7:夢想す(-.-)

 寿和の偲ぶ会も盛況に終わり、自宅で、お茶を入れつつ、ひとり思う。


 「リロード」は幸寿のプログラムだ。としても、「リセット」は誰のプログラムなのだろう?つい同じような状況と片付けてしまったが、時代がおかしい。


 あの時の古い写真にプログラミングが入っていたのか、その時使ったアプリに仕掛けがあったのか。それとも、かつてSEだった私にわかりやすい形で、人知を超える何かの力が働いたのか。

 あの時、寿和は母を失い、継母の虐待で虐げられた幼少期を迎え、大人になっても性格を変えられず、死の際も楽しく生きられず絶望して死んだ。同様に、幸寿も自分の出産で母が死んだ事をずっと心に抱き、いろいろとしていたのかもしれない。ソフト会社に勤務していて画像アプリに別な機能を埋め込んだか、それこそ、私のように前世があって、幸寿の前世の際に、私と和幸、寿和の写真を撮っておいたとか。

 それとも、私自身が本当の夢を実現するために、自分にわかりやすい超常現象を起こしたのか。


 私は手にしていた湯呑を机の上に置いた。

 今となってはすべて終わったことだ。ただ、いえるのは、

・幼少期のトラウマは案外根強いから、子育ての際には子供の記憶に変なものを作らないように気を付けること

・いくら幼少期でひどいトラウマがあろうとなかろうと、自分の人生は自分の意志で最後まで生き抜くこと

 だと思う。

 親が蘇り、子供のトラウマをきれいに消すことは、通常、ありえないだろうから。




 明日からまた舞台稽古だ。50になっても喉も体も壊さず、仕事を続けられることをうれしく思う。私自身に思い出は重要ではないが、役の気持ちは推し量ることができる。舞台にいる時、その一瞬一瞬を、役と共に、私はまさに生きている。


 また日は昇る。頑張ろう。

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HISA CUBED 若阿夢 @nyaam

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