第二十五話 「あぁ、ごめんなさい。」
「あ、ようやく帰って来られましたか。おや? そちらの方は?」
と、出迎えてくれたハイサナさんが言いました。
「仲良くなったんだー。ねぇ、そうだよね? キイア」
と、ミアが答えました。え、キイアって⋯
「うん! 勿論じゃん! で、ミア。この人はどちら様?」
ま、待っって下さい! も、もしかして名前ですか? という僕の心の叫びも虚しく
「なるほど、お友達でしたか。はじめまして、ハイサナと申します。私は長の秘書です。どうぞよろしくお願いしますね。」
と、言うハイサナさん。え? ひ、秘書だったんですか! と驚愕のし過ぎで固まっていると
「ほら、リイラ。行くぞ。」
と、フィくんに呼びかけられた頃にはもうみんな遠くの方です。え、え? あ、フィくんにはありがとうですね。と思いながら僕は慌ててフィくんの後を着いていきます。
それから僕らは部屋に案内されました。
因みにあれいさんには部屋に着いて早々に詰め寄られた為、違う部屋でこっそりと説明をしました。
説明後、あれいさんは何とも言えない顔になりました。当然ですよね⋯⋯。僕も未だに信じたくなんてないんですから。そう思っていると
「なぁ、今すぐじゃないなら俺のこれから話す記憶をさ。覚えていてくれないか? ⋯そうすれば、何時までも残るだろ?」
と、真剣な顔で言うあれいさん。紙に書いた方が確実なんじゃ⋯。そう思っていると
「俺は⋯、紙にじゃなくてお前らに覚えてて欲しいんだ。
それでさ、もし俺の世界に行けるなんてことがあれば俺の話を伝えてくれないか⋯? なんでも良いんだ。俺が伝わればそれで。」
と、泣きそうな顔をして言います。確かに薬草と花が見つかっても絶対に治るとは限らない。そう先程ハイサナさんから伝え忘れで言われました。
僕は⋯、叶えてあげたいと思っている。でも!
「約束の出来ないお願いです! それは―――」
「あぁ、分かってるよ。そんなの。でも、もし俺が戻らずに死んじまった時に伝えて欲しいんだ。
此方に来れたならさ、どうせ向こうにも行けるんだろ?」
と、涙を目から溢しながら言うあれいさん⋯。あ、あ。ぼ、僕は⋯⋯ッ!
「わ、分かりました! 必ず、必ず! 伝えます!」
「あぁ、よろしくな。」
あれいさんは死ぬ覚悟が出来てしまっています。そう、僕は確信せざるを得ませんでした。でも、な、なんでそんな⋯
「なんで生きてるのに、こんなことを言うのか分からないという顔だな。
それはな、俺自身分かるんだ。こんな風に足が片方なくなっちまってさ。誰かに背負って貰わねぇとマトモに歩けやしない。
そんな状態で帰り方を探すなんて無理だろ?」
⋯⋯確かに足はもう治りません。暴走のせいで魔法では治せないのです。でも同時に暴走のお陰で機能している部分がある。
そう、心臓です。あの時あれいさんは心臓を貫かれそして足は暴走が片方の下に寄ったお陰で奇跡的に片足だけ腐るという事態に。
だから、多分今帰れば死んでしまう⋯。治してどうなるかも分からない⋯⋯。
どうしてこんなにミアと違うのか気になって僕はハイサナさんに聞きました。
するとミアと違うのは自分でではなく暴走した人によって切られたこと。
だから、暴走のせいで足が⋯。と言われました。あ、あぁもし本当にあれいさんが帰れなかったら⋯⋯ッ。
やっと整理が着きました、僕の中で。あれいさんがこうして勇気を出して言ったんです。なら、それに僕が出来る限り応えなくては⋯⋯。
えぇ僕が! 伝えに行きますよ! この記憶がある限り! だから、だから⋯。どうか⋯⋯。
そう願いながらも時は進みます。
そんなあれいさんは今、ドンラウーによって運ばれ此処でみんなと居ます。
それぞれがのんびりしている中
「ねぇ! 聞いたよ! 薬草と花を探してるんでしょ? それ私も手伝うことにしたよ、恩返しの為に!」
と、元気良くキイアさんに言われました。凄く有り難い申し出ですが⋯、そう思っていると
「薬草と花⋯?」
と、ミアが聞きました。そう不思議な顔をするミアをあれいさんは何とも言えない顔で見ています。
慌てて僕はミアに心労を掛けないようにミアに初めて嘘を付きました。
「はい、僕の知人が研究として興味を持っていて。」
「へぇー、そうなんだね。」
「みんなで探せば百人力とか言わない?」
と、キイアさんが言いました。うーん、僕らの人数だと六人ですね。
「なぁ、リイラ。あれ、やらないのか?」
と、小声で耳打ちされました。思わず振り向くとフィくんが真剣な顔で此方を見ています。
あれ、あれ⋯⋯。あ! ミアに一時的にのやつですか⋯。うーん、そうですね。と思いながら周りを見渡します。
今はあれですし、此処は
「みんなが寝てからにしましょう。」
と、返事をします。それに納得したように頷いたフィくん。
―――夜、外にて――――
「急にどうしたのー? そよ風が浴びたいとか言い出して。」
と、空を見上げてミアが言います。い、今です! そう思い、僕は
ミアに魔法で上手く当てようとします。すると――――
「ッ! 何!」
と、振り向かれました。あ、あぁ。と愕然としていると
「何これ?」
と、言いながら、あっ! するとミアが触った瞬間に
「んん? あ、フィとリイラ。どうしたの?」
と、言いながら周りを見渡し
「え、え!? ここ里だ。んん? どういうこと?」
と、凄く困惑しています。僕らは互いに顔を思わず見合わせ、まさか、まさか! と驚愕しています。
え、え⋯? み、ミア!
「ミアですよね! そうなんですよね!」
と、勢い余って飛び付きかけます。それを難なく躱しながら言いました。
「うん、そうだけど⋯。え? 何、私のソックリさんでもいるの?」
と、言いました。あ、この感じ! 間違いありません! 僕とフィくんは思わずミアを見て泣き出してしまいます。
うぅ、み、ミアがいます⋯⋯。
「え、えぇ。どうしたの?」
と聞くミアに僕はあっ! と脳裏にあの人が言ったことが蘇りました。そうです、これは一時的。急いで伝えなくては。ッ!
「ミア! 聞いて下さい! 僕ミアに謝りたいことがあるんです! 暴走についてなんですが。」
と、僕が言うとミアは目を大きく見開いています。不思議に思いつつも僕は
「すみませんでした! ミアだから大丈夫と思っていたんです、僕は。それでミアのことを何も考えずに⋯」
と、僕は俯きながらですけど伝え切りました。み、ミア。そう思い―――
「ぼう、そう、か。なるほどね⋯。それで泣いてるんだ。リイラ、謝ることじゃないよ。これは私の問題でもある。」
と、ミアが何とも言えない顔で言いました。え? それってどういう―――
「うん、時間も少なさそうだね。良いものをあげるよ。」
と、言いミアは僕らが聞く間もなく手の平に乗せ渡して来ました。
これは⋯、腕輪型の杖と、ん? エイラー水精のネックレス?
「といってもこれはあくまで自衛の手段に過ぎない。」
そう真剣な表情で言うミア。ミア⋯⋯。そう思っていると直ぐに、ミアは何処か寂しい笑顔で口を開きました。
「あ、そうだ! 残り少ないし何か明るいことを話そうよ! そういえばリイラ。将来について悩んでいたよね? フィムスも何か悩んでない?」
と、ミアが言いました。将来⋯⋯
「あっ!」
「うん? その反応は何かあるね? どれ、私に話してごらん? 気分がスッと晴れやかになるかも―――」
「え、リイラ。将来について何か決まったのか!?」
と、ミアを遮りフィくんが目を見開きながら此方を向いて聞いてきます。
「えと、まぁ。笑わないで下さいよ?」
と、僕が二人に言うと目をキラキラさせながら此方を見て頷く二人。う、二人揃って聞く気満々ですね⋯。
僕は少し深呼吸し、それからポツポツと話し始めました。
「僕、小さい時に魔法を使う人になるのが当たり前だってずっと思っていたんです。でもミアに聞いてから何だかそういうのが馬鹿馬鹿しくなっちゃって。
それで、最近理不尽なことを色々体験して思ったんです。あぁ、この理不尽を変えたいなと。
僕のこの気持ちは、最初は小さいものでした。ですが今日、異世界人のあれいさんの気持ちを知って更に強く思わずにはいられませんでした⋯。
だって帰りたくても帰れない、それを知って余計にどうにかしたいと僕は思ったんです。
だから僕の夢は、あのコケた像の人のようにサーカス団のお兄さんが世界を見ろと言ったように世界をもっと知り、そして変えたいんです。」
と、僕の想いを話すと二人は唖然としていました。それから暫くしてミアが先に口を開きました。
「なら、その夢の為にも暴走について教えた方が良いね⋯⋯。暴走についてのひ―――」
と、気になることを言った後に目を瞑り、倒れていくミア。
み、ミア―――! 僕は思わず駆け寄ります。フィくんも心底心配だという表情でミアを揺さぶります。
し、しっかりして下さい! そう思い揺さぶっていると⋯⋯
「スースー。」
と、聞こえてきました。ま、まさか――! そう思いフィくんと目が合います。
頷き合った後、二人で静かに耳を傾けます。そうしていると―――
「スースー。」
と、また寝息が聞こえてきました。それに僕は
な、なーんだ、寝てるだけですか。はぁー、良かったです。と、ホッとしました。⋯にしても暴走についてって多分ハイサナさんの言っていたことですよね?
そう思っていると僕は安堵したのか身体の力が抜け、地面に仰向けの状態で倒れます。
「え、リイラ?」
と、此方を心配そうな顔で見るフィくん。慌ててそちらを振り向き
「疲れが押し寄せただけです。」
そうフィくんに言いました。するとフィくんも同じように仰向けになります。疲れてたんでしょうか⋯? そう思いながら
僕は前を向きました。するとそこには―――満天の星空が見えます。空を見て僕はふとあれいさんの言っていたことを思い出しました。
「俺の世界の空は青いんだ。」
と懐かしむような表情の後悲しい表情で言っていました。ッ⋯⋯あれいさん! 僕が必ず見つけます! そしてミア、必ず助けます!
――――現在――――
―――ッ! 僕は⋯もう!
そう思いながら僕は此処から逃げ出し、何処か遠くに行きたくなりました。
そうして此処―――大きな木があり血水面下には木の根が見えて力が零れそうなほど溢れている。
そんな場所を飛び出しました。
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