第28話
一章
マリちゃんちの晩餐会②
味知との遭遇
「ふう、やっと落ち着いたな。全くアイツらときたら…。」
セミダブルのベッドが二つ並んだ豪華な客室を充てがわれた俺はパンパンになった腹を擦りながら入浴後の火照った身体をテラスで夜風に晒し夜景をぼ~っと眺めていた。
「すっかり長居しちゃったな。確かに居心地良いけどポンコツな我が家に帰り辛くなるじゃんか…。」
晩飯だけ食べて遅くならないうちに退散とするつもりだったのだが、マリとお酒が存分に入ったポンコツ桃香さんに「「どうして帰っちゃうの〜?ヤダヤダ泊まって〜!」」と物理的に食い下がられてたらふく御飯を頂いた上、お風呂まで御馳走になり今に至る。
セージさんはちょっと渋い顔をしながら「まあ、君なら…」とお泊り許可をくれ、ウザ絡みし続けるそるとちゃんにコンコンと説教をしていた。
かなり酔っているのか観葉植物に向かって喋り続けるセージさんをそるとちゃんが指差しケタケタ爆笑し、酔っ払い桃香さんが「お父さん!そるとちゃんはこっちよ?」と首をグリっと自分の方にむけると「ゴキッ」と嫌な音が聞こえたが「ん~~?間違ったかしら?テヘ❤」と戻していたから大丈夫だろう。
大きな窓付きのお風呂専用の小さなお庭が見えるジャグジーのお風呂はシャワーヘッドまで高級品できめ細かいシャワーまで心地良くて一日の疲れなど完全にどこへやら。
洗面所の大きな鏡に何だか独特の気配を感じたが慣れない家のせいだろう。弐狼が一緒じゃなきゃもっとリラックス出きたのに。なんでアイツは一緒に行動したがるんだ。
よりによってスッポンポンの時に弐狼妹が出て来て、「キャハハハ!チンチンぶ〜らぶら!アレ〜?バカ兄のあんまり揺れないのだ!シッカリぶらぶらする様に引っ張って伸ばすのだ!」と弐狼と入れ替わりながら兄妹ゲンカを始めたせいでマリに怒られてしまった。
マリも顔真っ赤にして逃げてくくらいなら乗り込んでこなきゃいいのに。変態宇宙人はガッツリ覗いてたけど。
それにしてもマリの料理は凄かった。メニュー自体は良くある物ばかりなのに洗練度が半端無い。
特にあの「マリから」なる唐揚げ…。何なんだあれは…しゅごいよぉ…。オナカいっぱいだというのに思い出しただけで意識が逆行してまた食べたくなる。
あれからそるとちゃんにラクガキされた顔をゴシゴシ洗ってすっかり不貞腐れたセージさんが書斎に引き籠もり、ちょっかいを出しに行こうとするそるとちゃんを俺と弐狼が両脇を抱えてリビングに連行した。
「そう言えば自己紹介がまだだったわね。ワタシが
おばあちゃんが付けてくれたのよ?粋でしょ。
ハイッ!アンタ達も名乗りなさい!戦いの前にはお互いに名乗るものよ!ちょっとソコのイケメン君!なんで目を逸らすのよ!ワタシが何をしたって言うの?」
良くもまあ抜け抜けと…。流石宇宙人だな!
ちっ、こう言う手合いに個人情報を晒すのは不安だけどどうせバレるししゃーない。渋々立ち上がり
「俺は
自己紹介の途中で自称親友が割り込んで来る。
「誰が一匹仲間よ!好きで一匹やってんじゃ無いわよ!ハイスペック過ぎるワタシ用のイケメンが居ないだけよ!!最初はヘラヘラ寄って来る癖にワタシがちょっと本気出すと「ゴメンなさい、俺が悪かったです。急用が出来たので失礼します。付いて来ないでくださいね?」ってみんな逃げてくのよ。弐狼君、アンタは要らないわ。あっ、ピピッときたわ!近いうちアンタを飼ってくれるご主人様が現れそうよ?でもDT卒業はムリね。太助君はワタシが貰ってあげるわ、色々とね!じゅるり。エヘヘヘ…」
最早隠す事も無くピョンと伸びた髪の先に七色に光る謎の球体をピカピカさせながらちょっと尖った耳をピクピクと動かしインチキ臭い未来予知を吐く。
おさかなエプロン装備のマリがシュバッと立ち塞がり
「ダメだって言ってるじゃないですか!どうやら躾けが足りない様ですねこの宇宙人さんは!!わたしの料理とマッサージでキッチリ再教育してあげます!
全くドコの銀河から来たんですか!?太助さんをパクッといったら星間問題ですヨ!さあUFOの在処をさっさと吐いて下さい!如何わしい予言なんて要らないです!弐狼さん!何ニヤけてるんですか!」
「だってよ〜、彼女が…」
「そんなのわたしがそのうちワンワン広場でお見合いさせてあげますから!プードルちゃんはムリ目だけど気さくなシバちゃんならお友達から始めれば脈はありそうです。駅前公園のポメちゃんとチワワちゃんも通いつめれば仲良く遊んでくれますよ、きっと!」
「そ、そうかな。まあ、ワンコでも仲良くしてたら人間に化けたりするのもいるからな!アニメで見たしな!希望が湧いてきたぜ!さっすがマリちゃん!あんがとよ!ヤッパリ本物の友達はいいぜ!」
そるとちゃんはムッとして弐狼の背中に覆い被さるとボリューム満点のおっぱいをグリグリ押し付けて
「ふ〜ん?悲しいな〜ワタシは本物じゃ無いんだ〜。コレでも〜?ほ〜らイイコトいっぱいあるかもよ〜?ワタシの予言は結構当たるのよ?イイのかな〜?」
「弐狼さん!騙されないで下さい!そのおっぱいは偽物です!正体は目玉がでっかい銀色のアレですよ?
さあ!そるとちゃんとやら!わたしのお料理で改心して地球侵略なんて諦めて下さい。ああっ!弐狼さん!シッカリして下さい!」
茹で上がったDT弐狼がフニャフニャになって崩れ落ち、そるとちゃんは腰に手を当て勝ち誇りふんぞり返る。
「すまねぇマリちゃん…このおっぱいは本物だぜ…
こんな異星人おっぱいで…クソッ」
ガクッと項垂れるも、すぐにハッと起き上がり
「ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!コレは浮気じゃ無いんです!そのおっぱいこそが至高でございます!
下僕で良いから捨てないで下さい!」
突然何かに怯えた様に宙に向かって謝罪する。
コイツいよいよヤバいな。モテ無さすぎて錯乱し始めたのか。マリと目が合うとコクリと頷く。分かったよワンワン広場には俺も付いてってやるよ。
「オイ!太助!マリちゃん!俺をそんな哀しい目で見つめるんじゃね〜よ!今確実に未来から声が聞こえたんだよ!「弐狼ク〜ン❤な〜にやってんのかな〜?ご主人様を差し置いて良いご身分ねぇ!あたし超退屈なんだけど!さっさと来なさいこの駄犬!!」って!
俺の彼女が待ってる!俺行かなきゃ!」
俺は弐狼の肩をポンと叩き、マリが優しい目で弐狼の頭を撫でる。
「すまんすまん、もう空腹も限界だよな。ほ〜らマリの美味しいご飯の匂いがオマエを誘ってるぞ?
おかしな幻聴は忘れて食欲に集中するんだ。彼女が居ない事なんて腹が満たされればどうでも良くなるさ。そんなの今更だろ?」
するとそるとちゃんがグイっと顔を寄せて頭の球体を指差して
「幻聴じゃないわよ!このセンサーは超高性能なの!ワタシのおばあちゃんは異星人だけどワタシはクォーターなの!大分薄まってるけど色んな能力が使えるんだから!バカにすんな!あとワタシはこっちの姿がデフォだからね!ソコんトコヨロシク!」
俺ははぁ〜っと大きく息を吐き、またしても増えてしまったやっかいな隣人に
「わかったわかった。この街なら宇宙人でも驚か無いさ。そっちももう空腹限界だろ?襲って来なきゃ仲良くしてやるよ。よろしくな、そるとちゃん」
と、なるべく朗らかに笑って見せた。
そるとちゃんは俺の顔を見るとちょっと顔を赤らめ
「コレだからイケメンは…」とブツブツ呟きそっぽ向いてしまった。分かってくれたかな…。マリがまた考え込む様に顎に手を当てて
「う〜ん、あの口調何処かで…。まっ、いっか!
みなさ〜ん!わたしとお母さんのお料理で幸せになって下さいね!色々苦手なわたしですけどお料理なら自信ありますから!!」
薄い胸をグッと張りドヤって来る。
リビングからダイニングに入ると、オシャレでおおきなテーブルにコレでもかと料理が並べられ、マリがキッチンにすーっと飛んで行き、
「ちょっと行って来まーす」
とオードブルが詰まったバスケットを抱えて玄関を出て行った。キッチンに視線を送るとソコは完全に飲食店の厨房だった。
ガラス張りの大きな照明付きの冷蔵庫、隣に大きな冷凍庫。製氷機も有る。コンロなんて高火力の奴が8基も並んでフライヤーにはまだ熱い油がプツプツ音を立てていた。カウンターにはデッカイ鉄板焼き用のプレートまで…。
セージさんが自分の書斎から戻り御馳走満載のテーブルを見ると目を細めて
「
と涙ぐむ。そるとちゃんがそっと寄り添うと
「ワタシなら何時でもご飯食べに来ますよ」
と無邪気に笑い、セージさんがキッと睨む。
「さあ、腹ペコ野郎の飢えた野獣共!お待たせしたわね!貪り食らうと良いわ!レッツディギィン!」
外国流なのかモデル仲間の独特のサプライズなのか司令官桃香さんがメイド姿でクルクル回りながら腹ペコの野獣をディスりながら開戦の音頭を取る。
美味しいお寿司のチェーン店の社長みたいに桃香さんとマリがフフンと得意気に手を広げる。
ご近所さんにオードブルを届けたマリが高そうな缶入りのクッキーやらチョコを抱えて戻って来ると待ちに待った晩餐会が始まった。
そるとちゃんの前には特盛牛すき丼に半熟卵、弐狼にはとろ〜り三種のチーズがかかった目玉焼き付き特大ハンバーグ、俺とセージさんは舌平目のムニエルと肉じゃが、マリと桃香さんはロールキャベツといったメニューがズラリと並ぶ。
そしてテーブルの真ん中には大皿に超山盛りの唐揚げ。別皿にエビフライとカニクリームコロッケとアジフライ。ガラスのボウルにはサラダと自家製ドレッシングが添えられて彩りが華やかだ。
スープはじゃがいものポタージュか、俺の好きなやつだ。ロールキャベツも余ってたら貰おうかな。
今にも食い付きそうに「ハッハッ!」と目を見開きよだれを垂らす獣と宇宙人に「待て!」をして、セージさんに視線を送る。
セージさんは「えっ?」としながら俯き加減にコホンと咳をすると「今日はみんな良く集まってくれたね。まさかこの家がこんなに賑やかになるとは思わなかったよ。色々あったがとにかくめでたい!さあ、わたしの自慢の妻と娘の料理をたらふく味わってくれたまえ!いただきます!!」とみんな揃って手を合わせる。
早速飢えた二匹が食事に喰らいつく。そるとちゃんは
「コレよ、コレ〜!今一番食べたかったのよ〜!チェーン店の奴って具が物足りないのよ!牛肉たっぷりの上、豆腐が丸々一丁入ったのは中々無いわ!丸太みたいな焦げ目付きのネギも野菜としらたきにもキッチリ味が染みててこのお出汁が甘みとしょっぱさのバランスが最高ね。ワタシは塩加減には五月蝿い女の子なのよ。グ〜よ、グ〜!!コレならキャトル…おっと、何でも無いわ。しなくて済みそうね。うん。」
グッとマリにサムズアップする。続けて弐狼が
「このハンバーグやべ〜よ!合挽きの比率が神がかってるわ。自家製デミソースに更に三種のチーズでバッチリ強化されてコレなら飲めるぜ!いつも食ってるチーズ牛丼が遥か彼方に霞んで見えるぜ!流石だぜやるなマリちゃん!!」
と、「イヤッホー!!」と拳を上げる。セージさんは肉じゃがを突きながら
「ああ、この味だよ…わたしの好みを熟知したマリの愛情が籠もったいつもの味…。西海岸のカフェに居ても何故かこの味が恋しくなるんだ。う〜ん、元気が出て来たぞぅ!今度のプロジェクトも成功間違いなしだな。余計な横槍が入らなければな。」
チラッとそるとちゃんを睨むとそるとちゃんはペロッと舌を出す。引っ掻き回す気満々だな。
桃香さんが瓶ビールの栓を威勢良くシュポンと抜いてセージさんのグラスにビールを注ぐと自分のグラスにもビールを注ぎ
「ハイッ!お父さんカンパ〜イ!お父さんそるとちゃんと仲良くしないとダメよ?マリが居ればきっと仲良くなれると思って呼んだのよ。企画部もマンネリ化してたでしょ?そるとちゃんみたいなアバンギャルドなキャラもカンフル剤として必要だと思うの。」
「松戸のアイデアはエキセントリック過ぎるだろ!
「着るエアコン」って本当にエアコン背負ってどうする!バッテリーが三十分しか持たないのに!バッテリー切れたらkillされるだろうが!」
「アッハッハ!オヤジギャグ頂きました〜。ハァ〜、コレだから老害は…アレはまだまだ試作品なんです。メーカーの技術者さんもせっかくノリノリで開発してくれたのに!技術は日々進歩してるんですよ、まだまだ軽量化出来るって言ってました。それにバッテリーだってドンドン小型化してるし、オプションで曲がるソーラーパネルを貼り付けたシャツに歩くだけで発電出来るシューズと極めつけは風力発電出来るプロペラ付きの帽子を装備すれば完璧!クルクル回ってビジュアル的にも映えるし、絶対にバズりますよ。斬新なモノは最初は必ずディスられるけど利便性が勝つって方程式が有るんですよ、ワタシの中に!!」
「ああ、お前がそう思うのならそうなんだろうな。お前の中ではな。そんな物装備して喜ぶのはお前くらいだろうこのクルクルパーめ!失敗の責任は誰が取ると思って居るんだ!ハゲ社長にネチネチ説教されるわたしの気持ちが分かるのか!?奴め毛生え薬にばかりバカスカ予讃線、じゃ無い予算つぎ込んで会社の資金を私物化しやがって!」
「ワタシパーじゃ無いもん!成績優秀で期待の新星だって社長さん褒めてくれたのに!あとナイスバディでカワイイねって食事も御馳走になりました。ウチの会社の育毛剤良く売れてますよ?部長もそのうちお世話になればありがたや〜ってなりますよ。」
「仮にも年頃の娘が好色ジジィにホイホイ付いて行くんじゃ無い!あの社長は女の子大好きで連れ歩くのが趣味なんだ!お前わたしが外で食事しようとすると必ず付いて来ては集って行く癖にまだ足りないのか!?もっと青魚を沢山とって脳に栄養をだな…」
「なんですか!その「肉ばっか食べて胸と尻にしか栄養が行ってない色ボケ宇宙人め!」みたいな顔は!
ワタシ本当はシーフードの方が好きだけど魚介類って高いしお腹に溜まらないから御飯ばっかり沢山食べちゃって結局ダイエットしなきゃイケナイパターンになっちゃうんですよ!部長こそ乙女心を察して下さいよ!ああっ!このお肉柔らかくて美味しい!本当に罪だわ〜!!モグモグモグモグ…」
ダイエットと言うワードが聞こえた瞬間マリとと桃香さんの動きがピタリと止まり、マリと桃香さんがお互いを見やり「大丈夫!大丈夫!!」とニッコリ笑って再び箸を進めて行く。
マリがアジフライをトングでつかみそるとちゃんの丼にそ〜っと入れると、キラ~ンと目を光らせ凄い勢いでバリバリと尻尾まで食べて揚げ物の大皿に箸を突っ込むとエビフライを掻っ攫いバリバリと尻尾まで一気にほおばる。
ほぉ〜、と気を良くしたマリがカニクリームコロッケや唐揚げを次々に盛ってどんぶりを山盛りにして行く。
「ウマっ!ウマっ!何コレぇ〜!サックサクで噛むとドレも素材の味がふわ〜っと来て意識が大気圏離脱しちゃう!おばあちゃんのUFO取り返さなきゃ…。
政府の奴ら見てなさいよ!上手く行ったらアンタ達も乗せてあげるから手伝いなさいよ?」
政府相手に学生に犯罪の片棒担がせるなよ。でもUFOはちょっと乗ってみたい。そもそもこのインチキ宇宙人の言う事だし、本当にあるのか?
掻っ込み過ぎて「ゲホッ!ゲホッ!」と
マリが楽しそうに瓶ビールをシュポンと開け大ジョッキに注いで渡すと、グビグビとビールをあおり丼飯と揚げ物をガツガツかっ喰らい「サイッコ〜!!」とブンブン手を振り回す。
「マリちゃん!俺も俺も!宇宙人なんかに負けてらんね〜ぜ!俺は2人分食わなきゃいけねーからな!」
フフンと笑いマリがトングをカチカチ鳴らし、フライの歌を口づさみながらフライを弐狼の皿に盛って行く。
「ホイホイっと!唐揚げアジにカニコロエビフライ〜🎵おっと見つかっちゃった隠れキャラ!ホタテが出て来てこんばんは〜🎶」
爆盛のフライ軍の中から隠れていたホタテフライが出て来てマリがトングでホタテを掴んで掲げる。
弐狼のハンバーグの横に添えようとするとそるとちゃんがトンビの様に凄いスピードでホタテフライを掻っ攫ってパクッと喰らいつく。
「ズルいぞ!そるとちゃん!ソレは俺のだろ!俺の妹が腹空かせて暴れてんだ!チキショーオイシイとこ持って行きやがって!ミューティレーションは牛だけにしろよ!」
「ハイ、弐狼君あ〜ん!まだまだあるわよ?」
涙目の弐狼に桃香さんがホタテフライを箸で掴んで半開きの口に運び給餌する。
モシャモシャ咀嚼すると、弐狼は
「美味いか?じゃあマリちゃんのフライ制覇するぜ〜!おっと、なあ俺もビール飲んで良いか?」
独り言の様に妹に話しかける。許可制なのかよ。
「ハイ!お父さんもあ〜ん❤最近食欲落ちてたからちゃんと食べないとダメよ〜。ね、美味しい?美味しいわよね?」
桃香さんにあ〜んされたセージさんがコクコクと頷き、照れくさそうにホタテフライをモグモグするとそるとちゃんが
「さあさあもっと飲んで下さいよ!ワタシだけウワバミみたいじゃないですか。一家の主として気合い見せて下さい部長!!」
とセージさんのグラスに波々とビールを追加する。
当然の様に自分のジョッキにもいっぱいに注いで更にグビグビと飲み干して
「マリちゃん!ビール追加ぁ〜!酒が足んないわよお酒がぁ〜!!燃料が必要なのよ〜!!」
「じゃあわたしも今日は飲んじゃお❤マリ〜!手伝うわよ〜!」
マリと桃香さんがキッチンから大量のビールを運んで食卓にドドン!と並べ、そるとちゃんが目をキラキラさせてビール瓶にスリスリする。もう完全に飲み会じゃないか。もっと優雅なモノを想像してたのになんか違う。あの宇宙人のせいだな!
マリが俺の前の自分の席につくと、
「あの、ひょっとしてお口に合いませんか?太助さんあんまり食べて無いから…」
と俺の顔を覗き込んでくる。
「いや!違うよ!凄く美味しいぞ!騒がしさにちょっとドン引きしてただけだよ。この肉じゃがなんて味付けが超好みだし、煮込み具合が素晴らしいな!
食材ごとの煮込み加減が完璧で特にじゃがいもが煮崩れちょい手前でほこほこしてるのが良いよ。セージさんの好みなんだろ?流石グルメだな!この独特のハーブの香りのムニエルも火加減が絶妙で身の美味しさが
シッカリ味わえるのがたまらないな!うん!美味い!」
「それは「上平目のムニムニ」です。美味しいですか?お口に合って良かったです!」
「舌平目のムニエルだよな?」
「味がなんか平凡になっちゃったんでわたしが改良したんですよ。お父さんに食べて貰ったら口をムニムニさせて美味しい美味しい!って言ってくれたので!平目も極上のやつをお魚屋さんにお願いしてます!」
「へぇ〜、凄いなぁ。ところでそのロールキャベツもめっちゃ美味そうなんだが余ってたら貰えないかな?」
「ロールキャベツですか?お目が高いですね…。
コレお母さん特製なんです。わたしが食べたくてリクエストしたんですよ。まだありますから遠慮無くどうぞ!ハイ!あ〜ん❤」
マリが自分の皿からロールキャベツを箸で掴み俺の口元に差し出して来る。俺はちょっと仰け反り躊躇っているとマリが更に
「ハイッ!あ〜ん❤ですヨ!!」
と、ググッと迫って来る。
めっちゃ照れくさいんだが。え〜いっと差し出されたロールキャベツにパクッと喰らいつく。ああ、コレがマリの「母の味」なのか…。
キャベツの甘みと肉汁が口の中で一体になって行く過程がたまらない。マリの料理に全く引けを取らない。こんなの食べてたらそりゃ料理も上手くなるよな。
続けて隠れキャラのホタテフライがあ〜んされ俺は諦めて大人しくモグモグと咀嚼する。
おお、コレもイケる。サクっとしたあと閉じ込められたホタテの香りがガツン!とくる。ホタテ食ってる感が凄い。マリの目を見てうん、と頷く。
ニッコリとしたマリが不敵な笑みで今度は唐揚げを差し出して来た。基本的な醤油味の様だが香りからしてもう涎が止まらない。
「こ、コレが石炭唐揚げ…」
「何ですか?石炭って?」
「いや、何でも無いんだ。え〜いっ!ままよ!」
ゴクリと唾を飲み込んで唐揚げに食い付く。
「あれ?何処だココ…?おお、なんか下の方に日本列島が見えるな。アレって国際宇宙ステーションじゃ無いか。凄いスピードで近づいて…ぎゃあああ!!」
はっ!として我に返るとマリが
「太助さん!太助さん!!帰って来て下さ〜い!
早くしないとチューしちゃいますよ〜!」
とほっぺたをペチペチ叩いて口を尖らせ迫って来た。「わ〜っ!」と思わず体制を崩すと隣の弐狼が
俺の肩をポンと叩いて「オマエもかよ」とニンマリする。その隣では恍惚とした表情でそるとちゃんが
「エヘヘヘ…何この唐揚げ…止まんないよぉ…ビールとの相性もバツグンでぇ〜、更にこのマヨをかけるとぉ〜、うっひゃ〜もうパラレル!パラダイム!パラダイスぅ〜!!」
ヤバいスイッチが入ったのか訳の解らない事を口走りながら大ジョッキ片手にひたすら唐揚げを貪り、二匹の獣によりあんなにあった揚げ物が空っぽになっていた。
俺まだ殆ど食べて無いのに!畜生!ケダモノ共の食欲を舐めてたぜ!!
「大丈夫です!こんなのまた作れば良いんです!
こんな事もあろうかと仕込みは済ませてあります!
すぐに作って来ますからコレでも食べて待ってて下さい。」
マリがタッパーに入った自家製キムチを「でん!」と置いてキッチンでフライヤーと格闘し、次々と揚げ物を皿に盛って行く。
桃香さんはすっかり出来上がりセージさんに絡み続け使い物にならなさそうだ。
何もしないのもなんなので、キムチを突きながらビールを煽るそるとちゃんと弐狼を後にしてキッチンに大皿を取りに行く。
「あの唐揚げすげーな。唐揚げ食べて意識が飛んだの初めてだわ。そりゃあんなの育ち盛りの欠食学生にいきなり食わせりゃ泣きだすわ!石炭じゃ無くて良かったよ。料理教室は海兵隊式じゃ無かったよな?」
マリはジュウジュウとフライヤーの中で泳ぐ揚げ物を見つめ、最良なタイミングでヒョイヒョイ取り出しながら
「何ですか?石炭って?友達に料理教室はやってましたよ。お料理始めるとクラスメイトがワラワラやって来るんで血の気が多い運動部の娘とバトルになってましたけどそれくらいです。う〜ん石炭かぁ。じゃあくろとあかで〜、イカスミとトウガラシかな〜?
ミキ、どうしてるかな…荒くれ者に戻ってなきゃ良いけど…」
本当に作るツモリなのか石炭唐揚げ…。余計な入れ知恵をしてしまったかも知れない。
揚げ物の大皿を抱えてテーブルに戻ると二匹がキムチを食い尽くしサラダまで半分以上食い荒らしていた。コレも山盛りあったハズなのに!この害獣共め!俺の分残せよ!
俺は残り少なくなってしまったサラダを没収して確保し、代わりに揚げ物の大皿をどん!とテーブルの真ん中に置く。
「オマエらな〜、シェアしてる分は少しは遠慮しろよ!俺もマリもまだ全然食べて無いのに!」
「「チンタラ食ってるヤツが負け!」」
二匹が同時に叫ぶと再び大皿に襲い掛かる。こんな時だけコイツラは…!ふと見ると桃香さんは自分とセージさんの分を要領よくささっと取り皿に確保していた。
くそうっ!やはりこの戦場では俺は敗残兵なのか…!バッタの大群に農作物を食い尽くされる外国の農家の人の悔しさが今なら理解出来る。
「みんな本当に良い食べっぷりだわ〜。見てるこっちの食欲が刺激されるのが玉にキズだけど、こんなに美味しそうに食べるお客さんは初めてかしら〜?ついついお酒も進んじゃうわね〜❤」
「ははっ、いやいや桃香さんは普段から飲みまくって…あっ!何でも無いよ!ビール瓶を直接口に突っ込んで来るのはやめてくれないか!」
「こんな事ならもっと色々お酒買ってくれば良かったわね〜。ホラホラ部長さん飲んで飲んで〜❤ね〜、
わたしフルーツ食べたくなっちゃった❤フルーツ頼んで良いかしら〜❤」
ボッタクリバーの派手なお姉さんの様に桃香さんがセージさんにベタベタと絡みまくる。
食いっぱぐれて落ち込む俺の裾をマリがクイクイと引っ張ってフライと唐揚げ一式2人分の中皿を差し出しニコッと笑う。ああ…ありがとう…天使様…!
「みんなが夢中になって食べてる間にわたし達も食べちゃいましょ?ロールキャベツも追加しましたよ。お母さんのアレはいつもの事なので気にしなくて良いです。お母さんお酒大好きでお父さんはお母さんと知り合ってお酒を覚えたらしいんです。そろそろ泡盛の水割りでも出そうかな?太助さんもフルーツ食べますか?」
「そうだな。だがアイツラのとは別皿にしてくれよ。フルーツは食後で良いだろ。全く弐狼のヤツなんで宇宙人なんかと張り合ってんだ、地球防衛軍にでも就職するつもりなのか?」
互いに負けじとガンを飛ばし合いながら「美味い!美味い!」とハムスターの様に餌を口いっぱいに頬張る二匹と少し離れて椅子に腰を下ろす。
卑しいケダモノがコチラの中皿をチラチラ見てくるので「ガーッ!」と威嚇して皿を退ける。
「オマエら今補充してやっただろ!なんで他人の分狙うんだよ!俺だって腹一杯食べたいんだよ!シッシッ!!ホラ、マリが新しい酒持って来たぞ!」
マリが持って来た泡盛の壺を視てセージさんがぎょっとして
「ああっ!それは取っておきの泡盛じゃないか!
マリが成人した時の御祝い用に保管してたのに!」
「良いじゃ無い、マリの帰還祝いなんだから。マリはもう年取らないからさっさと開けちゃいましょ?
良いわよね?マリ。ウフフ、二十年物の
桃香さんが目をキラキラさせて泡盛を見つめペロリと舌を出す。
獣二匹はどうやら初めて目にするらしく、壺をツンツン突付いたり、クンクンと匂いを嗅ぎ弐狼が顔をしかめてそるとちゃんは頭のセンサーを近付けやたらと変な玉をピカピカさせていた。
「離れるのよ!コレは危険な物よ!!今迄飲んでたビールなんて赤ちゃんのミルクみたいなモンよ!
国内のお酒の中じゃ最も天国に近い種類のお酒よ!」
「おう!なんせ国内版「天国にいちばん近い島」の名産品だからな!クッ!この禍々しい白い壺がドクロに見えて来やがったぜ!なあ、撲殺して良いか?」
弐狼が大した威力も無いウルフパンチに「は〜っ!」と息を吹きかける。
「ま、待ちたまえ!この泡盛はマリが産まれた時に御祝いに貰った物なんだ!言わばマリの分身の様な物だ!飲んでしまったらマリが半分無くなるのと同じだろう?居なくなったマリの代わりに時々話しかけて育てていたのに…どうしてもと言うならわたしを倒して…ハッ!?や、ヤメロぉ〜!!」
我が子を人食い鬼から守ろうとする父親の様にリミッターが壊れた酔っ払いの前に立ち塞がり泡盛の壺を抱きしめセージさんがうずくまる。
桃香さんとそるとちゃんは向き合いニッコリと笑い
「「ゴメンナサイ、どうしても飲みたいの❤」」
二人の酒鬼がフライパンとハリセンを手に元魔王に躙り寄る。目の中は酒の壺しか写っていない。コレアカンやつや。とても怖いので俺は止めるのを諦めた。
マリがセージさんにそっと寄り添うと
「お父さん、わたしは良いから。ああなったお母さんは飲ませないと止まらないでしょ?今日は宇宙人も居るし怪我じゃ済まないかも知れないよ?ミューティレーションされたら回収に凄く時間掛かりそうだし…
薄く水割りにして半分だけ飲ませましょ?ね?」
マリがセージさんから泡盛を譲り受けるとキュッと栓を抜き、酒飲み三羽烏から拍手が起きる。
オシャレなグラスに泡盛が注がれ綺麗な水と氷であっと言う間に水割りが出来上がり、マリがセージさんにグラスを握らせる。
「お父さんありがと。わたしだと思ってぐ〜っといっちゃって?絶対美味しいよ!新しいわたしがココから始まるんだよ!わたしお父さんのエネルギーになるの!」
良い感じにまとめようとしてるんだろうがセリフだけ聞いてるとサイコパスにしか聞こえない。しかも幽霊だし。
セージさんのメガネは曇り、フレームは激しく歪み
「うおおお~!コレは父としてのケジメだ!お父さんは全て受け止めてみせるぞぉ〜!!」
グラスを掲げると見事に一気に飲み干し
「美味い!まさにマリの様に清純かつ華やかでいて図太さがある!二十年育てた甲斐があるな!」
「「キャーステキー!部長さん男前〜!」」
とメイドさんと宇宙人に担がれてしまっていた。
すると本体が自分の身体を見渡し寂し気に
「寸胴ってコトですか?熟成不足でゴメンナサイ…あと二年有ればわたしも芳醇になれたかなぁ…」
と、溜息をつきながら淀んだ目でカラカラと水割りを掻き混ぜ次々に配って行く。そう言えば成人して無いんだよな。俺はヨシヨシとマリの頭を撫でて
「そのままで良いよ。俺は不足なんて感じないぞ?」
「太助さん、結構マニアックですよね?わかりました!わたしは全部受け止めて見せますヨ!仲良しの大事なお友達ですから!弐狼さんにも早く彼女が出来る様にお散歩頑張ります!」
「おうっ!頼むぜマリちゃん!ヤッパリ頼りになるぜ!太助のヤツ全く使えね〜からな!オラ、ワクワクしてきたぞ!」
再び盛り上がり始めた酒飲み達から逃げる様にして大きなテーブルの端に移動するとマリが俺の横に座って来た。
俺達はシラフレンドらしく麦茶で乾杯して純粋に料理を味わう。只でさえ美味すぎる手料理に隣にめっちゃカワイイ女の子。しかも好感度バツグンときた。
ヤッパリ
男女混ざって楽しそうにワイワイしてる奴らに何度か仲間に誘われたけど、そう言うのが苦手な俺はずっと断わって来た。弐狼のヤツだけで手一杯だったし。
自分の作った料理を「う〜ん今日もみんな美味しいよ〜!ああ…しあわせ…」と笑顔でパクパク食べる食いしん坊幽霊を横目に俺も残りの料理を食欲に任せ貪った。
「ふぃ〜、ごっそ〜さん!マジ最高の晩飯だったよ。ご飯もめっちゃ美味かったけど何米なんだ?」
「ウフフ〜流石太助さん、わかっちゃいましたか…
ソレは我が地元が誇る
マリが手際よく空になったテーブルの上の食器を片付けながら自慢気にぐっと拳を握る。
たましっぽ…?御稲荷様…?なんか引っ掛かる様な忘れてる様な…?思い出したくないと俺の本能が激しく拒否している。まあ、碌でも無い事だろうし、せっかくの御馳走の余韻を邪魔されたく無い。さっさと忘却の彼方へと追いやり残ったじゃがいもスープを啜り、天井から下がるシャンデリアを眺めているとマリがガラスのボウルを抱えてす〜っと飛んで来る。
「みなさんデザートのマリちゃん特製フルーツポンチですよ~!ケンカにならない様にわたしが取り分けますので!ホラ二人共下がって!言う事聞かない子はおあずけですよ!」
美味しそうなフルーツの匂いに釣られマリの周りをクルクル回り纏わりつく二匹のケモノを引っ剥がし再び座らせる。
人差し指を立てて「めっ!」とするマリに合わせる様に俺は腕を組んで「はぁ…」と溜息をつきジロリと睨む。弐狼とそるとちゃんは口を尖らせて
「ちっ、分かったよ〜。」「略奪はロマンだけど今日は此の位で許してあげるわ。」
やっと大人しくなった猛獣の前にフルーツポンチが並ぶ。桃香さんもゴキゲンで
「ヤッパリ〆はコレなのよ〜!ちゃんと作るとちょっと面倒だけど香りが全然違うのよね〜❤」
手を組んでほっぺたに当てくねくねする。なるほど缶詰とかは一切使って無さそうだ。俺が子供の頃母さんが作ってくれたお手軽ポンチとは見た目から全く違う代物だ。混ざり合うフルーツの香りがたまらない。
「バナナ、パイン、キウイ、マンゴー、苺、ブルーベリー、チェリー、ライチ、白桃、メロン、あと、コレは…」
「ブラッドオレンジです。果物屋さんに行ったら色々目移りしちゃって「もう我慢できない!全部食べちゃえ!」って気が付いたら全部買ってたんですよ。バナナは完熟のちょっと良いヤツです。リンゴもすり下ろして裏ごしして入ってますよ。トドメに特製牛乳寒天で更にボリュームアップです!」
要するに買い出しに行ったら好物に目を奪われて我慢出来なくなっちゃったのか。コレ店で食ったらいくらするんだろう。欲望のフルーツポンチと名付けたい。それにしてもデザートなのにボリューム有り過ぎだろ!ケモノ達はやっぱりお代わりしていた。
弐狼は流石に腹が膨れ上がっているが桃香さんとそるとちゃんのオナカは何故か全然ぽっこりしていない。特にそるとちゃんは3人前程もある特盛牛すき丼に爆盛の揚げ物を散々食い散らかしてた筈なのに!謎の収納スペースがあるのか?
「何よアンタ?乙女のボディをジロジロと!やっぱりワタシと付き合って欲しいの?」
「アラ?太助君はわたしと結婚して2号になるのよ。今度デートしてくれるって約束したのよ?
このメイド服の下がそんなに気になるかしら〜❤」
「二人共!!悪質なデマは止めて下さい!風説の流布は犯罪ですヨ!太助さん市場が困乱してるじゃ無いですか!!」
乱高下する市場にブチ切れる証券マンの様に立ち上がって両手でバンバンテーブルを叩くマリを「どう、どう」と撫でて宥めて落ち着かせ
「俺は1号一択だから安心してくれ。弐狼とそるとちゃんの株価なんて底値で買い手が警戒しまくってるから手を付けるつもりも無いしな。代わりにマリちゃん株が俺の中で暴騰してるぞ。もうリアル店舗出せるレベルじゃね?」
「むふ〜!むふ〜!」とメイドさんと宇宙人を威嚇する幽霊娘の不安材料を取り除いてやると
「ありがとうございます!是非その株は今すぐ爆買いして下さい!た、太助さんがお望みならあの、その、ま、毎日お味噌汁を…な、何でも有りません!」
大喜びしたと思ったら真っ赤になり、ストンと椅子に座って顔を伏せながらパクパクとフルーツポンチをひたすら掻き込む。
「ちっ!惚気けてんじゃね〜わよ!しらけちゃうじゃ無いの!ね〜部長、処で「着るエアコン」ど〜すんですか?代案が有るなら出して下さいよ!今年も猛暑確定なんですけど!?ね〜、ね〜?」
そるとちゃんはマリをからかうのに飽きたのか、今度はセージさんにプチ会議と言う名のウザ絡みを始める。嫌がらせに余念が無いなぁ。
弐狼が妙に静かだと思ったらいつの間にか妹と入れ替わり涙を流しながら「美味いのだ!美味すぎなのだ!こんなの初めて食べるのだ…アチキも人間の身体が欲しくなっちゃったのだ…」
とフルーツポンチをガツガツと貪り喰らっていた。
「ん〜?ん〜?この娘ったら!この娘ったら!」
とメイド桃香さんにほっぺたをツンツンされながらジト目でフルーツポンチを頬張るマリの横で俺もやっと最後の逸品フルーツポンチにありつく。
それぞれのフルーツが瑞々しくハッキリ主張しながらポンチにする事でフルーツジュースの様に複雑かつ不思議な一体感が有る。コレは贅沢だ。弐狼妹なんて狼だから想像も付かないだろうし、分かる気がする。
調子に乗ってつい食べ過ぎてしまった腹を擦りながら酔っ払い達をあしらいマリと後片付けを始める。こう言う時は動ける者がやるのが戦場の掟である。
新参者の二等兵の俺はマリ小隊長の指示を仰ぎつつ
せっせと食洗機に食器を突っ込んで行く。
「スミマセン太助さん、お客さんなのにお手伝いして頂いて…でも何だか凄く楽しいです!」
マリは嬉しそうに余ったフルーツポンチを冷蔵庫にしまいながら慣れた動きでテキパキ片付けを進める。
「いやいや、こんな美味い晩御飯御馳走になっちゃったんだからコレぐらいやるよ。あ〜もう弐狼の奴食ったと思ったらソファーで寝転がりやがって!本当に本能だけで生きてやがるな!お〜い!弐狼!そろそろ帰り支度しろよ?すっかり遅くなったし家にも連絡しとけよ!オマエすぐに迷子になるんだから!」
我が家の様にくつろぎ始める拾われ狼に釘を刺すと
「「えっ………?」」
マリと桃香さんが
「「コノヒトナニイッテルノ……?」」
と、驚きの眼差しで俺を見つめてきた。
あれっ………?
ワインディングで幽霊少女を拾ったら凄くいい娘で俺の事がダイスキなのでお友達から始めてみた ムーンサルト リム @demikatsu
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