第二十八話 協力関係の行方

あ、いましたいました!


「あのー! あなた方の陣地が危ないって知らせに来たんですけどー!」


「オレらの陣地が危ない⋯? ふっはは、何の冗談だァ? 危ないわけねェだろうが。」


「いや、与えられた陣地は最後は守らないといけないんですよ! 現にほら! あなた方の陣地が狙われています!」


と、つい焦り早口で言ってしまいました。それを聞き目の前の人は紙をまじまじと考え込みながら見ています。


「おい、貰った紙見せろ。」


と、もう一人のペアの人に言いました。なるほど、僕が嘘をついていないか確認するんですね。


「は、はい。」


と、怯えながら渡すペアの人。うん? 何故怯えて⋯


「与えられた陣地を最後は⋯か。ッはは! 確かに紙には与えられた陣地を既定値まで広げろと書いてある。あー、クソ。そういうことかよ。陣地は捨ててもいいものだと思ってた。」


と、髪をかき揚げながら言っています。それについては同感ですが⋯⋯憶測としては


「気付くのも試験の一貫ってことかもしれませんね。」


そう僕が言うと更に混乱したような表情をしています。それから僕をよーく見た後に聞かれました。


「おい、何故与えられた陣地まで最後は守らないといけないと思った? 因みにオレはお前に言われるまでそれにすら気付かなかった。だから陣地を捨てても良いと思ってここまで来ちまった。」


う、ここで馬鹿正直に気付いていなかったと答えてしまえば僕の試験結果にも関わります。ここは正直に言わない方が良い。そう思い渋々口を開きます。


「⋯試験監督官の人が最初に言っていましたから。僕はその言葉の通りに受け取っただけです。」


う、ん。上手く誤魔化せた気がします。良かった、これで一先ず安心―――


「おォ! すげェな、あんた!」


と、褒めてきますが早く行かないと不味いと思います! と思い慌てて言います。


「ペアの代表者は紙に随時位置がバレているので、そこは気を付けて。それと早く行かないとヤバいと思います。取り戻すということは確実に戦闘になるでしょうから。」


「代表者⋯?」


「あぁもう、それも紙に書いてますからちゃんと読んで下さいっ! それより早く行かないと! それとも僕も着いていきますか?!」


と、ヤケクソになっていた僕は頓珍漢とんちんかんなことを言ってしまいました。え、あ⋯そうじゃなく―――


「本当か! あんたが居て来りャあオレら百人力だぜ! ワーハッハ!」


と、笑いながら言ってきました。え、もしここで断ったりしたら⋯関係に亀裂が入りそうですね。ウン、まぁ何とかなるハズ⋯⋯。そう明後日の方向を向きそうになりながらも僕は自分を恨みます。ぐ、フィくん。すみません。僕が帰るまで何とか一人で持ち堪えて下さい。


「それじゃあ早く行きましょうか。エイエイオー!」


と、あれいさんの世界のものをやってみる。うぅ、滑ったり―――


「おぉ、異世界にまで詳しいなんてあなたってもしや博識な方なのですか? では私もエイエイオー!」


と、メガネをかけたペアのもう一人がメガネをカチャとしながら聞いてきました。あ、良かったです。滑っていなくて。とホッとしていると


「おォ、異世界のやつなのか。それじゃあオレもエイエイオー!」


えーと、確かあれいさんが言うには揃っていた方が良いと言っていましたね。


「それじゃあ揃えてエイエイオーです。」


と、言ってみました。こういうのも親睦を深めるきっかけになると良いですね。まぁこれからどうなるのか正直怖いんですけどね。


「エイエイオーですね!」 「エイエイオー?」


と、バラバラになってしまいました。うぅ、異世界人に怒られないでしょうか?



▽陣地到着付近にて


「ここから少し様子を見ましょう。」


と、僕が言うと彼はキョトンとする。え⋯? と思っていると


「取り戻すならどっちみち戦闘になるから相手を知るということですね! やはりあなたは賢いようです。」


と、ベタ褒めしてくるメガネの人。いや、普通に背後を狙えたらくらいにしか思っていなかったんですが⋯。まぁ勝手に評価が上がるに越したことはないですね。と何とも言えない気持ちで思いました。


うーん、いつ出てけば良いんでしょうか? ん、背後を狙う⋯⋯あっ。それなら―――


「え、おい。どこ行くんだ?」


と、小声で言ってきました。それに答えずに僕は足の膝の下に向けて石を数個投げます。


「痛ぇ! う、何なん―――」


それから困惑と膝の下が痛くて座っている敵の背後に向かっていき服を剥ぎ取ります。


「ひぃ!」


よし、念の為に服を剥ぎ取りましたし後はB2の魔法で眠らします。これで良いでしょう。にしても随分ずいぶんアッサリと終わってしまいました。もしかしなくてもあのミラ特製地獄の鍛錬パーティーのお陰でしょうか? いや、それはそれでなんか嫌ですね⋯⋯。


「おーい、聞こえておるか? あたしじゃ、ミラじゃよ。」


え⋯、な! まさか考えがバレバレだったのでしょうか? と思うと更に僕の心音は徐々に早まっていきます。いやいやバレるわけないじゃな―――


「しかし、陣地ものだったとは。これなら簡単じゃな! じゃってあたしのパーティーを受けたんだ。勿論、出来るよな? あ、そうそう今後そんな失礼なことは考えんように。じゃないと次試験で困ろうが助けんからの。」


ひえ。な、なんでバレて⋯⋯? 怖っ!


「あ、返事は勿論するんじゃないぞ? では本題じゃ。もっと華麗に活躍しアイドル的存在になってみよ。フィムスと二人でな。」


え?! 王ってそういう存在でしたっけ? と思わず眉間にシワが寄ります。う、何故アイドル―――


「あーでもお前には愛嬌がないからなぁ。やはり無理じゃろうなぁ?」


は? いやいや僕にだって笑顔くらい全然出来ますが? そう思い慌てて笑顔を作る。ふふん! この笑顔ならみんな―――


「ぷはっははは! なんじゃその顔! 最高に笑えるわ。」


な! そんな筈がないでしょう! あーもう怒りましたよ、僕は! よし、丁度ここに人がいますし二人に見せましょう。


「なァあんた⋯人の心ってあ―――ふっ、っくは。」


「ぶっはは! なん、はーっ、変顔ですか! ぶふっ、面白すぎる。」


と、それぞれ笑いやがります。はー、怒りましたよ僕は!


「ふん、そんなに笑うなら二人は笑顔! 出来るんですよね?」


と、怒ってる僕に対してメガネクソが自信満々に此方の見てきました。な! その顔は出来るってことですか!


「はっ。あなたみたいな笑顔する人なんて早々いませんよ。どうやら笑顔という点ではあなたを買いかぶり過ぎていたようですね。」


と、ムカつくことをキリッと言った後このメガネクソは自分の顔を手で覆いました。はは、メガネクソなんかにとびっきりの笑顔は無理ですよ。


「ではとっておきの笑顔を―――」


「そんなことより今は試験中だ。早いとこ陣地を既定値まで広げねェと。」


あ、そういえば恩はもう売れましたし僕も早いとこ戻らなくては。そう思い慌てて去ろうとすると


「え、とっておきの笑―――」


「おい、ちょっと待て。」


う、肩を引っ張られてます。ふんぬぅー、あれ? 全然逃げられません! 何故ですか?! もしかしてヤバ―――


「まぁそう慌てんな。オレらを助けたんのもどうせ自分らの為だろ? それなら丁度良い。是非、協力といこうじゃねェか。」


え、え⋯? 未だに全然動けないのが恐怖でしかないしこのタイミングで協力関係ですか? 本当に裏切ったりしないんでしょうね? と、僕が疑う目で見ていると


「まぁまぁ、そう疑いにかかんなよ。今のお前の気持ちはあれだろ? こんな都合の良いことう有り得ねェ。違うか?」


ぐ、そうですね。見事に当たっています。でも裏切らないという確信たるものがないと⋯。だって僕らは初対面に近しいです。そんな人らをいきなり信じていこうだなん―――そうです。これは試験です。ならより疑ってかかった方が良いです。よし、これはフィくんと相談しましょう。


「すみません。ペアと相談してから答えを出させて頂きます。」


と、僕が言うと少し渋い顔をしてから考え込み頷いてから


「おう、そりゃそうだよな。良い返事を期待してるぜ。それじゃあな。」


と、聞こえて直ぐに僕は走り出しました。うん、この判断で良かった筈です。だってこんな重大なことを一人で決めるのはこの試験では違うと思うんです。だってペアを裏切るのは禁止ですから。もしペアに相談なしで決めてそれがアウト判定だったりしたらヤバいですからね。


「ちょっとペアの意見は?!」


「すまんすまん。」


そう遠くに聞こえながらも僕は走ります。そういえば、これは王になるための試験ですよね。⋯なら僕としてはあの内容が気にかかります。


真の王たる者、人の本性を見極める。そして真実の花を咲かせる。


そう書いてあるのを子供の頃なんかの本で読んだことがあります。もしこの試験がそれに関したものであれば―――ん? いやいやいや真実の花ってなんですか! 今考えれば凄く謎なんですが! え、もしかしてこれって重要な内容だったりします―――?!

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