第38話 交わり

「あるとくんっ……!もっと、もっと私の愛を感じてっ!もっと私にあるとくんの愛を私に感じさせてっ!」

「あ……あぁ、麗城さんの気持ちも感じてるし、俺の気持ちも、もっと伝えさせてくれ」


 愛している人と肉体的にも精神的にも一つになるというのはこれまでに無いことで、俺は今までにない幸福感に包まれていた。

 ────だが、麗城さんとベッドの上で互いに愛し合い始めてから一時間が経過した頃。

 前世も今世も含めて、異性とそういったことをするのが初めてだった俺は、かなり体力を消耗していた。


「っ……思ってた何倍も体力を使うな」


 俺がそう呟くと、体を起こして軽く俺の左腕を軽く抱きしめてきた麗城さんが言った。


「でも、思ってた何倍も気持ち良くて、何倍も愛が伝わって来ない?」


 そう言った麗城さんの方を見て、俺はそれに返事をする。


「そうだな……本当に文字通り一つになったみたいになる」

「うん、交わってる間は、本当にあるとくんの全てがわかる……そんな気がするよ」


 そう言いながら、麗城さんは俺の左腕を抱きしめる力を強くした。

 俺は思わずその柔らかい感触を感じる方に視線を向けると、そこには一糸も纏っていない麗城さんの大きな胸部が俺の腕に密着していた。

 それを視覚に入れた俺が、思わず視線を逸らすと、それがおかしかったのか麗城さんが口角を上げながら言った。


「変なの、どうして目を逸らすの?」

「視界に入れるのが恥ずかしいからに決まってるだろ?」

「恥ずかしいって、さっきまで触ってたのに?」

「からかわないでくれ」


 俺がそう言うと、麗城さんは小さく笑って俺に言った。


「また触りたかったら好きに触っても良いんだよ?その時は、続きもちゃんとするけどね」

「わかった……が、その前にちょっと休憩させてくれ」


 体力の消耗が激しかった俺は、少しだけ休憩を求め────


「私はまだまだ元気だからダメ」


 たが、麗城さんのその一言によって、俺はベッドに押し倒されてしまった。


「さっきはあるとくんの好きにさせてあげたけど、今回は私が好きにしてもいいよね?」

「待ってくれ、俺も気持ち的には続きをしたいところだが、そんな間を空けずに続けたら────」

「あるとくん、私がどれだけ我慢したと思ってるの?」

「それは……」

「昨日やっとあるとくんと通じ合えたと思ったら、あるとくんはそのまま次の朝まで寝ちゃって、起きたと思ったら学院に行くことになって、学院が終わったらグレンデルの家に行って……ううん、それだけじゃないよ、もっと言うなら私は前世から今までずっと我慢してたんだよ」


 昨日と今日だけでも麗城さんにはかなり我慢させてしまったのに、それが前世からなんて言われたらもはや何も言うことができない。


「今は体力的に疲れてるから、俺はさっきみたいにはできない」

「ふふっ、うん、あるとくんは動かなくていいよ」


 麗城さんは俺の上に跨ると、俺の頭を撫でながら、笑顔で頬を赤く染めながら言った。


「今、あるとくんは私のもの……私だけの、あるとくん」

「あぁ、そうだ」


 俺がそう返事をすると、麗城さんは俺の上に跨ったまま、俺に体を密着させて俺と唇を重ねた。

 そして、体を起こすと落ち着いた声音で言う。


「さっきのあるとくん、動きが優しかったよね、私のことも時々気遣ってくれたりして」

「前世と今世含めて互いに初めてだったんだ、そうするに決まってる」

「じゃあ……私は、私のこの気持ちをもっと伝えたいから、ちょっとだけ激しくするよ」


 麗城さんは、落ち着いた声音とは反対に、表情はもう待ちきれないといった表情で言った。


「は、激しく?さっきも言ったけど、俺は体力が────」


 その後、麗城さんは宣言通り激しくしてきた……確かに麗城さんの気持ちというものはとんでもなく伝わってきたが────それを一時間弱ほどし続けた後、俺は精魂尽きていた。

 そして、麗城さんが俺の状態を見て冷静に言う。


「……そろそろ、あるとくんには休憩が必要そうだね」

「麗城さん……ありが────」

「十分ぐらい休憩したら、また続きだよ……まだまだ、まだまだ私の気持ちは伝わり切らない」

「……え?十分?もう少し────」


 麗城さんは、俺の開いた口を閉じるべく俺と唇を重ねた。

 そして、その唇を離して口角を上げながら言った。


「何か言おうとしたら、こうやって口塞いじゃうからね……本当なら、私は今すぐにだって続きをしたいんだから」

「でも────」


 俺が口を開くと、俺はまたも麗城さんの唇によって口を塞がれた。

 ……その十分間の間は、結局ほとんど麗城さんと唇を重ねたことで過ぎていき、俺はまたも麗城さんとベッドの上で愛し合い始めることとなった────

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