第六話:盗賊の真実

 盗賊が振り下ろそうとする腕に弓矢が貫かれ、そのさらに背後にはクロスボウを構えたハンヌがいた。

「ぐがぁ!?」

「お前ら気をつけろ! 盗賊がいるぞ!」

「えっ、きゃあ!?」

「この野郎やりやがったな!」

 盗賊はハンヌに突進し、彼の腹を蹴り上げる。

「ぐっ、がぁ!?」

「死に晒せや、青二才が!」

 盗賊はハンヌを襲おうと、曲剣サーベルを振り下ろそうとした時、背後から刀で貫かれ、それを見れば、ブランが瞳が澱んだ鬼の形相で刀を背中に刺していた。

 盗賊は血を流し過ぎて倒れたが、ブランはまだなお自分たち姉妹の親たちを殺された復讐心に突き動かされ、前世さへも得られなかった鋭い殺意と滾った憎悪が平常心を完全に壊し、盗賊を刺し貫き続ける。

「いぎゃ、やめ、ぎゃ、俺が悪かった! 許し、ひぎゅ! 嫌だ、死にぎぃやぁぁぁぁぁ!」

「死ね! 死ね! 返してよ! 温かいお母さんを、優しいお父さんを、頼もしいお婆ちゃんを!」

 闇に心を奪われたブランを見ていられないマロンとハンヌは彼女の脚や胸を捕まえ、必死に呼びかけた。

「落ち着け、ブラン! こんなことしても、両親や村長は戻って来ねえ!」

「離してよ二人とも! こいつらさえいなければ! こいつらさえいなければ!」

「お姉ちゃん! もう死んでるよ! この怖い人死んでるよ!」

 二人に言われ、正気に戻ったブランは青白い遺体となった盗賊を見つめる。

 呼吸を整えながら、あるものを発見し、憎しみから絶望へと塗り替わる。

 それは火災の炎に照らされたが付いた金貨と小袋だった。

 そして、恐ろしい真実に達する。

「私が、私がみんなを殺したんだ。」


 その迎えた朝、村人たちはクロスボウや刀という武器や害獣である魔物と戦うとした戦闘訓練のおかげで盗賊を追い払えたが、火災による奇襲で村人の数が数十人まで減った。

 家や畑は焼かれ、家畜も一匹残らず殺されただけでなく、畑以外の地面に植物を枯らすほどの異臭を放つ毒物が撒かれ、畑を増やせなくなってしまった。

 さらに驚くべきはその惨状は他の農奴の村も同じで、全ての村を盗賊が襲ったことになる。

 しかも、そのことを憲兵に訴えても聞き入れて貰えず、年貢を払うか、女を差し出すかの一点張りだった。

 次々と起こる不自然な行動に全ての農奴は怒り心頭になり、村人同士の喧嘩沙汰さへも起きようとしたその時、ブランは意を決して彼らを呼びかけ、生き残った全ての村人たちの集会を始める。

 そして、その当日、生き残った村人、百数人が賢女であるブランを見つめる。

 ある者は村を変えた賢女という期待に縋り、ある者は状況や空気も読めない愚女という侮蔑を込めて、バラバラな想いで見つめていた。

 

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MONSTER:EDEN〜魔物達の生存大戦〜 @kandoukei

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