第十話 リイラ⋯!
「ぼ、僕は⋯フィくんのことを何も分かってなどいませんでした。
だって、フィくんが悲しんでいるときに僕は! ああなったのがフィくんじゃなくて良かったと、安堵していました。フィくんが僕は何も⋯。こんな僕にはフィくんの親友を名乗る資格はありません。
僕にはもう⋯。っ!」
そう言って僕は駆け出しました。ズキリと痛むのを無視して。僕は⋯もう。そう後悔し、誰もいない場所に向かおうと決意しました。
「え⋯、ど、何処行くの?」
と言われましたが僕は気にしません。ただひたすらに前を向いて走ります。
「っ! はぁはぁ。」
うー、結局僕に出来ることとは何だったんでしょうか。僕はどうしたら! 良かったんでしょうか⋯。
いざ行くという時でさえも足手まとい⋯。むしろ邪魔だったんじゃ。僕は、僕は⋯!
すると急に意識が朦朧としてきた。
「な、んで⋯?」
目の前が真っ暗になりました。
目が覚めると何処かの場所にいました。
「んぅ。ん―――!」
急いで助けを呼ぼうとするも口は何故か開けれません。ど、どうしましょう! あ、逃げれば――――
あっ! 足が動きません。な、何でですか! 動け、動いてください! ⋯⋯全く動かないです。嘘でしょう!? 一体どうすれば⋯⋯?
そう悩んでいるとそいつは現れました。
「あぁ! 羨ましい羨ましい!! 何でこんな奴が!!」
と、頭を掻きむしりながら言いました。
「ん―――! んん――――!」
こいつが誰か聞こうとしてもこの有り様です。
「何でお前なんだよ! 何でだ! おい、答えろよ! ほら、何か言ってみろよ!」
くそっ! 何なんですかこいつは!
「んー!んんんー!」
「ははっ。馬鹿みてぇに抵抗しやがる。」
「んー! んん―――!」
だ、誰か⋯! しんゆ―――いえ、僕にはそんな名乗る資格なんて⋯⋯。
こいつは誰なんでしょう⋯。あぁ、また意識が朦朧としてきました⋯。
蹴られながらも僕は何故かまた意識を失った。
一方その頃⋯⋯フィは。
どういうことなんだ、俺の父ちゃんと母ちゃんがそんな⋯⋯! いやでも、母ちゃんが倒れるとき、何故かリイラの方を恨みがましそうに見ていた。
俺のことを助けに来た親友にそんな目を向けるなんて⋯。本当にあれは母ちゃんだったのか。い、いやまさか本当に母ちゃんが⋯? でも父ちゃんの目的は分かるとして母ちゃんの目的は何なんだ⋯。
取り敢えずあいつらに感謝してそれと新たに加わってたあいつにもその⋯。俺、よく考えればあいつのこと何も知らねぇよ。でも母ちゃんをあんなにした奴で⋯⋯。いややっぱり悪いのは俺の親なのか⋯? なら、⋯ちゃんと聞かねぇと。
待ってろよ、みんな! 今すぐ木の所に戻って感謝するぞー!
そう思い何処か痛む心を無視しながら、俺は来た道を引き返した。
走る中でどんな感じで現れてサプライズと言おうかなどと明るく振る舞えるように考える。
おっし! 決めた! ああ言おう!
そう思い、俺が出せる全力で疾走する。
しばらくすると、おっ! あの木が見えてきたなぁ!
「親友ー! ミアー! それからヘンテコな奴ー!」
「何あれ、もしかしてボクのこと?」
「あっ! 戻って来た、はぁ良かった。」
「ん! ただいま戻りました! なーんちゃってな! あれ、親友は?」
と思い、辺りを見渡すが親友の姿が見当たらない。
「あぁ、リイラのこと? フィムスが出て行った後、すぐに出て行ったよ。」
「え? 俺を探して⋯? うぅ、親友。お前って奴は! 何て良い奴なんだ⋯!」
「んー、いや何か思い悩んでる様子だったけど。」
「あぁ、二人して急に居なくなるなんて。ある意味凄いね。感心しちゃったよ、ボク」
「お前⋯、すまんかった。」
「え」
そう俺が言うと目の前の奴は目を大きく見開きながら俺を見ている。そうだ、俺⋯⋯。と、思い改めて言う。
「俺、混乱してお前を怒鳴っちまった。だからすまんかった。」
「な、何で謝るの? ⋯そのボクだって悪かったのに。」
と、ライアが俯きながら俺に言う。いやでも、俺だってよく考えずに動揺したままあぁ言っちまった。まぁ何ていうかこれは俺の気持ちの問題なんだ。そう思いライアに再び言う。
「いや俺が悪かった!」
「いやボクの方が⋯」
「はいはい! 二人ともストーップ! それよりもリイラを探さないとね!」
「「あ」」
「よし、行こうじゃないか! リイラを探しに。」
と、僕らが唖然としている顔を交互に見て満足気に言うミア。そうだよな、まずはリイラを探さねぇと。そう思いライアに聞く。
「おうっ! ライアも手伝ってくれるか?」
「うん、良いけど⋯。」
「へぇー、ライアっていうんだ。よろしくね、ライアくん。」
「あ、俺からも改めてよろしくな、ライア」
「よ、よろしく。」
「そういえばよく受け入れられたね、ライアのこと。」
「え、何で知ってるんだ?」
「ライアくん自ら後悔しててね。自白してくれたんだよ。」
「⋯自白ぅ? なぁ、ライア。本当にミアに話したのか?」
「うん、ボクいくら何でもやり過ぎだった。本当にごめん。謝っても許されないと思う。」
と、言うライアは本当に反省しているようだ。それに対して俺は何だか居心地を悪く感じながら答える。
「まぁ⋯⋯、俺も子供相手にやけになっちまったしな。あれは俺の親が悪かった。⋯それとライア! お前あんな風にドアを蹴飛ばせるならさぞ魔法も幅が多いんだろ。」
「っ」
「すげーな!」
「えっ?」
「いやすげーだろ!」
「⋯そんな風に言ってもらえるなんて。」
「え? どういうこと?」
と、不思議に思ったのかすかさず聞くミア。
「いやその⋯⋯。」
と、言葉に詰まるライア。あ、この表情はきっと余り言いたくないんだろうな。そう思って俺は口を開いた。
「なぁ、別に無理して話さなくても良いぜ? だってお前にはお前なりの考えがあるんだろうし。」
「いや、それなら尚更言うよ。だってじゃないと君からしたらまだ許せないだろうし、色々思う所があるんでしょ?」
と、此方を見透かすような目で俺を覗き込むように見ながら言うライア。う、確かに思う所はあれどよ。今の俺、なんか上手く言葉に出来ねぇんだ。多分、戸惑いの方が大きいんだなって自分でも分かる。そう俺が思っていると
「⋯⋯あのね、お父さんに言ったことはないんだけど、ボク誘拐されたことがあって。」
「え、き、気付かなかったのか? お父さんは。」
と、その言葉に不審に思い聞く。その言ったことがないことを俺らなんかに話しても良いのか? そう思っていると
「うん、自力で頑張って帰って来た時にはご飯を余り食べないくらいの認識で。」
「自力で⋯?」
「うん、ボク旅行中に丁度外に出てた時に拐われてそれで幹部たちの船の手掛かりを見つけながら色々探し回ってようやく見つけたと思ったらこの有り様で。
でも運良く一年で見つけれて良かったよ。魔法があって⋯⋯。ほんとに⋯。」
と言って黙ってしまった。え! 一年かかってよく親が気付かなかったな。と、不思議に思いつつも続きを聞く。
「正直、最初は侵入者って聞いてボクを連れ去った奴かと思った。で、分からなくてあんな事をしてしまった。本当にごめんなさい。」
と、言うライアに俺は何とも言えない気持ちでいた。てことは勘違いってことか。いやそれにしてもやり過ぎでは? そう思っていると
「あと基本、侵入者への対応はあぁだから。見た目がややこしいのは相手の困惑を誘って相手がどんな人物か見るため。だから、本当に君のお母さんは生きているよ。最後の倒れ方が気になるけども。」
「それであんな事を⋯。」
と、目を見開きながら思わず言った。あ、本当に生きているのか。ややこしかっただけで。うん? 最後の倒れ方―――あ。あの時俺の母ちゃんは⋯⋯。
そうか、母ちゃんって⋯。そう再び意識した俺の脳はその事実を認識すればするほどに拒絶するかのように目の前が真っ暗になっていく。それに慌てて俺は気持ちを取り繕い口を開いた。
「よーし! 分かった! 兄ちゃんが解決してやるよ!」
「え、本当に良いの⋯?」
「あぁ、此処まで話してくれた勇気とその涙を見たら放ってはおけないぜ!」
ライアは言われて顔を拭うと
「え、涙⋯⋯?あ、ほんとだ。」
と何処までも淡々と言うライア。え、もうちょっと感情表現しても良いんだぜ? と、少し心配になっていると
「ねぇねぇ、ライアくんもだけどリイラのことはどうするの? 探しに行かないの?」
と、不安そうに言うミア。あぁ、一気に色んな情報が入ってきすぎだっての。そう思いつつも返事をきちんと返す。
「おっ! そうだったな! じゃあどっちも同時にやろう!」
「え、フィムスが同時にやれるとは思わないんだけど。先にリイラを探さない? 人手が多い方が良いだろうし。」
え、ミア。俺に対して失礼過ぎないか? ちょっと傷付く。でも確かにそうだな。いやそういうよりリイラが心配だ。そう思い俺は言う。
「分かった! リイラを探す! すまんがその後でも良いか? ライア」
「勿論。ボクも探すの頑張る。」
そうして俺達はリイラを探すことになった。さて親友はどーこに行っちまったんだ。
「あ、足跡を追うのはどう?」
と、ミアが名案を言ってくるのでそれに対して反応を示す俺。
「良いな、それ!」
「良いと思う。」
「こっちの足跡は俺のだ。」
と、指を指して二人に教える。それをじーっと見る二人。するとミアが
「てことはこっちがリイラのか。」
「結構続いてる。」
そう淡々と言うライア。本当だな、見た感じだとかなり長いし何ていうか乱雑だ。そう思っていると再びミアが
「辿っていこうか。」
と、此方を振り向き言う。それに対して俺は元気良く
「おう!」 「うん。」
そうそれぞれ反応した。そして俺達はリイラの足跡を辿って行く。うーん、それにしてもライアが言った通り本当に結構続いてるんだな。俺達は歩いて足跡を見つけていく。
「こっちにも足跡があった。」
と言うライア。すると
「え、こっちにもあるよ。」
と、言うミア。思わずそれに対して
「あ、本当だな! ん? どっちだ⋯?」
と、声に出して首を傾げる。
「あ、こっちの足跡は此処で途切れてる。でもこっちの足跡は続いてるよ。」
と、言うライアに対してミアが
「ん? 途切れてる? 変だな、魔法の痕跡を感じないのに。」
と、顔を
「まだそれほどこの足跡の時間は経っていないと思う。」
そう突然言い出すライアに不思議に思った俺は首を傾げながら聞く。
「何でだ? ライア」
「だって土がそう言ってる。」
「な、なに言って―――いや、もしかして
「うん。」
それなら納得だ。超適正があればそんなの簡単に出来てしまう。そう超適正の記憶を思い出しつつもライアに聞く。
「そうなのか。じゃあ此処に居た人は一体?」
「うん、あいつと同じ灰色の髪の人だって。それで⋯⋯その人が急に消えたって。」
「なっ! それってもしかしてリイラか!」
と、俺が思わず衝動的に聞くと
「それは分からないけど。」
と、言うライア。その答えに俺は更に焦りを感じながらライアの方を向き聞く。
「何処に消えたか分かるか!」
「分からないって。」
その答えに更に焦りを感じて俺は
「くそっ! ミアは何か分かるか?」
「ごめん。何も⋯。」
「そんな⋯! 何処に行ったんだ! リイラ」
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