後日談 休日デート

「はぁ〜!ようやく……ようやくようやくようやく!ようやくこの日が来たね、あるとくん!」


 朝から麗城さんの部屋で麗城さんと一緒に過ごしていると、麗城さんが大きな声でそう話しかけてきた。

 この日、というのは、俺と麗城さんが出かける日のことだ。


「そうだが、いくらなんでもテンションが高くなりすぎてないか?」

「それはテンションの一つや二つ高くなるよ!だって今日は、前世から念願だったあるとくんとのお出かけ……ううん、デートなんだから!!」


 本当ならずっと俺と出かけたかったらしいが、やはり学院生活に世界の幸せを守るための組織編成、アナスタシア家の令嬢としての役目を果たすというのはかなり難しいらしく、俺も出来る限り手助けをしているが、それでもどうしても麗城さんに負担がかかってしまい、麗城さんは俺との愛情があるから疲れることはないといつも言っているが、休みを取って俺と出かけたりすることができないというのが本当に辛いと言っていた。

 だが、今日は学院が休みで、組織編成、アナスタシア家の令嬢としてしなければいけないこともかなり落ち着いたため、今日はようやく休日となり、出かけに行けるというわけだ。


「あるとくんとの休日デート!楽しみ〜!」

「それには同感だ、麗城さん、一緒に楽しもう」

「うん!」


 そして、今日は休日ということなので、俺は執事服ではなく黒のロングコートに着替え、麗城さんは胸元にリボンの付いた、パーティーなどに着ていくようなドレスではなく、普段使いのできる白のドレスを着ていた。

 玄関に向かうまでの廊下の道中、俺たちは互いの服装について話す。


「あるとくんは、やっぱり執事服だけじゃなくてもっと色々な種類の服を着た方が良いよね、絶対似合うのに」

「執事っていう仕事上、やっぱりどうしても仕事服を着ないといけないからな……それに、似合うって言ったら、麗城さんの方こそ何を着ても似合うんじゃないか?」

「あるとくんがそう言ってくれると嬉しいね……ふふ、今日もかっこいいよ、あるとくん」

「……麗城さんも、綺麗だ」


 もしここが二人だけの部屋の中なら一度ぐらいキスをしてそうな雰囲気だったが、ここはアナスタシア家の屋敷の廊下……まだ俺たちの関係は公表できないため、そういったことはすることができない────と思っていると、麗城さんは俺と腕を組んで、俺に身を寄せてきた。


「麗城さん、ここは────」

「腕を組むぐらい平気だよ、私たちは仲が良いことで有名だからね」

「……そうだな」


 腕を組んだまま玄関に着き、そのドアを開けるとその先には馬車が止まっていて、その馬車の前に立っている使用人の人が言った。


「シャーロット様とフェアール様、おはようございます……どこかへ行かれるのでしたら、馬車に乗って行かれますか?」

「ううん、必要ない……休日ぐらいは歩く時間も楽しみたいの」

「かしこまりました、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


 その使用人の人が俺たちに一礼すると、俺たちはアナスタシア家の屋敷から出て、歩きで街の方に向かう。


「あるとくんとなら、こうやって隣を歩いてるだけでも楽しいね〜!」

「あぁ」


 その後、麗城さんは俺と腕を組む力を少し強めて言った。


「本当に……嬉しいよ、あるとくんとこうしてお出かけできて、前世であるとくんを失ったときは、もうあるとくんとはこういうことできないんだって思ってたから」

「麗城さんが、愛を抱き続けてくれたおかげだ……そのおかげで、俺も麗城さんのことを今こうして愛することができる」

「あ、あるとくん!……今から早速夜が待ち遠しくなっちゃうよ」

「今は目の前のお出かけ────デートを一緒に楽しもう」

「うん……!そうする!」


 そのまま色々と話していると、街に着いたので、俺と麗城さんは一緒にケーキ店へとやって来た。

 この世界は前世よりもスイーツ等は発展していないが、味は魔法などで細かく調整して作られているため前世のものと同じぐらいで、ものによっては前世の世界よりも美味しいものだってある。

 俺と麗城さんは同じケーキを注文すると、席についた。


「街に来たから────街に来たので、そろそろフェアールとシャーロットさんとして過ごした方が良いですね」

「はぁ、それ本当憂鬱だよね」

「でも、きっともうすぐ俺たちの関係を公表できるはずです」

「……そうだね、うん、そうしてみせるよ」


 シャーロットさんが固い決意でそう言ってから、しばらく二人で話していると、ケーキが届いた。

 そして、シャーロットさんは一度ケーキを見てから俺の顔を見て言う。


「私がアルにケーキ食べさせてあげたいんだけど、良いかな?」

「屋敷の外どころか、二人きり以外の部屋の外でそんなことをするのは恥ずかしいなですね」

「アルがやめてって言ったら、しない」

「……それはずるいですね、シャーロットさんが食べさせてくれるのを、俺がやめてなんて言えるわけないじゃないですか

「決まりだね!はい、あ〜ん」


 笑顔でそう言うと、シャーロットさんは俺の口元にケーキを差し出て来たため、俺はそれを食べる。


「美味しい?アル」

「ちょうどいい甘さで美味しいです」

「そうなんだ、じゃあ私にも食べさせて!」

「わかりました」


 俺は、シャーロットさんにされたのと同じことをシャーロットさんにすると、シャーロットさんもさっきの俺と同じようにそのケーキを食べた。


「美味しいですか?」

「美味しい〜!ていうか、このケーキだけでも甘くて美味しいのに、アルに食べさせてもらってるっていう状況を加味するとさらに甘くなっちゃうね!」

「そ、それは何よりです」


 その後互いにケーキを食べさせて合ってケーキを完食すると、今度は服を見に行った。


「どうしよ〜!アルにはどの服も似合っちゃうね!」

「シャーロットさんも、どの服も似合ってますよ」


 そして、その後も食べ物や服、魔法を使った派手なショーなどを楽しむと、俺とシャーロットさん……麗城さんは、最後にこの街の高いところに来ていた。

 そこからは、もう日の沈みかけている街の景色が見える。

 夕日が街を照らしていて、人々の暮らしがよく見える場所だ。


「……綺麗だね、この景色」

「あぁ、綺麗だ」


 今は二人きりなため、俺はあるととして麗城さんと接する。

 二人で景色の感想を言った後、俺たちは手を繋いだ。


「今日は一日本当に楽しかったな……あるとくんがアルとしてだったから、ずっと敬語使ってたのが寂しかったけど」

「悪いな、どうしてもまだそうしないといけない」

「うん……それも後少しだけ、私たちがこの綺麗な景色を守れるって示せたら、その時は私たちが恋人だってことを公表できる」

「そうだな」


 俺がそう答えると、麗城さんは明るい笑顔で言った。


「でも、公表できないだけで私たちは恋人なんだから、ちゃんと私のこと身も心も愛してね?」

「あぁ、約束する」


 綺麗な景色を前にそのことを約束すると、麗城さんは俺と手を繋いだまま走り出して言った。


「そうと決まったら、今からすぐに家に帰って、また明日からに備えて色々と準備しないといけないね!」

「そうしよう……麗城さんとなら、俺はなんだってできる」

「っ……!あるとくん……!」


 麗城さんは突然振り返ってくると、俺と唇を重ねた。


「れ、麗城さん!?ここ外────」

「仕方ないよ、あるとくんのこと大好きな気持ちが溢れちゃったんだから……それに、ここなら誰も見てないから平気……あるとくん、大好きだよ」

「……俺も大好きだ、麗城さん」


 そう言った後、俺は論理を全て無視して、麗城さんと唇を重ねた。


 この作品は、この話を持って本編や後日談を含め最終話となります!

 作者がこの作品に抱いている気持ちなどは、次エピソードで18時30分に投稿されるあとがきとして語らせていただこうと思いますので、ここでは手短に。

 美人公爵令嬢が前世で病むほど大好きだった相手が、実は前世の俺ということを絶対に隠し通さないといけない件についてという作品をこの最終話まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

 この作品を最後まで読んでくださったあなたの気持ちをいいねや⭐︎、コメントなどの形で送ってくださると嬉しいです!

 また次エピソードに投稿されるあとがきや別作品でお会いできることを楽しみにしています!

 この作品を最後まで応援していただき、本当にありがとうございました!

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