第十三話 旅立ち
あ、そうです。何かの鳴き真似をすれば大丈夫だと何処かで読んだことがあります。
よし、ドンラウーの鳴き真似をしましょう。
「キー、キルルーッ!」
「これは⋯、ドンラウーに似ているわね。」
「そうか? ドンラウーってこんな鳴き声してたか?」
「でもこんなボロなら出るでしょ。」
んんん! 後でライアくんは覚えといてください! でも今はナイスです!
「そうか⋯?」
「ら、ライアくん⋯、意外と毒舌ね。」
あ、母⋯。
「ボクは似てる気が少しした。それにドンラウーの鳴き声は一個体ずつ違う。」
そ、そうなんですか!
「そ、そうなのか⋯。俺が無知だったのか。」
「あら、そうなの? じゃあこの子は上手く鳴けない子なのね。」
「あ、そうか! じゃあ弱ってるのか⋯。なら保護した方が良いのか?」
「いや、多分弱ってはいないと思う。鳴けてるし。」
「そうか、それなら良かったな。」
「えぇ、そうね。」
ら、ライアくん⋯! ナイスです!
「じゃあリイラを探し―――」
「いや、トイレにでも行ってるんじゃない? それだと、なんかあれだしご飯の所で待ってよう? たかが数分でみんな気にし過ぎ。」
ら、ライアくん⋯⋯! それ数分は確かにそうですよね!
「た、確かにな。俺達心配し過ぎたのかもな⋯。」
心配⋯。僕もフィくんのことが心配です。
「えぇ、そうね。じゃあ待ってましょう。」
「あ、ボクはさっきのドンラウーが気になるから、先に行ってて。」
え、ちょ? ライアくん!?
「あぁ、分かった。」
「じゃあお先にねー。」
そうして足音が遠ざかるまで、何故かライアくんは黙っていました。
「⋯もう行ったよ。それで、何その痣。」
え、何で知って⋯? と、僕が聞く前にライアくんは語ります。
「どうして隠れたの? すぐ出てくるなりすれば良いのに。気になって君を手伝っちゃったじゃない。」
「それは⋯、母とフィくんにあんなことがあった上に更に心労をかけたくなかったからです。
これがバレればフィくんが可笑しくなる。長年の親友としての勘がそういうんです。」
「⋯そう。そこまで言うならボクも黙っておく。でも手当はさせてもらう。」
「て、手当?」
「うん、持って来てる薬に家研究の特製何にでも効く魔法薬があるから、それでも使えば?」
「わ、分かりました。でも何で助けてくれるんですか?」
「そりゃそんな痣。見ててボクまで嫌な気持ちを思い出す。」
「そうですか。それと、どうして見えるんですか?」
「それは⋯。此処がボロくて土が入り込んでいるから。土を通して見えるんだ。」
「そ、そうなんですか。って! サラッとまたボロいって言いましたね!」
「それよりも早く開けて。期間内に効く魔法薬を渡すから。」
「それよりって! もう、全く。この子は。」
と言いつつも、流石にこのままでは不味いので僕は素直にドアを開けました。
「はい、これ。」
「え、手荷物ずっと持ってたんですか?」
「いやだって、此処ボロくて。」
「ひ、酷いです! 二度ならず三度も!」
「そんなに大声あげていいの? それよりも早く受け取ってくれない?」
「あ、はい。すみませんね!」
と、今度は小声で怒りながらも受け取った。
「ぐいーって。」
「え、あ、はい。」
そうして飲むと
「わ、ぁ。何処も痛くないです。さっきまであんなに痛かったのに。それに痣もぜーんぶ消えています!」
「ふーん、まぁ良かった。」
と、何だかんだで助けてくれました。しかしそれでも知らない内に痣があったという事実が僕の脳内を占めています。
「ねぇ、それよりも早く服着ないの?」
まさか心配を⋯?
「君が風邪を引きたいというならどうぞ勝手に。」
「キーッ! こ、こいつ⋯!」
「あぁ、さっきのド下手クソな鳴き声の続き?」
「こ、こいつ。」
何なんですか! こいつぅ! と思った。
「ボクはこいつって名前じゃないんだけど。それより早く着なよ。この状況を誰かが見たら勘違いされる。」
んんー! くそぅ、ライアめ! と思いつつも服を若干もたつきながら着ていく。⋯⋯よし、これで着れた。
そう思い、顔をあげるとあいつはもういなかった。待ってはくれないんですかと思った。
あっ! 急いで戻らないと! と思い、慌てて料理がある部屋に走った。
「あ、リイラが来たぞー! リイラの母ちゃん」
「あら、本当ね。」
「お帰り、遅かった。」
ぐぬぬ。こいつめ、散々煽ったくせに⋯。と思いつつも返事をする。
「た、ただいまですー。」
思ったよりも気まずい声が出てしまった。すると、フィくんが何かを察したように
「いや、大丈夫だぞ。全然待ってないからな、うん。」
と言う。そういえばライアのせいでトイレに行ったことになってるんだった⋯。なんかいたたまれなくなり、僕は
「は、早く料理を食べましょう!」
と、言った。
「おう! それじゃあ
と、フィくんが食べ物に目を合わせて感謝する。それじゃあ僕も
「「「
今日はいっぱい料理がありますね。あっ! あれは僕の好物のポエットルがあります! あれ、良い甘さ加減で美味しいんですよ!
さっそくころっとしたポエットルを少し取ります。そして口に頬張ります。んー、スッと鼻に入る豊潤な香り、そして相変わらずの良い甘さ加減! 濃厚さも引き立ち、中に入ってる物の噛み応えもとても良いです!
やっぱり疲れたときはポエットルに限ります!
「うーん! やっぱりリイラの母ちゃんの料理はうめぇ! ライアもそう思うだろ?」
「えっ!」
母がライアをじーっと見ています。
「う、うん! 美味しいね。」
「まぁ、本当! それじゃあこれもどうぞ食べてちょうだい! ライアくんは育ち盛りなんだもの!」
と、言ってライアに沢山の料理が渡されます。
「え、ちょ」
流石のライアもこの量には参ったようです。ですが頑張って食べています。意外と良い奴なのでしょうか。
そんなことを考えつつも楽しい食事の時間はあっという間です。外も真っ暗です。
「さぁ、みんな。
「じゃあ俺一番!」
「わ、ズルいですよ! じゃあ僕が二番!」
「ボクはいい。
「えー! ライアも入ろうぜー!」
「いや、いい。先に部屋に行く。」
「そう? ライアくん入らない?」
「ボクは本当に良いんです。それじゃあ」
と言い、足早に去ってしまいました。
「どうしてだー? あいつ」
「さぁ? 何ででしょうね。」
「それよりも早く終わらせて明日の準備です!」
「おう! そうだな!」
そう言ってフィくんは先に入った。フィくんが上がるのを待つために僕はというと。
呑気にポエットルのことを考えていた。ポエットルってもうちょっとアレンジ出来ると思うんですよね。
何が良いんでしょうか。うーん、考えてたらまたポエットルが食べたくなりました。
うーん、ポエットルー! ポエットル⋯。ポエットル⋯⋯!
そんな風にポエットルのことを考えてたらフィくんが出てきました。それじゃあ僕も入りましょう。これが旅に出る前の家での最後のお風呂です。
そういえばポエットルもそうですね。
とまたポエットルについて考えながら
うーん、ポエットル。そういえばポエットルの歌が欲しいです。何でないんでしょうか?
と、思いつつも
そう考えつつももう暗いので急ぎめに着替えます。ポエットルの単語は絶対入れたいとして他には何の歌詞を入れれば⋯。
そう思いつつ着替え終わりました。
ポエットルの歌を未だに考えながら部屋に向かいました。あ、そうです! 二人に聞いてみましょう! そう思い僕はドアを開けます。
すると二人は疲れてたのかもう寝ていました。あれ? ポエットルは?
そう思いましたが、此処までぐっすりと気持ち良さそうに寝ていたら何も言えません。
何故かライアは色んな魔法を自分の周囲に掛けて寝ていましたが。
まぁ、僕も寝ますか。そう思い、寝ることにした。
―――翌日―――
あれ、何か聞こえますね。
「⋯おい、リイラ! 起きろ! 今日は旅に行く日だぞ!」
「んー、ポエットル。」
「なーに寝ぼけてるんだ! 早く行くぞ! もうミアも来てる!」
「えー、ミアが?」
「おう! 行くんだろ、旅に!」
「旅に⋯?」
旅⋯。旅。
「あー! そうでした!」
「こうなったら引きずって行こう。」
「おう!」
「いやいや待ってください! まだ準備もしてません!」
「ねぇ、置いていこう。」
「あ、いや、もう引きずって行くか。」
「え! そんなー。」
「行くぞ! 荷物は途中でどうにかなるだろ。」
そう言われて引きずられる僕。
「自分で歩けますからー!」
―――現在―――
そういえばこれが僕らの旅の始まりでした。色々なことがありましたね。でも結局術に関しては思い出せませんでした。
そういえばあの痣は一体何だったんでしょうか。
あ、次も思い出さなくては。少しでも何か手掛かりを。
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