第2話

栄田さんが言った。

「すごいだろう」

「ああ、すごいな」

「なんだかわかるか」

「まるでわからんが」

「だぶん子供の霊だと思うんだが」

「そうかもしれんな。残念ながら、俺にはわからんが」

「そうか、それじゃあ」

栄田さんが歩き出したのでついて行くと、栄田さんは家に入った。

俺も入る。

そこで出された茶菓子などを食べながら、揺れるブランコについて話した。

ただ栄田さんは子供の霊にしたいようだが、俺がわからないを連発するので、話はまるではずまなかった。

そのうちに会話が続かなくなってきた。

「それじゃあ今日はこの辺で」

頃合いだと思って、俺はそう言った。

「来てくれてありがとう」

「でもどうして俺に」

「会社の中ではこれを見せても、一番大丈夫な人だと思ったから」

よく言われるあんなものを見せたら、人によってはなにを言い出すかわからない。

この俺は安全パイだと思われたのだろう。

俺は昔からいろんな人に、そう思われてきたのだ。

「それじゃあ、また明日」

 別れた。


家に帰りながら考える。

栄田さんにはわからないを連発していたが、実は俺は見える人なのだ。

だがそんなこと言うと、それこそ何を言われるかわからないので、人に言うことはほぼないのだが。

だから最初から分かっていた。

玄関のドアが開いた時からそこにいた。

栄田さんに寄り添うように。

白くてむこうが透けて見える幼女が。

栄田さんが家を出ると幼女がついてきて、公園に着くとブランコの上で暴れまわった。

生きている子供では到底無理な動きで。

そして飽きると栄田さんのところに戻って来た。

そして栄田さんと一緒に家に入った。

つまりあの幼女は公園にいるのではなく、栄田さんにとりついているのだ。


       終

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夜のブランコ ツヨシ @kunkunkonkon

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