第三十五話 時計被りは結局唯の時計被りなのだろうね!

―――??視点―――


けいかぶりは、いつも何処かを見ている。何か大事なものでも見えるのだろうか? そう気になったボクがその方向を見るも眼下に広がるは唯の花畑のみ。全く、何が面白いのやら。


時計被りは、今日は機嫌がお悪いようだ。だっていつもよりも目付きが鋭い。ははは、そんな顔をせずともボクはキミを憐れむだけだというのに。


時計被りは可哀想だ。だってそのせいでココにいるんだもの。


時計被りは死人のように今日を生きている。マァ、それもそうだろう。全く! それに付き合わせられるボクの身にもなって貰いたいものだ!


そんな酷く惨めで可哀想で仕方ない時計被りを優しい優しいボクは今日も憐れみ、声を掛けてあげるのだ。


「ネェネェ、時計被りやい。今回の子は随分と長いのだね。」


「まぁ今回は違っているので。」


と、怠そうに此方を見ながらロクに食事を取っていないせいか、余り喋らないせいかシャガレた声で答える時計被り。


あぁ全くもって本当にキミという存在は可哀想だ! でもそんな可哀想なキミだからこそ! ボクはキミという存在を決して嫌いにはなれないだろうし、憐れむからこそ! 手をついつい差し伸べてしまうのだろうね!


「今日もキミはボクを愉しませてくれる。―――あぁそれはきっと明日もだろうね! ネェネェ、時計被りやい。もし成功したらキミは死んでしまうのかい? ⋯それはボクとしては随分とつまらないのだけれども。」


「成功⋯⋯。しますかね?」


「するさ! だって今日は記念すべき一億年だもの! ⋯じゃなきゃ何の為にキミを生かしたのさ。」


と、ボクが言うと時計被りは何とも言えない顔でボクを見てくる。マァマァ、そんな顔をせずとも、ボクはキミという存在が輝き続ける限りは味方だよ?


にしても可哀想な時計被り。


ココに就かなければイケなかったせいでコロコロ変わる顔。マァ、それが時計被りが担当する代償なのだからしょうがないよね。⋯⋯はぁー、にしても自分が曖昧になろうがそれをやるという意志だけはいつまでたっても本当にキミを輝かせるね。


もし、成功してもそこにいるのはキミではないというのに。⋯⋯あぁいや違うか。キミでありキミじゃない。


マァ、ココにいる時計被りは自分のようになっては欲しくないだろうから溺れさせて刺したのだろうけども。さぁ、時計被り。キミは、いやキミという他の個は今から輝くんだ。


どうかそこにいるのが自分ではないという事実に絶望してくれるなよ? じゃないとボクが退屈だからね!


そう思い、ボクは時計被りと一緒に観る。これがキミでありキミじゃない存在の人生の新たな幕開けさ! さぁ一緒に愉しもう! この可哀想な世界を!


「キミが輝く限り、ボクはキミの味方さ。」


そう時計被りの後ろから肩を押さえて耳元でボクはささやいた。




―――暗転。―――



「あ、えーと私は⋯⋯。」


「て、敵って一体?」


「ミアねぇ! そんな呑気に言っている場合ではないのじゃ! 急いでここから離れるぞ!」


と、キカさん、ミア、ミラの順で次々に言う。それに思わず僕は口を開く。


「ち、違うんです! ⋯あ、いや違わないかもしれないけども。で、でも! 違うんです!」


「じゃったらソレは何と説明するのじゃ。」


「それ⋯⋯?」


「え、いや何でリイラの髪色が急に変わって知らない人が現れているのかを私は聞きたいんだけど!」


「確かに⋯そういえばそうじゃな。」


と、ミアの言葉により取り敢えずは落ち着いてくれたミラ。いやいやそれよりも今言ったそれが何なのか今、聞き返しても答えてくれませんでしたし、それってな―――いやまさか!


「これのことですか!」


そう僕は言い、腕を巻くって見せる。


「そうじゃ。それのことよ。」


「え⋯⋯、ナニコレ。」


と、ミアは唖然としている。ミアってこういうの詳しくないんでしょうか? そう不思議に思っていると


「文字が気持ち悪ッ!」


いやそっちのことですか! 確かにそれはめちゃくちゃ同意ですけども! そう思いながら改めて見る。⋯⋯ウン、吐き気が再度しそう。


(ネェネェ、時計被り。今回も同じじゃないのかい? 「いや、多分違う筈。」)


「文字列⋯⋯。ねぇ、これ嫌?」


「まぁそりゃあ⋯。」


「じゃあ、こうだね。」


と、ミアが僕に近付き手を当てると消え、え? 消えた?! す、凄い。


(今回はメティアラジュが解除するパターンなんだね。ネェ、時計被り! 「⋯⋯静かに観て下さい。邪魔です。」 え、⋯⋯ショック。)


「あ、ありがとうございます。ミア」


と、慌てて礼を言うとミアは全然といった感じに微笑んでいた。


「ねぇ、その⋯言いづらいんだけど。髪の色はそういう趣味でしてるの?」


と、言うミア。え⋯⋯髪の色? 趣味? それってどういう―――


「もし趣味じゃないというのなら多分、ウケ狙いじゃろ。⋯⋯まぁ滑っておるがな。」


なんか今凄く失礼なことを言われた気が⋯⋯。というか髪の色って一体何のことを言って―――


「え、えぇとこれはその人の栄誉の勲章なの!の!」


え、だから何が勲章なんですか? そう思いながら言ったキカさんを見ると何故か任せてという顔をされる。いやだから何が! そう思いながら髪を確認しようとするも短いせいで分からず⋯。にしても髪色って! 魔法を失敗したわけじゃあるまいし! ⋯⋯ん、え? 魔法を失敗?


―――ッあ! そういえばあの時キカさんが何か髪がどうのこうのって言っていたような?


「栄誉の勲章? ⋯⋯まぁそれなら何も聞かないけど。」


「いやいやミアねぇ! こんな滑ったことにも気付かぬアホウと行動するのは嫌じゃ!」


何故だろう 更にグサッと痛い その言葉。


「まぁまぁ、そんなことよりもさっきここに居てって言ったよね? あれはどうしてかな?」


そんなこと 僕の髪色 そんなこと。


と、思わず何時ぞやのあれいさんに教わったものが浮かび上がる。


(うーん、鏡風かがみかぜ 彼は揺らっと 泣きもせず 「⋯⋯。」)


「あぁ、何やら外に出ては危ない気がしてな。じゃが、この場所ならあたしとミアねぇとあんのクソアリスしか知らぬし大丈夫じゃろうと思ってな。」


「⋯⋯その筈の場所に今、こんなに人が集まっているのはどうしてかな?」


「うぐ、それは。」


と、やり取りするミアとミラに僕は辺りを見回す。確かに、今いるのは僕とキカさんとミアとミラと管がぶすぶす刺さっているフィくん。


(ボクらも観てるよー! 「黙って下さい。」う、うぅ。)


「それにあなたは誰?」


「え! え、えぇと私は⋯四のキカ。」


四? 今、四って⋯⋯。キカさんって意外と強いんでしょうか? そう思っていると


「そう。その四のキカがどうしてリイラと一緒に現れたのかな?」


「え、えぇとそれは―――」


「僕が説明します! えぇとキ―――」


(飛ばすねー! 「まぁそれは良いけども」)


―――飛ばし中。――――



「⋯⋯分かった。そういう事項を私も知ってるからね。信じるよ。」


え、それってどういう―――


「それじゃあ潜入捜査だぁ!」


え、潜入捜査⋯⋯?


(へぇ、良いじゃないか。)


「先ず、キカちゃんの紹介で入り込む!」


「え? いや、え? 何故潜入?」


と、思わず疑問が湧きミアに聞くと


「いやだって、それが起こったのはそこなんでしょ? なら、実際にそこに行って防いだ方が早くない? ⋯⋯それとあれいの事は私が調査する。だって潜入は私が行ったら駄目なんだろうし。」


あ、確かに⋯。ミアを守るのではなくあちこち移動して貰った方が良い。だってあいつが執着していたのはミアだ。もしもの為にも絶対会わせない方が良い。そしてその間に僕らは探る。それならと思い僕は口を開く。


「分かりました。潜入しましょう。」


「え、え? 私が紹介??」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る