悪魔の契約

遠藤みりん

契約

 俺は、定年間際の刑事だ。長年、追い続けた事件の犯人がこの取り調べ室の中に居る。

 

 この犯人は女、子供を卑劣な手段で次々と殺害していった。その上、ある大きな組織をまとめる大悪党だ。


 決死の捜査でやっと捕まえる事が出来た。奴には地獄を見てもらう……


 俺は取調べ室のドアを開いた。


「やぁ、刑事さん。やっと捕まえる事が出来たな」


「あぁ……お前を捕まえるのは苦労したよ」


「取調べだろ?全部認めるよ。俺の寿命はあと3ヶ月だ。足掻いたって仕方ない」


 そう……奴は大病を患っていて、残りの寿命は3ヶ月だった。こんな犯罪者が罪を償わずに死ぬなんて耐えきれない。


 奴には地獄を見せてやる……


 その気持ちは次第に大きくなっていく。どうにか出来ないだろうか……俺は必死に考えた。


「確かに、罪を全部認めるんだな?」


「あぁ、認める。あと少しの人生だ」


 俺は、奴に顔を近づけ、小声で話す。


「なぁ、俺から一つ取り引きがある。今、秘密裏に進められている医療があるんだ……」


「医療?」


「あぁ……身体を冷凍し、医療技術が上がった所で解凍する。あんたの大病だって問題無い」


「詳しく聞かせてくれ!少しでも長く生きたいんだ」


 奴はすぐに食いついてきた……


「交換条件にあんたの全財産を俺に渡す事だ。解凍し、目覚めた後の事も心配無い。面倒見てやる……」


「その取り引き、乗らしてくれ。刑事さん、あんたを信じるよ」


「契約完了だ……」


 俺は奴から全財産を貰い、裏のルートを使い、医者に身柄を渡した。

 いずれ医療技術が上がり、奴の大病は完治するだろう……


 “完治した奴に、死刑を受けてもらう手立ては全て整えてある”


 奴には地獄を見せる……


 もちろんこの事は秘密だ……

 


 


 


 

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