第4話 9日目~11日目
霊華「…………ん」
眠っていた霊華は不意に目を覚ました。
モゾッ…
霊華 (……トイレ)
霊華は尿意を感じ、ベッドから起き上がりまだ眠い目を擦りながらトイレに向かう。
トイレへと向かう途中、霊華はエントランスの方を見た。エントランスには誰もいないように見える。
霊華(トイレにでも行ってるのかな?)
霊華は特段何も気にすることはなく、そのままトイレに向かった。
そして霊華は女子トイレの個室に入り用を済ませる。
霊華「はぁ………」
霊華(これ…まだ慣れないのよね…)
トイレは水が流れず使うことができないため、便座にビニール袋を被せ用を足すようにしているのだ。よく災害時などに使用される方法だ。
ただし本来なら使ったビニール袋はそのまま捨てるのだが、今の状況ではどれぐらいで島を脱出できるかも分からず、ビニール袋にも限りがあるため、排泄物は地面に埋めてビニール袋は海水で洗い流して再利用している。
正直、衛生上不安が残るが外でするよりは遥かにマシだった。
霊華(それにしても…今日は災難だったわ…)
霊華はふと今日あったことを思い出す。
女湯と勘違いして男湯に入り、あろうことかそれをレオに見られただけではなく、レオと一緒に湯船に入ることになってしまったことを…
霊華「ッ///」
今思い出すだけでも霊華の顔は真っ赤に紅潮した。
霊華(あんな恥ずかしい姿を見られちゃうなんて…まだそんな関係にもなってないのに)
霊華はあの時のことを鮮明に思い出す。
霊華(レオ…私の体ずっと見てたな…レオに見られてる時私…恥ずかしいのに…なんだか…ドキドキして……)
霊華「!」
ブンブン!
霊華は頭に浮かんが考えを首を横に振って否定する。
霊華(てっ!何考えてるのよ私!ほぼ裸みたいな姿を見られてドキドキするなんて!きっと恥ずかしい思いをしすぎておかしくなってるだけだわ!)
霊華はそう自分に言い聞かせ、便座から立ち上がり服を整える。そして使ったビニールは取り外して口を固く結び、便器の横に置いておいた。
そうして自室へと戻った霊華はもう一度眠りにつこうとするが…
霊華「ん?」
霊華はふと外から聞こえてくる声に気づいた。
霊華「なんの声?…」
霊華は慎重に窓の方に近づく。
窓の方に近づいたことでその声をはっきりと聞こえるようになった。
霊華「!」
それは霊華自身も聞いたことがある、あの狼の怪物の遠吠えだった。
霊華は急いで窓の外を見る。
窓の外は暗くほとんど何も見えないが…月明かりに照らされ薄っすらと人影のようなものが見えた。
霊華「まさか!?」
霊華は急いで自室を飛び出しエントランスに向かう!
エントランスにはやはり誰もいない。
霊華「やっぱり…ッ!」
霊華の考えは当たった、エントランスにいるはずの見張りはトイレに行っていたのではなく恐らくなんらかの理由で外に出ていたのだ。
霊華(この時間に見張りをしているのって確か…佐藤だったはず!だったらまずい!)
佐藤の実力を考えるとあの狼の怪物には到底敵うはずがない、急がなければ佐藤が怪物に殺されてしまう。
霊華は寮を飛び出し人影の方へと向かった。
しかし…
霊華が人影の方に近づいた時、霊華は自身の目を疑った…
彼女が人影の近くに来た時には、既に怪物達は一匹残らず殺されており、佐藤だと思った人影の背中には…巨大なコウモリの羽のようなものが生えていたのだ。
人影がこちらに気付き振り向く、そして月明かりによってその顔がはっきりと見えるようになる。
異形の姿をした人影の正体は…レオだった。
霊華「!?…レオ…その姿は…?」
レオ「!君は…霊華!?どうしてここに!?…そうか…見られて…しまったか…」
霊華「レオ…なんなの…その姿は?」
霊華はレオにそう尋ねる。
レオ「もう隠しても意味はないな…落ち着いて聞いてくれ…実は…俺は吸血鬼なんだ」
霊華「!?」
吸血鬼、その名前は霊華も聞いたことはあった。西洋に伝わる怪物。別名ヴァンパイア。生き血を喰らい、その巨大な翼で闇夜を舞い、夜を統べる王。それが吸血鬼だ。しかしそれが本当に実在しているとは霊華は夢にも思わなかった。
レオ「正確に言えば俺は吸血鬼と人間のハーフだがな」
霊華「吸血鬼て…あの本とか映画で出てくるやつ?」
レオ「そんなものだ」
霊華「貴方が…吸血鬼だったなんて…じゃあ貴方の妹達も?」
レオ「ああ、俺と同じ吸血鬼だ」
霊華「そうだったんだ…」
今思えばレオ達は普通の人よりも日の光に気を遣っていたような気がする。外で遊ぶ時は念入りに日焼け止めを塗っていたし、真夏だろうが長袖の服を着るなどして、肌に日光が当たらないようにしていた。
どうしてなのか聞いたこともあったが、皮膚が弱いからとその時は説明された。だが本当の理由は彼らが吸血鬼だったからなのであろう。なぜなら吸血鬼は日光に弱いと相場が決まっているのだ。
レオ「………」
少しの間気まずい沈黙が流れる。
そして口を開いたのは霊華だった。
霊華「その…なんで隠してたの?」
レオ「隠していた理由か?まあ色々あるな…まず吸血鬼が存在するなんて知られれば、世界中がパニックになる、ただでさえ能力者がいるなんてことが公表されただけでも世界中でパニックになりかけたんだからな」
確かに自分達のような特別な力を持つものがいるとテレビで公表された時には、そこら中で大騒ぎになったのだ。吸血鬼が存在したなんて世間に知られればどんな騒ぎになるかなんて想像がつかなかった。
レオ「それにそんなことが世間に知られれば、世界中の研究機関が俺達のことを狙ってくるだろうしな、正直命を狙われるようなものだ。どんなことをされるかなんて想像がつかない」
霊華「確かに…」
レオ「……正直君には一番この姿を見られたくはなかった」
霊華「え?」
レオが言った今の言葉は一体どういう意味なのだろうか?霊華は疑問に思った。どうして自分には見られたくなかったのか。考えても結論を出すことはできなかった。だからこそ霊華は尋ねることにした、その言葉の意味を。
霊華「それってどういうこと?どうして私には一番見られたくなかったの?」
レオ「それは………」
レオは答えるか迷ったが、意を決して口を開いた。
レオ「俺は…君のことが好きなんだ。霊華」
霊華「!?」
霊華はその言葉を聞いて頭が真っ白になる。
霊華(レっレオが私のことが好き!?えっ?嘘!?本当に!?ていうかこれって告白!?ええーーー!?!?嬉しい!嬉しいけどなんて答えればいいの!?)
固まっている霊華を気に止めることはなく(と言うか気づかず)レオは話し続ける
レオ「だから、俺は君には見られたくなかったんだ。俺が人ではない、こんな姿をした化け物だって知られれば、君は俺のことを嫌いになってしまうだろ?もう見られてしまったがな」
レオは苦笑いを浮かべる。
レオ「実際嫌いになっただろ?」
霊華「・・・ううん、そんなことないよ」
霊華は首を横に振った。
レオ「なっ!?」
レオは霊華の回答に驚く。
レオ「どっどうしてだ!?俺は吸血鬼なんだぞ!?化け物なんだ!それなのに…どうして?」
霊華「どうしてって…それは…」
霊華は一呼吸置いたのち、口を開いた。
霊華「私も…貴方のことが好きだから」
レオ「!?」
霊華「貴方が何者でも、どんな存在でもいい、たとえなんであったとしても、私は貴方のことを嫌いになんてならないし、この気持ちが変わることもない。むしろ…貴方のことが知れてよかった」
霊華はそう言って微笑んで見せた。
レオ「本当にいいのか?…こんな俺でも…受け入れて…くれるのか…?」
霊華「もちろん」
レオ「…ッ!霊華!」
レオは霊華に抱きつく。
霊華もそれを受け入れる。
レオ「ありがとう…こんな俺を…受け入れてくれて…!」
レオは涙を流しながらそう言った。
霊華「こっちこそ、素直に話してくれてありがとう、話してくれたってことは…私のことそれだけ信じてくれてるってことだよね?」
レオ「ああ!」
霊華「えへへ…良かった」
二人はそれから暫くの間抱擁し続けた。
………
霊華「それで…そのことはこれからも隠し続けるの?」
しばらくして霊華はレオにそう尋ねた。
レオ「ああ、俺が吸血鬼だと言うことを知られるわけにはいかない…」
霊華「…その…ね、私はそのことみんなに話すべきだと思うの」
レオ「どうしてだ?」
霊華「だって…その吸血鬼の力て凄いんでしょ?この数の怪物を一網打尽にできちゃうぐらいは」
霊華はあたりに散らばった怪物の死骸を指さしながらそう言った。
霊華「こういうのはすごい申し訳ないんだけど…私達が生き残る上ではその力が必要だと思うの」
レオ「…」
霊華「それに、その力のことを知って貰っておけば周囲の目を気にすることなく使えるでしょ?そうなれば貴方も気が楽でしょうし…」
レオ「…」
霊華「あっ!ごっごめんね、もしもその力のことが知れ渡っちゃったら貴方や貴方の妹達が危険な目に遭うかも知れないし、貴方自身もその姿はあまり見られたくはないわよね…やっぱり今のは無しで…」
霊華はレオの機嫌を損ねてしまったと思い、発言を撤回しようとしたが。
レオ「いや…その方がいいかも知れないな」
レオはそう答えた。
霊華「え?」
レオ「薄々俺もそう思っていたんだ。この力のことを皆に知ってもらった方がいいんじゃないかって…俺がこの力を使えば救える命があるかも知れない…誰かが怪我をしなくて済むかも知れない。この前の怪物だってもっと簡単に倒すことができたんだ。誰も怪我することなんてなかった」
レオは自分の手を見る。
レオ「もしも俺がこれからもこの力を隠し続けてしまえば…いつかは…救えるはずだった命を…救えない時がくるかも知れない…」
霊華「レオ…」
レオ「だが…こんな俺を…皆は受け入れてくれるだろうか?」
霊華「大丈夫だと思うわよ、みんな優しいからきっと貴方のことを受け入れてくれるわ。それに…」
霊華はレオの手を優しく握る。
霊華「何かあったら私が庇ってあげるから」
そう言って霊華は微笑んで見せた。
………
10日目
翌朝レオは皆をエントランスに集めた。
理由は簡単だ、皆に自身のことを打ち明けるためだ。昨日の出来事でレオは決心がついたのだ。
レオ「これで全員集まったな。実は今日は皆に伝えなければいけないことがあるんだ」
田中「きっ急に改まって一体どうしたんだよ?」
湊「もしかしてこっから脱出する方法でも思いついたのか?」
レオ「いや、そうじゃない。今日伝えるのは俺の正体についてだ」
光「!?レオ!まさかあの事を言うつもりなの!?」
事情を知らない者達とは違い、光を含めた数名はレオが何を話そうとしているのか直ぐに理解できた。そして直ぐに光はレオを止めようとする…しかし…
レオ「光、これはもう決めた事だ」
光「でも!」
レオ「ロザリア達とも話し合って決めたんだ、言わせてくれ、光」
光「本当に…いいのね?」
レオ「ああ」
レオの決意は固いようだ。
光「分かった…」
穂乃果「いっ一体なんの話をするんでしょうか?緊張してきました」
湊「実は会長の正体は宇宙人だったとか?」
緊張する穂乃果と打って変わって、湊が冗談を言うが…
真鈴「今は真剣な話をしてるから黙ってるんだぜ」
真鈴に一蹴される。
湊「はいはい…」
レオ「皆、心して聞いてくれ」
皆「………」
レオ「実は俺は…吸血鬼なんだ」
田中「………は?」
グレイ「吸…血…鬼?」
湊「………」
事情を知らない者達はレオの告白に呆気に取られる。
レオ「驚くのも無理はない、今その証拠を見せよう」
レオはポケットからタブレットケースを取り出し、真っ赤な錠剤をひとつ飲み込んだ。
そしてその瞬間、レオの背中から巨大な蝙蝠のような翼が生えてくる
湊「マジかよ…」
レオ「これで信じてもらえるだろう」
エレン「ほっ本当に吸血鬼だったんだ…」
レオ「詳しく言えば吸血鬼と人間のハーフだがな」
「………」
事情を知らない者達は驚愕し声を出せなくなる。
まあそれもそうだろう吸血鬼と言う空想の世界の存在が、今目の前にいるのだ。
穂乃果「あっ…えっと…あの…会長が吸血鬼だと言う事は分かりました。でも…どうしてそれを私達に伝えたんですか?今まで隠してたんですよね?」
レオ「それは…これから先、生き残っていく上ではこの力が必要だからだ、それに…ここぞと言う時に、皆の目を気にしてこの力を使えなければ、救えるものも救えなくなってしまう」
穂乃果「救えるものも、救えなくなる…」
レオ「俺はそれが耐えられない、だからこそ、正体を明かす事を決めたんだ」
穂乃果「……」
レオ「無理に受け入れてくれとは言わない…怪物だと思ってくれてもいい、覚悟はできている」
霊華「お願い!レオのことを受け入れてあげて!レオは確かに吸血鬼かも知れないけど、怪物なんかじゃないの!例え吸血鬼でもレオはレオなの!」
霊華はレオを庇うかのようにそう言った。
レオ「霊華…」
グレイ「……うん、分かった。僕は受け入れるよ」
レオ「グレイ…!」
グレイ「ちょっと驚いたけど、会長が会長であることに変わりはないんだろう?だったら僕は会長を受け入れるよ」
エレン「私も!それに会長はあの怪物達と比べれば全然怖くないし!」
穂乃果「確かに!襲ってくるわけじゃありませんし、むしろ私達のことを守ってくれますしね」
レオ「エレン…穂乃果…:」
佐藤「僕も会長のことを受け入れるよ」
田中「俺も!」
湊「俺はなんだって構わないぜ、むしろ宇宙人や悪魔とかの方が俺的には面白かったけどな〜」
レオ「佐藤…田中…湊…」
どうやら皆レオのことを受け入れてくれるようだ。
レオはそのことについ目が潤んでしまう。
霊華「だから言ったでしょ、みんな優しいから貴方のことを受け入れてくれるって」
レオ「ああ、そうみたいだな」
グレイ「そう言えば光達はあまり驚いてなかったみたいだけど…もしかしてこのことを知っていたのかい?」
光「ええ、私と真鈴、リオン、美春もこの事は知っていたわ、もちろん修斗もね」
4人が頷く
エレン「何があったらこのことを知ることになるの…?」
光「まあ…ちょっと昔にね…」
光はそう言ってはぐらかした。
田中「て言うか会長も水くさいよな〜そう言う事はもっと早く教えてくれればいいのに」
レオ「すまない、俺達の身を守るためにも安易に教えるわけにはいかなかったんだ」
佐藤「やっぱりこの事は秘密にした方がいいのかい?」
レオ「できればそうして欲しい」
佐藤「分かった」
田中「まあ大丈夫だって、口は硬い方だからな」
光「嘘つけ、あんたが一番信用できないわよ、あんた直ぐに人の秘密を喋るじゃない」
田中「うっ!何も言い返せない!でも今回はマジだって!会長に迷惑かけるわけにはいかないし・・・」
美春「私の秘密はマジじゃないんですか?」
田中「いや!もちろん美春ちゃん達の秘密もマジだって!殺されたくないし…」
美春「何か言いましたか?」
田中「いえ何も!」
美春「それならいいです」
田中はホッと息を吐く。
湊「そう言えば会長が吸血鬼て事は、妹どももか?」
アリシア「ええ私達も吸血鬼よ」
グレイ「ロザリア君も?」
ロザリア「はい、血は繋がってはいませんが私も吸血鬼です」
レオ「俺達は父親が吸血鬼で母親が人間、ロザリアは逆に母親が吸血鬼で父親が人間なんだ」
湊「お前ら以外に吸血鬼ているのか?」
レオ「いや…今のところは見たことがない、もしかしたら俺達以外の吸血鬼もどこかに隠れているかも知れないがな」
湊「ふ~ん・・・」
穂乃果「はい!はい!質問があります!やっぱり吸血鬼て事は日光には弱いんですか?」
レオ「ああ日光には極端に弱い」
穂乃果「やっぱりそうなんだ」
吸血鬼が日光に弱いと言う定番は事実に基づいたものなんだと穂乃果は思った。
田中「日光に当たるとどうなるんだ?」
レオ「たちまち体が発火して灰になる」
田中「ええ…」
穂乃果「どうしてそうなるんですか?」
レオ「研究によれば、吸血鬼の特別な細胞は紫外線に極端に弱いらしくそれが原因らしい…」
田中(なんでそんな研究データがあるんだ?)
田中はそう思ったが話が長くなりそうなので聞かないことにした。
レオ「まあ俺達はそうはならないがな」
穂乃果「と言うと?」
レオ「俺達は吸血鬼と人間のハーフと言うこともあって多少日光に耐性があるんだ。人間の状態ならせいぜい肌が少し荒れる程度で済むし、吸血鬼の状態でも多少は日光の下で行動できる…力は制限されるし持って5分程度だがな」
穂乃果「すぎたらどうなるんですか?」
レオ「試した事はないが…恐らく普通の吸血鬼と同じように発火して灰になる」
穂乃果「じゃあ晴れている日はあまりその力は使えないんですね」
レオ「ああ」
穂乃果「吸血鬼・・・すごい興味深い存在ですね」
湊「じゃあ流水はどうなんだ?」
レオ「それも人間の時なら問題はないが、吸血鬼の状態だと力が思ったようにでなくなるな…これも吸血鬼の細胞が原因だろう」
湊「十字架やにんにくは?」
レオ「にんにくは普通の吸血鬼でも特になんともないな、十字架も特に問題ないな」
湊「なんだ効かねえのか」
レオ「効かないと言うよりもただの十字架には効果が何もないんだ。そもそも吸血鬼に十字架が効くと言うのは、かつて吸血鬼と戦ったエクソシストや魔法使いが、十字架を媒体にして魔法を放ち攻撃していて、それを見た者達が十字架が効くと勘違いしてそう言われるようになったらしい…諸説あるがな」
湊「へえ…」
グレイ「そう言えば気になったことがあるんだけど、さっき飲んだ錠剤は一体なんなんだい?」
レオ「あれか?あれはこの力を使うための薬だ。人間とのハーフなのが原因かは分からないがこの薬がないと吸血鬼の力が使えないんだ」
グレイ「そんな薬もあるんだね・・・」
穂乃果(どんな成分が入ってるんだろう?)
レオ「他に聞きたいことはあるか?」
佐藤「その翼で空を飛ぶことってできるのかい?」
レオ「ああ、できる」
田中「マジで!?じゃあそれで空飛んでこの島脱出できるじゃん!」
確かに空を飛ぶことができるならばこの無人島からも容易に脱出することが可能であろう・・・
レオ「それは無理だ」
しかしレオはこの考えをすぐに否定した。
田中「なんでだ?」
レオ「まずこの島がどこにあるのかが分からない。今の状況から考えるにこの島はおそらく俺たちが行く予定だった島とは別の島だ。どの方向に行けば日本に戻れるのかが分からない。それにこの姿を維持できるのはせいぜい30分程度、長くても一時間が限界だ。飛ぶ速度もそこまで早いわけじゃない。もし仮に場所が分かったとしても距離があったら陸に着く前に海に落ちてしまう。そうなったら溺れて終わりだ。運よく観光船でも見つけられれば話は別かもしれないが、その場合吸血鬼のことがばれる可能性が出てくる」
田中「無理か・・・」
レオ「まあだが最終手段としてはその方法もありだがな・・・」
光「それなら船を作って脱出する方が現実的かもしれないわね」
真鈴「いや船作る方が無理じゃないかぜ?」
光「ほらそこはグレイが能力を使って・・・」
グレイ「さすがに船は作れないよ!?」
グレイでも氷の船を作るのは無理のようだ。
美春「氷の船・・・泥船より信用できなさそうですね」
リオン「すぐに溶けちまうな!」
レオ「ゴホンッ・・・話を戻すぞ。それでほかに聞きたいことはあるか?」
田中「そういえば怪我が早く治ったのもその力のおかげなのか?」
レオ「ああ、吸血鬼の再生能力はかなり高いんだ、骨折ぐらいなら数日で治る。純血の吸血鬼なら一日もかからないらしいがな」
田中「吸血鬼ってすげーんだな」
レオ「吸血鬼だからな」
穂乃果「そういえば吸血鬼ってことはやっぱり血を飲む必要とかってあるんですか?」
レオ「ある。頻度は高くないがな・・・2週間に一回少し血を飲めば大丈夫だ」
穂乃果「やっぱり血は必要なんですね・・・ちなみに飲まなかった場合は?」
レオ「人間でいう栄養失調のような状態になる」
穂乃果「それは大変ですね・・・」
湊「二週間ってもうすぐじゃねえか?どうすんだよ」
修斗「私の血を飲んでいただきます」
湊「少量つっても四人に一斉に血吸われたらさすがにやばくねえか」
修斗「何とかします」
湊「いやさすがに無理だろ」
光「まあその時は私たちの血を飲んでもらうしかないでしょ。これから守ってもらうんだし文句は言えないわ」
湊「まあそうだな・・・」(噛み傷とかって残らねえよな・・・?)
レオ「すまないな・・・それで他には?」
どうやらもうこれ以上質問はないようだ。
レオ「ならこの話はここまでにしよう、今日もやることはたくさんあるからな」
光「そうね。まあでもこれからはレオがこの力を使ってくれるから怪物との戦いは結構楽になりそうね」
湊「そんなに吸血鬼の力ってすげーのか?」
アリシア「すごいなんてもんじゃないわ。この力があれば怪物なんて楽勝なんだから!初日の怪物だって瞬殺だったわ」
湊「じゃあその力があればもう誰も死ぬことはねえな。なんせ4人もいるんだからな」
アリシア「それは・・・」
アリシアはなぜか黙ってしまった。
湊「な・・・なんだよ・・・急に黙って。なんか悪いことでも言ったか?」
レオ「この力を使うのは俺一人だけだ」
湊「は!?なんでだよ!?」
アリシア「ごめんなさい・・・私達には約束があるの」
湊「約束?」
アリシア「ええ、この力を私たちは使わないっていうお兄様との約束がね」
湊「なんでそんな約束してんだよ?」
湊がレオに詰め寄る。
レオ「それは妹達には普通の人間として生きてほしいからだ」
湊「普通の人間?」
レオ「ああ、言っただろ俺たちは確かに普段は人間の姿をしているが吸血鬼だ。人間からしてみれば俺たちは化け物だ。だが俺は妹達に自分たちのことを化け物だなんて思ってほしくない。だから普通の人間として生きてもらうためにその約束をしたんだ」
霊華「それって・・・」
霊華は思い出した。一週間前にレオが話していたことを。レオが言っていたわがままとはおそらくこの約束のことなのだろう
湊「それっていま優先させることか?その力使えば助けられる奴が増えるって話してるのによ!」
レオ「・・・ああ」
湊「っ!なんだよそれ・・・」
くだらねぇ・・・湊はそう思ったが口には出さなかった、その代わりにアリシアたちの方に振り向きそして・・・
湊「はっ・・・お前らも大変だな。こんな約束を守るために・・・目の前で友人(ダチ)が死んだんだからよお」
そう言い放った。
アリシア・フレア「ッ!・・・」
アリシアの脳裏にあの時のことが蘇る。あの時もしも約束を破ってでもこの力を使っていれば遥たちを救えたかもしれないのだ。いやもしかしたらあの時誰も死なずにすんでいたかもしれない。その事実がアリシア達を突き刺した。
光「!あんた!言っていいことと悪いことがあるでしょ!!!」
光は湊の発言に怒りを露わにした。辺りにも不穏な空気が立ち込める。
湊「別に責めたりしてるわけじゃねえ、むしろ同情してんだよ。こんな約束のためだけに友人(ダチ)が死んだんだからよぉ、俺だったら耐えられねえな・・・本当に不憫でならねえよ」
アリシア「私は・・・」
リオン「てめぇ・・・!」
光「ッ・・・!」
修斗「・・・」
修斗と光は無言で刀と拳銃を引き抜こうとするが・・・
レオ「やめろ!」
修斗「!」
レオが制止する。
光「どうして止めるの!?こいつには自分の言ったことを分からせてやらないと!」
レオ「必要はない」
これだけのことを言われたにも関わらずレオは怒ってはいないようだ・・・寧ろ申し訳なさそうにしているように見えた。
レオ「湊・・・お前の言う通りだ。俺の約束のせいで遥たちは死んだ。俺のせいだ」
リオン「何言ってんだよレオ!?お前のせいじゃねえだろ!」
レオ「いや、俺のせいだ、俺が殺したようなものだ。だからこのことでいくら俺のことを責めてくれてもかまわない、これから起こることもな。だがな・・・」
レオの表情が一変し冷たい表情となる。
レオ「俺の妹達を責めることは俺が許さん。もしも俺の妹達を傷つけるようなら俺はお前であっても容赦はしない」
そしてそう凄んで見せた。
湊「ッ!・・・脅しか?はっ!好きにしろよ!」
湊はそう吐き捨ててどこかに行ってしまった。
光「あっ!ちょっと待ちなさいよ!・・・行っちゃった・・・全く!」
穂乃果「さっさすがに言いすぎですよね!」
霊華「ほんっと!その通りよ!レオ!あんたももうちょっとガツンと言ってやりなさいよ」
レオ「そう言う訳にはいかない。現に湊が言ったことは・・・どれも間違ってはいないからな」
霊華「だからって・・・」
レオ「いいんだ・・・俺が責められる分には・・・それでいい」
霊華「レオ・・・」
レオ「アリシア・フレア。今の話はそこまで真に受けなくていい。お前たちが悪いわけじゃない・・・アリシア?フレア?」
レオの言葉に二人は何の反応も示さない。
レオは二人の方に振り向く。
アリシア「遥・・・私は・・・わたし・・・は・・・」
フレア「私だって・・・ヒック・・・」
アリシアはわなわなと震え上の空のような状態に、フレアは泣き出してしまった。
レオ「アリシア・フレア・・・すまない修斗、アリシアを自室に連れて行ってやってくれ」
修斗「分かりました」
レオ「俺はフレアを連れていく。すまないが皆はしばらくここで待機しててくれ」
全員がうなずく。
レオと修斗は二人を連れて行った。
田中「・・・やべぇ奴仲間に入れちまったな」
リオン「一発ぶん殴るか?」
光「今回ばかりは止めるかどうか迷うわね・・・」
グレイ「いやさすがにだめだよ、言いすぎだとは思うけど暴力はよくないよ」
エレン「だね。そんなことしたら会長が怒るだろうし・・・」
光「はぁ・・・これからどうなっちゃうんだか・・・」
霊華「レオ・・・」
・・・
レオ「様子はどうだった?」
レオはフレアを自室に送った後、エントランスに向かう途中に修斗と会い、アリシアの様子を尋ねていた。
修斗「しばらくはあのような状態でしたが、ある程度安定しましたのでその後は穂乃果さんに任せました」
レオ「そうか・・・」
アリシアはあの日・・・遥を目の前で殺されたあの日から幻覚や幻聴に悩まされていた。内容は死んだはずの遥の姿が見えたり声が聞こえたりするといったものらしい。
穂乃果の話ではあの日の凄惨な出来事がトラウマとなり、それが原因でこのような症状が出ているらしい。
本来ならばこのような状態のアリシアを探索などに連れて行くなどもってのほかなのだが、本人の強い意向もありしかたなく探索などに参加させている状況だ。
普段は特に問題はないようだが、あの時の出来事を想起させる状況・・・特に今回のような場合は幻覚や幻聴などの症状が強く出るようだ。
修斗「兄上様、彼のことですが・・・」
レオ「分かっている」
レオは修斗が何か言う前にそう答えた。
レオ「だが、あいつを追い出すわけにもいかない。それにこれは・・・俺の責任でもある」
修斗「・・・」
レオ「安心しろ。湊には・・・しばらく二人に近づかないように言っておく。それでいいだろ?」
修斗「はい」
レオ「よし。ならそろそろみんなのところに戻ろう。今日もやることは山積みだからな」
修斗「そうですね・・・」
レオはエントランスへと歩き出すが、修斗は動かなかった。
修斗(兄上様・・・あなたは一人で抱え込みすぎなのではないでしょうか?どうして兄上様は・・・全て自分の責任になさるのですか?このままでは兄上様まで壊れてしまいます・・・)
レオ「?どうしたんだ?修斗?」
動き出さない修斗を不思議に思いレオは声をかける。
修斗「いえ、なんでもありません」
修斗はそう答えてレオについて行く。
修斗(せめて・・・“彼”がここにいてくれれば良かったのですが・・・)
・・・
それからレオ達は食料調達のために何人かで森へと向かった。
そしてそれからさらに経った頃、医務室では…
湊「たくっ!意味わかんねえよな!お前もそう思うだろ?薫」
湊は薫に今朝起きたことについての愚痴をこぼしていた。
薫「う~ん…」
湊「お前生徒会の副会長なんだからあいつとも付き合いなげーだろ?お前が会長に何とか言ってやってくれよ!ほかの奴らは会長会長て怪しいカルトの信者みてーにあいつがすることが全部正しいて盲目的について行くバカばっかりだ」
薫「みんながみんなそういう訳じゃないと思うけど・・・そうだね・・・湊の気持ちも分からなくはないよ。少なからずあの二人のことを思って言ったことではあるんだろ?言い方は・・・ちょっと問題があるけど」
湊「だろ?」
薫「でも、会長の気持ちも分からなくはないかな、妹達には普通に人として生きてほしいって考えはそれだけ妹達のことを大切にしてるってことだし」
湊「そうか?」
薫「うん、会長は多分・・・吸血鬼っていうのは忌み嫌われる存在で・・・自分たちは人ではない怪物だって考えてると思うんだ。だから妹達には自分たちがそんな存在だと思ってほしくなくてそんな約束をしてるんだと思うよ。少なからず・・・僕が会長と同じ立場だったら、きっと同じことをしてると思うな」
湊「そういうもんか?」
薫「そういうものだよ。だから会長の気持ちも分からなくない」
湊「そういえばお前、会長が吸血鬼だって知った時全然驚かなかったな・・・知ってたのか?」
薫「知ってたよ。僕が副会長になってしばらくたったころに会長が教えてくれたんだ、僕のことを信用してくれて隠し事はしたくはなかったみたいなんだ」
湊「ふ~ん、なるほど道理で・・・」
薫「それと妹達の寮でのことで会長のことを責めるのも違うと思うよ」
薫は話を続ける。
薫「確かにその約束が彼女たちの吸血鬼の力を使うのを縛っているのは事実だけど・・・それがなかったらその場ですぐにその力を使えるとは限らないだろ。少なからず吸血鬼だということは隠さなきゃいけないわけだから。もしその時に他の生徒にその姿を見られたらどうなるか分からないし。それを抜きにしても、その力を使ったからってみんなを守れたかは分からない訳だし。あくまでも助けられた確率が少しはあげられたかもしれないって話で絶対に助けられた訳じゃないんだ」
湊「そりゃ・・・そうだけどよ・・・でも!だからってこれからのことについては違えだろ!こっから先はあいつらがそんな約束無視して力を使えば、生き残れる確率もほかの奴らを助けられる確率も上がるだろうが!それなのにそんな約束守らせてる場合かよ!」
薫「それは確かにそうかもしれないけど、むしろ僕は会長だけでもその力を使ってくれることに感謝すべきだと思うよ」
湊「感謝だあ?」
薫「うん、だって別に教える必要も僕たちのためにリスクを背負ってまでその力を使う必要だってないだろ?極論だけど、別に皆が死んだ後にその力を使って、そのことを隠し続けて自分たちだけが生き残ってもいいわけだし。それでも、自分たちの秘密が世間にばれるリスクを抱えてでもその力を使って僕たちを守ってくれるんだ。・・・強者が弱者を守るのは義務じゃない、強者はリスクを背負ってでも弱者を必ず守る必要もないんだ。別に彼らは弱者を見捨てたってかまわないのだから。彼らは弱者を守るために強者になったわけじゃない。だから弱者は強者が守ってくれることを当たり前だと思ってはいけない。強者は責任や義務があるわけでもない、それでもリスクを背負ってでも弱者を守ってくれている。だからこそ強者が守ってくれることに感謝しなければいけない。だから僕たちも会長に感謝するべきだろ?」
湊「それ・・・なんかのアニメのセリフか?」
薫「ううん、これは僕自身の考えだよ、僕は少なからずそう思ってる。まあ会長は自分が強者だとかは考えてないだろうし、単純に大切な友達や同じ学校の生徒だから守りたいって思ってるだけだろうけど」
湊「・・・」
薫「ともかく、僕たちは会長に感謝するべきなんだよ、湊。それに結局一番悪いのは・・・この事件を起こしたあのゼロてやつなんだからね」
湊「それを言われちゃ・・・もうなんも言えねえよ」
湊はもう何も反論しなかった。
湊「分かったよ!俺が悪かったよ!これでいいんだろ?」
薫「それは僕に言うことじゃなくて会長に言うことだろ?」
湊「ちっ!分かったよ!謝るよ!気が向いたらな・・・」
湊は不貞腐れながらそう言った。
薫はそんな湊を見て笑っていた。
………
レオ達が探索から帰ってきた。
山菜や果物などをある程度採取して帰ってきたようだ。
魚と缶詰以外の食べ物を食べるのは数日ぶりということもあり、皆大いに喜んだ。
夕食はいつものように皆で食べたが、湊はバツが悪かったのか自分の食事を持って部屋に戻ってしまった。
リオン「なあなあ美春」
リオンが美春に話しかける。
美春「どうしたんですか?」
リオン「ずっと聞こうと思ってたことがあるんだけどよ、あの時使ったあれ!あれってなんなんだ?」
美春「…どの時のどれですか?」
リオン「あれだよ!あのガトリングを持った怪物と戦った時!あの時お前の刀なんか光ってただろ!あれなんなんだ?」
リオンは少し興奮気味にそう聞いた。
美春「ああ、あれですか、よく見てましたね・・・あれは刀に剣気を纏わせたんです」
リオン「けんき…?それってなんなんだ」
それはリオンだけではなく他のものも聴き慣れない言葉だった。
美春「剣気と言うのは…う〜ん…なんと説明すればいいのか…」
美春は暫く考えた後、口を開いた。
美春「まず私達の身体には”気”と言うものがあるのは知ってますか?」
リオン「いや!知らん!それってなんだ?」
美春「”気”と言うのは簡単に言えば私達の身体に流れている生命のエネルギーのことです」
リオン「ああそれか!それだったらよくアニメで聞いたりするな!」
美春「まあ大体アニメで出てくるものと同じだとは思います、とにかくこの気と言うのは私達人間や動物、植物にも存在しています」
光「聞いたことはあったけど植物にもあるのね…」
美春「この気と言うのは先ほども言ったように生命のエネルギーであり、私達の身体においてとても重要なものになります。それこそ私達の体は気・血・水で作られていると言われるほどです。この気が減ってしまうと体調不良になりやすくなったり、身体に力が入らなくなったりします。逆に増えると元気になり、普段以上に力を出せたりします」
リオン「へぇ〜…それが剣気とどう関係するんだ?」
美春「それは今から説明しますから少し待っててください」
リオン「はい」
早く剣気について知りたいリオンを大人しくさせ美春は話を続ける。
美春「気と言うのは私達の身体を構成する重要なものであり、生命のエネルギーでもある、となればこの”気”はかなり大きな力を持ったエネルギーだと言うのは分かりますよね?」
リオン「おう」
美春「私はこの巨大なエネルギーである”気”を操り性質を変化させ、斬ることに特化したエネルギーに変えます。これが剣気です。実際に見せた方が早いですね」
美春はそう言うと一枚の紙を取り出して指で挟んだ。
美春「見ててください」
美春は精神を集中させる。そして…
美春「!」
次の瞬間!まるで刃物で切ったかのように紙は真っ二つに切れてしまった。
美春「これが剣気です」
リオン「すっ…すげーーー!!!」
リオンは興奮しながらそう言った。
光「これは確かにすごいわね…でも性質を変化って…そんなことできるもんなの?」
美春「はい、気はそのエネルギーの巨大さから性質を変化させやすいんです。それこそ熱を持たせて炎を出したり、電気に変化させたりなんかもできますよ」
光「えっ、じゃあこいつの使ってるのもそうなの?」
光は修斗のほうを見る。
修斗「私のこれは能力によるものなのですが…そう言われると少し似ていますね」
美春「そう言えばそうですね…」
リオン「なあなあ!それって俺でも使えるのか!?」
リオンは興奮が治らないまま、そう美春に質問する。
美春「ええ使えることには使えますよ」
リオン「マジ!?よっしゃあー!じゃあさっそく…」
美春「まあ使えるようには長い修行が必要になりますけどね」
リオン「ええ!?簡単に使えるわけじゃねえのか!?」
美春「当たり前です、剣気を使いこなすには少なくとも数十年は修行を積まなければなりません。私だってまだ使いこなせているわけじゃないんですから」
リオン「なんだ…」
リオンはわかりやすくテンションが下がった。
真鈴「おまえ…なんでそんなにその剣気って言うのが使いたいんだぜ?」
リオン「だってかっこいいだろ!光るところとか!」
真鈴「子供か!」
リオン「光るのは男のロマンだ!」
その言葉を聞いた田中がうんうんとうなづいた。
真鈴「はぁ…」
修斗「でしたら貴方は能力を使えば体が光るんですからいいじゃないですか、某超サ〇ヤ人みたいに」
リオン「銃やナイフも光らせたいだろ!お前にはロマンがないのか!」
田中「そうだ!そうだ!」
修斗「はぁ…馬鹿に付き合ってられません」
リオン「なんだと!」
真鈴「あーあ・・・まーたいつものが始まったんだぜ・・・」
光「ほんっと仲良しね、あいつら」
グレイ「あはは…まっまあ仲がいいことは良いことだから・・・」
結局その後、修斗とリオンはしばらくの間くだらないことを言い争い続けていた・・・
・・・
それから光達は明日のことを話し合い、夜も更けたため寝ることにした。
光が自室に戻る途中、霊華に話しかけられる。
霊華「ねえ、光」
光「ん?どうしたの?霊華」
霊華「あっ、そっそのね・・・お礼を言いに来たの」
光「お礼?私何かしたかしら?」
光には特に思いつく節はなかった。
霊華「じっ実はね、私・・・レオと付き合うことになったの」
光「ええ!?レオと!?ホントに!?」
光は驚きのあまり大声を上げる。
霊華「ちょっちょっと!声が大きい!」
光「あっ!ごっごめん・・・それでいつの間にそんなことになったの?」
霊華「昨日の夜・・・ちょっと色々あって・・・///」
光「え“!?」
光(よっ夜に色々あった!?!?!?展開が早すぎるでしょ!?超特急よ!)
霊華が頬を紛らわしく赤らめたためか、光は妙な勘違いをしてしまう。
光「えっえっと・・・その…聞いてもいい?何があったの?」
霊華「え?何がって…その…普段とは違う(吸血鬼の)姿を見ちゃったっていうか…」
光「普段とは違う(全裸)姿!?!?!?」
光(あっあいつ見かけによらずそんな趣味があったの!?!?!?)
霊華「なっなんでそんなに驚くの?あなたは知ってたんでしょ?」
光「いや知らないわよ!ていうか知りたくなかったわよ!そんなこと!」
霊華「は?」
光「とっともかく、そのあとどうしたの?」
霊華「そのあと?・・・それはもちろん、私はレオのことを受け入れたけど…」
光「うっ受け入れた…そうなのね…」
光(恋愛においては私の方が先輩だと思ったのに…いつの間にかこいつの方が先輩になってるなんて…私だってまだグレイとキスしたことしかないのに!)
霊華「ちょっちょっと?どうしたの?」
固まってしまった光に霊華が心配そうに声をかける。
光「あっ!いや!何でもないわ!なにはどうあれあんたたちが付き合えることになったなら良かったわ…本当に・・・」
霊華「うっうん?まあとにかくありがとね、これまで私の相談に付き合ってくれて」
光「ええ、どういたしまして」
霊華「それでなんだけどね、付き合った後も不安になることがあると思うから・・・その時はまた相談に乗ってもらってもいいかしら?」
光「ええいいわよ…私にできることがあればだけど」
光(正直私よりあんたの方が進んでるけどね!)
霊華「ほんと!?ありがとう!」
霊華は嬉しそうにほほ笑んだ。
光「まあでも、その辺の話は無事にここから生きて帰ってこれたらにしましょ?」
霊華「あ!そっそうね、ちょっと浮かれてたわ。とにかくほんとに今までありがとね!それと、これからもよろしくね!それじゃお休み」
そう言って霊華は行ってしまった。
光「ええ、お休み・・・」
光(まさか一晩でそんな関係になるなんて…世の中分からないものね)
そうして光も大きな勘違いをしたまま自室に戻っていった。
そうしてこの日の何事もなく終わりを告げた・・・
・・・
11日目
リオン「よっしゃ!捕まえるぜ!熊!」
修斗「だから何度も言ってますが…ここにはいませんよ、熊」
リオンと修斗それから真鈴・光・アリシア・エレンの六人は森に昨日に引き続き探索に来ていた。
アリシアの精神状態は昨日と比べればかなり良くなっていたため、本人の強い意向もあり探索に同行することになった。
真鈴「あいつ意地でも熊を捕まえるつもりなのかぜ?」
光「でしょうね」
アリシア「はぁ…リオン、真面目にやって」
リオン「俺はいつだって本気(マジ)だぜ!」
アリシア「真面目に・・・やって?」
リオン「・・・はい」
アリシアが恐ろしい笑顔を浮かべ、リオンもおとなしく従った。
真鈴「おお、小さい割に見かけによらず怖いんだぜ」
アリシア「一言余計よ!まったく・・・」
エレン「あはは…」
そんなこんなありながらリオン達は森を探索していき、途中で見かけた果物や山菜を採集していく。
リオン「なあこれ食えるかな!?」
リオンがそう言いながら見るからに毒々しい赤色のキノコを見せる。
光「毒キノコね」
アリシア「毒キノコだわ」
真鈴「毒キノコなんだぜ」
リオン「いや食ってみなきゃわかんねえだろ!?」
修斗「一応言っておきますがそれはカエンタケと言う毒キノコで、食べたら最悪死にますよ」
修斗が植物の図鑑を見ながらそう言った。
リオン「・・・」
光「ほらやっぱり、早く捨てなさいそれ!」
リオン「はーい」
エレン(あれって素手で触って大丈夫なの?まあ本人は平気そうだしいっか)
注※(カエンタケは毒性の強いキノコのため、触れただけで触れた部分炎症を起こすことがあります、絶対素手で触らないようにしましょう)
それからも採取は続き十分な量の果物や山菜が集まる。
アリシア「これだけあれば十分ね」
修斗「そうですね、そろそろ寮に戻りましょう」
リオン「もう戻のか?まだまだ持って帰れるぜ!」
修斗「いつ怪物が現れるか分かりません、それに私達を狙っているのは怪物だけとも限りません、長いは無用です」
光「そうよ、さっさと帰りましょ」
リオン「分かった」
そう言ってリオン達が寮に戻ろうとしたその時・・・
ガサッ・・・
リオン「!誰だ!」
近くの茂みからわずかに物音が聞こえ、リオンは腰につけた拳銃を瞬時に引き抜き、音がした茂みに銃口を向ける。
エレン「まさか怪物!?」
修斗「!」
他の者達も武器を抜き臨戦態勢をとる、そして・・・
「おっおい!撃つな!俺は人間だ!」
茂みの中から声が聞こえ一人の人物が両手を挙げながら茂みから出てくる。
茂みから出てきたのはそれなりに体格のいい少しつり目をした、髪は黒のマッシュパーマの男子生徒が出てくる。
その生徒にリオンは見覚えがあった。
リオン「お前・・・もしかして翔太か?」
「ん?そういうお前は…もしかしてリオン!?リオンなのか!?」
リオン「翔太!」
リオンがすぐに翔太に駆け寄りそして抱き着く。
リオン「良かった!生きてたんだな!」
翔太「お前こそ!」
二人はお互いの無事を喜び合う。
光「あいつ・・・誰だっけ?」
真鈴「忘れたのかぜ?あいつはリオンがいるサッカー部のキャプテン、大空翔太(おおぞらしょうた)なんだぜ」
光「ああ!サッカー部の!」
大空翔太
リオンと同じサッカー部のキャプテン。よく見る漫画の熱血主人公といった感じで、とにかく明るい性格なのが特徴的な生徒。
サッカー部員からの信頼も厚く、サッカーにおいては天性の才能を持っているため、将来はプロのサッカー選手を目指している。
リオンともかなり仲がいい。
修斗「お久しぶりですね、翔太さん。ご無事で何よりです」
翔太「修斗も無事だったか!いや~良かったぜ」
光「あんたも知り合いなの?」
アリシア「修斗もサッカー部よ」
光「そういえばそうだったわね」
リオン「翔太、お前こんなところで何してたんだ?それになんでこんなところに隠れてたんだよ?」
翔太「ん?ああ、お前らと一緒でここで食べ物を探してたんだ。隠れたのは…お前らだって分からなかったんだよ」
リオン「隠れる必要あるか?」
翔太「お前知らないのか?なんでも他の生徒が森で食べ物を探してたら、いきなり襲われて身包み全部はがされたってことがあったらしいんだ。それどころか複数人で探索していた生徒たちが襲われて、男子生徒はその場で殺されて女子生徒はそのまま連れてかれたって話もあるんだ。そんなことがあるって言うのに警戒せずにいられるかよ」
リオン「マジかよ…」
アリシア「ひどい話ね…とてもじゃないけど現実で起きた話だとは思えないわ」
翔太「それよりもお前らも、俺と一緒で食べ物探しに来てたんだよな?お前らの寮ってどんな状況なんだ?」
修斗「良いという訳ではありませんが、特段悪いわけではありません、現在は安定しています。いわば普通です」
翔太「水の取り合いとかも起きてないのか?」
リオン「おう!なんせ川を見つけたからな!」
翔太「まじ!?俺の寮とは大違いだな…」
アリシア「あなたの寮・・・そんなにひどいの?」
翔太「正直・・・最悪だ、水も食料も不足して皆ピリピリしてる。毎日食料と水を巡って喧嘩ばっかりだ。前なんてそれで一人大怪我した、医療品もほとんどないし、治療できる奴もいなくて・・・そいつは3日前に・・・死んだ」
アリシア「嘘でしょ・・・」
翔太「なんとかしようとしたんだが…どうにもできなかった。状況は日に日に悪化していって、今じゃあいつらの仲間になろうって話も出てる」
修斗「あいつら・・・?」
修斗は彼が言ったことが気になり、そのことについて聞こうとしたがそれよりも早く翔太が口を開いた。
翔太「なあ!あの時断っておいて今更こんなことを言うのは虫が良すぎるって分かってる。だけど頼む!俺もお前たちの仲間に入れてくれ!」
そう言って翔太は頭を下げた。
翔太自身もあの時レオの誘いを断った者の一人だ、しかし彼にもあの時は事情があったのだろう。あの時一緒にいたアリシアは、今回彼の話を聞いてそう実感した。
リオン「翔太・・・なあ!俺からもお願いだ!こいつを俺たちの仲間にしてやってくれ!」
リオンも修斗達にそう訴えかける。
修斗「私としては特にかまいません」
アリシア「私も修斗と同意見よ」
二人はそう答えた。
光「まあいいんじゃない?仲間が増えることはいいことだし。それにこいつはあいつ(湊)ほど嫌な奴じゃなさそうだし」
真鈴「私もいいと思うぜ。まあ最終的な判断はレオがするとは思うが、あいつは来るもの拒まずって感じだしな」
エレン「私もいいと思うよ~」
他の者達も彼が仲間になることに異論はないようだ。
翔太「本当か!?お前ら・・・ホントにいい奴らだな!」
リオン「当たり前だろ!なんせこいつらは俺の最高の友(だち)だからな!」
リオンはそう言って誇らしげにする
光「なんであいつが誇らしそうにしてるのよ…」
アリシア「ていうかいつから私があいつの友(だち)になったのよ…」
翔太「ありがとう!それとこれからよろしくな!・・・実を言うとお前らに会わなかったら、お前ら寮に直接行って頼もうと思ってたんだ」
修斗「そうなのですか?しかしあなたは同じ寮の方たちのために食料をとりに来ていたんじゃないんですか?」
翔太「まあ・・・そうなんだけどよ…正直あいつらと一緒いるのはもう限界だったんだ」
光「限界?」
翔太「ああ、あいつらと一緒にいても餓死するか、殺されるかもしくは・・・同じ人殺しになるのが関の山だ…お前らにもう一つ話してないことがあるんだ」
光「なに?」
翔太はゆっくりと話し始める。
翔太「聞いただけの話だから確証はないんだ。だけど・・・あいつらは…他の寮の生徒を一人・・・殺してるんだ」
修斗「喧嘩が原因で亡くなった方とは別の方・・・と言うことですか?」
翔太「ああ、今から5日前ぐらいだったかな、俺の寮の奴らが森に食料をとりに行ったんだ。それからしばらくして帰ってきた時そいつらの中の一人、服に血がついてるやつがいたんだ。どうしたんだ?て俺が聞いた時そいつは怪物に襲われてこれはその怪物の返り血だって答えたんだが…明らかに動揺してるし目が泳いでたんだ」
光「まさかそれで他の生徒を殺したと思ったの?」
翔太「馬鹿言え、それだけだったらこんな話するわけないだろ。重要なのはこれからなんだ。その日の夜、たまたま俺は森に食料をとりに言った奴らが話してるのを見て。こっそりそいつらの話を聞くことにしたんだ…そしたらそいつらこんなことを話してたんだ…」
翔太は一呼吸おいた後こう続けた。
翔太「なんでも森で食料を探しているときに、同じく食料を探してた他の寮の奴が一人でいたらしいんだ。周りにはほかに人もいなくて、そいつは結構な数の食料を見つけてたみたいだったんだ。それでそいつらは相手が気が弱そうだっていうのもあって。武器を向けて持ってるものを全部置いてくようにって脅したらしいんだ」
アリシア「最低な奴らね」
翔太「でもそいつは渡す気がなかったみたいで逃げようとしたところを捕まえた時にもみ合いになって・・・その時に持ってた拳銃でそいつを撃ったらしいんだ。弾はそいつの脇腹にあたってうずくまって動かなくなっちまったらしい」
光「それで・・・どうなったの?」
翔太「そいつら持ってるものを全部奪った後、そいつは森の中に放置してきたらしいんだ。それからしばらくしてまずいと思って戻ったらしいんだが…その時にはもうそいつのいたところには・・・人か何か・・・分からなくなるほどに・・・食い荒らされた肉塊があっただけみたいなんだ」
修斗「おそらく・・・動けなくなったところを、怪物に襲われたんでしょうね」
エレン「酷い・・・」
翔太「まったくだ・・・それに俺がそのことであいつらを問いただしたらあいつら、反省するどころか抵抗してきたあっちが悪いとか開き直り初めて、最後は自分たちを正当化し始めたんだ」
光「・・・クズね」
リオン「なんだよそれ!?ふざけんな!くそ!俺がそいつら一発ぶん殴りに行ってやる!!!」
修斗「気持ちはわかりますが、関わらない方がいいですよリオンさん。それに無駄に恨みを買う必要はありません」
リオン「だけどよお・・・」
アリシア「同感ね、そいつらとわざわざいざこざを起こす必要はないわ。それにそいつらをどうにかするにしてもお兄様と話し合ってから決めるべきだわ」
リオン「・・・分かった」
リオンは納得してはいないようだがしぶしぶそう了承した。
修斗「それではそろそろ行きましょう。いつ怪物に襲われるか分かりませんし、彼を私たちの寮に連れて行かなければなりませんしね」
光「そうね」
翔太「あっ!ちょっと待ってくれ!」
光「まだ何かあるの?」
翔太「実は俺以外にもう一人高橋っていう仲間がいるんだ!」
リオン「あいつも無事だったのか!」
どうやらリオンの反応を見るに同じサッカー部の知り合いのようだ。
翔太「ああ!そいつも一緒に連れて行ってやってほしいんだ!」
アリシア「それは構わないけど…どこにいるの?」
翔太「俺と一緒に食料をとりに来ててさっきまでは近くにいたんだが…おーい!高橋!どこにいるんだ!」
翔太が呼びかけるが返事は返ってこなかった。
翔太「あれ?おっかしいな~近くにいるように言ったから遠くには行ってないと思うんだが…」
光「まさかとは思うけど、一人でどっか行って遭難したとかじゃないわよね?」
翔太「それはないと思うんだが…ん?」
翔太が少し離れた木の傍に人影があるのに気付く。
翔太「あいつ・・・あんなところにいたのか…おーい!高橋!」
翔太は人影の方に走り出す。
リオン「あ!おい!待ってくれよ!」
リオンも翔太について行く。
アリシア「・・・おかしいわね、なんであの高橋ってやつ返事をしないのかしら」
光「聞こえてないんじゃないの?」
アリシア「この距離でそんなことありえる・・・?」
翔太「おい!高橋!なんで返事しないんだよ?おい・・・え?」
翔太が高橋であろう人影に触れた瞬間、その人影は力なく地面に倒れた。
翔太「おい?高橋どうし・・・!?うわああああああああああああああ!!!」
翔太の悲鳴が響く。
リオン「!」
五人「!?」
翔太「おい!高橋!しっかりしろ!高橋!!!」
リオン「どうしたんだよ!何が・・・!?」
リオンは見た。翔太が抱える高橋と言う生徒は、頭の一部がまるで鋭利な刃物で切られたかのように抉り取られ、大量の血が流れだしていた。そして一瞬で理解した。彼がもう死んでいるということに・・・
翔太「高橋・・・なんでこんな・・・!リオン!危ない!!!」
リオン「えっ…」
翔太はそう叫ぶと同時にリオンを突き飛ばした。
リオン「っ!いったいなんだって・・・!?」
リオンが翔太のことを次に見た瞬間何かが翔太の頭部をかすめ、そのまま翔太は地面に倒れた…
リオン「!翔太あああああッッッ!!!」
リオンがすぐさま駆け寄る。
リオン「翔太ッ!しっかり・・・!?」
リオンがみた翔太の頭部は…先ほどの高橋と呼ばれた生徒と同じように・・・一部が抉り取られ、抉り取られた部分からは脳髄がはみ出していた。
リオン「翔・・・太・・・?嘘・・・だよな?」
リオンは翔太の体揺らすがピクリとも反応しない…すぐにリオンは理解した、翔太はもう・・・死んでいるだ…
リオンは先ほど翔太に向かって飛んできたものの方を見る・・・そこには・・・
巨大な翼をもった全長は2メートル近くある、まるで刃物のように異様に発達した鉤爪と嘴をもつ鳥の姿をした怪物が立っていた。
嘴には先ほど抉り取ったであろう翔太の脳髄のようなものが咥えられていた。
怪物はリオンには目もくれずに嘴に咥えたモノを飲み込んだ後、まるで満足したかのように翼を広げて飛び去って行く。
リオン「おい・・・待てよ」
怪物はリオンの声を聴くことなく離れていく。
リオン「待て・・・」
修斗「リオンさん!いったい何が・・・」
リオン「待てっつってんだろうがあああああああああッッッ!!!!!」
リオンの怒号が響き、彼の体から黄金のオーラがあふれ出す!
これは彼が能力を使った証だ…それも自分の体を顧みないほどに・・・
リオン「ああああああああぁぁぁッッッ!!!」
リオンはそのまま怒りに身を任せ怪物を追いかけていく!
修斗「リオンさん!」
光「あのバカ!一人で!」
エレン「追いかけよう!」
修斗「ええ!行きますよ!お嬢様?」
アリシア「・・・」
アリシアは翔太の亡骸を見てあの時の光景がフラッシュバックする。
アリシア(はぁ…!はぁ…!)
ドクン!ドクン!
アリシアの鼓動が早くなっていく。
アリシア「はる…か…」
翔太の姿が遥と重なる。
「アリシアちゃん」
アリシアの耳に遥の声が聞こえる。
アリシア「ッ!」
アリシア(違う!遥は死んだ!ここにはいない!これは幻!しっかりして!私!)
修斗「お嬢様!」
アリシア「!大丈夫よ!それよりもリオンを追いましょう!」
アリシアは何とか平静を保ち、修斗達とともにリオンを追いかける。
リオン「待てッッッ!!!」
リオン(よくも・・・!よくも翔太をッ!殺すッッッ!!!絶対にこいつは殺すッッッ!!!)
リオンが追いかけて続けると突然怪物の飛ぶスピードが落ちていく。
リオン(今しかねえ!)
リオンは腰につけたナイフを引き抜きそのまま怪物に向かって一気に跳躍する!
リオン(殺す!!!)
リオン「うおおおおおぉぉぉッッッ!!!」
リオンはそのまま切りかかろうとするが…
リオン「!」
なんと怪物は急旋回しそのままリオンに向かって突進してくる!
思いもよらない行動に反応が一瞬遅れる。
リオン(やべぇ!避けられねえ!)
空中に飛び上がってしまったリオンは回避することができない。
リオン(やられる!)
リオンがそう思った瞬間!
修斗「リオンさん!!!」
リオン「!」
間一髪修斗が現れリオンを突き飛ばす!しかし・・・
修斗「!・・・ぐっ!」
怪物は修斗の脇腹をかすめる。
リオン「っ・・・ハッ!修斗!」
リオンは直ぐに立ち上がり修斗に駆け寄る。
リオン「修斗!お前・・・!」
修斗「集中してください!リオンさん!怪物がきますよ…!」
リオン「ッ!クソ!」
リオンは武器を構える、修斗も刀を抜いた。
怪物は二人が臨戦態勢になったのを見ると、まるでこの世の生物とは思えないような鳴き声を上げる。
そしてそれを合図にしたかのように次々と似たような姿の怪物が姿を現す。
修斗「どうやら・・・お仲間もご一緒のようですね」
リオン「かまわねえよ…全員まとめてぶっ殺す!」
二人は怪物たちを見据える。
修斗「きますよ!」
リオン「!」
修斗がそう言うと同時に怪物は再び鳴き声を上げ突進してくる!
二人「!」
二人はそれを回避する!
リオン「!」
リオンが避けた先にもう一匹怪物が突進してくる。
リオン「なめんじゃねえ!」
リオンはそれを回避しナイフで反撃するが、怪物はその体格とは想像もつかないような速度で飛行し、リオンのナイフは右翼をかすめただけだった。
リオン(早え・・・!)
リオン「くそ・・・!」
修斗「ッ!」
一方修斗の方も怪物が次々と襲い掛かり回避に専念するばかりだった。
修斗(なんとか反撃しなければ!)
修斗「!そこ!」
修斗は次に自分に向かってきた怪物の動きを読み、怪物の嘴に向かって刀を振るう!
ガキィン!
刀と嘴が衝突し、まるで金属がぶつかり合うかのような音が響く!
修斗(硬い!まるで鋼鉄のようだ!)
修斗「くっ!」
更には怪物の攻撃は重く、修斗には逸らすのが精いっぱいだった。
修斗(嘴への攻撃は通用しない…やはりほかの部分に攻撃するしか・・・)
リオン「修斗!」
修斗「!しまっ!」
修斗の意識が一瞬それた瞬間怪物が猛スピードで突進していく!
修斗(刀でのガードでは間に合わない!)
修斗はそう瞬時に判断し左腕で怪物の攻撃を受けようとする。
修斗(頭部をいとも簡単に抉り取る攻撃・・・左腕を捨てたとしても防げるのか!?)
修斗がそう覚悟したその時!
アリシア「はあ!」
アリシアが飛び出し怪物を横から槍で突き刺す!
怪物は苦し気な声を上げながら暴れる!
アリシア「こいつ!」
アリシアの突き刺した槍から抜けそうになるが…
修斗「!」
ズバッ!
修斗が刀を振るい怪物の首を切断する!怪物はそのまま絶命した。
修斗「助かりました、お嬢様」
アリシア「間に合ったなら良かったわ、でもまだ油断できないわね」
他の怪物は同胞がやられたのに怒ったのか、鳴き声を上げて突進しようとするが。
真鈴「させるか!」
エレン「これでもくらえ!」
真鈴たちの銃弾とエレンの超能力による投石が怪物たちに襲い掛かる!
何匹かの怪物は回避するが、2~3匹の怪物はよけきれずに命中し、地面に墜落する。
光「命中ね!」
真鈴「へへ!楽勝だぜ!」
エレン「みんな大丈夫!?」
リオン「おう!」
修斗「私も大丈夫です」
エレン「良かった…」
エレンが安堵の息をもらす。
アリシア「それじゃ全員集まったことだし残りも倒しちゃいましょ」
全員が怪物たちの方に向き直す。
怪物は再び鳴き声を上げ、今度こそ突進してくる。
エレン「よーし!超能力で捕まえて・・・てっはや!」
エレンは超能力で動きを封じようとしたが、怪物の動きはあまりにも早く超能力でとらえることができない。
エレン「ひいいい!」
エレンは何とか飛びのいて回避する。
バン!バン!
真鈴が怪物に向かって何発か発砲するが怪物はそれを回避する。
真鈴「あいつら・・・図体のわりに動きが素早いんだぜ・・・」
光「あんなのどうやって当てればいいのよ…」
修斗「皆さん聞いてください」
光「なんかいい作戦でもあるの?」
修斗「作戦という訳ではありませんが奴らの動きを見て分かったことがあります」
アリシア「なんなの?」
修斗「奴らは確かに素早いですが、こちらに突進してくるときはどうやら方向転換ができないようです」
アリシア「本当なの?」
修斗「ええ、奴らの攻撃は私たちに一直線に突進してくるという単調なものしかないというのが何よりの証拠です」
リオン「確かにあいつら突っ込んでくるだけだな」
修斗「はい、なので奴らが攻撃してくるときの動きはある程度予測することができます。そこを狙えば・・・」
光「相手は避けられないから攻撃を当てることが・・・でしょ?」
修斗「その通りです」
リオン「よっしゃ!そうと分かればさっさとこいつらぶっ飛ばしちまおうぜ!」
修斗が怪物の弱点に気づいたことで一気に形勢は逆転する。
エレン「ある程度動きが分かればこっちのものだよ!そこ!」
エレンは突っ込んでくる怪物の動きを予測し、通るであろうカ所に超能力を発動する!
エレン「捕まえた!」
エレンの超能力が命中し、怪物は空中に固定される。
光「今よ!」
真鈴「ハチの巣にしてやる!」
光と真鈴がその怪物に向かって銃弾の雨を降らせる。もちろん怪物はよけることなどできず、無数の弾丸によって穴だらけにされ、地面に墜落する。
アリシア「単調な動きなら捉えるのなんて簡単だわ!そこよ!」
アリシアは自分に向かってきた怪物の攻撃を最低限の動きで回避し、そのまま槍を胸部へと突き刺す!
怪物は苦しげに鳴くが、アリシアが槍を引き抜くと同時に絶命した。
アリシア「楽勝ね」
修斗「!」
修斗はこちらに向かってくる三匹の怪物を見据え、刀を鞘にしまい居合の構えをする。
修斗「弐ノ太刀・・・」
修斗の刀が炎を帯びる。
怪物達はそれにかまうことなく突進してくる!
修斗「炎輪華(えんりんか)!」
修斗の引き抜いた刀はまるで円を描くかのように振るわれ、怪物たちは胴体を真っ二つにされる。
修斗「ふん・・・」
修斗は刀に付いた血を弾く。
修斗「さて・・・後は」
残りの怪物は全てリオンへと狙いをつける。その中には翔太を殺したあの個体も混じっていた。
リオン「上等だ・・・来いよ」
怪物達が一斉に突進していく!
リオン「エンチャント!!!」
リオンの体から黄金のオーラが再びあふれる。
リオン「うおおおおおおぉぉぉッッッ!!!」
リオンは一匹目に突進してきた怪物の左翼をナイフで切り飛ばす!
そして二匹目の攻撃を横に回避し・・・
リオン「オラァッ!!!」
その胴体に凄まじい威力の蹴りを放つ!
怪物の腹部は破裂し上空へと打ち上げられる!
リオン「!」
更に三匹目の怪物の攻撃を最低限の動きで回避し、首元にナイフでの一閃!
怪物の首は一瞬で切断され絶命する。
四匹目の怪物もリオンへと突進するがリオンはそれもいともたやすく回避する。
もはやリオンの動きは人間のそれを超越していた。
リオン「!」
リオンはそのまま怪物の胸部へと全力の拳撃を叩き込み、リオンの腕は怪物の胸部を貫通し、貫通した腕の中には怪物の心臓らしきものが握られていた。
リオンはそれを何のためらいもなく握りつぶした!
そして最後の五匹目の突進してくる怪物に向かって先ほどの怪物の亡骸を投擲する!
投げつけられた怪物の亡骸を避けることはできず、五匹目の怪物はもろに命中しバランスを崩してリオンの目の前に落下する。
リオンはその怪物の頭部を掴みそして・・・
リオン「あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁぁぁッッッ!!!!!」
そのまま怪物の頭部を捻じ切った。
リオン「はぁ…はぁ…」
怪物を全て倒したリオンは怪物の返り血で真っ赤に染まっていた・・・
光「うわ…」
真鈴「さっさすがにやりすぎなんじゃ・・・」
普段のリオンとは思えない姿に光達は引いてしまっていた。しかし今のリオンにそんなことは関係なかった。
真鈴「リオン?」
リオンは最初に左翼を切り飛ばした怪物のところに歩いていく。
怪物は片羽を失っても生きており、何とか飛び上がろうともがいていた・・・
この怪物こそ翔太を殺したあの個体だったのだ。
リオンは怪物の前に立ち、拳銃を引き抜く・・・
リオン「お前が・・・お前が翔太を・・・」
怪物の瞳がリオンの瞳と合う、殺気と怒りに満たされた瞳と・・・
その時に怪物は自身の奥に眠っていた生存本能が目を覚ましたのか、それとも恐怖からか、何とかその場から逃げ出そうと必死に羽を動かすが、片羽だけではどうしても飛ぶことはできなかった…
リオン「お前が・・・」
リオンは拳銃の引き金に指をかける・・・そして・・・
リオン「ッ!あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁぁぁ!!!!!!!!!」
そのまま怪物に向かって発砲した・・・
光「・・・」
エレン「ひっ…」
リオン「死ねッ!死ねッッ!!死ねえええッッッ!!!!!!」
何度も・・・何度も・・・怪物が動かなくなったとしても・・・それでも発砲し続けた…
カチ、カチ、カチ・・・
ついには弾もなくなるが、それでもリオンは弾倉が空になった拳銃の引き金を引き続けた…
リオン「殺すッ!お前ッ!お前だけはああああッッッ!!!あ“あ”あ“あ”あ“ぁぁぁッッッ!!!・・・!?」
引き金を引き続けるリオンは何者かが制止するそれは…
リオン「修斗!?」
修斗「リオンさん」
リオン「放せ!俺はまだ・・・!」
修斗「リオンさん・・・もう十分です・・・もう・・・死んでいます」
リオン「はぁ…はぁ…ぐっ…!」
修斗の言葉を聞いて、リオンは膝から崩れ落ちる。
リオン「翔太・・・翔太ぁ…くそっ・・・くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!!」
リオンの悲痛な叫びが空に響きそして・・・消えていった・・・
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