第41話 幸せな一日
朝食を持ってきた麗城さんは、ベッドに座っている俺の口元に、スプーンでその朝食のサラダを運びながら言った。
「あるとくん、あ────」
俺はそのスプーンを俺の口元から遠ざけるようにして言う。
「ご飯を食べるなら椅子に座らせてくれ」
「え〜、まぁそのぐらいのわがままは聞いてあげないとだよね」
なんとか麗城さんの了解を得ることができた俺は、バスローブを着たまま椅子に座ると、麗城さんはその俺の隣の椅子に座り、麗城さんは再度俺の口元にスプーンでサラダを運びながら言った。
「あるとくん、あ────」
「待ってくれ」
だが、またも俺はそのスプーンを俺の口元から遠ざけて言う。
「もう!私あるとくんにあ〜んってしてご飯食べさせてあげたいのに!」
「そのことについてだが、俺は自分でご飯を食べられるから、そもそもご飯を食べさせてもらう必要はない……だから、自分で食べさせてくれ」
「それは聞けないわがままだよ!私があるとくんに食べさせてあげたいんだから!」
「そんなこと言われたって、俺は自分で食べた────え?」
自分でご飯を食べるために麗城さんの持っているスプーンを手に取ろうとした時、俺はいつの間にか自分の両手首が氷魔法によって固められていることに気が付いた。
すると、麗城さんが妖しい笑みを見せながら言った。
「これで自分じゃ食べられないよね、はい、あ〜ん」
「どこまで本気────」
俺がそのことについて麗城さんのことを追及しようとした時、麗城さんはそんなことを気にも留めずに俺の口元にサラダを入れた。
そして、俺がそれを飲み込むと、麗城さんはとても嬉しそうな表情で言った。
「どう?美味しい?」
「……味は美味しいが、食べ方に問題があるから素直に味を堪能できな────」
俺は再度麗城さんにサラダを食べさせられて言う。
「この食べ方をすることで、私の愛も同時に噛み締めてるって思えばいいんだよ……そうすれば、美味しく感じてこない?」
「そう言われたらそうかもしれないが……でもやっぱり────」
その後、俺は結局反論しようとしても口の中にご飯を入れられてしまうことによって麗城さんに反論することはできず、両手首も氷魔法で固められていたため特に何もすることができずに麗城さんに朝食を全て食べさせられてしまった。
俺にご飯を食べさせ終えた麗城さんは、俺の両手首を固めていた氷魔法を解除してくれたが、俺の気分は少し沈んでいた。
「味は美味しかったが、何か大事なものを失ったような気がする……」
「その失ったものの代わりに、あるとくんは私の愛をもっと強く感じられるようになったんだよ」
そう言いながら、麗城さんは俺に身を寄せてきた。
そして、甘い声で言う。
「……あるとくん、私やっぱり夜までなんて待てないよ」
そう言って今度は俺に顔を近づけてきて唇を重ねようとしてくる麗城さんの肩を俺から離して言う。
「ダメだ、夜までは我慢してくれ」
「え〜!……もう〜!!」
色々と言いながらも麗城さんは夜までは我慢してくれるということになり、その後俺は昼も夜も麗城さんにご飯を食べさせられ、俺と麗城さんは一緒にお風呂に入っていた。
「学院に行かないと一日が長く感じられるね、あるとくんとたくさんお話しできるから本当に嬉しいよ」
「麗城さんと長く話せるのは、俺も嬉しいと感じている」
だが、やはり……この生活を続けていくのは良くないと、俺の何かが訴えている。
「あるとくんの体見てたら変な気分になっちゃうね、お風呂場だと声響いちゃうかな」
「部屋に着くまではそういうことはしたらダメだ」
「……今日一日ずっと我慢したんだから、後でたくさん相手してもらうからね」
その後、二人で一緒にお風呂を堪能した俺と麗城さんは、バスローブを着て麗城さんの部屋のベッドへと着ていたが、麗城さんはすぐにバスローブを脱ぎ、俺のバスローブも脱がせた。
「あるとくん……もう、いいよね?」
俺に顔を近づけてきて、麗城さんが俺にそう確認を取ってきた。
……今はもう、それを断る理由はない。
「あぁ」
俺がそう短く返事をした後、俺と麗城さんは何度か唇を重ねた。
そして、麗城さんがベッドに横になって、俺に体を見せながら言った。
「あるとくん……今日は二回目だから、あるとくんの好きに動いていいからね」
「……はい」
その後、俺と麗城さんは、今夜も体を重ね合った────体を重ね合っている間は、麗城さんの愛を感じ、麗城さんのことを愛することだけに集中しているが、やはり俺はどこかで引っかかりを覚えているようだ。
休憩中、麗城さんが俺に聞いてきた。
「昨日よりは良い感じだけど……あるとくん、まだ何か遠慮してるの?動きが優しいっていうか……うん、やっぱり遠慮してるって感じるよ」
「……遠慮、してるわけじゃない」
「……あるとくんが私のことを愛してくれてるのは十分伝わってるし、私のことを考えてくれてるのもわかるけど、まだ何かが抑えられてる感じがするよ」
「……抑えられてる、か」
……ダメだな俺は。
俺にそう指摘してくるということは、今麗城さんは何かしらの不安を抱いている……俺のせいで、麗城さんのことを不安にさせてしまうなんて。
……余計なことは考えなくていい、今はとりあえず目の前に居る麗城さんと愛を感じ合って、幸せになることだけを考えれば良いんだ。
そうだ……俺は、麗城さんのことだけを考える。
「悪かった……麗城さん、今度こそちゃんと愛し合おう」
「あるとくん……!うん、来て……!」
────その後、俺たちは昨日以上に激しく愛し合った。
麗城さんはとても幸せそうな表情だったし、俺だってとても幸せだった。
だからこれで良い、俺は麗城さんのことだけを考えれば良い。
────本当に、それで良いのか?
麗城さんと過ごせてとても幸せな一日だった……そして、今日からずっとこんな幸せな日が続いていく……そうだ、それで良いんだ。
心の中で自分にそう言い聞かせながら俺の目の前に居る麗城さんのことを見ていると、麗城さん以外のことはどうでもよくなり、俺は今日も麗城さんと一緒にベッドの上で眠りへと落ちた。
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