ひとりはダウナー

 モノクロワールド。人の悪意から生まれる「ワルガーキ」が生成する特殊なフィールド。


 巨大なサイコロやサッカーボール、おもちゃが転がる空間の中で五人の少女が倒れていた。その目の前には小さなビルとほぼ変わらない大きさのピエロのワルガーキとその肩に乗る仮面をつけた男の姿があった。


「今日こそ終わりだ、ミナプリどもよ」


 ミナプリ、と呼ばれた五人の少女がボロボロになりながらも立ち上がる。


「私たちは負けない! あんたたちの好きになんてさせないんだから」


 中心のピンク色の衣装に身を包んだ少女が叫ぶ。それを、仮面の男は嘲笑った。


「そうか、では死ね」


 ワルガーキが大きなサッカーボールを持ち上げる。


「ワルガーキ!」


 そして、ミナプリに向けて投げつける。五人とも立つのがやっとで避けることも防ぐこともできず、このままボールに押しつぶされる瞬間を待つしかなかった。誰もがそれを覚悟し、全身を震わせる。


 しかし、それはこなかった。


 間に影が割り込んだかと思うと、球を弾き飛ばしたからである。


「ガキ?」


 ワルガーキが困惑の声を漏らす。

 その視線の先には空中に浮かぶ、ひとりの少女。黒いパーカーを纏った、その少女は、ワルガーキを指差す。


「課金のための犠牲となれ。メンテが終わるまでに終わらせてやる」


 雇われ魔法少女ダウナー。本名、活手かつて 梨花りか


「他の魔法少女がいるならボクが戦わなくてもいいじゃん」


 そんな、世界を救う力を持っているというのに消極的な彼女に戦ってもらう方法。


 それは魔法のカードを用意することだった。


「さぁ、今日も張り切って倒そう! リカちゃん」

「本名で呼ばないで。まぁ他の魔法少女ボロボロっぽいし、やりますか……」


 今日も悪を打ち倒す。主に、ソシャゲガチャのために。





魔法少女クソダサ☆パーカー 完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法少女クソダサ☆パーカー 月待 紫雲 @norm_shiun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画