第22話 出会いと別れ

◇シャーロットside◇

 ────シャーロットの前世話。


「え?私のこと知らないの?」


 前世のシャーロット……麗城は、一人の男子生徒に話しかけたが、その男子生徒はまるで自分に興味がないようだったことに衝撃を受けた。

 そんな様子の麗城のことを見て、その男子生徒は言う。


「あれ麗城さんって名前じゃなかったでしたっけ」

「それは合ってるけど、私が話しかけたら他の人たちはもっと別のリアクションするんだよ?」

「そうですか……でも、俺はその人たちじゃないので」


 男子生徒がそう言うと、麗城はその発言を聞いて可笑しく感じて、小さく笑いながら言った。


「ふふ、そうだね……ねぇ、私もっと君のこと知りたい、名前あるとくん、だっけ?」

「そうです」

「敬語やめてもらってもいい?どうしてかわからないけど、君には敬語で話して欲しくないの」

「……わかった、じゃあ普通に話す」

「うん!」


 ────これが、麗城とあるとの出会い。

 そして、ここから主に麗城の方からあるとに対して話しかける日常が始まる。


「あるとくん、好きな食べ物とかある?」

「甘いものは大体好きだ」

「好きな服は?」

「特にない」

「好きな女の子のタイプは?」

「特にない」

「好きな女の子のタイプは?」

「……特にない」

「好きな女の子のタイプ────」

「タイプとかどうとかはわからないけど、麗城さんのことは綺麗だと思う」

「え〜?もう〜!あるとくんの口上手〜!その口で今まで何人の女の子────口説いてきたの?」

「いきなり怖くならないでくれ、あと口説いたりしてない」


 時々麗城の精神状態が不安定になることもあったが、基本的には楽しい日常を過ごしていて、気がついた時には、麗城は今までの自分では考えられないほどに一人の異性、あるとのことを好きになっていた。

 そんなある日、今まで学校の放課後までの時間しか一緒に時間を過ごしてこなかったあるとのことを、あるとの嫌いな数学を二週間後に控えたテストに備えて教えるという口実でその関係性を進ませることに成功した……明日から、あるとと数学のテスト勉強。

 あるとと一緒に校門前まで来て、あるとに別れの言葉を伝える。


「あるとくん、また明日ね」

「あぁ、また明日」


 そう言って帰路を歩き始めようとしたあるとのことを、麗城は呼び止める。


「あるとくん!」

「ん?」


 麗城に呼び止められたあるとは、麗城の方に振り返った。


「……やっぱり、今日数学のお勉強しない?」

「勘弁してくれ、俺は数学が嫌いなんだ、できるだけ遠い方がいい……でも、せっかく麗城さんが教えてくれるって言うなら、明日はちゃんと教えてもらうから、お願いする」

「あるとくん……!うん!じゃあ明日ね!」

「そうだな、また明日」


 麗城は、あるとが自分と勉強をするのに少しでも積極的だという一面が見れて、嬉しくなりながら明日の想像を楽しんでいた。

 放課後の図書室で、もしくは校外に出てカフェで勉強、いっそのこと家に呼んでみる。

 色々と想像を膨らませて学校に登校した麗城だったが────その翌日学校に登校すると、昨日あるとが帰りにトラックに轢かれてしまったことを聞いた。


「う、そ……あるとくん、明日って、また明日って、そう、言ってたのに……どうして?嘘だって言ってよ、あるとくん……私まだ、あるとくんに好きだって伝えてないよ?」


 麗城はとても後悔した────昨日、あの校門前で、あるとのことを無理矢理にでも誘っていたら、あるとの帰り時刻はずれて、もしかしたら帰り道もずれてたから、事故で亡くなるようなことにはならなかった。


「あの時、私が……あるとくんのことを縛ってでも、鎖で繋いででも、あるとくんのことを、誘ってたら……ごめん、ごめんね、あるとくん」


 ────これが、麗城とのあるとの別れ。

 その先は語るまでもなく、麗城はあるとに会えるかもしれないという小さな希望を抱きながら、あるとの後を────


◇フェアールside◇

「みたいな感じかな……最後の方は暗い話になっちゃったけど、これが彼との全てだよ」

「……はぁ、はぁ」


 俺は、シャーロットさんに聞こえないほど小さな声で、呼吸を整えていた。


「私はあの時本当に後悔した……だからもう、あの時みたいな後悔は絶対にしたくない」


 シャーロットさんのことを助ける、途中まではそう思って聞いていた……だが、話を聞いていく間に────その関係性の変化の流れや会話内容が、俺にとって身に覚えのあるものだと気付いた。


「あとね、アルには関係ないと思うけど、せっかくだから全部伝えたいから、彼の前世の名前と私の前世の名前を伝えるね」


 シャーロットさんのことを理解するために、少し前まではそんな詳細な情報も聞きたかった。

 でも今は違う……聞きたくない。

 それを聞いてしまったら、俺のせいでシャーロットさんが────が、本来生きられた輝かしい未来を生きていないということが決定づけられてしまう。

 だが……そんな俺の心の声なんて聞こえているはずもないシャーロットさんは、その名前を告げた。


「────彼はあるとくんって言って、私は前世で彼に苗字の麗城って呼ばれてたの」



 この作品の連載が始まってから三週間が経過しました!

 この第22話までこの作品を呼んでくださったあなたが、ここまでこの作品に抱いてきた気持ちなどをいいねや☆、コメントとして教えていただけるととても嬉しいです!

 作者はこの物語をとても楽しく描かせていただいているので、あなたも引き続きこの物語を楽しんで読んでくださることを願っています。

 今後もよろしくお願いします!

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