テキスト名「使用例」


 令和三年 五月三十一日 東海プ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ 3階カフェ「マイコ」にて

 対象 水原⬛︎⬛︎⬛︎ 取材協力 ⬛︎⬛︎手⬛︎⬛︎委員会

 

(これは音声ファイルを書き起こした形式のようでした。以下はインタビュー形式で進むようです。解読できなかった部分以外はほとんど原文ママ載せています)

 

 録音開始


音声主「本日はお時間いただきありがとうございます」

水原「いえいえ。こちらこそ。僕でよかったのか、むしろ恐縮です」

音声主「(軽い笑い声)まあ、先に一杯どうぞ。話聞くだけですから」

水原「あ、すみません。ありがとうございます(コーヒーを啜る音)まあ、よく聞いてましたけど、まさか自分が出る側になるとは思ってませんでしたよ。わかんないもんですね」

音声主「あの手紙に、ウチの(不明瞭)がビビっときたみたいでしてね。(不明瞭)さん、これ絶対そうですって! ってやけにはしゃぐもんで。こういう時のコイツの勘って、妙に引き寄せるんですよ。ほら、この前の特集した⬜︎⬜︎⬜︎の潜入あったでしょう?」

水原「ああ! 聞いてましたよ。職場だったんで流石にガッツリとは見れませんでしたが、あの、女の子の部屋の(不明瞭)の部屋でやったやつですよね」

音声主「あれもアイツが急に車止めて、あれ。って指差して急いで回したんですよ」

水原「あれ緊張感すごかったですよ、音声だけでも。特に襖から子(不明瞭)の時は、なかなかでした。緊張で奥歯噛んじゃいました」

音声主「はは、だから今回もちょっと期待しちゃうっていうかね」

水原「あー、結構プレッシャーですね。アレと比べちゃうと、かなり弱いですよ」

音声主「まあまあ、とりあえず聞かせてください。分かる範囲でいいんで」

(店員の声が横から聞こえる。微かに聞こえる内容として、音声主の頼んだサンドイッチが並んだと思われる)

音声主「一週間前でしたっけ? 確か読んだ限りですけど」

水原「そうですそうです。ただ、発見したのはそれより前ですね」

音声主「やっぱり、バス停ですか?」

水原「そうですね。あの時は昼間でした。コンビニに昼飯買いに行こうと思ってたんですよ。その時に通るのがそのバス停のところなんですけど、最初に発見した時は、一匹だけでした」

音声主「そこから増えていったと」

水原「はい。遠くからなんだろな? って思いながら近づいたんですよ。何にも珍しくない、普通の子供用の靴でしたよ。赤色で、ウサギの刺繍が横についてる。片方だけでした」

音声主「落とし物かな? って思ったんですよね。それ見て」

水原「冬って、よく手袋の落とし物とか見かけません? 片手だけのやつ。で、道の真ん中に放置されるのもなんだからって、誰かがガードレールに刺して置いとくみたいなの。あんな感じかと思って」

音声主「ああ、言われてみれば。感覚はわかりますけど」

水原「子供って、よく靴脱いでそのままどっか行ったりするんですよね。小さい子ってそういうことするんですよ。職場でもよくママさんがそれで履かせてたりしてますし。だから、てっきりそんな感じで、多分ベビーカーかなんかで歩いてる時、脱げたんじゃないですかね」

音声主「そういうもんなんですね。それで、その靴どうしたんですか?」

水原「別にどうも。落ちてるなってぐらいで特には触らなかったです」

音声主「まあ、そりゃあそうですよね。わざわざ触れないか。でも、そこから?」

水原「ええ。最初は大家さんでした。回覧板を回してくれた時に、聞かれんです。「ペット飼ってる?」って。そもそもペット禁止物件なんで、いいえって答えたら「最近動物の鳴き声がしてうるさくて困ってる」って言われました」

音声主「動物って、曖昧な言い方ですね」

水原「あはは。まあまあ田舎なんで、たまに鹿とか狐とか見かけたりするんですよ。あ、今のとこ被害とかはないんですけど。危ないっすかね?」

音声主「まあ、ちょっと気をつけた方がいいかもしれませんけどね。で、いないと」

水原「大家さんは怖がってましたね。彼女が言うには「無理やり形の合わないホースに突っ込もうとした時のゴムみたいな音」らしくて」

音声主「なんか無駄に、具体的というか」

水原「ですよね。まあでも、今なら僕もわかりますよ」

音声主「聞こえた、ということですか?」


(大きなノイズ。水原氏の音声と推測できるが、内容までは聞き取れない。耳につく声で「ニ回から」「見て」「〜〜でもないと」「〜〜〜はきっと、まあ〜〜」など。約十五秒後、音声が戻る)


音声主「あー、なるほど。その次が? その、こちらに送ってくれた写真のやつなんですよね」

水原「そうですね。ちょっとブレてますけど。このバス停の横に立ってるの、わかります?」

音声主「あ、これですよね。これ、何してるんですか? 手あげてます? この人」

水原「そう見えますよね。そうなんですけど、もうちょっと言うと、餌あげてました」

音声主「はぁ、……餌?」

水原「この、下に写ってるのが全部(不明瞭)なんですよね。(不明瞭)で。それらに向かって、なんか撒いてたんですよ。鯉の餌やりって、それ! って撒くじゃないですか。あんな感じ。電灯で光って、なんか舞ってるなって」

音声主「何時ぐらいでした? この時」

水原「深夜一時半ぐらいだったかな。たまたまその日、飲み会で遅くなって終電一本前にに乗れて、うわ助かったー、帰るぞー、って良い気分で道歩いてたんです。で、いつものバス停の道に来たら、誰かが立ってたんですよね。ロングスカートで髪が長かったから、女性だと俺は思いました。でも変じゃないですか、こんな時間に、不用心な人だなってぼんやり」

音声主「言いたいことは、まあ。違和感というか、やっぱり深夜に女性一人は、流石にね。というか、普段そういう人いるんですか?」

水原「いや全然。駅から反対なんで、深夜はほぼ過疎です」

音声主「目につきますね。で、見てしまった、と」

水原「そんな感じです。飲んでたし、あんま深く考えてなかったし。何してんのかな? って思ってたら、手振りあげながら、地面に話しかけてたんです」

音声主「なんて言ってた感じ、とかって」

水原「そうだな多分、「ほら、大丈夫だからねー。今日はいっぱいねー」みたいなこと言ってたかな。すごく楽しそうな感じでした。小さい子に話かけるテンションって言えば近いでしょうか。それで、地面に見たら、その、小さいものがいっぱい並んでて、その人の足元に集まってたんですよ。こういう時って、変に勘付きませんか?」

音声主「別に気づきたくないのに。みたいなね?」

水原「まさにそれで。写真見てもらえたらわかると思うんですけど、全部、子供用の靴でした。片方だけの」

 

(大きなノイズが四十八秒間続く。以後、走っているであろう人物の息切れの声とバタバタとした足音が続く。それに混じり、複数人の笑い声が混じってくる。時折「ふざけんな」「え、あれも」と二言の言葉を確認するが、意味は現在不明)


音声主「その後って(不明瞭)に報告とかってしたんですか?」

水原「いや、まあ、やべえなとは思いましたけど、俺は遠回りして帰ったんで。全然そのあとは。こんな感じなんですけど」

音声主「いやいや、すごいっていうか、やっぱりあたりでしたね。(不明瞭)の言ってたことは当ってた。この写真ってお預かりしても?」

水原「あ、もう是非。データもあるし。後は(不明瞭)」


録音終了


※zipファイル「miho_chan_noesa.pdf」より三枚の写真を発見。

 ・ロングスカート姿の腕が異常に伸びきっている女性がバス停で両腕をあげている写真。

 ・「これがいい」とマジックペンで落書きされた家族写真が貼られた電柱の写真。

 ・(解読不可)と死んでる金魚が入った水袋がテーブルの上に置かれた給食の献立表の写真。

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