第3話 現実

お腹いっぱいの愛で満たされた青葉は、クラスに戻った瞬間、現実に引き戻された。

「おはよう、恵奈!」

松永さんの下の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「もう大丈夫?」

大丈夫じゃない、まだ一緒にいて、私を一人にしないで、色々な言葉が青葉の頭をよぎった。でも、出てきた言葉は、いつもと同じだった。

「大丈夫。」

「よかった。じゃあ、またね。」

そういって、松永さんは違う人のところに行ってしまった。

大丈夫、いつものことだ。

お腹がいっぱいなのに、愛をくれた人がもう自分の近くにはいないというのが、とても皮肉だった。


「青葉さん!呼ばれてるよ!」

「?」

青葉は、仲のいい人もいないし、部活にも委員会にも入ってないため、呼び出しを喰らって驚いていた。

ドアの前に立っていたのは、背の低い男子だった。

ネクタイが緑と同じ一年生の物だ。

「で、どちら様?」

「ちょっと、青葉さん。その言い方は、、、ごめんね、キミ。」

青葉は、自分の何がいけないのか良く分からないまま、勝手に悪者扱いされてしまった。

「あの、、、緑さんのお姉さんですかっ!」

あぁ、緑か。いつもそうだ。緑、緑、緑って。。。

「何なの?」

自然と、口調が冷たくなる。

「あ、えと、、、緑さんって、部活、何部ですか?」

「本人に聞けばいいじゃん」、と言いたいのを飲み込んだ。

「軽音部。」

「ありがとうございます!」

そういって、その子はどこかに行ってしまった。

「ねえさ、なんで人を傷つけるようなことばっか言うの?」

唐突な問いに、青葉は答えられなかった。

「そんなこと言った?」

「しら切るんだ、ふーん。いつもそうだよね、青葉は。散々人を傷つけといて、自覚もない。」

「え、、、」

なんで、そんな、、、

そこまで傷つけるような、、、冷たく言ってしまったけど。

私はただ茫然と立ちすくんでしまった。

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愛獣~愛を喰らってなお生きる~ @tyoko_reta

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