義母
山川タロー
第1話
ある日、これからテニスのナイターのレッスンに娘と二人で行こうとしていると突然家の電話が鳴った。家の電話が鳴っても普段誰も取らない。セールスの電話やら勧誘の電話がほとんどだからである。親戚や重要と思われる電話はほとんど携帯にかかってくる。しばらくすると留守電に切り替わり声が聞こえてきた。
「××県警の者ですが・・・」なに?警察?すぐに電話を取った。
「もしもし」
「あっ、山川さんですか。実は山田春子(仮)さんが亡くなりまして・・・」
「えっ」
私はとっさに女房の方に向き直り、
「お母さんが亡くなったって」と言った。
警察「それでお電話を差し上げました。今現場検証をしておりまして、必要であればお越し頂くことになるかもしれません。その時はまた電話します」ということで電話が切れた。スマホの電話番号は警察に伝えておいた。するとテニススクールに着いてすぐに警察から電話があり、来てほしいという。私は娘を残して一人で家に帰り、女房に事情を話し、一人で義母の住む××県に向かった。女房は娘の面倒を見なければならなかったし、そもそも女房は乗り物に弱く、長時間電車に乗ることができなかった。したがって私が対応するしかなかった。いろいろ今までお世話になってきた。まだ七十四歳であった。まだ亡くなるには早い。私は取るものも取り敢えずとにかく電車に飛び乗った。
警察署に着いたのは夜の九時頃だった。少し待ってくれと言われたが気が付くと夜中の零時を回っていた。
警官が来て事情聴取を受けた。いつ最後に会ったのかだとか、お母さんとの関係やその他諸々のことを聞かれたが詳しくは覚えていない。その後夜中の一時を回った頃お母さんとの対面である。亡くなってから数週間が経ち、夏場とあって腐敗がひどく、体も相当膨張しており、顔も女房に見せられないないほどであった。自分が来てよかったと思った。顔を見て義母に間違いがないかと聞かれたが正直間違いがないとは言えなかった。
三時過ぎに開放された。警察がホテルとタクシーを手配してくれてホテルに向かった。検視異様が七~八万かかると言われ了承した。火葬の手配も「警察がしてくれた。腐敗した遺体を地元に持っていくわけにはいかなかった。火葬にしお骨にして持って帰った。そして葬式・墓の手配、これらすべてを同時に行った。
義母はある宗教団体はいっていたが、亡くなってもその団体から連絡は一切なかった。
義母は離婚しておりこちらも接触は一切なかった。不動産屋が義父に連絡したが、離婚しているとの回答だった。
義母は我が家で墓を建てそちらに埋葬させてもらった。お一人では寂しかろうと墓誌として私の母親を刻字した。その後私の兄で早逝した三男、同じく若くして亡くなった私の母親の実母、母親ほ兄弟、若くして亡くなった女房の姉を刻字した。にぎやかな墓となっており、私は墓参りに行くと必ず妙法蓮華経と般若心経を唱え弔うことにしている。
安らかに眠られんことを祈るばかりである。
義母 山川タロー @okochiyuko
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