命を持ち、永遠に老いることのない体を持つ一族・・・それが千歳家だろう?」

美春「・・・」

霊仙「それと君のその耳飾り・・・もしかして君は夢咲家の人間かい?」

美春「!そんなことまで分かるんですか!?」

霊仙「ああ、その耳飾り・・・それは正当な夢咲家当主以外つけられない代物だからね。いや~それにしても吸血鬼だけではなく、あの夢咲幻園の子孫にまで会えるなんて、意外なこともあるものだね」

美春「私の事だけではなく、幻園様のことまで・・・」

美春は驚いた、彼が千歳家の事だけではなく、夢咲幻園やこの耳飾りのことまで知っていることに・・・そして同時にここまで知っている彼は一体何者なのかという疑念も持った・・・ここまでのことを知っている人間が普通の人間のはずがない・・・

美春は無意識に腰に着けている刀に手を伸ばしていた。

他の者達もその異常性を察したのか直ぐにでも動ける体制に入っている・・・

美春「あなたは一体・・・何者なんですか?」

美春は警戒心をあらわにしながらそう霊仙に質問した。

霊仙「そうだね…会長が吸血鬼だという正体を明かしてくれたんだ・・・私もそろそろ正体を明かそうじゃないか・・・」

光「まさかあんた・・・!」

霊仙「そう、実は私は・・・」

全員が息をのむ、もしかしたら彼はこのゲームの主催者・・・もしくはその関係者なのかもしれない・・・そうでなければ吸血鬼のことや千歳家のことを知っていることに説明がつかないのだ。

霊仙「私の正体は・・・」

レオ「まさかお前はこのゲームの・・・」

霊仙「白澤(はくたく)なんだー!!!」

レオ「!?・・・え?」

美春「はく・・・たく・・・?」

霊仙「そう!白澤!どう?驚いたかい?」

光「・・・なにそれ?」

霊仙「ええ!!!知らないのかい!?白澤!?」

光「知らない、知ってる?」

グレイ「いや・・・聞いたことないな・・・」

真鈴「知らないんだぜ」

他の者達も聞いたことがないといった様子だ。

霊仙「ええ!?会長は知ってるよね?ね?」

レオ「いや・・・すまない・・・分からん」

霊仙「そんな〜…」

霊仙はとてもがっかりした様子だ。

美春「あ・・・え~と・・・聞いたことならあります。確か中国に伝わる獣・・・でしたっけ」

霊仙「そう!有徳な王の前に現れては、災いを予見し知恵を授けるあの!」

美春「いえ・・・私も詳しくはないのでそう言われても分かりませんが・・・」

霊仙「ともかく私はその白澤なんだ・・・詳しく言えばその白澤の血を持った者ではあるんだが・・・」

光「どういう意味?」

霊仙「まあ・・・簡単に言えば私は人間と白澤のハーフってとこかな」

フレア「私達と同じだね!」

フレアが自分たちと似たような者が現れたからか嬉しそうにそう言った。

霊仙「おや?君たちもそうなのかい?」

レオ「ああ・・・俺たちも人間と吸血鬼のハーフだ」

霊仙「そうだったんだね…それにしても・・・白澤って案外知られていないんだね…」

霊仙は再びがっかりしたようにそう言った。

光「じゃああんたもこいつらみたいに変身できるの?」

霊仙「できるけど…今は無理かな」

光(できるんだ・・・)

美春「今は無理とは?」

霊仙「私が変身できるのは満月の夜の時だけなんだ」

田中「狼男か!」

霊仙「そういわれても実際満月の日しか変身できないのだから仕方ないじゃないか」

光「それでどうやってあんたが白澤だって信じればいいのよ・・・あんたは知ってたの?」

光が紅羽に質問する。

紅羽「うん…一応知ってた」

紅羽は彼が白澤だということは知ってはいたらしい。

霊仙「う~んどうやって信じれば、か…それなら私の知識が白澤である証拠かな」

光「知識が?」

霊仙「そう、実は白澤の血は私に多くの知識を与えてくれるんだ。これは白澤が有徳な王の前に現れては、災いを予見し知恵を授けるのに起因しているのだろう・・・実際私は吸血鬼の事や千歳家のことも知っていただろう?普通の人間には知らないようなことを」

光「確かに・・・でもそれならあんた何でここにいるのよ?」

真鈴「確かに・・・それならこのデスゲームに巻き込まれるって災いを予見して回避できたんじゃないか?」

霊仙「実はその災いの予見も満月の日にしかできないんだよね~良く外れるし…」

光「全然使えないじゃない・・・」

霊仙「でもほら!知識!知識はあるから!」

エレン「じゃあもしかしてこの島から脱出する方法が思いついたりして・・・」

霊仙「それは分からないし思いつかない!」

エレン「・・・」

光「もしかしてだけどこいつ・・・」

美春「・・・はい、めちゃくちゃポンコツですね」

霊仙「うぐ!?言葉のナイフが私の胸に・・・」

光「まあ・・・多少は役に立つでしょ・・・多分・・・」

霊仙「こうなったら何としてでも役に立って見せる!白澤の名に懸けて!」

紅羽「まずお前は足の怪我を治すことからだろ」

霊仙「はい・・・」

こうして二人の自己紹介は終わりを告げた。

皆が解散して部屋に戻っていく中レオは霊華に話しかけた。

レオ「そう言えば霊華、さっきから一言もしゃべっていないがどうしたんだ?」

霊華は皆が話している間何も言わず、ずっと何か考え事をしているようだった。

霊華「え?あ…その・・・実は・・・」

レオ「?」

霊華「さっきの霊仙の話・・・聞いたことがあるの・・・」

レオ「なに!?本当にか!?」

霊華「うん…いつ誰から聞いたかも覚えていないんだけど…でも・・・あの話は確かに聞いたことがあるの」

レオ「まさか…じゃああの伝説は本当なのか?」

霊華「分からない・・・さっきも言ったけどいつ聞いたかもわからないほど昔のことだし」

レオ「そうか・・・う~む・・・叔父さんに聞けばなにか分かるかもしれないんだが・・・」

霊華「まあ分からなかったとしても特に問題はないし大丈夫でしょ」

レオ(吸血鬼の伝説・・・ボロス・・・アラン・・・そういえば俺も聞いたことがあるような・・・だめだ・・・思い出せない)

霊華「レオ?」

レオ「はっ!そっそうだな、まあ・・・しらなくても大丈夫だろう」

レオ(機会があれば調べてみよう・・・機会があれば・・・)

二人がそんな話をしている中もう一方では・・・

光「それじゃ、そろそろお風呂にでも入っちゃおうかしらね~」

紅羽「え!?お風呂に入れるのか!?」

光「うん、普通に温泉が湧いてるし…」

紅羽「そうなんだ・・・私たちの寮は止まってって・・・」

光「あーなるほど・・・道理であんた・・・」

紅羽「うっ・・・やっぱり・・・臭う?」

光「まあお風呂に入っちゃえばすぐに気にならなくなるわよ!」

真鈴「そうそう、私達だってちょっと前まではそんな感じだったし気にすることは無いんだぜ!」

紅羽「うっうん…その・・・ありがとう///」

そんな会話もありながらこの日も幕を閉じた・・・

13日目

レオ達が明日のことについて話し合っていた昼頃、予期せぬ客人が訪ねてきた。

レオ「おっお前は!?」

レオの前には三人の人物が立っていた。一人は茶髪の長髪で高身長、腰に刀を携え、青い瞳をした整った顔立ちの青年。もう一人は結った黒髪が特徴的な短刀を携えた、同じく青い目をした小柄な少女。そして最後の一人は金髪と銀髪が混ざったロングヘアーで、一人目の生徒と同じぐらいの高身長で巨乳の穏やかそうな顔をした少女の三人だ

「良かった、まだ生きていたんだな」

茶髪の青年がレオにそう言った。

レオ「九尾!」

九尾「久しぶりだな、レオ!」

レオは直ぐに九尾と呼んだ青年に駆け寄る。

レオ「生きてたんだな!無事でよかった」

九尾「お前こそ」

二人は抱き合い、お互いの無事を喜んだ。

フレア「あっ!九狐ちゃん!」

九狐「フレアちゃん?」

フレア「やっぱり九狐ちゃんだ!よかった無事だったんだね!」

九狐「ふっフレアちゃんも」

巨乳の少女「ふふ・・・感動の再開ですね」

レオ「しかし突然どうしたんだ?しばらく姿が見えなかったから俺はてっきり・・・」

九尾「まあ色々あってな・・・」

レオ「ここで話すのもなんだろう、入ってくれ、水でも出そう」

九尾「すまない、助かる」

レオは三人を寮に向かい入れ、話を聞くことにした。

九尾「それじゃあまず、知らないやつもいるかもしれないから自己紹介をしよう・・・一応な。

俺は狐ヶ崎九尾(きつねがさき きゅうび)だ」

狐ヶ崎九尾

幻想学園の三年生

しっかり者で真面目な性格の青年。レオと同様に責任感が強く、困っている人を放って置けない性格でもありまた、妹の九狐をとても大切にしている良き兄でもある。

レオとは親友という間柄でよく二人でいるのを見かけられる。

医学を学んでおり、将来は医者を目指している。

九尾「そしてこっちが俺の妹の九狐」

九狐「きっ狐ヶ崎九狐(きつねがさき きゅうこ)と申します。あっあの・・・よっよろしくお願いします!」

狐ヶ崎九狐

幻想学園の一年生

兄とは違い、引っ込み思案で臆病な性格の少女、しかしいつかはこんな自分を変えようと思ってはいるが、それはまだ当分先になりそうである…

兄の九尾を尊敬しており、いつかは兄のような人物にもなりたいと思っている。

兄と同様医者を目指してはいるが、血を見るのは苦手。

兄である九尾とレオが親友なのもあり、フレアとはとても仲が良い友人関係である。

また図書委員のため、先輩である遥を通してアリシアとも、面識はある。

九尾「そしてこっちが・・・」

九尾はもう一人の少女を見る。

巨乳の少女「八雲陽縁(やくも ひより)と申します。気軽に陽縁姉って呼んでください」

八雲陽縁

幻想学園の三年生

高い身長と大きな胸、美しい金と銀の髪が特徴的な少女。

性格は穏やかで、世話好きのみんなのお姉さん(自称)。

頭はよく理知的な雰囲気もある。

家事全般が得意。

九尾「まあ・・・とにかくよろしくな」

レオ「それでいったい今日はどうしたんだ?」

レオが話を切り出す。

九尾「ああ、実はな・・・お前たちの仲間にしてほしくてここに来たんだ」

レオ「そうなのか!?しかし一体どうして・・・」

九尾「簡潔に言えば・・・あの寮にいるのは危険だと判断したからだ」

レオ「危険?いったいどうしたんだ」

九尾「・・・あいつらは生きるために手段を選ばなくなった、生きるためなら、略奪も・・・殺しも・・・なんでもし始めた」

九尾がぽつぽつと語り始める。

九尾「最初はそんなんじゃなかったんだ、みんなで協力しようと言っていたんだ、しかし現実は思ったより残酷だった。食料や水を探しに行けば怪物に襲われ簡単に殺された。そして寮の物資も直ぐに底を尽きた・・・だんだんとみんな疲弊していき、ついに一人が他の寮から食料や水を盗んできた。それをきっかけに他の奴らも盗みや略奪を行うようになった・・・もちろん俺は止めようとしたんだが・・・無理だった。すまない、レオ」

レオ「・・・」

九尾「そしてあいつらは・・・自分たちに協力しなかったら殺すと俺達を脅迫してきた。それでここにいるのは危険だと考え、ここまで逃げてきたんだ」

レオ「そうだったのか・・・しかし、それならあの後にでも俺に相談しに来てくれれば良かったのに」

九尾「あの後?何のことだ?」

レオ「ん?俺はこのふざけたゲームが始まって少し経った頃に、協力を求めにお前たちの寮に尋ねに行ったんだ。お前はその時いなかったから帰ってきたら伝えてくれと伝えておいたんだが・・・」

九尾「なに!?俺はそんな話聞いてないぞ!俺はてっきり・・・お前たちも生き残るだけで必死な状況だと思って・・・」

どうやら三人ともそのことを知らないようだ。

霊華「それって・・・」

九尾「くそ!あいつら・・・俺がお前たちの方に付くのを恐れてそのことを隠してたんだ!」

陽縁「私達三人とも出払ってしまっていたのは・・・失敗でしたね」

九尾「なんて奴らだ・・・」

レオ「まあ・・・ともかくそんなことがあってここに来たんだな」

九尾「ああ」

レオ「分かった、それでもお前たち三人だけでも無事でよかった!そして歓迎しよう!九尾!」

レオが手を差し出す。

九尾「レオ・・・ありがとう!やはり親友は頼れるな」

九尾はそう言いながらその手を受け取った。

レオ「よせよ、照れるだろ」

その言葉を聞いたレオは少し照れくさそうだった…

グレイ「君が会長の親友だっていう九尾君だね、グレイだよ。よろしくね」

グレイが早速九尾に話しかける。

九尾「ああ、よろしくな」

穂乃果「私は福井穂乃果っていいます。よろしくお願いしますね。九尾さん!」

九尾「ああ、よろしく」

穂乃果「そういえば会長から聞いたことがあるんですけど…九尾さんって確かお医者さんを目指してましたよね?」

九尾「その通りだが?」

穂乃果「じゃあもしかして医学の知識とかも・・・」

九尾「もちろんあるぞ」

穂乃果「本当ですか!?良かった!実は私一人だと怪我した人たちの治療が大変で・・・」

九尾「そうなのか?ならこれからは俺が手伝おう」

穂乃果「ありがとうございます!」

穂乃果は嬉しそうにお礼を言った。

美春「ジー・・・」

九尾「その・・・どうしたんだ?」

自分の刀をじっと見つめる美春に気づき、九尾は声をかける。

美春「あっいえ・・・その刀・・・普通の刀じゃありませんよね?」

九尾「分かるか?これは実は妖刀なんだ」

穂乃果「妖刀って・・・あの不思議な力があったり・・・持っただけで不幸になるっていうあの?」

九尾「ああ」

穂乃果「ええ!?それ持っていて大丈夫なんですか!?」

穂乃果はとても心配した様子で九尾にそう質問した。

九尾「はは、安心しろ。為次(ためつぐ)はそんな刀じゃない」

美春「為次・・・それがその刀の名前なんですね」

穂乃果「なにかすごい力があったりするんですか?」

穂乃果は興味あり、と言った様子でそう質問した。

九尾「火が出るぞ」

穂乃果「ええ!?火が出るんですか!?いったいどんな風に・・・」

九尾「それはまた機会があったら見せてやろう」

美春「リオンが聞いたら喜びそうですね」

九尾「そういえばあいつはいないのか?それにいつも一緒にいる真鈴も」

美春「まあ・・・少し色々ありまして・・・」

九尾はなにかあったのを察したのかそれ以上は追及しなかった・・・

エレン「九狐ちゃんだったよね?エレンだよ!よろしくね!」

エレンは自分と同じぐらいか、少し高いくらいの九狐に話しかける。

九狐「はっはい!よろしくお願いします・・・エレンさん」

エレン「も~かしこまらなくてもエレンちゃんでいいよ」

九狐「はっはい!エレンさ・・・ちゃん」

フレア「それにしてもほんとに良かったよ。九狐ちゃんが無事で」

九狐「うっうん…私もフレアちゃんが無事でよかった・・・お姉さんたちは・・・」

アリシア「私達も無事よ」

アリシアとロザリアが姿を現す。

九狐「良かった・・・無事だったんですね…あれ?ロザリアさん・・・手が・・・」

九狐はロザリアの手が包帯で巻かれているのに気付く。

ロザリア「ああこれですか?ちょっと色々あって・・・でも大丈夫ですよ」

九狐「でも・・・とっても痛そう・・・ちょっと待ってって・・・」

九狐はそういうとカバンの中から二枚のお札をとりだした。

それをロザリアの両腕に貼ると、なにやら念仏のようなものを唱え始めた。

少しするとお札からあたたかな光があふれ、ロザリアは傷の痛みがひいていくのを感じる。

ロザリア「これは・・・」

九狐「妖術です・・・痛みを少し和らげるだけですが・・・」

ロザリア「いえ、ほとんど痛くなくなりました!ありがとうございます」

九狐「そっそんなお礼を言われるようなことじゃ・・・」

フレア「ううん!すごいよ九狐ちゃん!」

エレン「私の超能力だってそんなことできないよ!」

九狐「そっそうかな?えへへ///」

九狐は褒められて嬉しそうに笑った。

ロザリア「妖術・・・いったいこれはどういうものなのですか?」

九狐「妖術は・・・えっと・・・私たちの体にある妖力と言われる・・・いわば気に近い性質を持ったエネルギーを使用する術のことです。気と似ていて・・・使う妖術によってこの妖力を様々な特性に変化させて使っているんです」

ロザリア「魔法と似ているような感じもしますが、また違ったものなんですね」

九狐「はい・・・あっ!」

九狐は突然何かを思い出したかのように声を上げた。

九狐「そういえば・・・フレアちゃんたちがいるなら・・・遥先輩はいますか?」

アリシア「っ!」

フレア「あっ・・・えっと・・・」

九狐「遥先輩ってたしか・・・フレアちゃんたちと同じ寮でしたよね?」

ロザリア「・・・」

気まずい空気があたりを流れる。

九狐「えっと・・・?」

フレア達が答えづらそうにしているのを見て九狐は困惑する。そして・・・

アリシア「遥は・・・死んだわ」

アリシアがそう答えた。

九狐「え?」

アリシア「怪物に殺された・・・ううん・・・私が・・・見殺しにしたの」

ロザリア「アリシア・・・」

アリシア「私のせいよ・・・私のせいで遥は死んだ・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」

九狐「あっ!えっと・・・その・・・!しっしかたないことだと思います。あんな怪物が現れて・・・自分の身を守るのでみんな精一杯なんですから・・・だっだから!そんなに自分を責めないでください!」

アリシア「・・・」

九狐「えっえっと!・・・遥先輩のことは残念でしたけど・・・!私はアリシアさん達が無事でよかったです!」

アリシア「・・・慰めならいらないわ」

九狐「うう・・・」

アリシア「ごめんなさい・・・少し・・・一人にして」

そう言ってアリシアはどこかに行ってしまった。

九狐「わっ私・・・もしかして気に触れるようなことしちゃいましたか?」

フレア「ううん・・・その・・・あんまり気にしないで・・・ただお姉さまはあの時の事・・・ずっとひきずってって」

九狐「そうなんですね…しっ心配です・・・」

フレア「お姉さま・・・」

・・・

陽縁「ふふ、それじゃあこれからよろしくお願いしますね、会長さん」

レオ「ああ、よろしく。陽縁さん」

陽縁「陽縁さん?」

陽縁が圧をかける。

レオ「あ・・・えっと・・・陽縁・・・姉?」

陽縁「はい!よく言えました」

陽縁は満足そうに笑った。

陽縁「霊華さんも、これからよろしくお願いしますね」

霊華「うっうん…よろしく・・・」

田中「これはとんでもないのが仲間になったな・・・これは間違いなく・・・ゲームで言うお姉さんキャラだ!」

佐藤「なんだよそれ・・・」

光「あんたいっつもゲームで例えるわよね」

田中「それ以外に適切なたとえが思いつかん。それほどまでのお姉さん力だ!」

光「なによお姉さん力って・・・」

光は呆れたようにそう言った。

霊華「そういえば、あんたとあいつら(九尾達)はどういう関係なの?」

レオ「ん?二人の関係を知らないのか?」

陽縁「そういえば霊華さんとはあまり面識がありませんでしたよね。ふふ///私と九尾は恋人同士ですよ」

霊華「そうだったの!?」

陽縁「はい、お付き合いを始めたのはつい最近ですが・・・ふふ。今でも彼との出会いを思い出します。彼と出会ったのは・・・」

光「はいストップ!それ以上話すと間違いなく長くなるからそれはまた今度ね」

光が長くなるのを察したのか強引に話を中断させる。

陽縁「そうですか・・・残念です。この話はまたの機会にしましょう」

霊華「えっええ・・・」(ちょっと気になったのに・・・)

霊華はそう思いながらも口には出さなかった。

田中「しかし本当に恐ろしいな…だが・・・本当に恐ろしいのはそれじゃない・・・本当に恐ろしいのは・・・」

そんなことを話してる中、田中はまだぶつぶつと独り言を言っていた。

陽縁「とにかく!お姉さん、皆さんのお役に立てるように頑張りますね!」

レオ「ああ・・・」

陽縁「?」

ぶつぶつと独り言を言っていた田中とレオが同じ一点を見つめる。

田中「最も恐ろしいのはやはり・・・」

陽縁「えっと・・・お姉さんの顔になにかついてますか?」

田中「・・・あの豊満な胸だ!」

陽縁「ふえ?」

陽縁の胸は高校生とは思えないほど大きく推定でもGカップ近くはあった。抜群にスタイルがいいロザリアですらD・・・あってEカップが限度だ・・・だが彼女は間違いなくそれ以上ある。よく胸をメロンと例える者もいるがまさに陽縁の胸はその例えがぴったりだった。それほどまでに陽縁の胸は・・・

田中「でかすぎんだろ…」

レオ「ああ、確かに」

そう二人がつぶやいた瞬間・・・

バリッ!

と言う音とともに二人を電撃が襲った。

田中・レオ「あ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁぁぁぁぁぁ!!!」

二人は倒れた。

霊華「ばか男子どもが!」

霊華は怒り心頭と言った様子でそう吐き捨てた。

佐藤「田中ぁぁぁ!!!会長ぉぉぉ!!!」

光「あのバカだけじゃなくレオまで・・・あんたら何やってんのよ・・・」

光が軽蔑に近い視線を二人に向ける。

レオ「すっすまない・・・つい・・・」

田中「だが・・・これが・・・漢の・・・性なんだ・・・ガクッ」

霊華「なら一生床で寝転がってなさい!ふん!」

霊華は怒ってそこから立ち去ってしまった。

佐藤「田中!しっかりしろ!田中ぁぁぁ!どうしてこんなことに!」

田中「いや・・・しんでねえよ・・・」

佐藤「(・д・)チッ」

田中「今舌打ちしなかった!?」

陽縁「あっあはは・・・」

こうしてドタバタもありながらとりあえず三人は仲間になった。

レオ「そういえば九尾」

九尾「どうしたんだレ・・・なんでお前頭がそんな・・・」

レオの頭は爆発しアフロのようになっていた。

レオ「そんなことは今どうでもいい」

九尾(どうでもいいのか・・・?)

レオ「それよりも実は・・・」

二人は何かを話し合う。

九尾「!?それは本当なのか!?」

九尾が驚いたような声を上げる。

レオ「ああ」

九尾「・・・分かった、ならきっといつか俺たちの力も必要になるときがくるだろ…少し待っててくれ」

九尾はそう言って九狐と陽縁のもとに向かう。

そして三人は何かを話し合う・・・

話し終えたあと二人は何かを考え込む様子だったが、少し経って了承したようだ。そして・・・

九尾「すまないみんな聞いてくれ!」

九尾が皆に呼びかける。

九尾「実は今から大事な話がある。聞いてくれ」

光「大事な話?」

美春「いったい何なのでしょうか?」

九尾「今から話すのは俺たち二人のことについてだ」

九尾は九狐と自分の二人のことを指しながらそう言った。

光「自分たちの事?・・・まさかあんたら・・・自分たちの正体も白澤だとかいう訳じゃないでしょうね?あのポンコツみたいに」

九尾「白澤?いったい何のことだ?」

レオ「気にするな。話を戻してくれ」

九尾「あっああ・・・実は俺たちは人間じゃないんだ」

九狐「・・・」

グレイ「人間じゃない?いったいどういう・・・」

九尾「今から俺たちの本当の姿を見せよう・・・」

九尾はそう言って目をつぶったのち、何かを唱えた。そして・・・

皆「!?」

その瞬間!九尾と九狐の頭からは狐のような尖った耳、尾てい骨のあたりからはこれもまた狐の尾にそっくりな尾が九本現れた。

九尾「これが俺たちの本当の姿だ。俺たちは人間ではなく・・・狐(きつね)族なんだ」

光「狐族!?・・・ってなにそれ?」

美春「彼の時も似たような反応してませんでしたっけ?光?」

光「しょうがないでしょ、あいつ(霊仙)と同じで聞いたことないんだから。っていうかこういう時こそあいつの出番なのになんでいないのよ!どこにいるの!?」

今集まっているメンバーの中に霊仙は見当たらなかった。

紅羽「あいつは・・・まだ部屋でぐっすり寝てる」

光「ほんとにポンコツね!」

穂乃果「まあまあ、一応けが人ですから・・・」

美春「ゴホン・・・それで、狐族っていったい何なんですか?」

美春が話を戻した。

九尾「狐族とは獣人の一族だ。特徴的なのはやはりこの耳と尾だな。耳は人間の何倍もよく聞こえるし、尾を動かすのは手足のように自由自在だ」

九尾が自分の耳と尾を指しながらそう説明した。

九尾「だがそれだけじゃないぞ。狐族はどの一族よりも妖術をうまく使いこなせる。それこそ妖術は狐族発祥と言われるほどだ、そして力も人間の何倍も強い。それが狐族だ」

光「へ~そうなのね…狐族ってみんなあんたらみたいに尾がたくさんあるの?」

光が九つもある尾を見ながらそう質問した。

九尾「いや、そこまで多くない。狐族の尾の本数はその身に宿す妖力の量によって決まるんだ。通常は一本・・・それから妖力が多くなるにつれ二本三本・・・そして最大が…九本だ」

エレン「九本・・・ってことは二人の妖力は最大・・・つまりすっごい強いってこと!?」

九尾「はは、妖力の量だけで強さは測れないが・・・まあそう言っても過言ではないな」

九尾は少し誇らしげにした。

エレン「すごい!・・・のかな?あんまりよく分からないけど…」

九尾「まあそれなりには戦えると思ってくれ」

フレア「じゃあ九狐ちゃんもすごく強かったんだね!知らなかった~」

九狐「そっそんな・・・私は全然強くもないし・・・それにお兄ちゃんみたいに上手く妖術が使える訳でもないし…戦いなんて・・・」

九狐は自信なさげにそう答える。

九尾「九狐は戦いが苦手なんだ、戦闘は専門外だと思ってくれ・・・妖力の量だけで言えば俺よりも上ではあるんだがな・・・」

九狐「うう・・・」

フレア「落ち込まないで!ほらこういうでしょ・・・て・・・てき・・・」

ロザリア「適材適所?」

フレア「そう!適材適所!九狐ちゃんは痛いのをなくしたりできるんだから!」

九狐「うっうん…ありがとう」

穂乃果「あの・・・九つの尾を持つ狐族はどれぐらい生まれるんですか?ちょっと気になって・・・」

九尾「俺たちのような狐族か?そうだな・・・大体数百年に一度ってところだな」

穂乃果「数百年に一度!?やっぱり尾の数が最大って言うのもあってなかなか生まれないんですね…」

九尾「ああ、そして生まれてくる九つの尾を持った狐族は特別な痣を持って生まれてくるんだ」

穂乃果「痣?」

九尾が右肩を見せる。

そこには狐の模様のような痣がついていた。

九尾「この痣は九つの尾を持つ狐族にしか発現しない痣であり・・・次期族長の証だ」

グレイ「次期族長?」

九尾「ああ、俺たち狐族は古くからこの痣を持つ九つの尾の人物が族長になるという風習があるんだ」

穂乃果「じゃあ九尾さんか九狐さんが次の族長さんになるってことですか!?凄いですね!」

九尾「そうだな・・・俺たち以外の狐族が生き残っていればな・・・」

九尾がそう意味深な発言をする。

穂乃果「え?」

美春「それは・・・どういう意味ですか?」

九尾「・・・狐族は・・・俺たち二人を除いて、絶滅した」

穂乃果「絶滅・・・どうして・・・」

九尾「・・・殺された・・・夜叉と呼ばれる人間の一族に・・・一人残らず」

美春「夜叉!?あの一族が・・・」

光「知ってるの?」

美春「聞いたことがあります。確かかつて存在していた特別な力を使い妖魔を狩る一族だったはずです」

光「妖魔を狩る一族?でも狐族は妖魔なんかじゃなくて獣人じゃ・・・」

美春「普通の人間からすれば、狐の姿をした人間なんて妖魔みたいなものです・・・あっ!すみません、悪気があったわけじゃ・・・」

九尾「いや・・・気にしなくていい・・・普通の人間からすれば、妖怪も妖魔もそう変わりはないのだろう」

光(そもそも妖魔って存在したの?)

光はそう思ったが口には出さないことにした。

美春「でも・・・確か夜叉の一族は数百年前に絶滅したはずじゃ・・・私はそう聞きましたが・・・」

九尾「いや・・・奴らは絶滅してなんかいない・・・そうでなければあの時・・・俺の一族は・・・家族は・・・俺の目の前で・・・殺されることなんてなかった!」

九尾は怒りに震えた声でそう言った。

九尾の目にはかつての光景がよみがえる。

燃え盛る集落、地面に倒れている同胞たちの亡骸、妹を庇うように抱きしめている自分・・・そして・・・目の前に立つ4人の人物。

九尾「あの時・・・もしあの人が来なかったら・・・俺たちも死んでいただろうな」

九尾は最後にそうつぶやいた。

九狐を見るとその時の恐怖を思い出したのか体がぷるぷると震えていた。

それに気づいた陽縁は直ぐに九狐を抱きしめた。

美春「あの人・・・?」

九尾「すまない・・・感情的になってしまった。話を戻そう何か他に聞きたいことはあるか?」

佐藤「えっと・・・どうやって人間の姿になってたの?会長みたいに力を使う時だけその姿になるのかい?」

九尾「いや、俺はレオ達と違って純血の狐族だ。だから普段は妖術を使って人間の姿に化けているんだ」

光「まさに化け狐ね」

皆「・・・」

光に冷ややかな視線が突き刺さる。

光「じょ冗談よ・・・」

九尾「まあだから、こっちが俺たちの本当の姿だ。人間の姿はあくまでも仮の姿だということを覚えておいてくれ」

皆がうなずいた。

九尾「それで他にはあるか?」

グレイ「そういえば会長はこのことを知ってたの?」

レオ「ああ、俺は知っていた、それと彼女(陽縁)も、後は・・・フレアも知ってたはずだ」

フレア「知ってたよ~」

美春「ロザリアは知らなかったんですか?」

ロザリア「はい、私は初耳でした・・・多分アリシアや修斗も知らないと思います」

レオ「だろうな。これは俺達だけの秘密だからな。この三人以外は話したことがない」

九尾「まあこれでここにいる全員の秘密になったがな。・・・それで他に質問は?」

特に皆もう質問は無いようだった。

九尾「それじゃあ最後に、俺たちのこともレオ達と同様に秘密にしてくれ。もしも俺たちが生き残っていると知られれば・・・必ず奴らが殺しに来る。俺たちの身の安全のためにも、このことは知られるわけにはいかないんだ。だがいつかは必ず・・・」

九尾は何か言いかけたが言葉を飲み込んだ。

九尾「ともかくこのことは絶対に秘密にしてくれ。頼んだぞ」

全員がうなずいた。

田中(一体・・・ここを脱出する間にどれだけの秘密を抱えることになるんだ?しかも三つとも全部口を滑らせたら消されかねないし…これじゃ気を付けないと怪物に殺されなくても身内に殺されちまうよ・・・)

佐藤(口を滑らせなければいいだけでは?)

光(白澤の次は狐族…このままいったら次に来るのは狼男か蛇女かしら?)

そんなことを考える者もいながら・・・

九尾「そういえば・・・俺たちが来る前に何を話し合っていたんだ?」

それから少しして、九尾がレオにそう質問した。

レオ「ん?ああそういえば明日のことを話し合っている途中だったな」

九尾「明日?」

レオ「ああ、明日で14日目・・・つまり奴(ゼロ)の言った強力な怪物の出現日だ」

九尾「!そう言えばそうだったな・・・」

陽縁「そういえば先週の怪物はどうなったのでしょうか?特にそれらしい怪物は見かけませんでしたが・・・」

レオ「それなら俺たちが倒した」

陽縁「本当ですか!?すごいですね!強い怪物まで倒してしまわれるなんて!」

レオ「かなり苦戦はしたがな」

九尾「たまたま出くわしたのか?」

レオ「いや、怪物を探し出して戦いを挑んだんだ」

九尾「なに?どうしてそんな危険な真似を・・・」

九尾はレオ達の危険な行動を理解できなかったが・・・

レオ「放っておけば大勢の犠牲が出る、それだけは避けたい。それにいつかは必ず戦うことにはなる・・・それなら準備を整えて戦いを挑んだ方が幾分か気が楽だろ?」

九尾「まあ・・・確かにな」

それを聞いて幾分かは納得した。

レオ「それで明日の怪物と戦うメンツを考えていたんだ。修斗やリオンがまだ戦えない以上はどうするべきかと考えていたが、お前が来てくれてよかった」

九尾「ふっ・・・一緒に怪物と戦って欲しいということだな?それならもちろん・・・」

レオ「いや、悪いんだが寮で留守番をしていてくれ」

九尾が言い終わる前にレオがそう言った。

九尾「!?るっ留守番をか!?」

予想外の言葉に九尾は素っ頓狂な声を上げた。

レオ「ああ、強い怪物と戦う以上はそれなりの人数がいる。だが全員で出払ってしまえばここを守る人間がいなくなってしまうだろ?その間に他の怪物や生徒たちが襲ってきたら終わりだ、それに最悪怪物と入れ違いに・・・と言う場合もある。だがお前だったらそうなったとしてもここに残ったみんなを守ることができるだろ?」

それはレオが九尾を信頼しているゆえの考えだった。

九尾「そこまで期待されるとあれだが・・・まあそうだな」

レオ「だろ?だから俺たちが怪物を倒しに行っている間・・・お前にはここに残ってみんなを守ってほしい」

九尾「・・・分かった、いう通りにしよう。だが、もしもお前たちに何かあった時は俺も行くからな」

レオ「分かった」

レオはうなずく。

レオ「よし、ではそれを考慮してメンバーを決めよう」

光「ふふん!今回こそ私の出番ね!強力な怪物だか何だか知らないけど私にかかれば瞬殺だわ」

美春「いったいどこからその自信は湧いてくるんですか?」

光「ここよ!」

光は自分の胸を叩きながらそう答えた。

グレイ「しっ心配だから僕も行くよ」

レオ「怪我は大丈夫なのか?」

グレイ「うん、普通に動かせるぐらいには治ったからね」

グレイが負傷した方の腕を動かして見せる。

レオ「そうか」

光「でも無茶しないでよね?」

グレイ「分かってるよ」

霊華「私も行く」

いつの間にか戻ってきていた霊華がそう答えた。

レオ「霊華・・・」

霊華「止めても行くから。それに・・・あなた一人には戦わせない。私もあなたと一緒に戦う」

光「ひゅ~熱いわね」

霊華「うっうるさい!///」

美春「私も行きます、前回の戦いでは情けないところを見せてしまいましたからね。今回の戦いで名誉挽回してみせます!」

ロザリア「それなら私も一緒に行きます」

美春「え!?本気ですか!?腕だってまだちゃんと治ってないんですよ!?」

レオ「美春の言う通りだ、ロザリア。お前はまだ・・・」

ロザリア「腕の怪我なら大丈夫です。吸血鬼の再生能力があれば気にすることはありませんから。それに私が寝ている間、皆さんが代わりに頑張ってくれましたから。それのお返しがしたいんです!」

美春「ロザリア・・・なにもそこまでする必要は」

ロザリア「お願いです!絶対・・・足手まといにはなったりしません!」

ロザリアはそう言って真っ直ぐレオの方を見た。

レオ「・・・どうせ、だめだと言ってもついてくるだろ?」

ロザリア「はい」

レオ「分かった・・・だが絶対に無茶だけはしないでくれよ?」

ロザリア「!ありがとうございます!」

九尾「ふっ兄に似て強情だな」

レオ「まったくだ・・・」

フレア「なら私も行くよ!前回は仕方なくお留守番だったけど、今回は絶対について行くから!後お姉さまも行くって言ってた!」

レオ「だめだと言っても聞かないだろ?分かった」

フレア「やったー!えへへ」

九狐(ふっフレアちゃん、怪物と戦うの怖くないのかな?)

九狐はフレアの怪物との戦いを恐れるどころか、自ら戦おうとしている姿にそう思わずにはいられなかった。

紅羽「私も行く」

光「あんたも?」

紅羽「うん、助けてもらったお礼があるし。それに私の能力なら怪物との戦いでも役に立つはずだから・・・たぶん・・・」

レオ「無理はしなくてもいいんだぞ?」

紅羽「ううん、大丈夫。それにいつかはきっと私も戦わなきゃいけない日は来ると思うから・・・覚悟はできてる」

レオ「・・・分かった。これ以上の人数を割くのはここが危険になる。今回はこのメンバーで戦おう。他はここに残ってくれ」

エレン「私はお留守番か…みんな気を付けてね」

全員がうなずく。

レオ「それじゃあこの話は終わりにして各自明日の準備を・・・」

「待った」

レオ「!?」

レオがそう言おうとした時ある人物の声がそれを遮った。

「俺も一緒に行くぜ」

その人物はさらにそう言った・・・その人物とは・・・

レオ「リオン・・・どうして・・・」

部屋にいるはずのリオンだった。

時は少しさかのぼり、九尾達が自分たちのことを話しているころ・・・

リオンはまだ部屋にこもっていた。

リオンの脳内ではあの時の光景が繰り返されていた。

自分を庇って死んだ翔太、そして翔太と同様に自分を庇い負傷した修斗二人の姿。怪物に向かって怒りのままに銃を撃ち続ける自分・・・そんな光景が永遠と繰り返されている。

コンコン・・・

リオンの部屋のドアがノックされる。

真鈴「リオン?入ってもいいか?」

扉の向こうから真鈴の声が聞こえてくる。

リオン「・・・」

リオンは何も答えない。

真鈴「はっ入るよ・・・?」

真鈴がゆっくりとドアを開けて部屋に入る。

真鈴「そっその・・・となり・・・座ってもいいか?」

リオンは何も言わず小さくうなずいた。

真鈴がベッドに座っているリオンの隣に座る。

真鈴「えっと・・・大丈夫か?」

リオン「・・・大丈夫なんかじゃねえ・・・」

リオンは無機質にそう答えた。

真鈴「そっそうだよな…」

しばしの沈黙が訪れる。

真鈴「・・・その・・・レオ達の奴、明日の怪物のこと話し合ってるみたいで・・・どうする?」

リオン「・・・どうするっ・・・て?」

真鈴「えっと・・・お前は一緒にいくのか?」

リオン「・・・俺が行ったところで誰かがまた俺のことを庇って死ぬだけだ・・・翔太みたいに・・・それならずっとここにいた方がましだ・・・」

真鈴「リオン・・・」

リオン「俺さえいなければ翔太は死ぬことなんてなかった・・・俺さえいなければ・・・俺はいつも自分がヒーローになれるって信じてた・・・みんなを守るヒーローだって・・・でも・・・誰も守れやしねえ・・・友(ダチ)の一人も守れやしねえんだ・・・俺がいたって・・・何の役にも立たねえ・・・」

真鈴「そっそんなことは・・・」

リオン「守れねえんだよ!」

真鈴「ッ!」

リオンは突然声を荒げ、驚いた真鈴はビクッと体が震える。

リオン「俺は・・・ヒーローなんかじゃねえんだ・・・!ヒーローになんて・・・なれもしねえんだ!俺は・・・ただの役立たずなんだよ!」

真鈴「・・・」

リオン「もう・・・ほっといてくれ・・・どうせ俺は・・・」

「情けない姿ですね」

突然ドアの方から声が聞こえる。

二人がドアの方を向くとそこには・・・

修斗「あなたはずっとそうして部屋に引き篭もっているつもりなのですか?」

リオン「修斗・・・」

修斗が立っていた。

リオン「分かってんだろ…俺がいたって…また誰かが俺のことを庇って死んじまうだけだ…それなら俺なんて・・・いない方がマシだ・・・」

リオンはそう言って力無く項垂れた。

修斗「はぁ…全く」

修斗は一度呆れたといったようにため息をついたが、直ぐに真剣な顔に戻った。そして…

修斗「ヒーローは立ち止まらない」

リオン「!」

修斗「ヒーローは例え何があっても進み続ける…これは夢幻戦隊ゲンソウジャーの第26話で、レッドの親友が彼を怪物の攻撃から庇い亡くなってしまった際に、自責の念に駆られるレッドに対してブルーが言ったセリフです・・・あなたもこんなところで立ち止まっている場合なのですか?」

そう言い放った。

リオン「さっきから言ってんだろ…俺は…ヒーローなんかじゃねえんだよ・・・」

修斗「リオンさん…ヒーローとはなんですか?」

リオン「?」

修斗「あなたが言うヒーローとは、どのような人物を指す言葉なんですか?」

リオン「そりゃあ…レッドみたいに強くて…悪い怪人達を倒して…みんなを守る…正義の味方だ」

修斗「なるほど…でしたら貴方とレッドには、違いはほとんどありませんね」

リオン「は?そんなわけ…」

リオンが言い切る前に修斗が口を開く。

修斗「まず、強さが肉体的なものか精神的なものかどちらを指すかはしりませんが、どちらにせよ貴方とレッドはそう変わらないと思います」

修斗はそのまま話を続ける。

修斗「次に怪人と戦うですが…まあ怪物と戦っているので実質同じようなものでしょう。そして正義の味方と言うのも…正義の解釈は人それぞれですが、警察を目指している貴方は少なからず正義の味方とも言えるでしょう」

リオン「でも俺は…みんなを守るなんて…現に翔太は…」

修斗「ではレッドは守ることができたのですか?」

リオン「!」

修斗「先ほどもいったように、レッドも貴方と同じように庇われ、大切なものを守ることはできませんでした、もし貴方の言うみんなを守るというのが、誰も死なせないと言う意味ならば、レッドはヒーローではなくなりますね」

リオン「違う!レッドはヒーローだ!あれ?でもそれじゃあ…」

リオンはヒーローと言うものがなんなのかが分からなくなっていた。ヒーローとは、悪しきを挫き、みんなを守る正義の味方だ。しかし自分もレッドも大切なものを守ることはできなかった。でも…それでも…レッドはみんなのヒーローだった。ではヒーローとは一体なんなのだろうか?

リオンはそう考えた。

修斗「…例えヒーローであっても全てを守ることはできません。時には自分のせいで大切なものを守れず失ってしまうことだってあります」

リオン「じゃあヒーローて…」

修斗「これは・・・あくまでも私の考えですが、ヒーローとは怪人を倒す正義の味方でも、絶対的な力を持つものでもなく。…誰かをもしくは大切な何かを守るために戦い・・・自分の信念を貫き・・・そしてなによりも…」

修斗は自分の胸に手を置き…

修斗「何度挫けそうになったとしても立ち上がり続ける、そんな心を持ったものこそが、ヒーローなんだと思います」

リオン「何度挫けそうになったとしても…立ち上がり続ける…」

修斗「ええ…悲しむなとは言いません。むしろ大切なご友人を亡くしたとあれば、悲しむのは人として至極当然のことです。しかし、それは今ではないはずです。それは・・・全てが終わった後でもきっと間に合うはずです。全てが終わったら・・・後は貴方がしたいようにしてください。贖罪をするのも、悲しんで部屋に引き篭もるのも自由です…ですが今は・・・」

スッ…

リオン「!」

修斗が手を差し出す。

修斗「立って、戦ってください。私達がこのふざけたゲームに勝って、生き残るためには…ヒーローの…貴方の力が必要なんです!」

リオン「修斗・・・」

そして修斗はリオンの目を真っすぐと見ながらそういった。

リオン「・・・へっ…そうだな…ずっとこうしてるわけにはいかねえよな。ヒーローなら・・・立ち上がらねえと!」

リオンは笑ってそういった後、差し出された修斗の手を受け取り立ち上がった。

リオン「ありがとな、修斗。おかげで目が覚めたぜ」

修斗「リオンさん・・・」

リオン「それに・・・翔太にずっとこんな情けない姿を見せる訳にはいかねえしな」

修斗「ふっ・・・そうですね」

真鈴「リオン・・・!」

リオン「真鈴も、悪かったな。ずっと情けない姿見せて、心配させちまって」

真鈴「ううん、気にしてなんていないんだぜ!」

真鈴は笑って見せた。

リオン「へへ・・・ありがとな。よし!決めた!明日の怪物!俺も戦うぜ!」

修斗「そういえば明日でちょうど一週間でしたね」

リオン「ああ、今度こそ、誰も死なせたり怪我させたりなんかしねえ!ヒーローとして!俺が全部守って見せる!」

修斗「その意気です、やっと普段のあなたに戻りましたね」

リオン「おかげさまでな!それじゃあ早速レオのところに行ってくる!俺も行くって伝えねえとな!」

修斗「そうですね」

リオンはそのまま部屋を出て行こうとしたが何かを思い出したかのように一度止まって修斗の方を振り向いた。

リオン「そういえば・・・お前もゲンソウジャー見てたんだな!」

修斗「ふっ・・・たまたま見ただけです」

リオン「そっか・・・へへ!」

リオンはそれだけ聞くと笑って、今度こそレオ達のところへ走っていった。

修斗「・・・行ってしまいましたね」

真鈴「そうだな・・・」

修斗「真鈴さんはどうしますか?」

真鈴「私か?まっレオの指示に従うって感じだぜ・・・今のあいつならまあ・・・私がいなくても大丈夫なんだぜ・・・ちょっと心配だけど・・・」

修斗「そうですか。では私もそろそろ戻ります。医務室から勝手に抜け出したことが穂乃果さんにばれたら大変なことになりますから」

真鈴「はは!確かに!」

修斗「それでは失礼します」

修斗はそう言って部屋を出て行った。

アリシア「あなたって意外と世話焼きなのね」

部屋の外で待っていたアリシアは修斗にそう言った。

修斗「必要だと感じたので行ったまでです」

アリシア「そう?まっ私にとってはどっちでもいいけどね。それよりも終わったなら早く医務室に戻るわよ。穂乃果にばれたらどうなるか…はぁ…それにしても・・・」

アリシア(自力ではほとんど動けないのにこんなことするなんて・・・)

アリシアは思い出す。あの後、部屋ではなく医務室に向かった際(修斗といる方が落ち着くため)、医務室から何とか這い出ようとしている修斗を見つけ、ここまで運んできたのだ。

アリシア「ほら、肩を貸して。自力じゃほとんど歩けないでしょ?」

修斗「すみません、お手数おかけします」

アリシアが肩を貸す。

アリシア「全く・・・人の心配だけじゃなくて、自分の心配もしてよね・・・」

修斗「?何かおっしゃいましたか?」

アリシア「なっなんでもない!///」

アリシアはそうして修斗を医務室へと連れて行った・・・

そして時間は現在に戻る。

リオン「目が覚めたんだ、あのまま部屋に閉じこもってるだけじゃだめだってな。俺も戦わねえと」

レオ「だが・・・大丈夫なのか?」

リオン「ああ!あんな情けない姿のままじゃ、翔太に顔向けできねえからな!それに・・・」

リオンが拳を突き出す。

リオン「ヒーローが必要だろ?」

レオ「ふっ・・・全く・・・そうだな。力を貸してくれ、ヒーロー」

レオがリオンの拳に自分の拳をコツンとぶつけた。

リオン「へへ」

光「どうやらいつもの調子に戻ったみたいね?」

リオン「おう!ばっちりだ」

ロザリア「お元気になったみたいでよかったです」

光「全くよ!散々心配かけといて」

リオン「わりぃわりぃ」

レオ「まあともかく・・・これで今度こそ明日のメンバーは決まりだな。それじゃあ今日はこれまでにして各自明日の準備をするように。解散!」

リオン「おう!」

リオン(今度こそ絶対に誰も死なせたりなんてしねえ!)

リオンはそう強く決意した。

・・・

それから時間は経ち、日はすっかり落ちて夜になったころ。

レオと霊華が廊下を歩いている時、ある人物を見かけ声をかけた。

レオ「薫?もう出歩いて大丈夫なのか?」

薫「ん?ああ、九尾君のおかげでね、今は出歩いても大丈夫だよ。それにしても彼の妖術?と言うものはすごいね。すっかり痛みがひいたよ」

レオ「そうか。それなら良かった。それで・・・今は何をしてるんだ?」

薫「出歩くついでに何か手伝えることがないか探してたんだ、何もせずにじっとしてるっていうのは性に合わなくてね。それに・・・」

薫は一瞬言うか迷った後こう続けた。

薫「今は正直医務室に戻りたくはないんだ」

霊華「なにかあったの?」

薫「いやまあ色々と・・・あはは」

そのころ一方医務室では・・・

アリシア「修斗!いったいどうしてこんなことに・・・修斗おおおぉぉぉ!」

修斗が白目をむいてベッドに倒れていた。

アリシア「あなたたち一体何したのよ!?」

九尾「いや・・・すまん実は・・・」

時間はほんの少し遡る。

九尾「ふむ・・・確かになかなか酷い怪我だな」

穂乃果「はい・・・なかなかよくならなくて・・・それどころか少し悪化してるような・・・」

修斗「気のせいです」

修斗が即座に否定した。

九尾「・・・妖術を使ってもいいが…いや、こっちを使おう」

九尾はそう言っておもむろにカバンから小瓶をとりだした。

修斗「それは?」

九尾「これは俺の自家製の傷薬だ。塗れば怪我の治りもよくなるし痛みも直ぐに引く」

修斗「本当ですか?」

九尾「まあ物は試しというだろう?早速塗ってみよう」

そう言って九尾は小瓶から指で黄色い薬剤をとりだす。

そしてそれを修斗に塗ろうとする。

九尾「あっそうだ一つ言い忘れてた」

修斗「なんですか?」

九尾「実はこの薬かなりしみるんだ・・・覚悟してくれ」

修斗「え?それはどういう・・・」

・・・

そして現在に至る。

九尾「まさかあまりの痛みに気絶するとは思わなかった・・・」

アリシア「いったいそれは何でできてるのよ!?」

九尾「いろんな薬草を混ぜ合わせて作ったんだが・・・いかんせん傷にしみてな・・・」

アリシア「普通は気絶なんてしないわよ!?」

アリシアのヒステリックな声が響いた。

九尾「だが効き目は確かなんだ」

穂乃果「確かに、ロザリアさんも痛みがすっかり引いたって言ってましたもんね…塗った直後はすごいぐらい顔が引きつってはいましたけど…」

アリシア「お姉さまにも使ったの・・・」

九尾「ああ、本当なら薫にも妖術だけじゃなくてこっちも使ってやろうと思ったんだが・・・ちょうど戻って来たときに入れ違いになってしまってな・・・まあ戻ってきたら塗るとしよう」

アリシア「まだ犠牲者を増やすつもりなの!?」

そのころ、その会話をドア越しに聞いてた薫は・・・

薫(よし!今は戻らないでおこう!)

そう決心してその場から静かに離れた・・・

・・・

場面はレオ達に戻る

薫「そういえば会長、湊から何かあったかい?」

レオ「何かとは?」

薫「えっと・・・謝られたり・・・とか?」

レオ「いや・・・特には」

薫「そうか・・・湊の奴、全く・・・」

薫はあきれたようにそうつぶやいた。

霊華「あいつが素直に謝るやつだとは思えないわ」

薫「うーん…彼は悪い人間じゃないんだけど…ちょっとひねくれてて」

霊華「ちょっとどころじゃないでしょ」

薫「でも本当に悪気があったわけじゃないんだ。あの時も会長たちのことを思って言ったことだろうし…」

霊華「どうだか・・・正直それが本当ならひねくれすぎだと思うのだけど」

薫「彼があんなにひねくれてしまってるのは理由があるんだ」

レオ「確か・・・家庭環境があまりよくないんだってな」

薫「うん…彼の両親は政治家で、その親も政治家と代々政治家の家庭なんだ」

薫が語り始める。

薫「だから、湊も政治家にならなきゃだめだって、子供の時からかなり厳しい教育を受けてきたんだ。暴力を受けるのも当たり前だったらしい・・・だけど政治家になんてなりたくないと思っていた湊は段々と親に反発するようになって・・・それに比例して素行も悪くなっていったんだ。最初は親と喧嘩するぐらいだったんだけど…次第に同じような素行の悪い生徒と付き合うようになったり、毎日喧嘩に明け暮れたりして・・・どんどんとひねくれていってしまったんだ」

二人は黙って薫の話を聞いている。

薫「でもさすがにそんなことになっていく湊をただ見ているだけ・・・と言うのは友人としてできなくてね。何度か話し合って素行の悪い生徒と付き合うのはやめさせたんだ、ただやっぱり両親のせいでひねくれた性格は治らなくてね…今もずっとあんな感じなんだ…でも僕は知っているんだ。湊は本当は優しい人間なんだって、君たちは知っているかい?湊が不良から生徒を守ったって言う話」

霊華「いや・・・聞いたことない」

薫「一年位前、僕たちの学園の生徒が他校の不良に目をつけられてしまったんだ。その子は脅されて彼らにお金を払うように言われて、親にも先生にもそのことが相談できず、お金をその不良たちに払っていったんだ。だけど要求はどんどんとエスカレートしていって、お金も尽きてしまったんだ。彼がその不良たちにお金が無くなってもう払えないことを言うと、不良たちはその子をリンチにしようとしたんだけど…」

霊華「その時に湊が現れて、生徒を助けた?」

薫「そう」

霊華「・・・話ができすぎてないかしら?」

薫「でも実際にあったことだよ、その話はその生徒自身に聞いたんだ。湊に直接お礼をしたかったみたいなんだけど…彼は別に助けようと思ったわけじゃないって言ってお礼を受け取らなかったらしい。彼曰く、ただ目の前に気に食わないやつがいたからボコボコにした・・・てことらしいけど…でも僕は彼の友人から聞いたんだ。湊はその生徒が他校の不良から脅されていることを知って直ぐにその不良たちのもとに向かった・・・て。それでたまたまその生徒がリンチにされそうになった時に現れたらしい」

レオ「俺もその話は聞いたな。あの時は流石に驚いた・・・湊がそんなことをするなんてな」

薫「だろ?でも実際にあったことなんだ。それどころか聞いてみたら他にも彼に不良に絡まれているところを助けてもらったとか、困ってる時に助けてくれたとか・・・彼に助けられたっていう話がいくつもあったんだ・・・本人に聞いてもそんなの記憶にないって言っていたけど・・・でも彼に助けられた子たちが言ってたんだから、多分本当のことだと思う」

霊華「まあ・・・嘘をつく理由もないものね」

薫「うん、だから彼は本当に悪い人間じゃないんだ。彼は本当は優しい人間で・・・ただ家庭環境のせいでひねくれてしまっているだけなんだ。だから・・・彼を許してやってほしい・・・とは言わないけど。でも彼のことを理解してあげてほしいんだ。彼が本当は優しい人間だって。お願いだ!」

薫はそう言って頭を下げた。

霊華「・・・」

レオ「わざわざ頭を下げなくてもいい。分かった、そのことは考慮しよう」

霊華「そうね…それに家庭環境の話は可哀そうだし…」

薫「本当かい?ありがとう!もしかしたら彼はまた、失礼なことを言ったりするかもしれないけど・・・本心ではきっとそんなこと思っていないはずだから・・・できる限り、そのことを理解(わかっ)てやってほしい」

レオ・霊華「分かった」「ええ」

そのころ、その会話を廊下の陰で聞いていた湊は・・・

湊「チッ・・・余計なこと言いやがって・・・」

そう小さくつぶやいてその場を離れて行った・・・

そうしてこの日は終わりを告げた・・・

14日目

朝皆がエントランスに集まっていた。そして・・・

ゼロ「生き残っている生存者諸君おはよう」

ゼロから放送が入る。

ゼロ「今日で14日目だ、どうやら7日目の怪物は誰かに倒されたらしいな。なかなかやるじゃないか。だが今回の怪物はそうはいかんぞ、今回のものは前回よりもかなり凶悪だ・・・そうだ、どうせなら今回は最も生き残りが多い寮に送ろう。ふむ・・・どうやらレオドール・スカーレットが率いる寮が最も生存者が多い様だな、ではその近くに送るとしよう。では生存者諸君せいぜい死なない様に努力するんだな。はっはっはっ!」

ゼロの高笑いが響き放送は終了した。

光「相変わらず腹が立つわね」

九尾「同感だ」

田中「なあ・・・あいつ俺たちの寮の近くに怪物を送るって言ってたけど・・・」

レオ「むしろ好都合だ、探す手間が省ける。よし!皆!行くぞ!」

皆「おう!」

修斗「兄上様、姉上様、お嬢様、妹様。どうか・・・お気を付けて」

レオ「ああ」

アリシア「心配しなくても大丈夫よ、私達4人がいれば楽勝なんだから」

フレア「ボッコボコにしてやるんだから!」

ロザリア「あんまり油断しちゃだめですよ」

フレア「は~い」

湊「はっ!せいぜい死なねえようにな、死んでから後悔しても遅えからな!」

アリシア「ふん!」

アリシアは湊の言葉にそっぽを向いたが…

レオ「ああ、そうだな。心得ておくよ」

レオは笑ってそう答えた。

湊「あ?チッ…なんだよ、恨み言の一つぐらい言えよ」

湊は思った回答が返ってこなかったからか、不貞腐れたようにそう呟いた。

真鈴「リオン!」

リオン「ん?どうしたんだ」

真鈴がリオンを呼び止める。

真鈴「これ」

真鈴はリオンに何かを手渡した。

リオン「これは・・・拳銃?」

それは真鈴が愛用している拳銃だった。

真鈴「私は今回ついて行けないから、これをお守りだと思って持って行ってほしいんだぜ」

リオン「!ありがとな!それじゃ、いってくるぜ!」

真鈴「うん、気を付けて、絶対・・・帰ってくるんだぜ」

リオン「おう!」

リオンはそう言って寮から出て行った。

真鈴「・・・」

修斗「大丈夫ですよ」

いつの間にか近くに来ていた修斗が声をかけてくる。

真鈴「!修斗・・・」

修斗「リオンさんは帰ってきますよ。彼はヒーローですから」

真鈴「!ああそうだな!」

そう言って二人は戦いに赴くリオンの背中を見送った・・・

・・・

光「で?肝心の怪物はどこにいるのかしら?」

グレイ「近くにそれらしい怪物は見当たらないね…」

アリシア「気を付けて、私達の時は空から降ってきたから・・・」

しかし全員が空を見上げても特に何も見当たらなかった。

リオン「まだ出てきてねえのかな?」

レオ「分からない・・・とにかく近くを・・・」

捜そう、そうレオが言おうとしたその時!

グオオオオォォォッッッ!!!

突如森の中からこの世の者とは思えないような咆哮がとどろく。

美春「!?今のは!?」

レオ「森の中から聞こえてきた!皆!行くぞ!」

レオ達は咆哮の主を探すため森へと入っていく。

森の奥からは先ほどの咆哮が再び聞こえてくる。

レオ「あっちだ」

紅羽「一体・・・何がいるの?」

レオ「分からない、細心の注意を払いながら進むぞ」

レオ達が進んでいく間も何度も咆哮は響く、距離が近づくにつれ咆哮は耳をつんざくような大きさになっていく・・・

だがそれと同時に・・・

「うわあああぁぁぁ!!!」

レオ達「!?」

人の悲鳴のようなものが聞こえてきた。

レオ「ッ!」

レオはその悲鳴が聞こえてきた方向へ走り出す!

光「レオ!待って!もう!追いかけるわよ!」

光達がその後を追う。

レオが走っているともう一度咆哮が響く・・・その咆哮は今までで一番大きく聞こえる。

レオ(近い!)

レオが更に進むと人影が見える。

レオ(あそこか!)

「なっなんだよ!?なんなんだよこの化け物は!?」

よく見るとひとりの男子生徒が何かを見ておびえている

レオ「おい!そこのお前!」

「ひっ人!?たった助・・・」

目の前にいた生徒が助けを求めようとしたその瞬間!

シュル!

突如としてその生徒の体に何かが巻き付いた!

「うわああああぁぁぁッッッ!!!」

レオ「!?」

生徒の体は宙に持ち上げられ、彼は絶叫を上げる。

光「はぁ…はぁ…やっと追いついたいったい何が・・・!?」

その時光達がレオに追いついた・・・そして彼女たちは見た。

黄土色の触手のようなものに絡めとられた生徒、そして・・・

全長20メートルはあるだろうか・・・周りの木々たちと同等かそれ以上の図体を持ち、まるで泥を大量に積み上げたかのような、ドロドロとした皮膚のようなものを纏っている。

腕や足のようなものは存在せず、その代わり体中から触手のようなものが生えている。そして体のてっぺん・・・人で言う頭部にあたる部分には巨大な口と、いくつもの目がついていた。

レオ「なんだ・・・あの・・・怪物は!?」

レオ達はその異形の巨大な怪物に驚愕する。

「ひぃ!助けて!!!死にたくない!!!いやだ!!!いやだああああぁぁぁ!!!」

生徒の絶叫が響く。

怪物はそれを頭部らしき場所へと運んでいく。

そして巨大な口を開く、口に中は巨大な鋭い牙で満たされていた。

そして・・・

「あああああぁぁぁ!!!たったすけ・・・!」

グシャッ!

怪物はその生徒の上半身を食いちぎった・・・

辺りに血しぶきが舞う・・・

レオ達「・・・」

レオ達はその光景に言葉を失う。

怪物は生徒の下半身は捕食せず、まるで見せつけるかのように、レオ達の目の前へと投げ捨てた。

レオ達の目の前に先ほどまで生きていた生徒の下半身が落ちてくる。

千切れた部分からはおびただしい量の血が流れ、内臓の一部があらわになっている・・・

レオ「・・・っ!全員!構えろ!!!」

皆「!?」

レオの声で全員が我に返る。

レオ「あの怪物を倒す!いくぞ!!!」

皆「おう!!!」

全員が武器を構える。

それを見て怪物も体からいくつもの触手を伸ばしてくる。

レオ「!」

美春「遅い!」

レオと美春が向かってきた触手を切り落とす!

ロザリア「行きましょう!」

グレイ「ああ!」

紅羽「うん!」

ロザリアは弓を射るかのようなポーズをとる。そうするとどこからか炎が集まり、巨大な炎の矢が作り出される!

グレイはいくつもの氷柱を生成する!紅羽も両腕に火球を生み出した。

ロザリア「フレイム・アロー!」

グレイ「アイシクル・レイン!」

紅羽「これでも・・・くらえ!」

ロザリアの炎の矢、グレイの氷柱の雨、紅羽の火球が怪物へと放たれる!

三人の攻撃は怪物の腹部あたりへと直撃した・・・しかし・・・

ロザリア「!?」

三人の攻撃は怪物の泥のような皮膚に風穴を開けたが、その傷は瞬く間に塞がり、怪物はまるで何もなかったかのように平然としている。

グレイ「効いてない!?」

紅羽「だったら、もう一度!」

霊華「私も協力する!はああぁぁぁ!雷撃槍!」

今度は4人の攻撃が怪物の頭部へと放たれた!

この攻撃も怪物に直撃し、怪物のいくつもの眼球を破壊した!

しかし・・・

ロザリア「!そんな・・・」

怪物の破壊された眼球は先ほどと同様に一瞬で再生した。

グレイ「なんて再生能力なんだ・・・それに」

紅羽「まるで攻撃が効いてない!?」

光「くそっ!」

リオン「これでもくらえ!」

光とリオンの二人が怪物へと発砲するが・・・

銃弾は怪物の皮膚に飲み込まれ、特にダメージを与えられた様子はなかった。

光「銃がほとんど効いてない・・・」

ロザリア達の攻撃が止んだのを見て怪物は、今度はこちらの番とばかりにいくつもの触手を伸ばした!

ロザリア「!」

何本かの触手がロザリアへと向かっていくが・・・

美春「夢咲流・・・つむじ風!」

美春が間に割って入り、まるで風のような剣技で全ての触手を切り落とした。

ロザリア「美春さん!」

美春「ふう・・・今度は・・・私がロザリアを守る番です!」

美春はロザリアの前に立ってそう宣言した。

アリシア「ふん!こんなもの・・・行くわよ!フレア!」

フレア「うん!」

アリシアとフレアが向かってくる触手を迎撃する。

アリシア「!」

アリシアは見事な槍さばきで触手を切り払う!

フレア「こんなもの!」

フレアは触手にパンチやキックを放つ。

フレアの怪力を持ってした攻撃に、怪物の触手は攻撃を受けた部分からはじけ飛ぶ!

レオ「触手はそこまで脅威じゃないな・・・だが・・・奴を倒すにはもっと高火力な攻撃じゃないと無理か?」

レオも向かってきた触手を切り落とし、そうつぶやいた。

レオ「やはり・・・霊華!」

霊華「なに?」

レオ「雷撃砲だ!奴はあの再生力だ!奴を倒すにはそれしかない!」

霊華「私もそう思っていたところよ!」

霊華が電気をチャージし始めようとする。

レオ(よし・・・幸いなことに今のところ奴の攻撃はあの触手だけだ。それにあの図体だ・・・

あれじゃあ攻撃を回避するのは不可能だろう。霊華のチャージが終わるまで時間を稼ぐ)

レオがそう思ったその時。

光「!?ちょっと!あれを見て!」

光が何かに気づき怪物を指さす!

皆「!?」

レオ「なんだ・・・あれは!?」

怪物の体から突如、バスケットボールほどの大きさの球体が浮き出てくる!

その球体は怪物の体から離れ、地面へと落ちる。

地面に落ちた球体には、目がなく、口だけがあり、なんと背中からは奇妙な翼が生えてきた。

怪物の体から生み出された小型の怪物は飛び上がり、そして・・・

キィイイィィィィ!

この世の者とは思えない鳴き声を上げた!

レオ「自分の体から新しい怪物を!?」

美春「!来ます!」

怪物達はこちらへと突進してくる!

レオ「ッ!」

レオは何とか自分に向かってくる怪物を回避する!

美春「そこ!」

美春は小型の怪物に向かって刀を振り下ろすが・・・

美春「!?」

美春の刀は空を切った。

怪物は美春の攻撃を空中で、その体からは考えられない速度で回避したのだ。

美春「早い!?」

光「ああ!もう!」

光は小型の怪物に向かって何度も発砲するが、縦横無尽に飛び回る怪物にはなかなか当たらない・・・

更に・・・

レオ「!なっ!?」

怪物は体から先ほどの倍以上の数の触手を生やす。

レオ「なんて数だ!?」

怪物の触手がレオ達に襲い掛かる。

霊華「!?」

霊華に向かっていくつもの触手が伸びる。

レオ「霊華!」

レオが何とか間に割って入り、日本の刀で触手を切り払う。しかし・・・

霊華「レオ!後ろ!」

レオ「!」

レオの背後を狙って今度は小型の怪物が突進してくる!

霊華「させない!」

霊華が電撃を放ち小型の怪物を退かせる。

レオ「すまない、助かった」

霊華「ううん、私こそ。それよりも・・・」

レオ「そうだな」

レオと霊華は無数の触手と小型の怪物を見る。

レオ「この数を相手にしながら雷撃砲をチャージするのは無理か…」

他の者達も何とか触手と小型の怪物の攻撃を回避するが、とてもではないが反撃をする隙すら無かった。

レオ「くそっ!せめてこの触手と怪物が有限だったら・・・」

しかし何本もの触手を切り落とし、何とか小型の怪物を倒しても、際限なくそれらは怪物の体から生み出されていく・・・

グレイ「はぁはぁ・・・ッ!この触手と怪物は無限に生み出せるのか!?」

リオン「どうすりゃいいんだ!?なんか弱点とかねえのかよ!?」

レオ「せめて少しでも時間を稼げれば・・・!」

しかし怪物達の攻撃は次第に苛烈なものになっていく!

アリシア「しつこい!」

アリシアは向かってきた触手や小型の怪物を追い払うが・・・

アリシア「!しまっ!」

アリシアの死角から小型の怪物がアリシアへと突進してくる。

アリシアは気づいたものの、小型の怪物を回避することはできず・・・

怪物はアリシアの右足に噛みついた!

アリシア「ぐっ!あ“あ”あ“!」

アリシアの華奢な足に容赦なく、小型の怪物の牙が突き刺さる!

アリシア「うう!この・・・離れなさい!」

アリシアは何とか怪物を引きはがそうとする。

グレイ「アリシア君!」

グレイがアリシアの方へと向かって走り出すが。

光「グレイ!危ない!」

グレイ「!?」

焦ったからかグレイは横から自分に向かって振り払われる触手に気づかなかった。

ドゴォ!

グレイ「がっ!」

触手はグレイの横腹に直撃し、グレイは吹き飛ばされ樹に叩きつけられる。

グレイ「かはっ」

グレイは地面に倒れ動かなくなる。

光「グレイ!くそ!どきなさいよ!」

光はグレイのもとに向かうために、まるで道を塞ぐように現れた小型の怪物に銃を乱射する。

しかし小型の怪物に弾は命中せず・・・

光「きゃっ!」

小型の怪物が横から突進し、光が持っていた銃を弾き飛ばす。

光「!銃が・・・!?」

武器を失った光に向かって小型の怪物が突進してくる。

光は回避することなどできず、咄嗟に自分の身を守るように手を前に出す。

だが・・・

リオン「うおおおおぉぉぉ!!!」

バゴォッ!

間一髪リオンが光の元へと飛び出し、怪物を殴り飛ばす。

殴られた怪物は、あまりの威力にはじけ飛んだ。

リオン「大丈夫か!?」

光「リオン!ありがとう!」

リオン「礼ならいらねえよ!それよりも、これ!」

リオンが何かを光に手渡す。それはリオンが持っていた真鈴の拳銃だった。

光「これって・・・」

リオン「銃、落としただろ?そいつを代わりに使え!」

光「いいの?」

リオン「おう!それに・・・俺にはこいつがある!」

リオンがナイフを見せる。

光「分かった!ありがとう!」

しかしそうこうしている間も怪物の猛攻は止むことを知らない・・・

紅羽「!?うっ!」

怪物に向かって炎を放ち続けていた紅羽だったが、小型の怪物の攻撃をよけきれず、一匹の小型の怪物が紅羽の腹部に突進した。

紅羽「かは・・・」

紅羽は吹き飛ばされ気を失ってしまう。

ロザリア「紅羽さん!!!きゃっ!」

紅羽が倒れたことに意識をとられたロザリアは向かってくる小型の怪物に気づかず、怪物はロザリアの右腕をかすめる。

ロザリア「うっ・・・」

ロザリアが右腕を抑える、抑えた部分からは鮮血があふれる。

フレア「ロザリアお姉さま!この!・・・うわ!」

フレアが向かってきた小型の怪物を蹴り飛ばすが、足元に伸びた触手がフレアの足に絡みつく。

フレア「はなして!・・・!」

フレアが足に絡みついた触手を振りほどこうとした時、怪物は触手を使ってフレアを持ち上げ、食べるのではなく・・・霊華に向かって投げつけた!

霊華「えっ!?きゃあ!」

フレア「うわっ!」

霊華は突然のことに反応できず、フレアと激突する。

二人は地面に倒れる。

霊華「っぅ…!」

フレア「うう・・・」

レオ「霊華!フレア!くっ・・・!?ロザリア!避けろ!」

ロザリア「!?」

ロザリアが顔を上げると、小型の怪物が更に追撃を行おうとしていた。

反応が遅れたロザリアは回避することができない・・・しかし・・・

美春「させない!」

間一髪美春が助けに入り危機を逃れる。

美春「ロザリア!下がって!私が時間を稼ぎます!」

ロザリア「でも・・・!」

美春「いいから早く!」

ロザリア「ッ!」

ロザリアは美春の言葉に従いその場を離れる。

怪物達は弱らせた獲物を逃がさんと言ったばかりに襲い掛かろうとするが・・・

美春「はああぁぁぁ!」

美春に邪魔されてロザリアを追うことができない・・・

だがそれゆえか、次はターゲットを美春に変更した。

触手と小型の怪物による猛攻が美春を襲う!

美春「くっ!」

美春はその優れた身体能力と、剣術で何とか攻撃をいなしていくか徐々に追い込まれていく。

美春「はぁ…!はぁ…!」

美春(数が多すぎる!こうなったら一気に・・・!)

美春「夢咲流・・・」

美春は剣技を使って怪物達を一網打尽にしようとするが・・・

ロザリア「美春さん!危ない!」

美春「!」

美春は気づかなかった・・・いや気づけなかったのだ。無数に向かってくる小型の怪物や触手そして剣気を練ることに気をとられ、足元へと高速で薙ぎ払われるもう一つの触手に・・・

美春「しまっ…」

高速で向かってきた触手は・・・美春の左脚に直撃した。

ミシミシミシ・・・!

美春「あっッ“・・・」

美春が地面に倒れる。

美春「ッ“!ゔっ…あ”あ“あ”ぁぁ…!」

美春は左脚を抑え、あまりの激痛に動けなくなってしまう。

ロザリア「美春さんッッッ!!!」

光「美春!リオン!私のことはいい!美春と紅羽を!」

リオン「おう!」

リオンが駆け出す!

怪物は触手を美春へと伸ばす。

美春「ッ“ゔゔ・・・」

美春は足を抑えたまま動くことができない。

怪物の触手が美春へと迫った瞬間!

リオン「うおおおおぉぉぉ!!!」

間一髪リオンが滑り込み、美春を救い出す。

美春「リオ・・・ン・・・」

リオン「美春!大丈夫か!?」

美春「足・・・が・・・」

美春の左脚を見ると、青紫色に大きく腫れまるで象の足のようになっていた。

リオン「っ!ちょっとだけ我慢してくれよ!」

リオンは美春を脇に抱えたまま、紅羽の元へ走る!

キイイイイィィィ!

一匹の小型の怪物がリオンを止めようと正面から突進してくる!

リオン「!」

ヒュッ!

リオンは向かってくる怪物にナイフを投げつける!

ザクッ!

ナイフは怪物に直撃し突き刺さる!

リオン「じゃますんな!」

リオンは怪物に刺さったナイフを空いてる手でつかみ、そのまま滑らすようにナイフを動かし、怪物の体を切り裂いた!

切り裂かれた怪物は絶命し、地面に落ちて泥のように溶けていった。

しかし小型の怪物達はそれではひるまず、それどころかそれを火種にしたかのように、次々とリオンに襲い掛かる!

しかしリオンは人間離れした超人的な動きでそれを全て躱していく!そして・・・

リオン「紅羽!」

リオンは紅羽のもとにたどり着き、紅羽を抱え上げる!

リオン「これで・・・ハッ!」

リオンが顔を上げると、一本の触手がこちらに向かってきていた!

リオン「やべっ・・・!」

ズバ!

リオンに向かってきた触手が何者かに切り落とされる。

リオン「ッ・・・!レオ!」

どうやらレオが駆けつけ触手を切り落としたようだ・・・

リオン「わりぃ!助かった!」

レオ「気にするな!それよりも二人を安全な場所へ!」

リオン「ああ!」

リオンは二人を離れた安全な場所へ運んでいく。

リオン「これで二人は大丈夫だが・・・」

レオ(しかし・・・このままじゃ間違いなく全滅する!逃げるか?いやだめだ!こんな怪物を放置したら・・・どれだけの被害が出るか分からない!吸血鬼の力を使うか?だが…)

今日はあいにくの快晴だ、そこら中から木々の合間をぬって日光が差し込んでいる。

こんな状態の時にこの力を使ったとしても長くは持たないだろう…だが…

レオ(使わないよりはマシだ!)

レオは吸血鬼の力を使おうと、ポケットからタブレットケースをとりだすが…

ビュン!

レオ「!」

その少しの間の迷いの隙をつかれ、レオに向かって触手が薙ぎ払われる。

レオは咄嗟に刀でガードするが…

レオ「ぐうっ!」

そのまま刀ごと弾き飛ばされてしまう

レオ「くそっ…!?」

レオは立ち上がり、先ほどまでタブレットケースを握っていた右手を見る…

そこにタブレットケースはなかった。

レオ「ない!?まさか…!」

レオが先ほどまで立っていたところを見ると、地面には先程まで持っていたタブレットケースが落ちていた。

レオ(さっき攻撃を喰らった時に落としたのか!?)

レオ「くっ!」

レオは咄嗟にタブレットケースを取りに走り出すが…

ビュン!

ドゴ!

触手が容赦なく振るわれ、刀を落としていたレオには防ぐ手段などなく、腹部に直撃する。

レオ「カハッ!」

レオは再び弾き飛ばされる!

レオ「まだだ…」

レオはそれでも立ち上がるが…

キイイイィィィ!

今度は小型の怪物が襲いかかる!

小型の怪物は何度もレオに突進する。

レオは何度も小型の怪物な攻撃をくらい、地面に倒れるが、それでもなんとか立ち上がる。

レオ「はぁ…はぁ……!?」

しかし弱ったレオにも容赦なく怪物は触手を伸ばし、レオの両腕に巻き付いた!

レオ「しまった!くそっ!はなせっ!なっ!?」

霊華「うう・・・!…!?レオ!」

フレアと激突して伸びていた霊華が目を覚ますとそこには、触手によって両腕を絡み取られ宙づりになっているレオの姿が目に映る。

霊華「レオ!!!」

レオはなんとか抜け出そうともがくが、触手を振り解くことはできない。そして・・・

ギリギリギリ!

レオ「ぐっ!」

触手はレオの両腕を凄まじい力で締め付けていく。

レオ「ぐっ!あ“あ”!」

レオはだんだんと強く締め付けられていくにつれ、苦し気な声を上げる。

霊華「いや・・・やめて・・・」

リオン「ッ!レオ!くそ!」

二人を安全な場所に運び、戻って来たリオンは何とかレオの元へ向かおうとするが、無数の触手と小型の怪物が立ちふさがる。

リオン「どけよ!どけっつってんだろ!!!」

そして・・・

ミシッミシミシミシ・・・

レオの腕から嫌な音が鳴り始め・・・ついには・・・

バキッバキバキバキ!!!

レオ「ぐあ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁぁぁぁぁ!!!」

まるで骨が砕けるような嫌な音がレオの腕から響き、レオは叫び声をあげ・・・動かなくなった・・・

霊華「レオォォォッッッ!!!」

怪物はまるで勝ち誇ったかのように咆哮をあげ、レオを捕食しようとする!

アリシア「この!」

その頃アリシアはなんとか、足に噛みついた怪物を振りほどいていた。

アリシア「!お兄様!!!」

アリシアの目に捕食されそうになっているレオの姿が目に入る。

アリシア(あのままじゃお兄様が!どうすれば・・・!)

アリシアの目にレオが落としたタブレットケースが目に入る。

アリシア(あれを使えば!でも・・・それじゃあ約束が・・・)

アリシアは一瞬迷う・・・しかし・・・

(また・・・見殺しにするの?)

アリシアの耳に何者かの声が響いた・・・

アリシア(遥?・・・違う・・・この声・・・私?)

その声は遥の声ではなく、なんとそれは自分自身の声だった…

アリシア?(そんなに約束が大事?)

自分自身の声がアリシアに語りかける。

アリシア(約束は大事よ・・・破るわけには・・・)

アリシア?(嫌われるのがそんなに怖い?)

アリシア(・・・怖い)

アリシア?(お兄様が死ぬことよりも?)

アリシア(ッ)

アリシア?(約束は・・・破っても謝れば済む。お兄様は死んだら・・・謝っても帰ってこないわよ?)

アリシア(!)

アリシアは自分自身の声にハッとさせられる)

アリシア(そうよ!約束は破っても謝ればいい。最悪…嫌われるだけで済む…でも!お兄様が死んでしまったら・・・もう帰ってこない!そんなの・・・絶対にダメ!!!)

アリシア「ッ!」

アリシアは痛みをこらえて走り出した!

アリシア「ぐうっ!」

アリシアは何度もよろけて倒れそうになるもそれでも走り続ける。

そんなアリシアに無情にも触手たちが襲い掛かるが・・・

リオン「邪魔すんじゃねええええ!!!」

突然現れたリオンがすべての触手をナイフで切り裂く!

アリシア「リオン!」

リオン「行け!止まるんじゃねえ!」

アリシア「!」

アリシアはうなずき、タブレットケースの元へ走る。

無数の触手や小型の怪物が襲い掛かろうとするが、リオンが全て切り払う!

それでも襲い掛かる触手たちを何とか回避し、アリシアはついにタブレットケースの元へたどり着いた。

アリシア「これがあれば・・・!?」

しかしその時一本の触手がアリシアに襲い掛かるが・・・

リオン「おらぁ!」

その触手もリオンが叩き切る!

リオン「それがお目当てのものか?」

アリシア「ええ!リオン!お願いがあるの!」

リオン「なんだ!?」

アリシア「私をお姉さまとフレアのもとに連れてって!」

リオン「オッケー!じゃあ・・・しっかり掴まってろよ!」

リオンはアリシアを脇腹に抱え走り出す!

無数の触手や小型の怪物が襲い掛かるが・・・リオンはそれをアリシアを抱えたまま次々と回避していく!

アリシア「ちょっちょっと!リオン!もう少し丁寧に扱えないわけ!?落ちちゃうわよ!」

あまりのリオンの激しい動きにアリシアは文句を言うが…

リオン「だから言っただろ?しっかり掴まっとけってな!ほら!まだまだ来るぞ!」

アリシア「ちょっ!きゃあ!」

リオンはアリシアの文句など気にも止めず、更にスピードを上げ、怪物達の猛攻を躱し続ける!

そして…

リオン「着いたぞ!」

フレアとフレアをいつの間にか助け起こそうとしていたロザリアの元へたどり着く。

アリシア「お姉さま!フレア!」

フレア・ロザリア「お姉さま!?」「アリシア!?」

アリシア「二人とも!これを!」

アリシアがタブレットケースを差し出す!

ロザリア「これは!?お兄様の・・・」

フレア「でも・・・お姉さま・・・約束が・・・」

アリシア「お兄様が死んでもいいの!?」

ロザリア・フレア「!?」

アリシア「約束なんて・・・破たって謝ればいい!でも・・・お兄様は死んだら謝っても帰ってこないのよ!」

アリシアの言葉に二人はハッとさせられる。

アリシア「約束を破って・・・お兄様に嫌われたっていい!一生許してもらえなくたって!それでも私は・・・お兄様を助けたい!そのためならこの力だって使って見せる!たとえ私一人だったとしても!」

アリシアがタブレットケースから錠剤をとりだす・・・真っ赤な錠剤を・・・

ロザリア「待って!」

アリシア「なに!?」

ロザリア「私も・・・使います!」

アリシア「お姉さま・・・」

フレア「私も!三人でお兄様を助けよう!」

アリシア「フレア・・・ええ!」

ロザリアとフレアも錠剤をとりだす。そして・・・

三人はそれを飲み込んだ・・・

ドクンッ!

・・・

怪物はまるであざ笑うかのように巨大な口をゆがませる。

そしてその巨大な口を大きく開けた。

霊華「やめて・・・いや!いやあああ!!!」

レオが捕食されそうになったその時!

ズバババ!

突如としてレオをとらえていた触手が切り裂かれる!

そして誰かがレオの体を抱きかかえた。

レオ「・・・誰・・・だ・・・」

レオが目を開けてぼやける視点で相手を見る。

レオ「アリ・・・シア・・・?」

そこにいたのは、巨大な蝙蝠の翼を背中に生やした、赤い紅い目をしたアリシアだった。

アリシア「お兄様、もう大丈夫よ。今度は・・・私が・・・私達が・・・」

アリシアの後ろから、同じような姿に変化したロザリアとフレアが姿を現す。

アリシア「お兄様を守る!」

オオオオオォォォ!!!

怪物は獲物を盗られたからか怒り狂ったように咆哮を上げ触手を伸ばし、それに続くかのように小型の怪物達も突進してくる!

ロザリア「させない!」

フレア「お姉さまに手は出させないんだから!」

ロザリアはいくつもの魔方陣を展開させる!

ロザリア「風の刃よ・・・我が敵を切り裂け!ウィンド・カッター!」

ロザリアが展開した魔方陣から無数の風の刃が出現し、触手達を一瞬にしてバラバラにした!

フレア「遅い!」

フレアは突進してくる怪物達の攻撃をいとも簡単に回避し・・・

パァッン!パァッン!パァッン!

凄まじい速度で怪物達をパンチやキックで粉砕していく!

アリシア「お姉さま!フレア!ここは任せたわ!私はお兄様を安全な場所に運んでくる!」

ロザリア・フレア「ええ!」「任せて!」

アリシアはレオを美春と紅羽が運ばれた場所に連れていく。

そこには光と霊華、リオンも合流していた。よく見ると気を失っていたグレイもそこに運ばれていた。どうやらあの後リオンが運び込んできたようだ。

霊華「レオ!」

霊華がすぐに駆け寄ってくる。

アリシア「あなたたち、お兄様をお願い!」

アリシアがレオを光達に預ける。

光「あんたは?」

アリシア「私はあの怪物を倒す。お兄様をこんな目に合わせた怪物に・・・目にもの見せてやるわ!」

アリシアはそう宣言する。

光「・・・分かった。気を付けて・・・」

アリシア「ええ!それとリオン!」

リオン「なんだ?」

アリシア「みんなを守って頂戴。今それができるのは・・・あなただけよ」

リオン「・・・ふっ、おう!任せとけ!」

アリシアはリオンの姿を見て少しほほ笑んだ後、すぐにロザリア達の元へ飛んで行った。

フレア「お姉さま!お兄様は?」

アリシア「大丈夫、安全な場所に運んだわ。他のみんなもいる」

ロザリア「私たちがいなくて大丈夫でしょうか?」

アリシア「大丈夫よ、だってあそこには・・・ヒーローがいるもの」

アリシアは笑顔でそう答えた。

アリシア「だから私たちは、あの怪物を倒すことに集中しましょう?」

二人はうなずいた。

オオオオオォォォ!!!

怪物は今までで一番巨大な咆哮を上げる。

そして体からは先ほどの二倍以上にもなる触手と小型の怪物達が生み出される。

アリシア「あっちも本気みたいね…来るわよ!」

ロザリア・フレア「!」

無数の触手と小型の怪物達がアリシア達に襲い掛かる・・・

その頃リオン達は・・・

光「なによ・・・あの量・・・まだ・・・あんなに出てくるの?」

霊華「・・・!」

光と霊華はあまりの光景に言葉を失っていた。だが・・・彼だけは違った。

リオン「よし!やるか!」

リオンはそう言って前に歩み出そうとする・・・

霊華「待って!私も・・・!」

霊華がついて行こうとするが・・・

光「無茶よ!あんた電気を使いすぎてもう体力なんて碌に残ってないでしょ!」

光がそう言って霊華を止める。

霊華「でも・・・!」

リオン「大丈夫だ!」

リオンが振り向く。

リオン「俺に任せとけ!なんせ俺は主人公であり、そして・・・」

リオンは自分の胸に親指を当て・・・

リオン「ヒーローだから!」

そう笑顔で言った。

霊華「リオン・・・」

光「・・・リオン!これを」

リオン「?」

光がリオンにあるものを手渡す。それは彼女に渡した真鈴の拳銃だった。

光「やっぱりあんたが持ってた方がいいわ。なんせそれ・・・お守りなんでしょ?」

リオン「!ふ・・・ああ!そうだな!」

リオンは拳銃を受け取る。

リオン「じゃ!行ってくるぜ!」

そう言ってリオンは今度こそ前に歩みを進めていく。

光「・・・頼んだわよ・・・ヒーロー」

リオン「・・・」

リオンの眼前には三人を無視し、弱った獲物を捕らえようと無数の触手と小型の怪物達がうごめいている。

本来であれば絶望的な状況だ・・・しかしリオン不思議と負ける気など何もしなかった。

彼の中にあるのはただ一つ・・・

今度こそ・・・

ヒーローとして・・・

大切なものを守って見せる!

リオン「かかってこい!もう誰も・・・俺の目の前で死なせたりなんてしねえ!!!エンチャントォォォッッッ!!!」

リオンの体から黄金のオーラがあふれ出す!

リオン「来いッッッ!!!」

リオンがそう叫ぶと同時に、怪物達も一斉にリオンに襲い掛かる!

リオン「うおおおぉぉぉ!!!」

リオンも怪物の群れに突っ込んでいく!

リオン「!」

ズバババ!

リオンが目にもとまらぬ速さで右手のナイフを振るい、触手を何本も切り裂く!

その隙に何体かの小型の怪物が、側面へと回り込もうとするが・・・

リオン「!」

パン!パン!パン!

リオンは左手に持った真鈴の拳銃で怪物を的確に撃ち抜いていく。

弾丸が命中した部分には巨大な風穴が空く!

更に一体・・・二体・・・三体・・・

止まることなく怪物を撃ち抜く。

本来、真鈴の拳銃はそこまで大口径のものではない。たとえ命中したとしても小さな風穴を開けるのが関の山だろう・・・

にもかかわらず、不思議なことに今この拳銃はまるで巨大な弾丸でも撃ちだしているかのように、怪物達に巨大な風穴を空けていく!

更にその変化は右手のナイフも例外ではなかった。

刃渡り数十センチ程しかないはずのサバイバルナイフが今は三十センチ以上ある剣のようになっている。

今彼が持っている拳銃とナイフはもはやただの拳銃とナイフではなくなっていた。

拳銃は正義の力で如何なる悪を穿つヒーロー・ガン。ナイフは猛る勇気で闇を切り裂くブレイブリー・ブレード・・・とでも言ったところだろうか。

少なからずリオンにはそう見えていた。

リオン「まだまだぁ!」

リオンはその二つの武器を使い、鬼神のごとき勢いで怪物達を蹴散らしていく!

リオン「うおおおぉぉぉ!!!」

霊華「すっ・・・すごい・・・!」

光「あれ・・・本当に人間の動き?」

遠くから見守っていた二人はその光景に目を奪われた。

シュルッ!

霊華「!あぶない!」

リオン「!?」

しかしあまたの触手が四方八方からリオンに迫り、ついにリオンは捕まってしまう。

リオン「こいつ・・・!」

リオンが振り解くよりも先に、いくつもの触手がリオンに絡みついていく。

そしてリオンの体は触手に完全に拘束されてしまう。

光「リオン!」

触手はレオの時と同様、リオンの体を締め付けていく・・・が。

リオン「ぐぬぬぬ・・・!こんなもん・・・!はあああぁぁぁ!!!だあっ!!!」

ブチブチブチ!

なんとリオンはその拘束を、力づくでむりやり触手を引きちぎり脱出する!

リオン「こんなもんで捕まえられると思うなよ!」

光「はは・・・これじゃあどっちが怪物か分からないわね」

リオン「まだまだいくぜ!!!」

リオンはそれからも次々と怪物をなぎ倒していく!

目の前を覆いつくすほど触手や怪物がいたにも関わらず、光達に近づくことはできない・・・

たとえいかなる手段をとったとしても、怪物達が光達のもとにたどり着くのは不可能であった・・・

ヒーローがいる限り・・・

アリシア「あっちは大丈夫そうね。問題は・・・」

アリシアが巨大な怪物を見る。

アリシア「こいつをどうやって倒すかね…」

アリシア達は襲い掛かってくる触手や小型の怪物達をなぎ倒しながら、何度か巨大な怪物に攻撃を仕掛けたが、大したダメージを与えることはできなかった。

アリシア「どうすればダメージを与えられるのかしら・・・?私達も時間は限られている・・・」

アリシア(この炎天下じゃ持って精々4~5分が限度・・・あとどれだけ持つか…)

アリシアは少しだがまるで体が焼けるような感覚を感じていた。

フレア「うー!せめて弱点とかあればいいのに!」

ロザリア「弱点・・・!もしかしたら弱点を暴けるかもしれません!」

フレアの弱点と言う言葉を聞いてロザリアは何か方法を思いついたようだ。

アリシア「本当!?」

ロザリア「はい!少しだけ時間を稼いでください!一分・・・いや・・・三十秒で何とかします!」

アリシア「分かったわ!行くわよ!フレア!」

フレア「うん!」

アリシアとフレアの二人が空を舞い、近づく怪物を倒していく。

二人にかかれば、触手や小型の怪物など雑魚同然だった。

ロザリア「心理を見通す慧眼の瞳よ・・・その力で・・・全てを見通せ!パーフェクト・アナライシス!」

ロザリアはその間に魔方陣を展開する!

展開された魔方陣にはよく分からない文字列なようなものが次々と浮かび上がっていく。

ロザリア「解析率30%・・・50・・・80・・・100!解析完了!」

ロザリアの魔方陣に巨大な怪物の姿とその中心部付近に心臓のようなものが映し出される!

ロザリア「アリシア!フレア!怪物の弱点が分かりました!」

アリシア「本当!?いったいそれはどこなの!?」

ロザリア「あそこ!怪物の中心部!そこに心臓のようなものがあります!それがこの怪物の弱点です!」

ロザリアが指さす。そこは怪物の胸部辺りにあたる場所で、あの泥のような皮膚で最も分厚く囲まれている場所であった。

アリシア「あそこが・・・」

フレア「でも・・・どうやって攻撃するの?」

今のままでは攻撃は泥のような皮膚に防がれ、弱点だと思われる心臓のようなものには届きはしないだろう。

ロザリア「私の魔法で表面を削ります!弱点が露わになったところで二人のどちらかがそこに攻撃してください!」

アリシア「上手くいくかしら・・・っ!」

体が焼けるような感覚が強くなる・・・二人もどうやら同じようだ、ほんの少しだが表情を歪ませている・・・どうやら時間はもうあまり残っていないようだ。

アリシア「考えてる時間はないわね、その方法で行きましょう!フレア!あなたにトドメは任せるわ!私はそれまでの道を切り開く!」

フレア「私が?でも・・・」

フレアは少し不安そうにする。

アリシア「大丈夫、あなただったらきっとできるわ!自分の力を信じて、フレア!お兄様の仇を一緒に討ちましょう!」

フレア「!うん!分かった!」

フレアは力強く頷いた。

アリシア「よし!それじゃあ行くわよ!」

ロザリア・フレア「はい!」「うん!」

三人が覚悟を決める!

ロザリア「まずは私が表面を魔法で削ります!はああぁぁぁ!!!」

ロザリアが巨大な魔方陣を展開する。

ロザリア「大地をも抉る暴風よ・・・我が敵を蹴散らせ!ウィンド・ブラスト!!!」

魔方陣から巨大な竜巻が怪物へと放たれ、触手や小型の怪物を巻き込みながら弱点があると思われる胸部へと直撃する!

暴風は怪物の皮膚を抉り取られ、巨大な心臓のような何かが現れた!

それは心臓のようにドクンドクンと脈打っている・・・

アリシア「あれが・・・行くわよ!フレア!」

フレア「うん!」

アリシアとフレアが巨大な心臓に向かって飛んでいく!

巨大な怪物は弱点をつぶさせまいと、すべての触手と小型の怪物を使って二人を止めようとする!

アリシア「フレアの邪魔はさせない!はあああぁぁぁ!!!」

アリシアは全身全霊の力を込めて槍を凄まじい速度で振り回す!

アリシアの神業のような槍さばきは人の目で追える速度をとうに超え、ついには音速をも超えた!

音を置き去りにしたアリシアの槍さばきはいくつもの斬撃波を生み出し、近づく触手と小型の怪物を全て切り裂く!

アリシア「フレア!行って!!!」

フレア「!」

フレアはその言葉を聞き、怪物の心臓部へと拳を突き出し全速力で突進していく!

触手と小型の怪物はなんとかフレアを止めようとするが、アリシアに邪魔され近づくことすらできない!

ロザリア・アリシア「いっけええええぇぇぇ!!!フレアッッッ!!!」

フレア「貫けええええぇぇぇッッッ!!!

そして・・・

バシュッン!

ロザリア・アリシア「!」

フレアの拳が・・・

フレア「!」

怪物の心臓を・・・貫いた。

グオオオオオオオォォォ……

貫かれた巨大な心臓のようなものからは青黒い血があふれ出し、怪物は断末魔の叫びをあげ地面へと倒れる・・・

そしてその体はまるで泥のようなに溶けて行った・・・

そして小型の怪物達も主を失ったからか、地面へと落ち、巨大な怪物同様泥のように溶けて行った。

光「勝った・・・あいつら三人が・・・あの怪物を倒した・・・!ッ!やったあああ!!!」

光が歓声を上げる!

霊華「すごい・・・!本当にあの怪物を倒すなんて!」

リオン「へへ!やるじゃねえか!」

フレア「お姉さま~!」

フレアが嬉しそうにロザリアとアリシアの元へぱたぱたと近づいてくる。

フレア「イエーイ!私やったよ!あの怪物を倒したよ!」

フレアが二人にハイタッチしようと手を差し出す。

ロザリア「ええ!よくやりましたね!フレア!」

アリシア「さすがは私たちの妹ね!」

二人はフレアとハイタッチをする。

フレア「えへへ~」

フレアは嬉しそうに笑った。

アリシア「てっ!こんなことしてる場合じゃないわ!すぐにお兄様たちを寮に運ばないと!」

フレア「そうだった!」

アリシア達は光達の元へ向かう。

アリシア「無事だった?あなたたち?」

光「ええ、こいつのおかげでね」

光がリオンを見る。

リオン「ヒーローはみんなを守るのが仕事だからな!」

リオンは誇らしげにそう言った。

アリシア「それなら良かったわ、すぐにみんなを寮に運びましょう」

光・霊華・リオンの三人が頷く。

リオン「よし!それじゃあ早速・・・」

バタン

リオンが突然地面に倒れる。

アリシア「!?リオン!?」

光「どうしたの!?リオン!」

光達が突然倒れたリオンへと駆け寄る。

光「まさかあんた怪我して・・・」

霊華「リオン!」

皆が駆け寄るとリオンは・・・

リオン「つ・・・」

皆「つ?」

リオン「つかれた~」

と気の抜けた声でそう言った。

皆「!?」

リオン「もううごけね~…」

光「疲れたって・・・もう!びっくりさせないでよ!」

リオン「しょうがねえだろ・・・もうヘトヘトなんだ・・・立ち上がることもできねえ・・・」

リオンは力ない声でそう言った。

霊華「まあ・・・私達を守っている間ずっと怪物と戦ってたわけだし・・・」

光「確かに」

リオン「悪いけど俺も運んでくれ~」

フレア「それじゃあ私が運んであげるよ!あの時運んでもらったし!よいしょ!」

フレアは体格のいいリオンを軽々と持ち上げる・・・さすがの怪力だ。

リオン「わりぃ、サンキューな」

アリシア「う~んでも困ったわね…これじゃあみんなを運べないわ」

元々のアリシアの計算ではリオンとフレアに特に重症のレオと美春を運んでもらうつもりだったのだが、リオンが動けなくなったことで計算が狂ってしまった。

霊華「先にフレアに戻ってもらって他のみんなに来てもらう?」

アリシア「それでもいいのだけど・・・ここに残るのはちょっと危険すぎるわね…騒ぎを聞きつけていつ他の怪物達が襲ってくるか分からないし・・・」

霊華「確かに・・・でもどうするの?」

アリシア「う~ん」

ロザリア「あ!それなら私に任せてください!」

光「何かいい方法があるの?」

ロザリア「はい!ちょっと待っててください・・・」

ロザリアが何かの魔法を唱え始める。

小型の魔方陣がいくつか展開されそこから・・・

ニュル・・・

光「え“?」

触手が出現した。

アリシア「しょ・・・触手・・・」

あの怪物と似た・・・いやどちらかと言うとこちらの方が皆が一般的に想像する“触手”と似た・・・と言うかそっくりな触手だ・・・正直かなりグロテスクではある。

ロザリア「この子たちに運んでもらいましょう!」

霊華「・・・一応聞いておくけど・・・襲ってきたりしないわよね?」

ロザリア「大丈夫ですよ、この子たちはいい子なので」

霊華(触手にいい子とかあるの?)

ロザリア「それじゃあみんな、お願いしますね」

ロザリアがそう言うと触手達は怪我をしたみんなを優しく持ち上げた・・・ただ・・・

光「・・・」

触手に持ち上げられているみんなの姿はとても・・・良い絵面とは言えなかった。

紅羽「ん・・・なんか・・・ヌルヌルする・・・」

その時タイミング悪く気絶していた紅羽が目を覚ましてしまった。

光「あ・・・」

紅羽「いったい何が・・・!?」

紅羽が自分の体を見ると、あの怪物のよりも更にグロテスクな触手が自分に絡みついていることに気づいた。

ロザリア「あ!紅羽さんこれは・・・」

紅羽「!?!?!?!?あっああ・・・ブクブクブク・・・」

紅羽は驚きのあまり泡を吹いて再び気絶してしまった

ロザリア「くっ紅羽さあああん!」

アリシア「まあそうよね・・・目が覚めたらこんなグロテスクな触手に絡めとられてたらそりゃ怖くて気絶するわよね・・・」

光「そうね」

光(よかったあああ!あれに運ばれる側じゃなくて本っっ当に良かった!!!)

光は心の中でそう叫んだ。

アリシア「とにかく・・・みんなが目を覚ます前に運びましょ」(次の犠牲者が出る前に・・・)

ロザリア「そっそうですね…」

ロザリア(気絶するほど怖いでしょうか?こんなにかわいいのに・・・)

ロザリアはそう思いながらも口には出さなかった・・・もし口に出してたら間違いなく異常者扱いされていただろう・・・もしくはそういう趣味がある人間だと思われるかのどちらかだ。

その代わりロザリアはつんと触手をつつく。

触手はそれに反応するかのように体をニュルニュルと動かした。

こうして光達は寮へと戻っていった・・・

美春(・・・これはロザリアから私に対するハードな触手プレイなのでしょうか?)

美春は帰るまでの間、痛みに耐えながらもそんなくだらないことを考えていた・・・

・・・

アリシア達は寮に急いで戻り、負傷者を九尾と穂乃果に引き渡した。

彼らは医務室ですぐに治療を開始し、アリシア達はそれが終わるのを医務室の外で待ち続けていた。

フレア「お兄様・・・大丈夫かな?」

アリシア「分からない・・・でも・・・」

アリシアは医学に詳しくないため怪我の容態までは分からなかったが、それでもレオの美春と同様に青黒く変色し腫れあがった両腕を見て、大けがであることは分かった。

アリシア「少なからず折れてはいるとは思う・・・もしかしたらもっとひどい状態かも…」

フレア「・・・」

光「そんなに重く考えなくてもいいんじゃない?あいつはあんた達と同じ吸血鬼、折れていようがどうだろうがすぐに治るでしょ?」

光はそう発言をしたが・・・

アリシア「たとえ治るとしても・・・痛いものは痛いのよ・・・あなたは体の骨が折れる痛みを経験したことある?あれは・・・治るとしても二度と経験したくないわ」

アリシアの言葉を聞いて直ぐに軽率な発言だったと反省した。

光「・・・ごめん」

アリシア「・・・」

霊華「レオ・・・」

それからもしばらく経ち陽がすっかり落ちかけたころ・・・ついに医務室の扉が開いた。

九尾「・・・とりあえず治療は終わったぞ」

四人「!」

アリシア「お兄様は!?お兄様は大丈夫なの!?」

アリシアがすぐに九尾に詰め寄る。

九尾「落ち着け。・・・命に別状はない。ただ・・・」

アリシア「ただ・・・なんなのよ?」

九尾は一呼吸おいて話し始める。

九尾「レオの両腕だが・・・骨が完全に粉砕されてる。ここの設備じゃ完全な治療はできない」

アリシア「そんな・・・」

九尾「それに・・・治療して治ったとしても、あれでは間違いなく後遺症が残る。これから先両腕はほとんど使い物にならないだろうな。・・・普通ならな」

九尾はそう言葉を付け足す。

九尾「あいつは吸血鬼だ。どれだけ再生能力が高いかは知らないが・・・後遺症が残るレベルの火傷が数日で治るほどだ。おそらくあの怪我も治る、後遺症は・・・治ってみてからじゃないと何とも言えないがな。ただ・・・治るまでに時間はかかる。少なくとも数か月は・・・もっと適切な処置をしてやれば早く治るとは思うんだが・・・ここの設備だけではそれも不可能でな」

アリシア「そうなのね…」

九尾「ともかくできる限りの処置は施した。後は時間をかけるしかない」

アリシア「・・・私達がもっと早く決断していれば・・・」

九尾「起きてしまったことを悔やんでも仕方がない。レオはすでに意識を取り戻してる・・・顔を見せてやれ」

アリシア「!」

アリシアはその言葉を聞くとすぐに医務室へと飛び込んでいった。

フレア「あ!待って!お姉さま!」

フレアも急いでアリシアを追いかける。

霊華「私達も・・・!」

霊華達も医務室に入ろうとするが・・・

スッ・・・

九尾が手で道を塞ぐ。

霊華「ちょっとどういう・・・」

九尾は首を横に振り・・・

九尾「今はあいつらだけにしてやれ」

静かにそう言った。

霊華「・・・分かった」

霊華は一瞬医務室の方を見て、九尾の意図を理解し直ぐに引き下がった。

医務室の中ではアリシアとフレアがすでにレオのもとに駆け寄っていた、ロザリアは九尾達の手伝いをしていたためすでに医務室の中にいた。

穂乃果「あ!アリシアさん、フレアさん、来たんですね。それじゃあ私は失礼します」

穂乃果はアリシア達を見ると、空気を読んでその場を離れて行った。

アリシア・フレア「お兄様!」

レオ「アリシアとフレアか・・・無事だったんだな。怪我はないか?」

アリシア「ええ、大丈夫よ」

フレア「私も」

レオ「良かった・・・穂乃果から聞いたぞ。怪物を倒したんだってな?よく頑張ったな」

レオは笑顔でアリシア達にそう言った。

レオ「本当なら頭をなでてやりたいんだが・・・すまない・・・腕が動かなくてな・・・それはできそうにない」

アリシア「そんなこと別にいい!そんなこと・・・いいから・・・」

アリシアが泣きそうになりながら言葉を紡ぐ。

アリシア「ごめんなさい・・・お兄様・・・」

レオ「?どうして・・・謝るんだ?」

アリシア「だって!・・・私達・・・約束・・・破って・・・」

レオ「!・・・はは、なんだ・・・そんなことか」

レオは笑ってそう答えた。

アリシア「え?」

レオ「別にそんなこと気にしなくていい。むしろ・・・謝らなければいけないのは俺の方だ。すまなかった」

ロザリア「どうして謝るんですか?お兄様は何も悪くなんてありません!」

レオ「いや・・・悪いさ・・・俺のわがままのせいで、お前たちを苦しめてしまった。俺は、お前たちに・・・吸血鬼と言うことを忘れて、人として生きて欲しかった。他のみんなと変わらない人として・・・そうすればきっと、お前たちが幸せになると思った。だが・・・それは俺のエゴに過ぎなかった。俺の・・・自己満足のためだけに、お前たちは・・・大切な友人を失ってしまった。約束と言う名のエゴで、お前たちを縛り続けていたばかりに・・・」

アリシア「そんな・・・それはお兄様のせいじゃないわ!それにその約束は私たちのことを思って・・・」

レオ「いや・・・俺のせいさ。俺は・・・お前たちのことわかってやれなかった。俺に・・・守りたいものがあるように・・・お前たちにも守りたいものがあった、この力さえあれば・・・きっと守ることができた・・・できたはずなんだ。湊に言われてやっとそれに気づいた」

レオはあの日、湊に言われたことを思い出しながらそう語り続ける。

レオ「本当は・・・最初から気づいていたんだ。だが俺は・・・実際にそう言われるまで、その事実から目をそらし続けていた。その事実に直面してしまったら俺は・・・お前たちも失ってしまうような気がしたんだ。その事実によってお前たちが、俺の傍から離れて行ってしまうかもしれないということが・・・ただ怖かった」

アリシア達は何も言わず・・・いや・・・何も言うことができず、レオの独白を聞き続ける。

レオ「あの時・・・約束を守らなくていいと言ってしまえればどれだけ楽だったか・・・だが俺にはそれができなかった。そうしてしまったらそれは・・・その事実を認めることと・・・同じになってしまうからだ・・・だから俺は、口では認めながらも・・・頭ではそれを否定し約束を守らせ続けた・・・今日にいたるまで・・・ずっと・・・」

アリシア「やめて・・・」

レオ「本当に・・・情けない話だ。その事実を認めたくないがために・・・約束を守らせ続けた。その結果・・・ずっとお前たちを苦しめていたのだから。俺がこの事実を直ぐに認めていれば・・・救えた命があったかもしれない・・・」

アリシア「違う・・・」

レオ「誰かが怪我をせずに済んだかもしれない・・・」

アリシア「違う・・・!」

レオ「お前たちが・・・ずっと苦しまずに済んだかもしれない。全て・・・俺のせいだ。本当に・・・」

アリシア「違う!!!お兄様のせいなんかじゃない!!!」

アリシアのヒステリックな叫びが響く。

レオ「!?」

アリシア「お兄様は悪くない!私たちが何も言わなかったのも!約束を破らなかったのも全部!私達がお兄様に嫌われたくなかったからなの!約束を破ってしまったら・・・!それを否定するようなことを言ったら・・・!お兄様に嫌われるかもしれない、それが怖かったの!お兄様に嫌われたくなかった・・・!ずっと愛してほしかった・・・!いつまでも・・・傍にいてほしかった!!!だから約束を守り続けたの!約束を守ってさえいればずっと・・・嫌われずに済むと思ったから・・・傍にいてくれると思ったから・・・だから!もうこれ以上何も言わないで!もうこれ以上・・・謝ったりしないで・・・お願いだから・・・」

アリシアはそう言い終えると、とうとう泣きじゃくり始めてしまった。

レオ「アリシア・・・」

フレア「私も・・・もうお兄様のそんな姿・・・見たくないよ・・・」

フレアもレオの腹部に顔を埋め、アリシアと同じように泣き始めてしまった。

レオ「フレア・・・」

ロザリア「私も・・・二人と同じです・・・お兄様のせいなんて思っていません・・・お兄様がわるいとも思っていません・・・全部・・・私たちの弱さが招いたことなんです・・・だからもう・・・謝らないでください・・・もうこれ以上・・・自分を責めないで・・・」

とうとうロザリアまでもが泣き出してしまった。

レオ「ロザリア・・・」

レオ(ああ・・・俺は・・・本当にバカだった。この子たちにこんなことを言わせてしまうまで俺は・・・本当の気持ちに気づいてやることができなかったのか・・・ずっと・・・苦しめていてしまっていた・・・本当に俺は・・・)

レオ「兄失格だな・・・」

アリシア「お兄様ぁ…ううっ・・・」

レオ「すまない・・・俺は本当に・・・大馬鹿野郎だ・・・だけどお前たちは・・・こんな俺でも・・・許してくれるというのか?」

フレア「うん…!許す・・・許すからぁ…!だからもう・・・謝らないで・・・!」

アリシアとロザリアもうなずく。

レオ「ああ・・・お前たち・・・本当に・・・ありがとう・・・!」

レオの目からも涙がこぼれる。

九尾「獅子の目にも涙・・・と言ったところか」

遠目で見ていた九尾はそうつぶやいた。

穂乃果「うう・・・ぐすっ・・・ずびぃい・・・」

九尾「なんでお前まで泣いているんだ・・・」

穂乃果「だっで・・・感動するじゃないでずが・・・それに九尾ざんだって・・・めがうるんでるじゃないでずが・・・」

九尾「・・・気のせいだ・・・」

そうしてレオ達四人は落ち着くまでのしばらくの間・・・友に涙を流し続けた・・・

それから四人は落ち着いた後、レオがこう切り出した。

レオ「それにしてもお前たち・・・本当に成長したな」

ロザリア「そっそんな!私たちは全然・・・」

レオ「いや、成長したさ。俺には分かる・・・俺が何も言わなくてもお前たちは何が正しいか自分たちで判断し行動したんだ。十分成長している・・・もう俺が面倒を見なくても大丈夫だろう・・・」

フレア「やだ!ずっとお兄様と一緒にいる!」

フレアがレオに抱き着く。

アリシア「ちょっとフレア!もう・・・」

レオ「はは・・・まだ兄離れは難しいか…」

レオ(だけどきっと・・・この子たちは立派に一人で生きていけるようになる。俺に縛られることもなく、俺がいなくてもきっと・・・)

レオは心の中でそう確信していた、そして今は三人の成長を喜んだ。

そして同時に四人は、今回の出来事でより兄妹の絆が強まったと実感した。

・・・

美春「っ!・・・うう“・・・」

レオ達が兄妹の絆を深め合う少し前、美春は穂乃果の触診を受けていた。

美春はほんの少し左脚を触られただけでも、痛みに顔を歪ませた。

穂乃果「う~ん・・・やっぱり骨が折れてますね…」

美春「そっそんな・・・治るにはどれぐらいかかりますか?」

穂乃果「少なくとも二か月以上は・・・」

美春「それじゃあ私の脚が治るまでに、このゲームが終わってしまうじゃないですか!それまで何もできないなんて!どうにかならないんですか!?」

穂乃果「そういわれましても・・・」

美春はレオ達と違い、夢咲家であるということ以外は普通の人間だ。それゆえに怪我の治りも普通の人間と変わりなく、骨折となれば治るまでは長い時間が必要だった。

美春「そっそうだ!九尾!あなたの妖術でどうにかならないんですか?」

美春が九尾にすがるような視線を送る。

九尾「怪我の治りを早くすることはできるが、怪我を直接治すことはできない。妖術はあくまでも自然治癒力を上げることができるだけだ。それに・・・そうしたとしても治るには少なくとも一ヶ月かかる」

美春「一ヶ月・・・それでもやってください!」

九尾「それはいいが・・・あくまでも治るまでに一ヶ月だ、そこからすぐに動けるようになるわけじゃない。リハビリなども含めるとそれ以上に時間はかかるぞ」

美春「分かってます・・・それでも・・・お願いします!」

九尾「わかった、とりあえず今は応急処置をしておく。しばらくしたらまた戻ってくる。まだ怪我人はいるからな」

九尾はそう言って応急処置を施した後に行ってしまった。

穂乃果「それじゃあ美春さん、私も行きますね、お大事に。それと絶対安静ですからね!大丈夫だとは思いますが・・・勝手に無理して出歩いたりしちゃ絶対だめですからね!・・・絶対ですよ!」

穂乃果もそう再三くぎを刺した後、九尾について行った。

美春は二人がいなくなると同時にうなだれてしまった。

美春(治るまでに少なくとも一ヶ月・・・それまで私は戦うどころか・・・まともに動くことすらできない・・・)

美春は自分の固定された左脚を見る。

美春(せめて私にも、レオ達みたいな再生能力があれば・・・でもそんなものはない・・・治るまでの間・・・私は役立たず・・・結局私は・・・)

美春はネガティブな考えを振り払うように首を横に振るう。

美春(違う!なんとしてでも治して見せる!そしてギリギリになったとしてもまたみんなと戦って見せる!)

美春はそう言って自分を奮い立たせた。

それからしばらくして・・・

「あの・・・」

誰かが美春に話しかけてきた。

最初美春は穂乃果たちが戻って来たかと思ったが、よく考えるとその声は穂乃果の声ではなかった。それは・・・

美春「・・・ロザリア?」

声の主はロザリアだった。

美春「どうしたんですか?」

ロザリア「あ・・・えっと・・・怪我の様子を聞こうと思って・・・」

ロザリアが顔を出す、ロザリアの目は少し腫れているように見えた。

美春「ああ、それなら穂乃果に今骨折って言われました。治るには少なくとも一ヶ月はかかるみたいです」

ロザリア「そうなんですね…」

美春「まいっちゃいますよね。これじゃあ私が動けるようになるよりも先に、このゲームが終わっちゃいますから。あはは・・・」

美春はロザリアを心配させまいと無理に笑って見せる。

しかしロザリアにはその演技はお見通しのようだ。現にロザリアは・・・

ロザリア「・・・ごめんなさい」

と美春に謝罪した。

ロザリア「私を庇ったせいで美春さんは足を怪我して・・・私がもっと早くあの決断を下していれば・・・」

美春「ちょちょちょっと待った!」

ロザリア「ふえ?」

美春が強引に話を遮る。

美春「ロザリア、謝るのは無しです!」

ロザリア「でっでも・・・」

美春「私は言いましたよね?今度は私がロザリアを守るって。私はそれを有言実行したまでです。たとえそれで怪我しようが気にしませんし、ロザリアを守れたなら本望です!」

美春はそう言い切ったが・・・

ロザリア「そっそうかもしれませんが・・・それじゃあ私の気が収まらないんです!庇ってもらった上に怪我までさせてしまったのに、気にするななんてそんなの無理です!」

ロザリアは納得できないようだ。

美春「そっそうは言いましても・・・」

美春(私が好きでやったことですし・・・怪我したのはそもそも私の実力不足・・・)

美春はそう思ったが、言ったところでロザリアは納得しないだろうと思い口にはしなかった。

ロザリア「せめて何かお返しを・・・」

美春「それなら魔法で怪我の治療を・・・」

ロザリア「そうだ!」

美春が言い終わるよりも先に、ロザリアが声を上げる。

ロザリア「美春さん、足が治るまで出歩くこともできなくて不自由ですよね!?」

美春「え!?あっまあ・・・はい」

美春(なっなんだか押しが強いような・・・)

ロザリア「ですよね!それじゃあその間なんですけど・・・」

美春「?」

ロザリア「えっと・・・その・・・私が・・・美春さんの・・・お・・・お世話をします・・・///」

ロザリアは途中で恥ずかしくなっていったのか、言い終わるころには顔が真っ赤になっていた。

美春「おっ…お世話…!?それって…」

ロザリア「いっいや!その!変な意味じゃなくて!お食事とかお着替えとかそういうののことで!///」

まだ美春が何も言ってないにも関わらず、ロザリアは慌てて謎の言い訳をし続ける。

その一方美春は…

美春(ろっロザリアのお世話…)

妄想を全開にしていた。

美春の妄想の中

妄想のロザリア「今日は焼き魚ですよ、はい…あ〜ん♡」

妄想のロザリア「それじゃあ身体を拭きましょうね〜、恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ…女の子同士なんですから♡」

妄想のロザリア「あら?ふふ・・・美春さん、どうやらあなたには“こっちの”お世話も必要みたいですね…そう緊張しないでください・・・優しくしますから♡」

ブーー!

美春は突然鼻血を噴き出して倒れた。

ロザリア「うわああああぁぁぁ!!!美春さん!!!しっかりしてください!!!美春さあああぁぁぁん!!!」

穂乃果「いったいどうしたんですか!?今叫び声が・・・」

ロザリア「穂乃果さあああん!美春さんが!美春さんがあああ!!!」

ロザリアが穂乃果に泣きつく。

穂乃果「えっ!?ええええぇぇぇ!?何!?何があったんですか!?何したらこうなるんですか!?」

ロザリア「わかりませんん!美春さんのお世話をするって言ったら美春さんがあああ!!!」

穂乃果「とりあえずおおお落ち着いて!落ち着いてくださいいい!!!」

ロザリア「うわあああん!」

九尾「はあ…全く・・・」

九尾はその様子を見て呆れて頭を抱えた。

鼻血を噴き出しながら倒れた美春の顔は・・・どこか穏やかだった。

美春(わが人生に・・・一片の悔いなし!)

ロザリア「美春さあああぁぁぁん!!!」

このドタバタはしばらく続いた。

その頃一方エントランスでは…

霊華「だ・か・ら!なんでそうなるのよ!?」

霊華が顔を真っ赤にしながら何かに猛抗議していた。

なぜそんなことになっているかというと…

霊華「なんで私が…レオのお世話をすることになるのよ!?///」

両腕を使うことができないレオのお世話を、なぜか自分がすることになったからだ。

それも光の提案で…

光「だって…あんたが一番適任でしょ?」

霊華「だ・か・ら!それがおかしいって言ってるの!なんで私が適任なのよ!?私じゃなくてロザリアだっていいでしょ!?」

光「ロザリアは美春のお世話で夢中だから無理だと思うわよ?」

霊華「じゃっじゃあ…修…」

光「修斗はまだ怪我が治ってないわよ?」

霊華「うっ…じゃあ…アリシアかフレア…」

光「アリシアは修斗のお世話にお熱よ」

アリシア「ちょっと!?別にそんなんじゃ…!」

アリシアも何か抗議しようとしたが光は無視する。

光「フレアの怪力で繊細な怪我人の世話をできると思う?下手すれば別の場所の骨を粉砕しかねないわ」

フレア「そっそんなことないよ!…多分…」

霊華「…!そうだ!じゃあ九尾!九尾はどう!?あいつはレオの親友なんでしょ!?」

光「九尾は他の怪我人の世話で手一杯よ、ただでさえ怪我人は多いんだから。レオの世話だけとはいかないわ…あっ穂乃果もね」

霊華「…」

光「ほらね?あいつとそれなりに親しくて、任せられそうなのはあんたしかいないのよ?」

九狐「そっその…皆さんで分担すれば…」

エレン「しー!九狐ちゃん、それは言っちゃダメ…!」

九狐「えっ?ええ?」

九狐はなぜかエレンに止められて困惑する。

リオン「えっ?別に一人でやらずに全員で分担すれば…」

真鈴「お前は黙ってるんだぜ!」

リオン「んー!んー!」

危うく不都合なことを言おうとしたリオンも真鈴に無理矢理口止めされる。

陽縁(あ〜なるほど…そう言うことですか…ふふ、これもあの二人のためなんですね)

陽縁はその光景を見て何をしようとしているのかを理解した。

霊華「でっでも…」

光「それともなに?もしかして嫌なの?薄情なやつね…レオが聞いたらきっと悲しむわ」

光はわざと大袈裟に言って見せる。

霊華「そっそう言うわけじゃ…!」

光「じゃっできるわよね?」

霊華「…う〜!分かった!分かったわよ!!!やるわ!!!やればいいんでしょ!!!///ふん!!!」

霊華は今までで見たことないほど顔を真っ赤にしてそう叫んだのち、怒って部屋に戻っていってしまった。

エレン「さっ流石にやりすぎたかな?ちょっと後が怖いかも…」

エレンが少し不安そうにそう言った。

光「いや別に大丈夫でしょ?そもそもあいつらやることやってるし…今更何を恥ずかしがってるんだか…ああ、真鈴、もういいわよ」

真鈴「OK」

真鈴がリオンの口を塞ぐのを止める。

リオン「ぷはー!死ぬかと思った…」

修斗「全く貴方は…余計なこと言わないでください」

リオン「余計なこと?」

修斗「貴方…まだ気づかないですか?」

リオン「なにが?」

修斗「はぁーもういいです」

修斗は呆れてものも言えなくなる。

光「真鈴あんたも大変ね」

リオン「え?真鈴のなにが大変なんだ?」

リオンが不思議に思い光にその言葉の意味を尋ねる。

光「それはね…」

真鈴「あー!あー!なんでもない!なんでもないんだぜ!なあ光!」

真鈴が慌てて光の言葉を遮る。

光「ええそうね、ふふ」

リオン「?」

真鈴(光のやつーー!!!)

アリシア(修斗…貴方も人のことは言えないわよ)

アリシアは密かにそう思った。

光「それじゃもう夜も遅いし…そろそろ寝ましょうか?」

皆が頷き、その日は解散となる。

こうして彼らはまた一週間、生き残ることができた。

しかしこのデスゲームはまだまだ続く、果たして彼らはこの先どんな困難に直面し、どう乗り越えていくのか?果たして生き残ることはできるのか?それは…次回に続く!

紅羽「…何言ってるんだ?霊仙?」

霊仙「今大事なところだから!邪魔しないでくれ!紅羽!」

紅羽「ええ…?」

…次回に続く。

無機質な灰色の空間…

その中ではただ機械の駆動音だけが響いていた。

その空間に佇む一つの人影は、正面にある巨大なスクリーンを見つめていた。

そこには様々な映像が映し出されている…もちろん彼ら(レオ達)の映像も。

突然画面が切り替わり、一人の人物が映し出される。

「選別の方はどうだ?」

「問題有りません。尊主様のお言葉通り、彼らは凄まじい力を秘めています」

「やはりそうか…ならいい。引き続き選別を続けろ。…奴らの力は、我々の理想にとって必要なものだ。失敗は許さん」

「失敗などあり得ません、必ず成功させます」

通信が遮断され、再び先ほどの映像が流れ始める。

それと同時に…

コツ…コツ…コツ…

前回と同様の足音が近づき、もう一人の人影が現れ、話しかけてくる。

「よう。尊主様とのお話しはもう終わったか?」

「…」

「それにしても、あいつらには驚かされるぜ…A003だけじゃなくてM109まで倒しちまうんだからな。ほんと…尊主様の慧眼っぷりは流石だな」

「尊主様に間違いなどない」

「あ〜はいはい、そうですね。尊主様は絶対ですよ〜と」

「…報告は?」

「映像見てただろ?特にねえよ」

「ならばさっさと任務に戻れ…くれぐれも失敗はしないように」

「はいはい…全ては尊主様のために〜」

人影はそう言うと再び来た道を戻っていった。

そして空間は静寂に包まれ、機械の駆動音だけが再び鳴り続けた…

怪物紹介

プレデター(M109)

全長20メートル程の、巨大で泥のような皮膚を持つ怪物。

ある細胞を微生物に投与した結果、突然変異によって生まれた。

身体中を泥のような皮膚で覆い、顔にあたる部分には口と、多くの眼球が形成されている。

また変異の過程で臓器も形成されており、それを流動性のある皮膚で覆っている。

非常に再生能力が高く、どんな傷でも再生させてしまうが、弱点である心臓を潰されてしまうと、活動は停止してしまう。

身体中から触手を生やすことができ、それによって獲物を捕える。また体内から小型の怪物を生み出すこともできる。

知能が低くかなり凶暴だが、再生能力が高く弱点である心臓を潰されない限りはほぼ不死身であるため、兵器としての価値は高い。

目に入った全ての生物を捕え、痛ぶってから食す。その形容は正しく捕食者である

怪物タイプ4(M109α)

プレデターが生み出した怪物

球状で羽が生えており、目や耳などはなく、唯一ある口には鋭い牙を持つ。

空を飛ぶことができ、自由に飛び回っては獲物を撹乱し、その鋭利な牙で噛み付いたり、突進をしてくる。

耐久性は低いが、主人であるプレデターが生きている限り無尽蔵に生まれてくるため、非常に厄介である。

脳はなく、プレデターによって操作されている。

怪物タイプ5(B067)

全長2メートルにも及ぶ巨大な鳥の怪物。

突出した嘴のようなものは、異常発達した骨の一部であり、鋼鉄にも勝るほどの硬さを有している。

凶暴性が高く、獲物を見つける急加速して突進し、体の一部をその鋭利な嘴で抉り取るか、突き刺すことで獲物を仕留める。

その速度は時速150キロ近くに相当するが…弱点として突進する際はその速度から、途中で方向転換することができず、単調な動きしかすることができない。

群れで行動することもあれば、単独で行動することもある。


αράτακ ευιγέ ςαρέτημ ςαιμ ηπάγα Н

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幻想学園 ~無人島デスゲーム編~  ロザリア・グリム @Leodoll-Scarlet

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