第二十六話 これが出会い。そして――始まり。
⋯⋯思い出したんです。あれから何が起きたのかを少しだけ。と、少し混乱が収まった僕は研究所を出て直ぐに
あぁ、あの場にいるのが嫌になってつい出て来てしまいました。
だって僕、あれいさんに頼まれていた事すら忘れていたんです。そんな、僕なんかが本当に⋯ミアを助けられるのか? と思うと自分のことが嫌でしょうがなくて⋯。
そう僕が下を向き落ち込んでいると急に声が聞こえました。
「おい、ど―――」
と。え? え⋯? そう僕が困惑している時にそいつは僕にこう言ったんです。
「なぁ、お前リイラだな?」
あ、あなたは⋯⋯。
「あなた、生きていたんですか⋯。」
「はぁ? 人を勝手に殺すでない! ほれ、着いて来い。アレをどうにかしたいと言うのならな。」
と、不敵な笑みを浮かべて僕に手を差し伸べて言いました。
(これが出会い。そして―――始まりでもありました。)
▽数年後
あれから数年経ち、数年の間に術の解明についてかなりの事が分かりました。先ずあいつが使っているのはデアトラットカ式の錠。
そして個人としてはザンギの言っていた気になることも調査を進めています。
それからあいつ、いやミラは今唐突に此方を見た後顔を顰めています。
「まぁお前には無理か。」
と、突然物凄く失礼な事を言ってきました。はぁ? それってどういう意味ですか! と僕が突然の罵倒にキレていると
「悲しいかな。ミアねぇを助けたいなら、あんのクソ国民の信頼を得なきゃいけんのじゃよ。」
と、流暢に罵倒と重要な事を述べるということをやりやがりました。まぁそれについては同感ですが。
まさかこいつと意見が合うなんて。初対面のライア並みに嫌ですね。
「ん? 何か失礼な事を考えておらぬか?」
と、勘の良いことをジト目で言ってきやがります。はぁーあ。と心の中でどデカイ溜息をついた後、渋々答えてやります。
「べつにー、ですよ。」
と、棒読みになりましたがまぁ大丈夫でしょう。
「ふむ、それ次やったら三日間飯抜きじゃ。」
「はぁ?! 心せっま!」
うわ、狭過ぎ。
「日数を増やされたくなければちゃんと聞けい。」
ち、くそぅ。ご飯には抗えませんよ⋯。あぁ、ライアの作るご飯が恋しいと思うくらいだなー。そう思っていると
「それより、よく聞け。お前が忘れこけている間にも、この優秀なあたし、ミラは! 着々と準備を進めていたのじゃ。
そう! 全てはあの忌々しいあいつに恥をかかせてやる為にな! アーハハハ!」
と、明らかに興奮しています。ほ、本当⋯ですか? 救えるんですか! ミアを!
「さぁ、作戦会議と行こうじゃあるまいか。」
と、肘を付き此方を見てこいつは不敵な笑みを浮かべて言ってきました。それを聞き僕は息を呑み込みました。作戦、会議⋯⋯。
「⋯先ず、これを見てくれ。」
と、言いこいつが紙を差し出してきました。これは―――フィくんですか。⋯⋯ん? え、フィくん?! 思わず僕はこいつから紙を奪います。
「フィくん! ねぇ、フィくん⋯!」
と、よく分からず混乱していた僕は気付いたら必死に叫んでいました。
「フィくん、こんなに小さくヘナヘナになって⋯⋯あ! まるっきり初対面のフィくんですね!」
「⋯ふははっ! く、お前面白すぎるだろ。ふ、ふはははは!」
と、こいつが僕を見て笑い転げています。何がそんなに可笑しいんですか。と、頭の可笑しい人を見る目で見ていると
「⋯お前ら覚えてろ。」
と、何処からか声が聞こえました。え、絶交⋯⋯? そう僕が不思議に思っていると
「わ、悪い。こいつが くくっ。余りに可笑しくてなぁ。」
と、悪びれもせずに言いました。⋯⋯ん? 一体誰に向かって言ってるんですか? あ! さては頭が―――
「よいしょっと。⋯で? 俺に何の用だ? ミラ」
え、え。フィくんが、フィくんが⋯。飛び出して来た。⋯⋯は?
「はは、もう分かっておるだろうに。」
と、こいつが言い足を組みライアを見て言います。
「聞いていただろう? 前から話してたやつじゃ。まぁ今回の作戦はお前らにやって貰う。」
作戦⋯? そう思っているとこいつが大きく息を吸ってから口を開きました。
「王になってこい。二人で、な。」
⋯⋯王に。んんー? 何か聞き間違いでしょうかね? 頓珍漢な言葉が聞こえた気が⋯
「ん? 聞こえなかったか。ならば、もう一度言う。王に―――」
「何言ってるんだ? 俺らにそれは無理に決まってるだろ。だって俺らは―――」
「まぁまぁ。其の辺は抜かりない。これを定期的に飲んでくれれば問題ないのじゃ!」
と、フィくんが意味が分からないという顔で言ったのを遮り、ドヤ顔で意味の分から⋯⋯え。ということは聞き間違いじゃなかった? な、ど、えぇ!
「さ、早く行って来い。良い結果を待っておる。」
そう言った後、僕らは違う場所にいました。
⋯⋯はぁ?!
▽
(此処は王都。この王都は風変わりな場所です。だって誰も王都の名前を呼ばないのですから。でも僕は呼びます。
リラスティナと。この名前は何でも女神様の名前から取ったそうです。そんなリラスティナ都には、この日試験があったのです。)
「なぁリイラ。ようやく会えたな! 俺、ずーっとお前のことを待ってたんだぜ!」
と、フィくんが僕の肩を思いっきし掴み揺らしながら言いました。ちょ、爪、爪! 痛いですよ! という心の叫びは虚しく
「⋯そういえば今日が試験の日だぜ。王の資格のな。」
と、急に真剣な表情で言うフィくん。王⋯⋯、それが作戦って一体どういう? と思っていると
「王の
と、いう声が向こうの方から聞こえます。その瞬間―――。
肩をグイッと引っ張られました。そして思わず驚いた拍子に僕は口を開きました。すると―――その開いた口にフィくんはすかさず瓶を突っ込みます。
え、ちょ! と思っているとその瓶を今度は引っこ抜き、フィくんは流れるように自分の口に持ち運びゴクゴクと飲み込んでいきます。
その一連の動作に僕は思わず呆然としてしまいます。
そうして僕が暫くそうしていると
「ほら、突っ立ってないで行くぜ? 締め切っちまうからな。」
と、言ってフィくんは僕の手を引っ張っていきます。え⋯⋯? はぁ!?
そう僕が唖然としている間に
「おっちゃん! それ二人で受けるよ!」
「えーと俺はまだお兄さんなんだけど。まぁ、うん⋯⋯。はい、これをあそこに持っていきなさい。」
と、言い二枚の女神様の特殊な紋章入りのコインを渡されました。
え、本当に受けるんですか⋯! そう僕が思っている間にもどんどんフィくんは進んで行きます。
「なぁリイラ! お前、夢思い出せたんだろ? なら今からでもなろう、俺らで! ミアの為にも。」
と、突然振り返りながら笑顔でそう言い切るフィくん。その様子に変わらないなと思いました。それにしても夢ですか⋯、今更僕がなれるんでしょうか。こんな僕なんかが―――。
「そう暗い顔をするなよ。大丈夫だ、お前には俺という最高の相棒がいるだろっ!」
と、僕の顔を拭きながら笑みを浮かべて言うフィくん。そう、ですよねフィくん。ッ! と思わず僕は自分に気合いを入れる為に
自分の頬を思いっ切り叩きました。
「(物凄い音)」
その様子にフィくんはあわあわと戸惑っています。何もそこまで叩かなくてもという顔で此方を見ています。
良いんです。これは僕なりのケジメというものなんですから。
「さぁ、ミアを助けるために行きますよ! 相棒!」
と、僕が言うとフィくんは嬉しくてたまらないという顔で此方を見ながら口を開きました。
「あぁ! 勿論!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます