最後の愛してるを伝える日まで
景華
最後の愛してるを伝える日まで
「先生!! あけまして、おめでとうございまぁぁああす!!」
「……」
シラーっとした目で私を見てから、ソファに座ったまま無言でまた手元の本へと視線を戻す先生。
くっ……今年の先生もツンデレ炸裂か!!
だが私の愛は変わらないわ!!
推しへの愛を叫びながら、私は今年も生きる!!
私がこの世界に転移してきてからもう5年。
ついに今年の春から私はグローリアス学園の生徒になる。
教科書も制服も注文したし、この間の祈りの日に先生から素敵なマント留めもプレゼントしてもらった。
あとは、届いた制服のスカートの裾をこっそりと短くしておくだけ。
いや、長いのよ、この学園の制服。
貴族が多いからか足が見えないように長く設定されていて、元の世界の制服に慣れている私にとっては違和感でしかない。
幸い、平民の子たちは自分たちでひざ下あたりまでにしたりするみたいだから、私も自分でカスタマイズしちゃおうというわけだ。
制服と言えば膝上五センチ、だからね!!
「もー!! ここにきて五年だって言うのに、何で一度もあけおめしてくれないんですかっ、先生のツンデレさんっ!!」
「わかる言葉で喋ってくれ。私には雑音にしか聞こえん」
辛辣!!
でもそんな先生も好き!!
私への先生の扱いは相変わらずだ。
だけど怪我をしたら真っ先に心配してきてくれるし、先生が仕事で一緒に食事に行けないときは代わりにレイヴンやレオンティウス様を連れてきてくれたり、なにかと気を回してくれる。
優しいんだよねぇ、やっぱり。
「はぁ……好き」
「今の会話の流れからいったいどうしたらそんな言葉が出るのかが不思議でならん」
呆れたようにそう言いながら視線は本に落としたままの先生。
そんな先生の隣に腰を下ろすと、私はじっと先生の横顔を眺めた。
銀色の髪が肩を伝って綺麗に撫でつけられ、アイスブルーの瞳が上下に動き文字を追う。
綺麗だ。
とても。
そして絵になる。
手元の本の表紙に『一瞬であの世に行く10の薬草』なんて物騒な文字が書いてあること以外は。
「大体君は毎日毎日、好きだのなんだの言いすぎなんだ。もう15なんだから、自重しなさい」
「むっ。実年齢は20歳の大人ですもん!!」
「なお悪いわ!!」
この口うるささですら私にとってはご褒美だ。
推しが今日も元気で幸せ……。
「好きなものは好きなんだから仕方ないです。誰も私のこの熱い思いは止められません」
「はぁ……。もういい。この議論をしていても何も生まれないことだけはこの5年でよくわかったからな。それより、早く着替えなさい。朝食を摂りに行くぞ」
おぉ、もうこんな時間。
フォース学園長に後でお年玉をせびりにいかなくちゃ。
「はーい。先生、今年もよろしくお願いしますね」
「あぁ」
先生の返事を聞いてから、私は先生の部屋から続く自室への扉に手をかける。
「ぁ……」
「? なんだ? まだ何かあるのか?」
首をかしげる先生に、私は振り返り、ふにゃりと笑った。
「先生、今年も、愛してますよっ」
「~~~っ、早く着替えてきなさいっ!!」
先生の怒号が響いて、私はにやつく顔もそのままに自室へと戻った。
あと何度、あなたに好きだと伝えられるかはわからないけれど、この気持ちはずっと変わらない。
最後の「愛してる」を告げるその日まで、私はきっと、「大好き」と「愛してる」を伝え続けるだろう。
少しでもあなたの心に私が刻まれたらいいなと、そう願いながら。
END
―あとがき―
現在連載中の長編恋愛ファンタジー「人魚無双~幼女となって転移した先で推しの幸せのために私は生きる〜」番外編短編、いかがでしたでしょうか?
4章完結記念に、4章の展開とかけて新年の短編を書いてみました(*'ω'*)
よろしければ本編もどうぞよろしくお願いします!!
最後の愛してるを伝える日まで 景華 @kagehana126
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