まずまずな生き方

@neko2ne

第1話

お父さん、お母さん、ぼく。

家族みんなで揃ってお出かけ。

でも、みんな浮かない顔をしている。

だって、今日はおばあちゃんのお葬式に行くのだから。


まだ給食前だというのに、先生に呼び出されて下校をした。

クラスのみんなに注目されて、あんまりいい気持ちじゃなかった。

「葬式」で帰る僕を、みんな、ソワソワしながら見守っている。

いつも、帰る時にみんなにかけられる言葉。

「じゃあね」の一言が妙に、重たかった。


僕が教室から出た後の話し声が、僕から遠ざかって行くのに大きく聞こえる。

みんな、僕がいないところで、「葬式」の話がしたいんだろう。

僕らは子供だけど、子供なりに…死ぬ、という知らないことに興味があるし、死を面白がってはいけない、ということもわかっている。

その、好奇心も中途半端な優しさも、ぼくも持っているからこそ……その話し声の一部に僕がなれない事こそ、特別なことだと思い知らされるのだった。


まだみんなが5時間目を受けている、昼下がり。僕は車内でコンビニご飯を食べている。僕は、自分一人だけの下校時にみんなにかけられた目線を思い出して、あまり味がわからなかった。


家についたらすぐに、僕の服とか、お泊まりの用意ができていた。

制服のまま、すぐに車で静岡のおばあちゃんの家に向かうことになった。向こうについたら9時ぐらいだろうか。

おばあちゃんとは、お母さんのお母さんのこと。90歳くらいの人で…僕は毎年の正月ぐらいしか、会ったことがない。

お母さんのお兄さんの奥さんから、亡くなったと、連絡をもらったみたいだ。

お母さんは、いつもみたいに話しているつもりだけど、やっぱり少し不安そう。

お父さんは…いつも荒い運転をわざとして僕らを驚かすくせに、今日は不自然な安全運転だ。お母さんの悲しい気持ちが、うつっているみたいだ。



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