2XXX年。世界は世紀末の様相を見せる。その中での救い、人工合成のウィルス。それは世界を救う希望だった。

久遠 れんり

幻の都市と博士

 その日、朝は普通だった。

 だが帰ってきた父親は、荷物を抱え突然言い放つ。

「みんな、良い物を買ってきたぞ。今晩はたこ焼きを作ろう」

「「「は?」」」


 父親は、中堅商社に勤める四十五歳。

 九時から十六時のパートに出ている奥さんと、高校生の娘と息子。

 一般的な家庭だ。


 いそいそと箱を開け、取り出したのは、家庭用のたこ焼き器。

「「「はっ?」」」

 再び家族は困惑をする。


「いいぞぉー。たこ焼きだぞ、たこ焼き。お好みやうどんでもいいが、基本はたこ焼きだろう」

 すっかり性格の変わった父親。


 普段は、何が気に入らないのか、むすっとして、近頃の若い奴はとぶつぶつ言っているだけの存在。

 家族の返事は必ず、「はいはい」で済ませていた。


 それがだ、小麦粉にキャベツ、タコまで買い込んできて、いそいそと台所へ向かう。紅ショウガと天かすが無いのは最大のミスだろう。


 若い頃に、一人暮らしもしていたらしいが、結婚してからは一切台所には入らなかった。


 それがだ、今、「この包丁ではいかん」そう言って、一生懸命研いでいる。


 満足をしたのか、キャベツを流れるような手つきでみじん切りにして、もう片方で、出汁を作り始める。

 そうすべての動きが、生粋の関西人のようになっていた。



 世紀末の世の中、世界中は絶望して、人々は暗く、事細かな決まりを決め非常にギスギスした世界。


 日本だけではなく、世界中がそうなった。


 だがそんな世界に、奇跡的な都市が存在した。

 すべては、『まあええわ』。

 または、『そうチャウのぉ。知らんけど』ですべてが終わる町。

 そう奇跡の町、オオサカを含める関西圏。


 そんな中で、一人の科学者はオオサカをこよなく愛していた。


 絶望する世界の中で、希望の光。


 彼女は研究を始め、関西人特有の遺伝子を発見する。

 関西レセプター、ドツキアルファ型。


 これを組み込んだ、ウイルスベクター。

 空気中で拡散できるように、インフルエンザウイルスを改造して関西レセプターを発現する因子を組み込む。


 これはテロだと理解しながらも、完成させてしまう。


 初期症状では、粉物が食べたくてどうしようもなくなる。


 体内で、受容体が増えてくると、人の言葉に対して突っ込まずにいられなくなる。


 そして、最後には、細かなことは気にしなくなる。

 最終安定状態。すべて、まあええかになる。


 人が、個人の欲を持たず、笑いにのみ命をかける。

 なんという素晴らしい世界。


 博士は、まあええかぁ。

 そう言って、ニューTOKIOにおいて、散布を開始した。


 そしてその日。

 量販店で、たこ焼き器とホットプレートが馬鹿売れをした。


 そして、卵や小麦粉、キャベツ、豚肉、焼きそばまでが売り切れた。


 たこ焼き派とお好み派に分かれたようだ。


 症状は進み、経済が混乱を始める。


「おい。部品数がおかしい一桁違うぞ」

「なんやて、うーん。ええわ。他の部品もこうたらええやん。十倍作って十倍売ったら儲けや」

「せやな。自分天才ちゃうんか」

「もっと褒めてや」


 すべてがそんな感じで、景気が何故か上がっていく。


「要らんとは思うたんやけどなぁ、おかんが買え言うから、買うてもうたがな」

「オマエもか。おれもや。これどうしよ」

「いらんのやったら売ればええやん」

「おお、自分天才やな」


 すべてがそんなノリ。

 ノリだけですべてが進む。


「世の中少子化やって」

「そりゃいかん。何とかせな。おおい、ねえちゃん。茶ぁしばかんか?」

「えー」

「いかんか? ならエッチしよか?」

「えー」

「子供が出来たら、結婚したらええがな」

「それもそうかぁ。いこうか」

「おう、ええノリや」


 多少ウィルスの弊害で、細かな思考が飛んだようだが、世界中がそうなれば平和だ。


 小難しいことはええねん、お天道様が何とかしてくれる。


 そうして、世界は平和へ向かう。


「そうや。細かなことはええねん」

 それを合い言葉にして。



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えーノリだけで書きました。

願うのは世界平和です。

都市名、人種すべてフィクションです。

言葉がおかしいのも、突っ込まないでください。

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2XXX年。世界は世紀末の様相を見せる。その中での救い、人工合成のウィルス。それは世界を救う希望だった。 久遠 れんり @recmiya

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