繁華街、30秒の一期一会

【7月１日 晴れ】

【7月１日　晴れ】

　この街は眠ることはない。

　深夜でも賑わう要因に、観光客も多いっていうのもある。

　明日開催される人気アイドルのライブ参戦のために終電で前のりしてきた女性3人組に、ウエストくらいまで高さのある巨大なスーツケースを二台持ちするまとめ買い予定のアジア人、USJ行ってちょっとおいしいもんでも食べて一泊してから帰ろかーという感じのプチ旅行カップルなどなど。

　若くて美しく、荷物は少量で明らかに地元民、仕事終わりのためセカセカせずに歩く……。人当たりがよさそうな雰囲気のわたしは、観光客にとって声のかけやすいちょうどいい存在なんだと思う。

　今日は仕事が少し早くおわり23：30ごろ。

「お姉さんすみません、ちょっといいですか？」

　信号待ちをしていると男性二人組に声をかけられた。

　さて問題です。この2人組の目的は？

　わたしは意地悪したい訳じゃない。困っている人がいたら助けたい。例えば観光客が道に迷っていたり、大きな荷物の移動に手間取っている時は積極的に動きたい。

　問題はこの人たちの目的がまだわからない事。

　ここで返事をしてナンパ目的だった場合、非常に面倒くさい。その場合はいつもの必殺技スルー作戦で乗り越えなければ！

「あの、なんば駅はどこにありますか？」

　2人組の二言目がこれだった、どうやら観光客のようだ。

　数種類ある難波駅の候補地から、なんとか目的の駅のヒントを聞き出して絞り出す。

　いえいえココから地下に降りてすぐあるのは近鉄なんでちがうんですよJRはちょっと遠いんです、え？阿倍野方面に行きたいなら、そこまで歩かなくてもここから地下鉄で…

　なんば駅の場所は一言で伝えきれず、ふぅ、やっと説明し終えた所で

「おおきに！お姉さんのおかげで分かったで！よかったら一緒に行かん？飲むんやけど。」

　こてこての大阪弁。騙された！

　これは確信犯ですね！

　行かねーよ、と言わんばかりに思いっきり睨みつけてやった。