別次元の"何か"

愛の子

向き合うべき相手

 彼は目をつぶる。


 フーッと息を吐いた。


 軽く体を動かし、彼は彼で視界に広がる光景に正面から挑むことを決意した。


 おそらく今後出会うことのないであろう男たちの血だらけの争い。


 世の中が混乱に包まれている中、もはや判別不明になるほど顔に血を流しながら鬼の形相で醜い取っ組み合いをしている。


 周囲の女が泣き叫びながら必死に助けを求めているのが目に映る。


 誰もが目を背けたくなるこのカオスな光景こそが世に言う"地獄"なのであろう。


 不意に振り返った彼は思わず息を飲んだ。


 -キラッ-ピカッ-- 笑みを浮かべる彼。


「光だ......。まだ、光はある......!」


 僅かな希望ではあったがどうしても喜ばずにはいられなかった。


 世界が終わると言われている12月31日の前日であった。


 この世に現れる別次元の"何か"を追い払わないといけない。


 ラム氏の量子力学の研究がついに完成を迎えたのだ。


 すっかりやつれきった様子でカウントをする。


「5......4......3......。」

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別次元の"何か" 愛の子 @pota_pota

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