第46話 あるとくんと麗城さん

 俺と麗城さんの意見が重なった後、俺と麗城さんは一度麗城さんの部屋に戻って、椅子に座って向き合っていた。

 そして、改めて話し合う。


「前世の私みたいな思いを、誰にもさせないために……私たちは、ちゃんとこの世界とも向き合っていかないといけないんだよね」

「あぁ……俺たちは、体はこの世界に居ても、まだ心が前世に居たままだった……でも、俺はあるとからフェアール、麗城さんは麗城さんからシャーロットさんとして、ちゃんとこの世界でできることをしていかないといけない……そして俺たちのしたいことが、俺たち自身の、そして他の人たちの幸せも守ること」

「そのためには、ああいう山賊とかの悪さをする奴らを倒していかないといけなくて、それが達成できたら、少なくとも今よりは確実に、前世の私みたいな苦しい思いをする人は少なくなる」

「俺たちの力とアナスタシア家の力があれば、きっとそれを実現できる」


 俺と麗城さんは、真の意味でようやく一つの道を見ることができた。

 今まで、愛し合っている愛情自体にズレはなかった俺と麗城さんだが、それでもやはり愛情以外の部分でどこかズレがあった……だが、今はそのズレが完全に消え、今世と向き合う覚悟も固まった。


「色々とやらないといけないことが山積みだね、それだけのことをしようと思ったら組織の設立とかその運営とか、他にも色々と優秀な人材を集めてこないと────でも、あるとくんとか、他の人たちの幸せのためだって思ったら、いっぱいやる気が出てくるね」

「そうだな」


 とりあえず今後の方針が決まり、一度この話も一段落ついたところで、俺はさっき護衛の人と話していて思っていたことがあったので、ふとそのことを麗城さんに聞いてみることにした。


「麗城さん……俺たちって、もう恋人なのか?」

「え?私はそう思ってた……けど、そういえばちゃんと口にしてなかったね」

「お互い愛し合ってるのは間違いないから、そこまで大したことじゃないと思うが、一応今ハッキリ言っておこう」


 そして、俺が口を開こうとした時────麗城さんが、それを止めるようにして言った。


「待って、あるとくん……前世から、私はあるとくんに私の気持ちを伝えたいって思ってたから、せっかくなら私から伝えさせて」

「……わかった」


 互いに、もう互いのことを愛しているということは深くわかっているが、やはりしっかりと口にすることは大切だ。

 麗城さんは一度深呼吸すると、俺に言った。


「あるとくん……ずっと、ずっと大好き……だから、私と恋人になって」

「はい、喜んで……俺も、麗城さんのことが大好きです」


 改めて、俺たちは正式な恋人になると、椅子から立ち上がって互いのことを抱きしめ合った。

 そして、麗城さんは甘い声で言う。


「……ちゃんと恋人だって口にすると、なんだかより愛を感じられるね」

「……そうだな」

「……あるとくん!」


 麗城さんは、俺の腕を引っ張ると、俺のことをベッドの上まで連れてきた。


「れ、麗城さん?」

「私はもう、自分たちだけで愛し合ってればそれで良いなんてことは言わない……でも、やっぱり私たちも愛し合いたいから、その……今から、しない?ほ、ほら!改めてちゃんと恋人になった記念みたいな感じで!」


 慌てた様子でそう言う麗城さんに、俺は自然と口角を上げて言った。


「そんな記念なんて無くても、俺だって麗城さんと愛し合いたいから、麗城さんとしたいんだ」

「っ……!ダ、ダメだよあるとくん、そんなこと言われちゃったら、私……もう!」


 麗城さんがそう言ったことを合図として、俺と麗城さんは互いに服を脱ぎ、ベッドの上で二人向き合った。


「麗城さん、俺も……もう」

「あるとくん、良いよ……私のこと、好きに愛して」


 今までは、どこかに雑念があったりもしたが、今はもう────それが全く無い。

 だから、麗城さんのことを思いの儘に愛することができる。


「麗城さん……愛してる」

「私も!私も愛してるよ、あるとくん!来て……!」


 その後、俺と麗城さんは互いに愛し合った────今まで麗城さんと愛し合ってきた行為の中でも一番濃厚で、一番甘い時間を二人で堪能することができた。

 この幸せな時間、この幸せな世界を────俺たちは、守っていくんだ……そのことを、麗城さんを愛しているこの愛情に誓った。

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