本といい出会い

夕日ゆうや

本となお付き合い

 私はこの春から高校一年生になります。

 通学はバスで片道三十分ほどです。

 バスの中では本を読んですごしています。ただの暇つぶしですが。

 本当は本の種類なんてどうでもいいのかもしれません。

 今日もブイサイハイブリッドトリューバーを読んでいます。シリーズ累計二億部を突破した、歴史的なライトノベルです。

 と、後ろから声がかかったのです。

「そんなつまんねー本読んでんの?」

 ちゃらそうな男の子が後ろ席から身を乗り出してこちらの本を見ています。

「いいじゃないですか。別に」

「ほーん。俺の小説のほうがおもしれーよ」

 そう言って彼は私の本を取り上げて、代わりの本を差し出します。

「別に何を読もうがいいじゃないですか」

 私はそう言って彼が取った本に手を伸ばします。

「俺の本、騙されたと思って読んでみ?」

 文句はたぶんにありますが、喚いていても何も変わりそうにありません。

 しぶしぶ彼の本に目を落とします。

 あ。いい。

 最初の一ページ目ですっかり魅了されてしまいました。

「これ、いいですね!」

 私が振り返り、彼に伝えよとすると、

 バスは目的の高校前についていたのです。

 彼はすでに降りていたらしく、私も急いでおります。


 この春、いいことがありそうです。



             〜完〜

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