「カクヨムWeb小説短編賞2023」創作フェス3回目お題「秘密」用のブツ

木元宗

第1話


 小説書いてる事多くの人に話してないんですよ。話しててもペンネームは伏せてるとか、さらっと喋ったぐらい。


 引っ越しとか転校とか異動とかで、人間関係がリセットされる事ってあるじゃないですか。その度に新しく知り合った人達と関係を構築する際、お互いを知る為の世間話ってあるでしょう? 趣味はどうとか、休みの日何してんのとか。私の場合、こうして小説だったりしょうもない小話書いてるんですね。でもそれ教えるのは何か嫌だなって。嫌じゃないですか何か。皆さん堂々と周囲に喋ってます? カクヨムで○○って名前で小説書いてるとか読んでるって。


 最近資格を取って仕事を変えました。前の職場より待遇はよく、家からも近い。文句無し。「木元さんって休みの日何してんの?」って質問以外は。カクヨムユーザー全員に訊きたいんですけれど、皆こういう時なんて返事してんの? 言うの小説書いてますって? 私は絶対に嫌だよ。理由は上手く言語化出来ないけれど。別に終わってるペンネームでエロラノベとか書いてる訳じゃないけれど、何か嫌だよ。


 だから、休日の過ごし方について答えられる部分が殆ど無いんですよ。でもかれちゃったら答えないといけないし。まだお互いを知らない状態で適当言うのも、「木元さんは○○が好きな人」ってイメージが結構強めに暫く続くと思ったら危険な訳。小説以外でやってる事って何? ゲーム? でもこの頃はカクヨムコンがあってそんなにやってないし……。そうだ映画観てるじゃん。どんな? ディストピアとかバッドエンドなら結構何でもいいんだけれど、主に地上波で流せないレベルのホラー、とか……。


 会話の種無いんだけれど。何でコミュ障みたいになってんだよ私。私一昨日の散歩中、交通整理とか警備員のおじさんに「寒いですねえ。ご苦労様です」って挨拶してたぐらいフランクなんだけれど。買い物した時とかレジしてくれた店員さんにも大分愛想よく応答してますからね。マジの赤の他人にはフレンドリーに話せるのに、立ち入られると「えっと……」ってなるんですよ。おかしくないですか? 私はおかしいと思ってるよ。仕方無いでしょカクヨムさんで活動してる事は何か秘密にしたいんだから!


 暫く、「ネットフリックスで映画観てます」でゴリ押しして行こうと思います。どんなの観てるの? って訊かれたらもう正直に言って引かせるわ。去年の年末は「マッドマックス怒りのデスロード」で新年を迎え、元旦は「ジョン・ウィック」で過ごしてたって。人生で一番クールな年末年始の過ごし方だった。あれ、思えば今年はまだホラー観てないや。「ジョン・ウィック」なら有名作品だし通じるかもしれない。と思って話したのに通じませんでしたよ。人の趣味って多彩ですね。取り合えず「木元さんは映画好き」って事になりました。それでいい。癖の強い視聴歴でマニアックな映画でしか会話出来ない映画星人と思い込ませるんだ。必殺の呪文のように好きな映画監督の名前を唱えてやる! 食らえ! アルフレッド・ヒッチコックデイヴィッド・リンチ中島哲也ァ!!


 皆さんは明かしてますか? カクヨムさんで活動してる事。秘密とは全てが重大とは限らないのです。私のように、よく分かんないけれど何か嫌というフワッとした理由だけで、コミュ障映画星人に成り果てている人があなたの側にもいるかもしれません。立ち入ってくれさえしなきゃ普通に喋れるんだけどなあ! でも私食事とかにも関心が薄いから大抵食べてるものって苦にはならない程度のどうでもいものだから「それ好きなんですか?」ってかれても「いえ別に」で返しちゃうからめっちゃ不思議がられるんですよただでさえ! 外食大嫌いだから誰かと食事に行くのも超苦痛で行かないし! 感心が薄い事にそう時間を割いてまで他者と共に関わりたくないし! 自分で作った方が安いし! 出先ならコンビニでおにぎり買って歩きながら食べるとかで全然いいし! 仕事でもないのにつまんねーと思ってる事にやる時間なんて一秒でも削りたいんですよ! 自分の時間を侵害されるのが癪で堪らないから!


 多分違いますねこれ。カクヨムさんでの活動を言いたくないとかじゃなくて、そもそも私生活を人に明かしたくないという理由な気がしてきました。思えば私、あんまり人に興味無いし。どう思われてても私だって人の事、勝手なイメージ貼り付けてるからお互い様なんだよなって。人の心って目に見えないし、見えないものに躍起になるって、神を信仰するとか幽霊を恐れてお守り買うぐらいに馬鹿馬鹿しいとも言えるから、空虚なんですよね。そんな曖昧なものの為に自分について話すなんて、意味あんのかなって言うか、めんどくさいんですよ。私はお前に興味無いのに。


 口にした事はありませんけどね。サバサバした人と思われる程度に加減してます。つまり私が本当に秘密にしたいのは、この薄情な無関心さかもしれません。疑い深いんじゃなくてそもそも、他者に目を向けてないんですから。実態がどうであろうと気に留めていません。だって気にしようが人の心って見えないんですから、予想外で無い方が気持ち悪いです。でも私だって人ですから、友達もいますし、誰かを心配したり思いやったりもします。でもこの矛盾についての説明もめんどくさいからざっくりと、「本心を明かさない」って形で収まってるんでしょうね。アー人付き合いって七面倒! 趣味も小説映画に散歩って、一人で出来るものばっかりだし! 共感とか何かを分かち合うって事もピンと来ないんですよね。主観ってそいつのものだから何やったって伝わり切る事なんて有り得ませんよ。我々とは、常に互いを誤解し合ってる。私は人といると、虚しさばかり覚えます。考え過ぎなだけかもしれませんけどね。


 よい一日を。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「カクヨムWeb小説短編賞2023」創作フェス3回目お題「秘密」用のブツ 木元宗 @go-rudennbatto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ