第15話 占星術
「アル!今日彼のこと探しに行くけど、今日は行くところちゃんと決まってるの!それも、もしかしたら本当に彼と会えるかもしれない場所!」
シャーロットさんは綺麗な服に、俺は執事服に着替えて今から外に出ようとしたとき、シャーロットさんは元気な声でそう言った。
今までその人と会うためのヒントというのはなかったはずなのに、何かヒントを掴んだんだろうか。
「どうしてその人と会えるかもしれないって思ったんですか?」
「今日夢で見て思い出したんだけど、私彼と前世で────」
そういうと、シャーロットさんは目を閉じて、その前世での会話を思い返している様子だった────
「あるとくん、将来的にどこか行きたいところとかある?」
「旅行で?」
「旅行でも良いし、なんだったらファンタジーの世界とかでも良いよ?」
「ファンタジーか……王様の城とか、綺麗な滝とか、あとはなんとなく雰囲気がかっこいい教会とか」
「王様の城はともかく、綺麗な滝と教会だったらこの世界でも行けるよ?」
「確かに」
「でも、あるとくんが行きたいって言うんだったら、いつか連れて行ってあげよっか?」
「綺麗な滝は近くにあるかもしれないけど、教会はきっと海外にしかなくて、俺には海外に行けるほどの資金はないからそのいつかはかなり遠くになる」
「連れて行ってあげるって言ってるんだよ?旅費は全部私が出すよ」
「俺にしても麗城さんにしてもお金がかかるのは一緒だ」
「お金がかかるって……自分でこういうこと言うのあんまり好きじゃないけど、私がお金持ちだってこと忘れてる?」
「あぁ、そういえば……忘れてた」
「ふふ、本当に変わってるね、あるとくん────」
その前世での会話を思い返し終えたらしいシャーロットさんは目を開くと言った。
「あの時にでも、私がちょっと強引にでも同棲生活を持ち出してれば、帰り道は同じだったはずだから私が彼のことを守ってあげられたのに────そうじゃなくて!」
前世での後悔を引きずっている様子のシャーロットさんだったが、すぐに切り替えて本題に戻った。
「彼は、前世で王様の城と綺麗な滝と教会に行きたいって言ってたの」
「え……?」
俺は思わず困惑の声を上げた。
何故なら、王様の城に綺麗な滝、そして教会……おぼろげな記憶だが、前世で俺も似たような話を麗城さんとしたような気がするからだ。
今までシャーロットさんから聞いてきた話でも、そのシャーロットさんが好きだった人というのは俺に似ているということはもうわかっていたし、シャーロットさんがその人と俺を重ねて見てしまうことがあることからもそのことは間違いない。
……あと一つ、決定的な何かが揃えば、点と点が線で繋がるような気がする。
「アル?どうかしたの?」
少し考え事をしていた様子の俺のことを不思議に思ったシャーロットさんが、俺の目を覗き込むようにしてそう言った。
「なんでもないです……それより、じゃあ今日はその三つのどこかに行くってことですか?」
「そう!でも、王様の城っていうのは、一応私は公爵だから入れなくもないけど当日いきなり行くっていうのは常識を疑われるから今日は無しで、綺麗な滝はちょっと遠くになるから、とりあえずその三つの中では一番行きやすい教会に行こうと思うの」
「あぁ、あの大きいところですよね」
「そうそう、最近の私の推測だと、彼も私と同じ十六歳で、その誕生日の日に前世の記憶を思い出してると思うから、もし気に入ったなら教会に入り浸ってると思うの」
「でも、教会に入り浸る理由って何かを信仰する以外には、雰囲気がかっこいいからとかしかないんじゃないですか?」
その俺の言葉を聞いたシャーロットさんは一瞬目を見開いたが、次に優しい声音で言った。
「アルは本当に彼にそっくりだね」
「え?」
「ううん、じゃあ教会行こっか」
「はい」
それから、馬車で数十分ほどかけて、俺とシャーロットさんはこの世界でも大きい部類に入る教会に向かった。
そして、教会の中に入ると、黒い布を被った大人の女の人から話しかけられた。
「あら、そこのお嬢さんと彼、ちょっと良いかしら?」
「はい?」
俺はそんな声を上げながらも、シャーロットさんと一緒にその人の方に行くと、その人はテーブルの上に水晶玉を置いて、その前に座っていた。
……黒い布を被っているからよくは見えないが、ワインレッドの髪に口紅を塗っていて、スタイルがとても良く、まさにその雰囲気は大人の女の人と言った感じだった。
「私は占星術師をやっているんだけれど、あなたたちみたいな不思議な人は初めて見たわ」
「占星術……占いね、魔法と応用して普通なら得られないような情報を得るんだった?」
「そうよ」
「占いなんて前は信じてなかったけど、魔法と応用した占い、ね……」
シャーロットさんは占星術に少し興味を持っているようで、続けて口を開いて言った。
「いいわ、じゃあ私たち……いえ、先に私のことを占ってもらえる?」
「えぇ……じゃあこの水晶玉に手を触れて、今あなたが一番求めているものを思い浮かべてくれる?」
「……」
占星術師のお姉さんがそう言うと、シャーロットさんは水晶玉に手を当てて目を閉じた。
おそらくシャーロットさんが今求めているもの……前世で好きだった人のことを思い出しているんだろう。
そして、占星術師のお姉さんが「もう離しても良いわよ」と言うと、シャーロットさんはそっと水晶玉から手を離した。
そして、占星術師のお姉さんは妖しく口角を上げながら言った。
「やっぱり、こんなのは初めて……あなたは今恋焦がれている人との出会いを求めている、そうでしょう?」
「……そう」
シャーロットさんは口では何も言っていないのにそれを言い当てた。
前世ではどうだったのかわからないが、少なくともこの世界の魔法と合わせた占星術というものは、かなり信憑性が高いのかもしれない。
「そしてその彼とは何か根源的な理由で別れてしまった…死別かしら?」
「……そう」
シャーロットさんは、重たい口では合ったが聞かれたことに正直に答えた。
「────でも、不思議なことにあなたはその彼との出会いを求めてここに来た、これも合ってるわね?」
「合ってる」
「……あなたが不思議なのは、その彼とは死別しているのにも関わらず、私の占星術の結果では────あなたの彼は、今この世界で生きているということになっている」
「っ……!本当!?本当に、本当に彼はこの世界に居るの?」
シャーロットさんは取り乱した様子でそう言ったが、占星術師のお姉さんは妖しく口角を上げながら続けた。
「えぇ、居るわよ……この世界なんて大きな言葉を使うまでもなく────あなたの近くに、ね」
◇
この作品が連載され始めてから二週間が経過しました!
ここまでこの作品を読んで感じた気持ちをいいねや☆、コメントなどのどんな方法でも良いので教えていただけたらとても嬉しいです。
また、今後も楽しくこの物語を描かせていただこうと思いますので、読者の皆様もこの物語を楽しんでくださると幸いです!
今後もよろしくお願いします!
◇
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