ドラマーIN US#2:天才ドラム少年イスラエル!

矢野アヤ

天才ドラム少年イスラエル!

 夫が北カリフォルニアの田舎町でドラムを教え始めて11年になる。兄弟や親子で習う方も多く、これまで様々な家族と知り合う機会に恵まれて来た。そのレッスンに、この3、4年は自閉症やADHDなど、コミュニケーションに関する問題を持つ子供が増えている。その中の一人に、4歳になるイスラエルがいる。

 イスラエルがレッスンを始めたのは2歳になった頃だ。椅子の上に膝立ちになり、首と腕を最大限に伸ばしていつまでも叩いていた。30分のレッスンが終わると、止めたくないと大泣きし続けて、今は1時間レッスンを取っている。

 彼は4歳になるまであまり話せなかった。今でもコミュニケーションは苦手だ。そしてなかなかにこだわりが強い。幼稚園ではなく言語習得に特化した学校に通っているが、彼の音楽やドラムの理解力には驚くものがある。自分で音楽を聴いてドンドンと習得してしまう。

 基本のドラムセットには手で演奏するものだけで、太鼓4体とシンバルが4枚ある。流れを考えてどちらの手で叩くかが重要になる。その上、両足が別々に太鼓とシンバルを鳴らすのだ。音楽を聴いてそれらを聞き分け理解し再現する。それも彼の利き腕は左なのだが、右利き用のドラムセットで難なく叩いていく。そして、決める場所ではバシッと決める。リズム感もバッチリ。天賦の才とはこういうものを言うのか、と感じさせられる。

 先日、ご両親が経営するカフェに友人とランチに行くと、イスラエルがレジの横にいた。私を見るなり「ドラムレッスンがやって来る!」と、片言英語で、夕方5時のレッスンを楽しみにしていた。そこでも、コップや携帯をドラムに見立てて叩いていた。超真剣な顔で。

 人とは違うが、飛び抜けた才能を持つ子供たちは思っているより多くいるのかもしれない。この子たちの才能が花開く世界は、きっとかなり楽しいものになる。少しでもその手伝いができるとしたら、こんなに嬉しいことはない。

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