第十四話 異世界人とは⋯。

「最初は何処に行くんだ?」


と、フィくんが僕を引きずりながらなんてことないように言う。


「それは勿論! イセーアヴ村だよ! ちょっと依頼ルートから外れるけどね。」


あんなことがあった後だからこそミアはフィくんの前から行きたがってた所を選んだんでしょう。


案の定、フィくんの今の目は光り輝いています。


「イセーアヴ村ってあの村か?! 異世界の色の名称を広めたとされるあの人が居た場所か?! ⋯それと依頼って何だ?」


あぁ、良かったです⋯。フィくんの元気も戻って来ました。ミアはやはり凄いですね⋯⋯。


「うん、そうだよー! 異世界人を文字って村の名前も変えられたよね。ん? あぁ、依頼は気にしないで。」


「⋯そうか! それは楽しみだ!」


それとそろそろ放してくれても良くないですか?


「あの、盛り上がってる所悪いんだけど、いい加減リイラを放してあげたら?」


と、ライアが言いました。お、お前良い奴だったんですか!


「あ、すまん。リイラ」


え、もしかして僕のこと忘れてました?! まぁ、それだけフィくんは昔から異世界人が伝えた色の名称に興味深々でしたけど⋯。それにしても⋯。


「ムスーッ。」


と、僕は頬を膨らませた。


「わ、悪かったよ。」


「君も悪かったんじゃないの? 朝、寝坊してさ。予定より五時間も遅れたんだけど。」


「え、あれから五時間経ってたんですか!」


し、信じられません!


「うん⋯。私なんて楽しみ過ぎて待ち合わせの二時間前にリイラの家に居たのに誰も出て来ないんだよ⋯⋯。


ずーっとドアの前に立ってたよ。」


に、二時間前から!? つまり合計で七時間待たしてしまったんですか⋯!


「⋯それはすみません! あとそれはやってることが不審者だと思います。」


「え、酷いよー。ちょっと傷付いた。」


と、ミアが言いました。なんかすみません。でも


「ちょっとなんだ。」


と、ライアが言いました。確かに今、僕も同じこと思いました。


「なぁ、みんなはイセーアヴ村についてどう思う?」


と、フィくんが言いました。


んー、そうですね。そう思い、僕は口を開く。


「見たことがないので何とも。」


「左に同じく。」


と、ライアが言いました。ですよね! こいつと意見が合うのは癪ですが、見たこともない村をどう言えば良いんですか!


「うーん、私は⋯。とある異世界人の開口一番の言葉に結構傷付いたかなー。」


「な、何を言われたんですか?」


き、気になります⋯!


「それがさ、酷くない? 私が昔着てた服を見て、


「痴女じゃん。」なーんて言うんだよ! ほんともう失礼な!」


「えとー、それは⋯。」


あながち間違ってなさそうだなと少し僕は思っていた。


「しかも相手は何故か木に張り付いててさ。ほーんと変な奴だったよ。」


「え、何で張り付いていたんですか?」


「なんか丁度そこに転送されたんだってさ。」


「え、木に⋯?」


「うん、それとドンラウーをやたら追いかけ回してたなー。」


「え、なんでそんなことを? ドンラウー、もふもふで可愛いじゃないですか?」


ドンラウーは正義です!


「うん。私も不思議に思って聞いたらさ、


「こいつ、俺の飼ってるペットに似てる。あ、こいつ食べれる?」って言ってた。


異世界人の中で一番面白い奴だった気がするよ。」


「えっ、ペットって何?」


と、ライアが言いました。


「うーんと、愛着のあるデスレッオル動物のことをいうって本には書いてあったんだが⋯。すまない、俺の記憶違いかもしれん。」


「そうだったんだ。へぇー、あいつ美味しそうに食べてたけどなー。」


「え、もしフィくんの言った通りならその人結構ヤバい人なんでしょうか?」


「それはヤバい。」


と、ライアが言いました。どの口が言うんでしょうか? と内心思いました。


「まぁ、生きる上で多少の犠牲はあるよね、ウン。」


と、ミアが目を反らしげに言いました。


「そうか! その異世界人はそれを俺達に伝えようと⋯! なんて盲点だ。」


と、フィくんが言います。いや、それは違う気がしますが⋯。


「そうなの?」


と、ライアが信じてしまいました。な、普通に考えたら違うでしょうが!


「そ、そうかもねー。」


と、ミアが完全に目を反らしました。


もういいです。


「ミア、その彼と会ったのはいつなんですか?」


「えーと、確か⋯んー、多分数年前。ミスレニーやりに彷徨いてた時に向こうの方に行ってさ。ほら、丁度この森ら辺!」


と、ミアが指を指します。その方向を見ると何故かでかい木がありました。


「あれ? こんな木あったっけ?」


と、ミアが言います。確かにあれから随分歩いてというか引きずられて、僕らの村ももうとっくに見えなくなりましたが。こんなに大きな木。


初めて見ました。


「こんなに大きな木、初めて見た。」


と、ライアが呆然と立ち尽くしています。


「俺もだ。」


と、フィくんが言います。


「こんなに大きいのは凄いな。」


と言い、ミアがグルリと後ろに行くと


「「あ」」


と、ミアと誰かの声が聞こえました。


「お、お前はあの時の痴女!?」


「はぁ!? 他の言い方は出来ないのー?!」


と、木の後ろの方から声がしました。


「ところで木に張り付く趣味でもあるの? あれい」


「いいや、あの頃の俺とは違うね! 木から降りれなくなった訳では断じてない!」


「あれいさんで合ってるんですか?」


「あ、いやそれはこいつが勝手に付けたニックネームだ。俺の本名は⋯、いややっぱり言えない。あれいでいい。」


「え、なんでですか?」


「それはな! 本名を名乗っちゃいけない的なあれだよ!」


「因みにペット飼ってたって本当?」


と、ライアが言います。


「うわあ、美少年だな、お前。さぞかしモテるんだろ。羨まし!」


「あの、質問に答えて。」


と、ライアが呆れ顔で聞く。その顔を見てちょっとあれいさんは驚くと


「あ、あぁ。ペットな。勿論飼ってたな。ゴンさんと言って、かなりお転婆な奴だった⋯。」


「でもそのペットに似てるドンラウーのことは食べたんだ?」


と、ライアが言うと


「いやまぁな。腹が減ってな。」


意外とマトモらしいです。ドンラウーを追いかけたり木に張り付いていますけど。


因みに今も木に張り付いています。


「え、そうだったんだ。てっきり違うものかと。」


と、ミアが言いました。


「お前、俺をなんだと思ってるんだよ。」


「んー、変人?」


「お前ってやつは⋯。今のこのポーズだって張り付いてたら帰れないかなって思ってのポーズなんだぞ! 決して降りられなくなったとかじゃあないからな⋯!」


「どうして帰りたいの?」


と、ライアが聞く。


「よくぞ聞いてくれた美少年! んーと、ただ単に漫画が読みたい⋯。」


「え、漫画って何⋯? あとボクにはちゃんとした名前がある。」


「いやいやいや! 漫画を知らないだと! 俺は続きが気になって仕方ない時に気付いたら木に張り付くハメになった、俺の気持ちが分かるか⋯、美少年よ。」


漫画って結局何ですか? そう思いつつも悲しげな表情を見て聞かないことにしました。


「あぁー! 帰りたいな! 確かに魔法とかあるけどさ、もっと気軽にかるーい感じだと思ってたのに! 現実はこれでよ⋯。嫌になるよねぇ! ミア!」


「えと、そうだね。私も魔法は嫌い。」


「そ、そうじゃなくて! あぁ、ミア。何故俺は此処にセミのようにいるんだろうか。」


それは知りませんが。


⋯あれ、そういえばフィくんがずーっと黙っていますね。どうしたんでしょう?


「⋯⋯な、なぁ! 俺に異世界の話を聞かせてくれないか?」


「お、おぉ。俺はその熱意に驚きでいっぱいだ⋯。」


「あの、俺、異世界の色の名称についてもっと詳しく知りたいんだ!」


「⋯うーん、色ときたか。俺、詳しくないんだよな。すまん、青年よ。情けないが他を当たってくれ。」


「そ、そうか⋯。」


フィくん⋯。


「あの、僕たちこれからイセーアヴ村に行くんです。」


「なんじゃそりゃ。」


「え、異世界人といえばあの村で有名のイセーアヴ村ですよ?」


「え、そんなもんがあるのか⋯。俺、ずーっと森から出られなくて困ってたんだよ。


だからそんな村があるなんて知らなかったな。ありがとよ、灰色の青年よ。」


「因みに何でずーっとそこに張り付いてるの?」


と、ライアが聞く。


「あ、いや降りられなくなったとかじゃないんだ! 決してな!」


「そうなんだ。じゃあこれで。」


「え、ミア⋯?」


急にどうしたんでしょう? と、落ち込んでいるフィくん以外の僕らがミアに視線を向けていると


「⋯え? あ、ミアー! 頼む、待ってくれ! すまない、俺が悪かったから此処から降ろしてくれー!」


「なーんだ、最初からそう言えばいいのに。」


と、ミアが言うとあれいさんは期待した目で見て言いました。


「じゃあ⋯、」


「ねぇ、変な人。そもそもなんで木に張り付いているの?」


と、ライアが聞きました。それは、僕も気になって仕方ないです。


「変とはなんだ! まぁ答えるけども。それは⋯、いつものようにドンラウーを追いかけ回していた時のこと。


俺は突然立ち止まったドンラウーのお尻にふわっと顔面ごと入ったかと思うと次は木の上にいたんだ。それで降りようとしたらこうなってな。」


「え、じゃあ此方に来た時も同じ状況だったんですか?」


と、僕が聞くと


「いや、あの時は急に木の横にいてな。落ちたら死ぬ―――! そう思って急いで木に掴まったんだ⋯。そうして安堵してたらこいつが来たってわけだ。」


と、ミアを指さして言いました。


「へぇー、その割には私を痴女という気力は合ったんだ。」


と、ミアがあれいさんをジト目で見ています。


「あっ。」


と、あれいさんがやべっと言っているような顔をしました。


「た、頼むー! 助けてくれー! そして迷子の俺も助けてくれー!」


「⋯。」


ライアが更に呆れた目をしました。


「うーん。」


ミアは何やら考え込んでいました。


「あの、ずーっと此処に居て迷子だなんていくら何でも可哀想ですよ、ミア」


「そ、そうだ! そうだ!」


と、あれいさんが便上します。


「よし、置いていこう。」


と、ミアが言いました。


「いやいや! よーく考えてみ? ミア」


「だからよーく考えた上で置いていこうって。」


「そ、そんなぁ! ミアの鬼ぃ!」


「へぇー。」


「あっ! やべっ。そ、そうだ! そこの美少年! 俺を助けてくれー!」


「助ける理由がないから。」


と、にっこりライアは言いました。なんかその顔怖いですよ⋯⋯。


「ひえっ。じゃあそこのパステルグリーンの髪の青年!」


「⋯⋯。」


と、言われたフィくんはなんかボーッとしています。余程ショックだったんでしょう。


「おーい! 聞いてるかー! あ、そうか!」


と、何やら思いついた顔をしています。


「おーい! そこの薄緑―――」


「あ、おう! なんだろう! 薄緑⋯へへ。」


「うわ!」


と言って驚いたからか手を放してしまいました。


「し、死ぬー!」


と言い、落ち―――え


「⋯うん? あれ? 落ちてない?」


と言い目を開けて下を見るあれいさん。


「み、ミア。お前⋯!」


と箱の中から言いました。ん? 箱?


「よし、このまま連れて行こう。じゃないとあれいならまた迷子になる。」


「え、ちょっと待て。なんだこれはー!」


「行こうか。」


「うん。」


すぐ言いましたね、今こいつ。


「え、あ、はい。ほら行きますよ、フィくん。」


と、僕も慌てつつ、薄緑と噛み締めてるフィくんに声を掛けます。


「お、おう!」


今度は名前で呼んだからかちゃんと反応しました。


「え、あのー、俺は無視?!」


と、あれいさんが何か言いつつも僕らは森を歩き続けました。


「結構深い森ですね。」


「あぁ、この森のことはなーんでも俺に聞いてくれ!」


と、手のひらサイズの箱の蓋からひょこっと此方を見て言うあれいさん。


「そう。迷ってた人が答えられるの?」


と、相変わらずあれいさんに呆れた目を向けるライア。


「う、うぅ。」


そう言われてあれいさんはタジタジになりました。


「さぁ、早く行こう! イセーアヴ村へ!」


と、何故か急に元気を取り戻したフィくんが言いました。


「言われなくてもそのつもりだよ。かなり歩くから途中で何処かに寄ろうか。」


そうミアに言われて僕は休憩出来ることにほっとしつつも足を進めました。

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