第2話 前世の記憶
「ねぇあるとくん、さっきの授業の内容わかった?」
「五分の一ぐらいは」
「それってわかってないってことだよね?」
「数学が悪い、俺は公式みたいにずっと変わらない決められたことをするのは嫌いなんだ」
「そっか……だから私みたいな変わり者とも話してくれるの?」
俺に今話しかけている容姿の整った美少女の名前は
麗城さんが自分のことを変わり者というのは、きっと家がお金持ちなのと、どこか普通の高校二年生とは違う落ち着いた雰囲気を持っていることが原因だろう……事実、クラスメイトだけでなく、学校全体の人たちも麗城さんのことを高嶺の花のように扱って、俺のように普通に話している人は少ない。
「俺は麗城さん自身のことを変わり者とは思ってない」
麗城さんが変わっているのはその環境ぐらいで、麗城さん自身に変わっているところがあると言えば、その落ち着きようと飛び抜けた容姿ぐらいだ。
そんなことで、俺は麗城さん自身のことを判断したりはしない。
「嬉しいね……あと二週間でテストあるけど、数学は大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない」
「じゃあ、私があとの五分の四満たしてあげよっか?」
「悪い、本当は五分の一どころか、何もわかってない、というか聞いてなかった」
「ふふ、そっか……じゃあ────全部私で満たしてあげるね」
普段はあまり笑顔を見せない麗城さんだったが、その時は俺に笑顔を見せてくれた。
数学の勉強か……あまり乗り気じゃなかったが、せっかく麗城さんが教えてくれるというのであれば教わることにしよう。
「明日からよろしく頼む」
「今日は?」
「気分じゃない」
「明日は?」
「明日の俺に任せる」
「それ明日も気分じゃないんじゃない?」
「明日の俺に聞いてくれ」
「明日は縛っててでも連れて行くからね」
「縛ってか、怖いな」
「本当に大事なものは縛ってでも自分の手元に置いておかないとだよ」
「麗城さんが言うと冗談に聞こえない」
「ふふ」
────その日の帰り道、俺はトラックに轢かれた。
「────ル!」
……ん?
俺を呼ぶ、声が聞こえるような……麗城さん……?
「アル────て!────よ!!」
違う……この声は。
「アル!お願い起きて!起きてよ!!」
「……シャーロット、さん?」
「っ……!アル!良かった……」
シャーロットさんは安心した様子でそう言った……シャーロットさんの手元を見てみると、俺に対して回復魔法を使っているようだ。
「回復魔法……?どうして……?」
「朝起きてアルの部屋ノックしてもアルが全然返事してくれないからドア開けたら、アルがベッドの前で倒れてて……それからずっと声かけても全然起きないから、もしかしたら体に何か異常があったのかもって」
辺りを見回してみると、俺は今ベッドの上に居るようだから、シャーロットさんが俺のことをベッドの上に運んでくれたんだろう。
「心配かけました、体に異常は特にな────っ」
「アル!?」
体に異常は特に無いと言おうとした時、一瞬頭に頭痛が走った。
……そうだ。
そういえばさっき見てた光景……あれは夢でも幻覚でもない、あれは────前世の記憶だ。
シャーロットさんも十六歳になった日に前世の記憶が戻っていたと言っていた、きっと俺もそれと同じく、前世の記憶が蘇ったんだ……色々と整理したいことが山ほどあるが、まずはシャーロットさんのことを安心させよう。
「すみません、大丈夫です」
「本当に?」
「はい、本当────」
「本当に!?」
「え……?は、はい、本当です」
シャーロットさんは、昨日と似た雰囲気で取り乱していた。
……そうか、シャーロットさんが前世で大好きだった人というのを事故で失ってるから、きっとその時のことと今の俺のことを重ねてるんだ。
つまり……それだけ、シャーロットさんは俺のことを大事に思ってくれているということだ。
そんな優しい人のことは安心させないといけないと思い、俺はすぐに言った。
「シャーロットさん、俺は本当に大丈夫ですから」
「……うん、ごめんね、私らしくなくこんなに動揺して」
「シャーロットさんの優しさが伝わってきて嬉しいですよ」
「……アル、なんか変わった?」
「え?」
「ううん、気のせいかな……とりあえず、今日一日は安静にしててね」
「いえ!俺今日誕生日ですし、せっかくなので────」
「今日は絶対安静!その代わり私がずっと話し相手になってあげるから!」
「それなら……楽しい誕生日になりそうですね」
今日はとりあえず、せっかくの誕生日でシャーロットさんがずっと話し相手になってくれるってことだから、前世のことは何も考えずに楽しむことにして、シャーロットさんと楽しい一日を過ごした。
「やっぱり……アルの雰囲気が、変わった……?ううん、態度も話し方も変わったわけじゃないのに……どうして────彼のことを思い出すの……?」
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