最悪。出会ってしまった
「確か、
「は、はい」
「名前なんだっけ?」
「明奈忘れちゃったの?」
この人たちはクラスでも陽キャの部類に入る女子たちだ。名前は確か、秋元明奈と夏井美樹。
顔も整っており、クラスメイトだけでなく他のクラス・学年の生徒から告白されていると噂で聞いたことがある。
その全ての告白が轟沈しているとも聞いた。
名前の話し出した。もうおしまいだ。何もかも終わりだよ。
最悪だ。クラスメイトが異世界で一番会いたくなったまである。
よりによってこんなところで……
「画竜点睛、だよね?」
「あはは、そうだった。マジウケる」
「……ハハハ、オワッタオワッタ。モウ、コノ世ノオワリダァー」
俺の名前はおかしい。俺の名前は
名前というのは大事なもの、画竜点睛という言葉の意味は物事の肝要なことのたとえ。
俺の親は何をトチ狂ったのか、これらを=でつないでしまったのだ。
名前は大事だから、肝要って意味の画竜点睛にしようと。狂っている。イカれ散らかしている。
だから、シンって名乗っていたのに!もう全てがぶち壊しだ!
異世界ライフがこの瞬間崩れ落ちた。どんな顔して生きていけばいいんだ……
仮面でも被って生きていこうかな。仮面〇イダーとか言って。
「こんなところで何やってんの?」
「あっちから来てる兵士たちの気を引こうと……」
「なんで?あの人たちは魔人を捕まえようとしてるだけだよ」
「魔人を捕まえることに疑問を感じないの?」
「だって魔人って悪い奴なんでしょ?だったら捕まえた方がよくない?」
「そうそう。悪人を捕まえるだけだし」
魔人を捕まえることに何の疑問も感じてないのか。ていうか魔人が悪人?
俺とこの2人の認識はどうやら真逆らしい。なんで魔人の事を悪人だって思ってるんだ?
これは正直に言ったら敵になる気がするな。上手く嘘をついてやり過ごしたい。
というか正直に話せば仲間になってくれたりとかしないかな?
いや……上手く伝えられる気がしないな。それにこの人たちと大した面識無いし。
「2人は何してるの?」
「魔人を探してるんだよ」
「そうそう。全っ然見つからなくて。どこにいるか知らない?」
「んー見てないや。ごめんね」
俺はゴンザに命令して少しずつクラスメイトと距離を取る。
このまま下がって逃げよう。
「どこ行くの?」
「俺、家あっちだから」
「えークラスメイトなんだし一緒に来なよ。めちゃ良い生活出来るよ」
「あそこの城なら何も不自由無いよ」
「いやーいいよ。今の生活でも十分だから」
俺は頭を掻きながら苦笑いして返す。
そして十分距離を取ったことを確認してゴンザに改めて命令する。
「ゴンザ!レッツゴー!右だ!」
「ガウ!」
「だからそれ左ィー!!!」
このミスさっきもやったろォ!
二度目は回避出来ただろぉ!!
「あれー?いっちゃったぁ」
「まーいいんじゃない?ていうか、早く魔人見つけようよ」
「そだねーホンッとにどこいんの?」
「歩き回んの疲れるんだけどぉ」
2人はシンがどっか行ったのを特に気にすることも無く、愚痴っていた。
到着した兵士たちにも事情を説明して一緒に探してもらうことにした。
「おーい2人とも!」
「あ!祐二くぅーん!」
「祐二君助けてぇ!」
愚痴っていた2人の元にある男子生徒が現れた。
その男子生徒の姿を目視した瞬間、2人は表情を変えた。
男子生徒の顔が整っているわけでもない。お世辞にもイケメンとは言えない顔面。
どこにでもいそうな顔しているのだが2人はとても彼に懐いている。
「魔人探しは兵士たちに任せてゆっくりしようぜ」
「えーでも一応仕事だし。やらなきゃマズいんじゃない?」
「大丈夫だって文句言って来たら俺が何とかするよ」
「ほんとー!ありがと!」
女子2人は男の言葉に乗って仕事を完遂していないのにも関わらず城に戻っていった。
その様子を見ていた兵士たちは懐疑的な視線を向けるだけで口出しはしなかった。
が、兵隊長が3人の前に立ちふさがった。
「困ります。いくら救世主とはいえ仕事はやってもらわなければ」
「別にいいだろ。魔人探すくらいお前らでも出来るだろ」
「そういうわけにはいきません。あなた方がどれだけの力をお持ちなのかは知りませんが、今のままでは信頼できません」
「信頼?別に俺らはお前らの事、信頼していないし。お前らもそれでいいだろ」
祐二は立ちふさがった兵隊長に対しても否定的な態度を取り続け、横を通り過ぎて行った。
祐二は女子2人の肩に手をかけ、俺の物だと言わんばかりに見せつけて歩いていた。
兵隊長はやれやれといった表情でため息を吐いた。
「いつもこの調子だ。本当にいざという時に役に立つのだろうか」
「困ったものだな」
小さく呟いた独り言は誰にも聞こえることなく泡のように消えていった。
兵隊長は段々小さくなる3人の背中を見つめていた。
――――――――――
「これ合ってるよね?」
ゴンザの背中に乗ってもう30分は経ったであろう。
未だにメズ達の姿は見えない。メズ達は走って逃げたのでそこまで遠くには行ってないはずなんだが。
スピードではこちらの方が圧倒的に早いにも関わらず見つからない。
隠れているのかもしれないが、ゴンザのナビが間違っているのではないかと心配になってきた。
知らない街で迷子も嫌だけど森で迷子はもっと嫌だ!
「おーい!メズさーん!」
「ガウ!」
「お前じゃない」
大声で呼びかけてもゴンザが返事をするだけだ。
お前じゃないんだけどなぁ。
返答が無いってことは近くにはいないのだろう。
「どこに行ったんだろうな」
「ガウ」
目を凝らして周りを見渡しているとゴンザが急に止まった。
そして、ある方向を見て吠える。
俺はゴンザが吠えた方向をよーく見てみる。
「やめろ!ねぇさんに触れるな!」
「そうはいかねぇなぁ。魔人はこの国じゃ奴隷って決まりだ」
「そうだ。お前らに人権はねぇんだよ!」
目を凝らした先で魔人2人が人間に囲まれていた。
人間の姿からして真っ当な人間ではない。賊のようだ。
あれはメズ達っぽいな。視力高くて助かった。
何気に視力が上がるスキル役に立つな。
「女の方は高く売れそうだなぁ。売る前に楽しむか?」
「そりゃいい!そうしよう!」
「やめて!」
「やめろぉぉ!!!」
「おいおいwそんな攻撃じゃ当たらねぇぞw」
アズは手に持っている剣を精一杯に振るが弱々しくかすりもしない。
だいぶ体力を使ってるみたいだ。今のままじゃ勝ち目は無さそうだな。
早く助けてあげよう。
「ゴンザ!レッツゴー!」
「ガウ!」
ゴンザは一直線に賊の方に向かっていく。
やべぇ。いつもよりスピード早い!
マジで振り落とされる!
俺は必死にゴンザにしがみついていた。
「ガウ!!」
「いや!まってぇぇぇ!!!!」
ゴンザは賊にある程度近づいたところで急ストップした。
その瞬間、とてつもないGが体に掛かり俺は吹っ飛ばされた。
なんで急に止まるんだよォォ!!!!!!
「大人しくしろよ。そうすりゃ痛い目見ることはねぇ」
「ふざけんな……そんなことするわけ、グッ」
「言う事が聞けねぇ魔人には躾が必要だなぁ!」
「ぐへへ!もっとやっちまえ!」
「ん?なんか飛んできてねぇか?」
「あ?気のせいだろ」
「いやいや飛んできてるって」
「そんなの虫に決まってるだろ」
「いやでも結構デカいぞ?虫じゃねぇと思うんだけど」
「虫だって。この世の飛ぶものは大抵虫だろ」
「とまれとまれとまれとまれとまれとまれぇぇぇ!!!!!!」
「「「ウワァァァ!!!!!!」」」
俺は賊たちに弾丸ライナーで突っ込んだ。
痛ってぇ!頭カチ割れるかと思ったぁ。
絶対ゴンザわざとやっただろ!
いつからそんな知恵を身に着けてんだ!
「シンさん!?大丈夫ですか!?」
「カチ割れるかと思いましたけど大丈夫です。それよりも賊たちは!?」
「それなら……」
「あぁ。ストライクですか。人生初のストライクをこんな形で取るとは……」
賊たちは全員地面に伏していた。どうやら全員倒してしまったみたいだ。
体で人生初ストライク取るとはな。全く何が起こるか分からないものだ。
「お前……!」
「アズ!やめなさい!」
「ねぇさん。どいて!」
アズは足元がフラつきながら俺に剣を向ける。
まだ敵対されるか。俺が人間である以上仕方のないことかもしれない。
でも、俺は他の人間と違うということを分かって欲しい。
「あなたこそその剣を下ろしなさい!」
「二度も助けてくれた恩人にまだ剣を向けるの!?」
「っ……!」
アズはメズの言葉に感化されたのか剣を下ろした。
安心、していんだよね?
近づいたら不意打ちとか喰らわないよね?
「すいません。アズが失礼を」
「大丈夫です。弟さんの気持ちも分かりますから」
「本当にすいません。何度も助けていただいて。シンさんが無事で良かったです」
「俺は大丈夫ですよ」
心は大丈夫じゃない。一番会いたくなかった人たちに会ってしまったし。
メンタルブレイクはされている。
「俺はシンって言います。お願いします」
「……」
俺はアズの方を向いて自己紹介をして手を差し出す。
アズはそっぽを向いて手を握ろうとはしない。
まだ無理か。
「アズ」
「……はいはい」
メズが名前を呼ぶと俺の手を握り返してくれた。
が、とてつもない力で握ってきた。
握りつぶす気か!!
「あんた歳は?」
「いくつに見えます?」
「合コンか」
ツッコむようにアズの手を握る力がさらに強くなる。
ヤバい……これ以上強くされたら手が無くなる。
ちょっとふざけただけなのに!和ませようと思っただけなのに!!
「歳は?」
「1、18です」
「チッ、年上か」
「え?今舌打ちした?」
「空耳だろ。18で耳ボケてるのか?」
「生意気言うじゃないか。若造」
俺はアズの手を思いっきり握り返した。
アズは表情1つ変えないが、額から汗を掻いてるのが分かる。
お!効いてるぞ!
やられた分やりかえさせてもらうとしますかぁ!!!
「何してるんですか?2人とも?いい年してカッコ悪いですよ?」
「「痛たたた!!!!!!」」
俺とアズはメズに思いっきり耳を引っ張られる。
ちぎれる!ちぎれるってぇぇ!!!
俺は思わずアズの手を離す。アズも同じタイミングで手を離した。
「しょうもない事で争わないでください」
「すいませんでした」
「ごめんなさい。ねぇさん」
俺とアズは引っ張られた耳を抑えながらメズに謝る。
まだ痛い。とてつもない怪力の持ち主だ。
メズを怒らせるのはやめよう。
「それでこれからどうする?」
「仲間を助けるに決まってるだろ」
「全員助けるのは無理がある」
「なんだと!?」
「助けてあげたいけどあの広さの街を探すのは無理がある。しかも、あの街にいるとは限らない。それに君たちは魔人だ。見つかったらマズいんだ」
「見捨てろっていうのかよ!」
「違う!今はただその時じゃない」
「落ち着いてください!」
俺とアズの口論がヒートアップしてきたところでメズが仲裁に入る。
熱くなっていた自分を落ち着け、冷静になる。
今ここで言い争っても時間の無駄だ。
「とりあえず、魔人が集まってる場所に行きましょう」
「コロニアか」
「コロニア?」
「はい。魔人たちは集まって生活しています。その場所がコロニアです。いくつかありますが、とりあえず近場のコロニアに向かいましょう」
「俺入って大丈夫?めった刺しにされない?」
「されるかもな」
「アズ。大丈夫です。私たちが説明しますから」
アズは明らかに嫌そうな顔して舌打ちをした。
すげぇ嫌われてる。他の魔人もこんな感じではないだろうか?
コロニアに入った瞬間、血祭に上げらないかな。
「早速向かいましょう」
「ゴンザよろしく」
「これに乗るのか?」
「アズ、早く乗りなさい」
「はいはい」
アズは渋々といった様子でゴンザの背中に乗る。
行き方など分かるはずもないのでメズにナビを任せる。
「お願いします。ゴンザさん」
「ガウ!」
「うおっ!マジか!スピード出過ぎだろ!」
「ちゃんと掴まっておいてよ!」
「何度乗っても速すぎィー!!!」
ゴンザは特急で発進した。
これは、クタクタになるやつだ。
俺は数十分後の未来を予想するのであった。
31人クラスでクラス転移が起きたが30人しか転移出来ない模様 in鬱 @kauzma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。31人クラスでクラス転移が起きたが30人しか転移出来ない模様の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます