第7話 なんで、こいつがここにいる?


「ここであってるよな?」


 日曜日の朝、和奏と遊園地デート(仮)の約束をしていた俺は指定された集合場所に予定の時間よりも20分ほど早く到着した。

 普段来ることのない場所なので迷ってもいいように多少早めに出たが、少し早すぎた気がしなくもない。スマホは一応あるが俺のスマホにはゲーム等は入ってないので時間を潰すことも出来ない。...どうせ、デートしてる風の写真を撮って回るだけなんだから本くらい持ってくれば良かったか?

 早速、俺はそんな若干の後悔をしつつ近くにあったベンチに腰掛ける。


「はぁ、ちょっ、ちょっと早すぎたかしら」


 すると何故かとても耳馴染みのある声が聞こえてきて、俺はゆっくりと顔を上げる。


「...んっ?」


 そしてその相手の顔を見た俺は固まった。


「なんでお前が!? というか、なんだその格好」

「えっ?」


 なんとそこに立っていたのは今までに見たことのないくらいに着飾り、ただでさえ目立つ容姿を更に際立せてまるで一輪の花のように咲くつむぎだったのだ。

 そしてつむぎも俺の存在に気がついたようで驚きの声を上げていた。


「おい、答えろなんでお前がここにいる?」

「そ、それはなんというか...たまたま、たまたまよ!」

「目を逸らしながら言うなっ! というか、大体お前が普段そんな可愛い服装で出歩いてるの見たことねぇぞっ。ちゃんと答えろ」


 この時間といい場所といい服装といい、まるで同じ遊園地に行くかのようだ。いや、確かに和奏はもう1人連れて来るって言ってたがこいつではないよな? お願いだから目を見て違うと言ってくれ。目を逸らさないでくれ。


「か、かわっ...」

「つむぎ?」


 するとつむぎは何故か顔を朱色に染め上げ言葉を詰まらせる。このアクシデントにあったかのようなリアクション、本当にたまたまなのか? 本当にたまたま会って動揺してるのか? いや、それもそれでつむぎにしてはおかしいけど最近のこいつ変だからな。


「し、失礼ね。あなたに見せてないだけでちゃんと休日くらい身なりは整えて外出してるわよ」

「いや、お前この間「オシャレは無駄。ナンパが増えるだけだし損しかない」って言ってたじゃねぇか」

「な、なんでそんなこと覚えてるのよっ。あ相変わらずしつこい男ね」


 俺が冷静に指摘をするとつむぎは早口でそんな罵倒を繰り出してくる。


「あれは珍しく同意見だったからな。たまたま覚えてたんだよ。というか、そうじゃなくて早く答えろよ。本当にたまたまなんだろうな?」

「そ、そうよ。たまたまよ」

「じゃあ、どっか行ってくれないか? 悪いが今日はお前の相手をしてる暇はないんだ。彼女と待ち合わせをしてるんだよ」

「...」

「おいっ」


 俺はシッシッと追い払うように手を振るがつむぎは固まったまま動く気配がない。


「わ、私もここで友達と待ち合わせがあるのよ。あなたの方がどっか行きなさいよっ」


 すると数秒した後につむぎが突然そんなことを言いだした。だが、長年の付き合いである俺は知っている。つむぎは嘘をつくとき目を逸らす。さっきもそうだった。


「お前そもそも友達居ないだろうがっ。嘘つくなっ。俺の邪魔をしたいのかしらんがたまたまだって言うならこの場から離れてくれ」

「蒼じゃないんだしと、友達くらいいるわよ。心の中に...」


 目を逸らすどころか凄い勢いで目をグルグルと回しながら、ボソボソとそんなことを言うつむぎ。


「それイマジナリーフレンドじゃねぇかっ。あと、俺はちゃんとリアルに友人おるわ!」


 なんでこいつ頑なにどっか行こうとしないんだよ、まさか本当にこいつが...いや、まだだ希望を捨てるな、俺。


「とーにかく、離れてくれって言ってんだよっ」

「わ、私も花子ちゃんと待ち合わせしてるのよっ」

「だから、それイマジナリーフレンドだろって。さっき言ってだろ」

「花子ちゃんは身長190㎝、体重59㎏、年齢16歳、趣味はお菓子作りで将来の夢は不動産屋。弁護士と検察の両親を持ち、金髪ツインテールに青色でくっきりとした目に愛嬌のある泣きぼくろが特徴のごく普通で可愛い女の子よっ」

「いや、どれだけ情報あろうがイマジナリーフレンドはイマジナリーフレンドだからな!? あと、それでごく普通は無理があるだろ」


 つむぎは意味の分からないことを言ってなんとかここに留まろうとする。というか、やけに作りこまれて不安になったわ。本当に話しかけてたりしないよな? よな?


「やぁ、如月くん。待った? それに柏木さんもこんにちは。2人とも今日はよろしくね」


 俺とつむぎがそんなやり取りをしていると和奏が笑顔で手を振りながらこちらへと向かってきて、そんなことを言う。「2人とも」って、


「...つむぎ?」

「ひぅ」


 俺がゆっくり振り返るとそこには顔を手で覆い隠し、しゃがみ込んでいるつむぎの姿があるのだった。

 おい、しゃがみ込んでないで説明をしろ。説明を。たまたま言ってたのはなんなんだったんだよっ。

 大体なんで和奏はつむぎを呼んだんだよ。そしてなんでつむぎもつむぎで来るんだ。本当に意味が分からないんだがっ。





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 次回「遊園地すたーとだよ☆」


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お互いに嫌いと公言している美少女幼馴染の為に陰で色々と手を回していたことが、幼馴染本人にバレて今まで築いてきた関係が壊れた... タカ 536号機 @KATAIESUOKUOK

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