第十九話 嘘⋯。

「異世界人さんー! 何処だー!」


「あれいさんー! ライアー! 居たら返事をー!」


そう必死に叫んで数分。僕の喉は今にも枯れそうです。なんて考えていた時。な、何か此方に向かってくる音が聞こえます。


何の音でしょう⋯? と、思わず僕らは警戒態勢を―――


「ねぇ、うるさい。まぁお陰で遠くからでも聞こえたけど⋯。」


と、茂みから出て来たライアが顔を顰めて言いました。


な、流石ライア。は、早すぎます! って今は感心してる場―――


「ら、ライア。異世界人さんはどうなってる?」


と、フィくんに先に聞かれました。開こうとしていた口がはくはくと行き場をなくす中、ライアは口を開きました。


「あいつの応急処置は出来る限りはしたつもり。でも、あれから眠りについてしまって。未だに眠ってる。」


「ば、場所は何処ですか?」


「うん、こっちだけど。この人たちは誰? ミアは何処?」


「えーと、ミアパパとハイサナさんにお医者さん達です!」


と、言って視線を向けると


「はい! 我らはワガたち医療班であります!」


「私は―――」


「分かったから早く行こう。」


と、ライアが言い、此方を気遣ったのか速さを遅くして先頭を走り出しました。


「そうですよ。ワガたち、人命救助が第一です。」


と、ハイサナさんが言って走って行く。


「「「「「はい、すみませんでした⋯。」」」」」


そう落ち込みながら言い、ワガさんたちが慌てて走って行きます。


気付くとフィくんはかなり前に居ました。慌てて僕も走り出します。


そうして数多の木を走り抜きながら、あれいさんの所へ早く向かわなければ⋯! そう思い必死に足を動かします。


それから更に数分くらい経ち、流石に疲れてきた僕は


「ま、まだ、ですか。」


と、肩で息をしながら若干歩きがちになりつつも聞きました。


「もうすぐ。⋯ほら、耳を澄ませてみて。川の流れる音が聞こえるから。」


「え?」


そうライアが言いました。僕らはそれを聞き、一旦立ち止まってから耳を澄ませてみます。


うーん、何も―――


「本当だな、聞こえる。息の音で気付かなかった⋯。」


と、ミアパパが言いました。へ? 僕には聞こえないですが。え、もしかして僕って耳悪いんでしょうか⋯⋯。そう落ち込んでいると


「へぇー、こんな森に川があるんだな。それよりも早く助けねぇと!」


と、フィくんが言いました。そうです! あれだけ深く傷を負ったんです。


「うん、こっち。」


と、ライアが言い、茂みの方へ行きました。


「結構広いな、この森は。」


と、ミアパパが言いました。それはよく分かります。こんなに広いならそりゃ迷子になりますよね。


しばらく進むと川と血の跡が見えました。う、あれいさん⋯! そう思っているとライアが口を開きました。


「此処はあいつが苦しみながら「川の音の方へ連れて行ってくれ」と言った場所。」


「え、何でですか?」


と、思わず疑問に思い口早に聞くと


「それは知らないけど、喉でも乾いたんじゃない?」


なんてライアが言いながら更に近付いていくと


「あれ、いない。」


そう言うので僕らも近付きました。


「あ、異世界人さん!」


と、フィくんが言い、僕らはフィくんの目線の先を見ます。そこにはキエトンルくまがあれいさんを連れ去ろうとする衝撃的な光景が。涎が出ていますし、もしかして⋯。


そう僕が考えていると


「っ!」


と、何かの音がしました。その方向を見るとライアがキエトンルくまに近付いて行きます。


えっ! な、なにして―――


その瞬間、ライアはキエトンルくまからあれいさんを奪おうとしました。


ですがキエトンルくまは意外にも執心的にあれいさんを手放しません。


早すぎて何がなんだか。と僕が思っていると


「ちっ。ボクが引き付けるから誰かあいつを―――」


「分かりました。私が拾い上げます。」


と、直ぐに小声で言うハイサナさん。


「ふーん、じゃあよろしく。」


と、ライアは言った後何処からか出したあれは⋯、デスレッオル動物挑発用の笛?! な、何でそんなものを持っ―――


「ピィオ―――。」


と、何処か独特な音が鳴り響―――いやいや、そんなことしたら!


直ぐにキエトンルは怒り狂いライアの方向へ真っすぐに突撃して来ます。な! き、来ました!


ライアは、すかさず防壁をキエトンルに向けて打ち、捕獲しました。へ? い、いつの間に魔法を展開して?


そう驚きながらライアの方を向きます。ライアは集中しているのか瞬き一つせずにキエトンルを見て、次の魔法を展開しています。


それを見てキエトンルの方に目を向けてみると現在進行系で抵抗を繰り返すキエトンル。あっ! そういえばキエトンルって⋯魔法を使った筈。


そう思っていると、キエトンルの頭上に魔法陣が。ま、不味い。


これは死ぬっ! と思い怖さで目を瞑ってしまいます。




⋯⋯ん? あ、あれ? 何も起きてな、い?


「ふん、そんな魔法でボクの防壁が破れる訳がない。」


と、ライアの当たり前だとでもいうような声がして、恐る恐る目を開けると防壁の中にいるキエトンル。


よ、良かったです⋯。そう僕が安堵していると


「じゃあ、ボクはこいつを遠くに運ぶ。その間そいつのことは任せたから。」


と、ライアが言い走り去っていきます。


その言葉にあれいさんは無事なのか心配になり、思わずあれいさんを見ると


「異世界人さんは無事か!」


と、フィくんが先にワガさんたちに聞きました。すると何とも言えない顔で黙るワガさんたち。


えっ? と思っていると


「⋯⋯私から説明しましょう。この方は暴走がこびりつき過ぎています。正直いって何とも。」


考え込んでいたハイサナさんが言い辛そうに説明しました。え? あ、あれいさん⋯?


と、僕があれいさんをしばらく見ていると、僕と同じように見ていたフィくんが徐々にハイサナさんの方を向きます。そして


「⋯⋯なぁ、気になったんだけどよ。さっきも言っていた気がするが暴走って何なんだ?」


と、フィくんが聞きました。そうフィくんが言ったことで僕の脳裏に暴走のことが蘇ります。


そういえばあの時も同じ暴走について⋯⋯。暴走とは一体⋯?


そう考えハイサナさんの方を向きます。一種の希望も混じえながら。


しかし、ハイサナさんは黙っています。こ、答えてくれないんでしょうか? と、今か今かと待っているとハイサナさんの口が重く開かれました。その様子に、唖然としていると


「⋯暴走ですか。暴走とは、魔法を一度覚えてしまえば、どんな人でもなり得るものです。」


「ど、どんな人でもか。」


⋯⋯え、どんな人でも? そんなの一度も聞いたことがないです。⋯う、嘘ですよ、ね?


「はい。」


と、真剣な表情で答えるハイサナさん。え、嘘じゃ、ない⋯?


「ですが、此処からが疑問なのです。だって暴走とは理性をなくし、暴走する理由が無い限り絶対にならないものなんですから。


⋯⋯つまり、何処か可笑しい気が。まぁ気の所為でしょうか?」


と、述べるハイサナさん。確かに⋯。あっ! そういえばあの時、女性が言っていましたね。ってことは暴走する理由なら分かり、ます。そ、それであんな苦しい表情を⋯。で、でも⋯⋯、うぅ。


「それと、一度なってしまえば魔法が使えなくなるんです。」


それであの時、有り得ないようなことを⋯⋯。更に複雑な気持ちを抱きます。


「加えて、その後は魔法が使えないのに何故か暴走を起こし続けるというものなんです。当然ずっと苦しいままです。」


え、そ、そんな。


「なぁ、お前は何でそんなに詳しいんだ?」


僕は声のした方角をつい目で追います。するとフィくんが疑り深い目をハイサナさんに向けていました。確かに言われてみれば


「あぁ、ハイサナはな。あの暴走にやけに詳しい一族の出身でな。」


へぇー、あれ? なら⋯


「そんな一族が何で他の里にいるんですか?」


と、少し疑問に思い聞いてみました。


「あぁ、それは⋯⋯。」


と、黙り込むミアパパ。すると


「長、私が話します。このままでは不審がられますから。」


と、フィくんの方を見て言うハイサナさん。見られたフィくんはハイサナさんの視線に少しバツの悪そうな表情を浮かべます。


「で、でも良いのか?」


と、気遣うようにハイサナさんを見るミアパパ。


「⋯まぁ、多少なら。」


そう少し嫌そうな顔で言うと長らく息を吸って、また長らく吐きました。そして僕らが注視する中、ハイサナさんは口をゆっくりと開きました。


「その⋯⋯、私は孤児だったのです。小さい頃はその一族であることも知りませんでした。


ただ、変なものが見えるだけで私は普通だと自分に言い聞かせていました。そ―――」


「あ、その疑っちまってすみません!」


と、すかさず罪悪感がいっぱいだと書いているような顔で謝るフィくん。


「まぁ、そこまで謝ることでもないですよ。普通に考えて私を疑うのは当然ですから。」


「そ、そうか。」


「あのミアは何故急に記憶が消えたんですか⋯?」


「あぁ、それは暴走を浴びれば浴びる程、記憶が消えていくんです。⋯な、なのでミア様と異世界人さんはなるべく離した方が良いのですが。」


と、申し訳なさげに言うハイサナさん。僕は思わず


「え―――? な、なんでですか!」


と、抗議しました。すると先程よりも更に重い表情をしています。


「それは暴走がこびりついた者同士が近付くと更に記憶が忘れ去られることになるからです⋯。」


と、言うハイサナさん。そ、そんな⋯⋯。


「な、何か良い方法は!」


と、希望を捨てずにはいられませんでした。それから思わずハイサナさんの口元を注視します。


しばらく口をキュッと結んでいましたが、やがてその口は渋々と開かれました。


「あるにはあるのですが、二人は徐々に記憶を忘れていくので常に新しい新鮮な記憶を増やしていく形にしなければいけません。つまり同じ場所に居ても駄目なのです。」


徐々に⋯⋯? しかも同じ場所が駄目⋯。それを聞き、僕は唖然とします。するとハイサナさんが更に


「それと、二人は引き離さないといけません。」


「な! なんでそんな⋯⋯!」


と、僕が言うと重々しい表情で


「暴走の近くにいると悪化が早まるのです。」


と、ハイサナさんは言いました。そ、そんな⋯! それってつまり―――


すると考え込んでいたフィくんが少し希望を持った目で突然


「それで暴走を取り除く方法は⋯?」


と、言いました。その言葉を聞き、僕は安堵してハイサナさんに期待を込めた視線を向けます。きっとあるんですよね!


一方でハイサナさんはその言葉を聞き、申し訳ないとでもいうかのような顔をします。


「その⋯、とある花がそうなのですが異世界人さんの傷の具合だと暴走の力のお陰で傷が塞がれている様なのです。」


と、言うハイサナさん。え、暴走のお陰でってどういう意味で⋯、と思った僕は口を開きます。


「暴走のお陰で⋯?」


「はい、暴走していた女性の本心に傷付けてしまった後悔が少しでもあったのでしょうか?


まぁ偶に起こる事例なので原因は勿論不明で今のは憶測ですが。」


えと、それはつまり⋯⋯


「い、異世界人さんは助からないのか⋯?」


「いえ、本に書いてある薬草があればきっと⋯。」


と、言うハイサナさん。思わず僕らは


「本当ですか!」 「本当か!」


と、若干バラバラに言いつつも心は先程とは真逆です。


「まぁ、はい⋯。」


と、煮え切らない反応を見せるハイサナさん。え? む、無理なんですか? そう少しの焦燥を感じながらも、ハイサナさんを見る。


「薬草は一つ、花は二つあれば、多分二人とも助かりますよ。」


その言葉に僕らの目は大きく見開かれる。喜ぼうとすると


「ただ、どちらも滅多に見かけないものなのです。しかも花は二つも見つけるとなると可能性は絶望的かと。」


と、言われ僕らは黙り込みました。



しばらく黙っていると、突然フィくんが膝を付き


「お、俺のせいだ。」


と、頭を抱え込み震えながら言うフィくん。その言葉を聞き僕は思わず


「そ、そんなことないです⋯! フィくんが悪い訳ないじゃないですか! わ、悪いのは⋯⋯、っ。だ、誰でもないのかもしれません。」


言っている最中に一瞬、頭にあの女性が横切りました。


ですがその時に先程の話を思い出し、僕は何ともいえない複雑な気持ちになりながらも言葉を変えずにはいられませんでした。


フィくんのせいじゃないです⋯。


そう僕が悩みに悩んでいると


「なぁ、リイラ。俺はその薬草と花を探しに行くよ。さっき言った通りにな。」


え? い―――


「あ、そうだ。リイラも手伝ってくれねぇか? 薬草と花を別々に探すんだ。そうしていれば二人を離れさせられる。」


その言葉に目を見開きながら僕は言います。


「でも、フィくんまで死にそうになるかもしれ―――」


「っ! こんな時だからこそ弱気になるなよ⋯。俺だって不安でいっぱいなんだ⋯⋯。」


と、泣きそうになりながら僕に言うフィくん⋯。


「でもな! 探さねぇとミアや異世界人さん、いやあれいさんは⋯! どんどん記憶を忘れちまう。それに異世界人さんは記憶しか元の世界への手掛かりがねぇのによ⋯⋯!」


フィくん⋯。


「二人とも良い奴だ。だからこそ俺は―――」


「そ、そんなに君らがミアのことを思っていてくれたとは⋯。先程は無礼な態度を取ってすまなかった。」


と、突然謝り出したミアパパ。


「えと、気にしてないぜ。おっちゃん! あの時は警戒するのが当たり前だからな!」


と、少し戸惑いつつも言うフィくん。フィくん⋯と思っていると視線を感じました。


⋯⋯ん? あっ! そうですね、僕からも何か言った方が⋯。そう思い慌てて僕も言います。


「そ、そうですよ! 寧ろあそこまで心配する程、大切なんだなと伝わってくるくらいには⋯⋯。」


そう言いながら僕は自分のやらかしに気付きました。あ、親のこと触れても良いんでしょうか⋯? だ、駄目だったら! そう僕が慌てていると


「なぁ情けないがお前たちに任せても良いか? ミアに常に新しい場所を見せるなんてとてもじゃないがこの老いぼれには出来ないんだ。」


と、ミアパパが何か言いました。僕はというとその話も聞かずに先程自分でやらかしたことについて考えていました。


少しして僕は意を決し、恐る恐るフィくんの方を向きます。するとミアパパの方を向き気遣う表情をしているフィくん。え、どういう―――


「おっちゃん⋯。わ、分かった! 俺らで薬草と花を探しに今から行くよ!」


あ、そういうことですか⋯。え? 今から?!と、僕が思っていると


「いえ、少しお待ち下さい。この薬草と花は変わった場所にあると噂されているものなのです。なので人手は多い方が良いでしょう。」


と、すかさずフィくんに物申すハイサナさん。


「⋯それに調べながら連れて行き鉢合わせたらどうするのですか?もう少し考えての行動をお願いします。それくらい危険なことなのですから。」


と、今度はじわじわ詰め寄りながら聞くハイサナさん。そしてその圧にタジタジになるフィくん⋯。


「う、それは⋯⋯」


と、フィくんが言うとすかさず


「こうしましょう。私も薬草と花の情報を探します。あなた方は鉢合わせないように範囲を決めて薬草を探して下さい。」


その案に思わず僕は


「な、なるほどです!」


と、言いました。確かにそれなら鉢合わせず情報が集められそうです! それに三人で探せばきっと!


「じゃあ、今すぐ行こうぜ!」


「何処に⋯?」


と、いきなり後ろから誰かの声がしました。思わず後ろを振り返るとそこには


「う、うわぁ! び、びっくりしました。って! ライアじゃないですか!」


「うん。それで、何の話? 僕を置いてきぼりにするつもり⋯?」


と、ジト目で此方を見るライア。あ、わ、忘れてたなんて言えません⋯。心做しかライアを直視出来ません。


ざ、罪悪感からでしょうか。⋯⋯あれ? 誰も何も言わない? フィくんは黙っていますし、ライアの目線は更に厳しさを増しています。


仕方ありません! 此処は僕が言い訳を!


「い、いやぁそのなんていうか―――」


「あっ! そうだ、ライアにも探すの手伝って貰おうぜ!」


と、閃いたという顔でライアに言ったフィくん。するとライアは


「ふーん、何を?」


と、少し興味を示した表情で言いました。


「とある花です。それさえあればきっと全て治るはずなんです。」


と、ハイサナさんが焦ったように言いました。何故、焦って⋯、あ! そうでした、こうしている間にもミアたちの記憶は⋯⋯!


う、背に腹は代えられません!


「ライア! 僕からもお願いします! 一刻も早く花を集めないと!」


「ん、あれ? 時間制限でもあるの?」


と、聞いてくるライア。言われてみれば⋯、確かに。


「ないですが、探さずにいては一生戻らないのもまた事実です。」


その問いに対してきっぱりと答えるハイサナさん。


「そ、そんなの嫌だ。なぁ、頼む。ライア! 手伝ってくれるか?」


「うん⋯、まぁ探すとして別にそんなに急ぐものなの?」


「あ、伝え忘れてましたが花は三年に一度に一本だけ生えてくるのです。


もう別の誰かに取られていたりなんてしていればまた取られた日から三年後です。」


その言葉に僕らは唖然としました。う、嘘ですよね⋯?


「え、嘘だろ⋯⋯。」


と、フィくんは思わず口から声が漏れたかのように拙い発音でそう言いました。


「それにしても応急処置をしたのはあなたでしたよね?」


と、急にワガさんたちが言いました。え? それがどうしたんですか⋯? と不安になりつつ様子を伺うと、ライアが


「うん、何か問題でも?」


と、真剣な表情で聞きました。


「いや、凄く適切な処置で我らの仕事がないであります。」


と、意外にも褒めている様子。へぇ、ライアって器用なんでしょうか?


いやでも、器用だけで此処まで褒められるものなんでしょうか? と、不思議に思っていると


「じゃあ! さっきも言ったが今すぐにでも行こうぜ!」


「慌てる気持ちも分かるがまぁ待ちなさい。準備してからじゃないと厳しいものになってしまう。それにまだこの花につい―――」


その瞬間、何かの音が鳴りました。え?


「これ何の音ですか?」


と、思わず聞きました。すると、あっ! という顔をしたライアが


「わ、えと。」


と、慌てながら言い、空中で何かをなぞると


「御子息とあいつらは一緒か?」


と、直ぐに誰かの声がしました。こ、この特徴的な声は⋯⋯、あ! 僕を散々犬呼ばわりしたあいつです!


えっと名前は確か⋯⋯、ザンギでしたよね? な、なんであいつが!


「ザンギ! 僕らは一緒ですがなんですか!」


と、思わず僕が答えると


「私はザンギではない。ザンギエルト・アディールだ。⋯ん? なんだ、君か。


この前のは買い被りすぎだったのか⋯⋯? 今の私の目にはまた君が犬に見え始めている。」


い、犬⋯!? その言葉にすかさず僕は抗議します。


「な、僕は人間だとあれほど言ったじゃないですか!」


「あ、そんなことよりも話さなければならないことがあるのだが⋯。」


と、僕の抗議なんて聞こえていないかのように無視して深刻そうに言うあいつ。そ、そんなこと⋯?


「な! 今こいつそんなことって!」


「その話さなければならないことって何だ?」


と、フィくんが僕のことをガン無視して言いました。え、フィくんまで⋯?


「あぁ、思ったよりも深刻な事態でな。」

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