第39話 初めての朝

「……ん?」


 目を覚ました俺は、直後に体を起こすと、ここが自分の部屋ではなくシャーロットさんの部屋であることを理解した。


「そうだ、俺は昨日、麗城さんと……」


 俺は昨日から今日の夜にかけての記憶を思い出し、一人で少し恥ずかしくなってしまっていた。

 俺があの麗城さん、そしてあのシャーロットさんとあんなことを……未だに現実感がないが、麗城さんの愛を感じ、一つになる感覚はまだ体にも残っている。


「でも……昨日俺がいつ眠りについたのかを、俺自身が覚えてない」


 どうして眠りについた時を覚えていないのかと疑問に感じた俺だったが、よく考えれば無理もない。

 そういう行為をするのが初めてだった俺が、数時間もの間ほとんど続けて麗城さんとそういった行為を続けたんだ……気づかない間に眠ってしまっていても何もおかしくはないだろう。

 ────というか、数時間ああいった行為を続けて気づかない間に眠りに落ちてしまった俺よりも、初めてなのに数時間もの間全く疲れを見せずに行為を続けることのできる麗城さんの方が、俺にしてみれば異常だ。


「ああいった行為は、やっぱり男性側の方が体力の消費が激しいんだろうか」

「────あるとくん、朝からえっちなこと考えてるの?」

「れ、麗城さん!?」


 そういえば、自分の頭の中で考え事をするので頭がいっぱいで隣を見ていなかった俺は、麗城さんの声がした俺の左隣を見てみると、そこには麗城さんが俺の腕を抱きしめながら横になっていて、その麗城さんの表情はどこか楽しそうな表情だった。

 そして、麗城さんは続けて口を開く。


「本当の意味で、あるとくんと一緒に迎える初めての朝、だね」

「そうだな」


 今までフェアールとシャーロットとして一緒に朝を迎えたことはあっても、麗城さんの言う通り本当の意味であるととしての俺と麗城さんが一緒に朝を迎えるのは初めてだ。


「……」


 俺が体を起こしたことで、麗城さんの布団も少しめくれていたことによって気付いたが、よく見てみると麗城さんは服を着ていない様子だった。


「麗城さん、どうして服を着てないんだ?バスローブぐらいは────」

「何言ってるの、愛し合ったそのままの姿で一緒に寝ることに意味があるんだから、バスローブなんて着る必要無いよ……それに、あるとくんだって何も着てないよ?」


 そう言われ少しだけ布団をめくってみると、確かに俺も何も着ていなかった……とはいえ。


「やっぱり、バスローブぐらいは着た方が────」


 俺がそう言いかけた時、麗城さんは自分側の布団の上半身部分を完全にめくって言った。


「この体はあるとくんのものなんだから、好きに見て良いんだよ?ううん、見るだけじゃなくて触っても、ね」


 麗城さんの上半身が視界に映った俺は、咄嗟にそこから視線を逸らして言う。


「朝から変な気分にさせないでくれ」


 俺がそう言うと、麗城さんは小さく笑ってから布団の中に潜ると、俺の上に跨って頬を赤く染めながら言った。


「布団の中で愛し合うって言うのも、より二人だけの空間って感じがして良いね」


 そう言って、俺の顔を自分の方に向けさせると、麗城さんは俺と唇を重ねた。


「あると、くん……大好きだよ、一晩だけじゃ、全然伝え切らない……」


 口では色々と麗城さんに抵抗を示していた俺だったが、実際に麗城さんに愛情を持って迫られてしまうと、同じく麗城さんに対して愛情を持っている俺はそれを受け入れてしまい、さらに何度か麗城さんと唇を重ね合った────そして、俺は思わずその途中で麗城さんの体に目を奪われてしまい、それはほんの一瞬だったが、麗城さんはその隙を逃さずに言った。


「あるとくん……したい?良いよあるとくん、ほら……好きに触って、私の体はあるとくんのもので、あるとくんの体は私のものなんだから」


 思わずそれに頷きシャーロットさんの魅力的な体に手を伸ばしそうになってしまった俺だったが、なんとか理性を保って首を横に振り、冷静さを取り戻して言った。


「……そろそろ着替えないと学院に遅刻するから、今は着替えよう」


 冷静な判断でそう言って麗城さんのことを俺の上から降ろし、ベッドから降りようとした俺のことを麗城さんの言葉が止めた。


「何言ってるの?あるとくんのことは、もう外になんて出させないよ?」

「……え?」


 俺はその言葉に、思わず麗城さんの方を振り返って固まってしまった。

 俺のことを、もう外には出させない……?

 動きだけでなく、その麗城さんの言葉を聞いて思考まで固まってしまった俺だったが、その麗城さんの目はそれが真剣に放った言葉であるということを語っていた。

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