第三十四話 時は満ちた。僕らは進む。
ん、ここは―――そう思い下、いや辺りを見回すとエイラー水精の欠片の花、エイラー
青い花びらが突如舞い、僕は思わず目を
それに更に気になって近付こうとするも急に花びらがまた舞い、思わず目を瞑る。そっと再び目を開けた時にはその姿はなかった。それに思わず僕は唖然とする。
「――きて。―――起きてよ!」
と、突然聞こえた大きな音に僕は目を開ける。ん? 目を開け、る?
「あ、やっと起きた。見て! 凄いよ、開いちゃったよ! これで助けに行けるし、時間も指定出来るよ!」
と、近くにキカさんが見えた。え⋯、じゃあさっきのは夢⋯⋯? あ、いやそんなことより時間が指定出来るんですか! それならあれいさんも助けに行ける! そう思い辺りを見回すと大き過ぎて首が痛くなるくらいの銀色の時計が見えた。周りは本が数個あるだけでかなりの殺風景だ。
「それよりあなたって一族の出身なんだね。」
「え、一族の出身⋯?」
「うん、じゃなきゃここは開かないと先程言ったでしょ?」
と、いう言葉に先程のことを思い出す。う、混乱して一周回ってテンションがハイになっていたからよく聞いていなかったですね。と、思い返していると
「文献によると帰郷の一族って言うんだって。まぁあなたの方が詳しいんだろうけど。」
ききょうの一族⋯⋯? え、全く知らないんですが。何ですか、それは? と思って思わず口を開ける。
「えーとききょうの一族って何ですか?」
「え、え! 自分のことなのに知らないの!?」
いやだってこれまで一度も聞いたことがありませんよ? 母からもそんなことは一切。父はいないので知りませんけど。そう思っていると
「本当に知らないんだ⋯。まぁ私も文献を調べるまでは何も知らなかったんだけど。じゃ、じゃあ石は! あれがないとこれも動かせないよ!」
石、石⋯。あー、そういえば貰いましたね。親からそんなの。そう思って慌ててポケットや
「え、え? な、失くしてないよね⋯?」
と、不安そうに此方を見るキカさんに僕も思わず不安になる。う、辞めて下さい。こっちまで不安になるじゃないですか。
そう思いながら探すも見つからず。そこである言葉を思い出す。
「もう、普段から整理しないからそうなるんだよ。もうそうなるくらいなら家に大事なものは置いて来て、魔法で取りに行けば良いんじゃない?」
あ、あー! そうミアに言われてから僕ずっと家に置きっぱなしにしてた気がします。そう思い慌ててキカさんに言う。
「すみません、ちょっと取りに行って来ます。」
「え、ちょっと何処に行くの!」
それを合図に僕は
「いい加減にしろ。良いから早く此方に来い。」
え⋯⋯何か怖い。そう思い思わずキカさんに「見て下さい。」と左手首を見せると
「⋯⋯こっちの手で魔法は使わない方が良いと思う。」と、左手首を見ながら真剣な表情で言われました。え、でも僕、魔法は左の方が使いやすくて⋯流れも左の方が上手く出来て。
どうしよう、右で魔法を行使した時っていつも事故っていたんですよね。そう、先生の髪の色を虹色にしてしまったし、同級生数名の髪の毛もアフロにしてしまいました。それから通りかかった教頭の髪の毛もロングにしてしまいました。何故かそれは喜んでいたけれど。
うぅ、キカさんの髪の毛がもし変わったりなんてすれば⋯キカさんは絶対にショックを受けてしまうかもしれないです。そう僕が思っていると
「私も行ったことのある場所だったら行けたんだけど、多分ない場所だよね。」
「はい、多分。フィーンサ村と言うんですけども知りませんよね。」
「あぁ知ってはいるけど行ったことはないかな。うぅ、ごめんね。力になれなくて。」
う、うぅ。なら頑張ってやるしかないんですか。そう思って腕輪型の杖を右手にはめます。はぁ、髪が虹色にならないと良いんですけども。そう思い―――
「え、あなた髪が虹色に。」
そう言われて慌てて髪を見ようとするも見えず。え、え! あ、そうでした。この腕輪をはめている時はそうなるんでした!
あ、えーと僕の育ったフィーンサ村へ!
▽
あ、家―――って! ボロっ! そう思っていると人影が見えた。え⋯⋯誰? そう思うのもつかの間、その人影は直ぐに消えた。それに不思議に思いつつも僕は急いで部屋に向かった。
―――部屋にて―――
あ、あった! と思いながら番号式の鍵を開ける。えーと一応とミアに言われて鍵を掛けたんでしたっけ。⋯確か、んー何でしたっけ? そう僕が思っていると突如頭痛が脳内を駆け巡る。
は、そうか。僕はこの時に一度思い出していた。それでまた忘れる前に4567と気付いて欲しくて設定したんです。死後、ロクなことがないという意味で。
でも⋯その願いも虚しく僕は忘れていました。それに僕が思い出したのは姿の見えない人に貰ったあの小さく丸い粒のようなものがあったからです。そういえばあの小さく丸い粒、消えてしまったんですよね。
そう思いながらも僕は石を手に取――――その瞬間、脳裏に手の文字のことがよぎる。慌てて手を引っ込めて左手を見れば「あと少し、あと少しという所で! クソ、クソ!」と。あ、危なッ! 咄嗟に僕は後ろに倒れる。
ッどうしよう、これ本当に右手で取っても大丈夫なんだろうか? うぅ、でも一族じゃないと⋯。うーん、左手だけっていうのもおかしい。⋯⋯いっそのことキカさんがいてくれれば――――
「わ。⋯⋯え? ここは―――って、え!」
き、キカさん? どうしてここに⋯。いや、それよりも言おう。
「キカさん、本当に僕が石を触って―――」
「ねぇ! どうしてそんなことに? いやそれよりもこのままだと全身に広がる⋯⋯、うぅ。私、こういうの詳しくないし。―――あ! そうだ。あなた知り合いに詳しそうな、何ていうか特徴的な喋りの人! いたよね! あの人に見てもらえば。」
特徴的な⋯⋯喋り? ⋯あ、あーミラのことですか。でも⋯
「今のあいつの居場所は分からないですし⋯。」
「なら、この石を使って戻れば良いよ! って⋯⋯私が触ったら不安だよね。でも、今のあなたが触ったら余計に危ないし。」
と、キカさんが両手を交互に見ながら言う。それに思わず両手を見―――え、何だこれは。文字の羅列、いやこれ一言一言よく見れば書いてある。「クソ、絶対に石は手に入れたかったというのに! 行かせるものか、行かせるものか!」
と、びっちり僕の両手首から更に下まで書いてある。え、怖。怖過ぎません⋯? と思わず震えるもハッとする。急いで僕は右手から腕輪を外して床に落とす。も、もし⋯取られてしまうなら僕の体から外さなければ。
そして全ての箱を急いで服を揺らし床に落とす。う、間接的になら大丈夫っぽいですね。うん、箱や腕輪に文字は今の所見えません。でも見えないだけで何かしらあるかもしれない。それに気付いたキカさんが袋を広げ上からガバっとすくい取ってくれた。
「キカさん、石お願いします。」
「え、あ、うん。分かった。でも転移はどうすれば―――」
「い、意地でどうにかしましょう!」
「え⋯、意地でどうにかなるものじゃない気が。」
「あ、じゃあ服の裾を。」
「いや、それだと服だけ移動しないかな⋯。」
あ、確かに。う、でもどうにかするしかなくないですか! そう思っていると花が舞った。ん? 花が舞った? え、どういう―――
「行って。」
と、後ろから聞こえ直ぐに僕は振り返る。ッ後ろは⋯⋯先程の殺風景な―――え? い、いつの間に!
「え、あ。よく分からないけどチャンスなの? い、色々聞きたいけど今は⋯⋯急いで石を置くね! えーと私があなたと会った時でいっか。」
と、言って走って床に落ちてる本を
「”時は満ちた”」
と、重い声が聞こえたその瞬間、強風が起こる。う、うわぁああ何ですか! 体が浮いて―――ッ眩し! 青い光が辺りを、いやこれは―――青い花びらと鏡の破片? そう思っていると破片に僕が映り込んだ。
「ミアねぇ! 暫しばらく此処に居てくれ!」
「だ、誰!」
ッ、戻った。隣にはキカさんもいるッ! や、やっと助けられます!
「リイラ⋯じゃよな? その文字、髪色。いやそれよりも何故先程の敵がここに―――。」
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