とある〇〇の誕生秘話
一華凛≒フェヌグリーク
とある〇〇の誕生秘話
とある国に名君がいた。
名君は何度も脅威から国を守り、民草の暮らしに寄り添った。
人々は、名君の治世がいつまでも続くようにお祈りをした。
いたずら妖精が、その願いを聞いていた。
「ずいぶん面白そうな願いじゃないか」
妖精は、名君が慕われる限り命が尽きないまじないをかけた。慌てた神様が注意してもどこ吹く風。「願われたとおりにしたまでだ」と譲らない。
怒った神様は罰として妖精を人間にかえた。
そうして、始末がつくまで妖精は妖精に戻れなくなった。
名君はますます慕われた。
国民はみんな、清く正しく強い王様が大好きだった。
けれど時代は過ぎて、名君のやり方は時代にそぐわなくなってしまった。名君は国を未来あるものに任せたかったが、国民はみんな名君に守られることが当たり前で、志を持って国を動かそうとする者はいなかった。
焦った名君は、あえて間違えることにした。
今まで通りに治める国と、野心はないが有能な側近に治めさせる国とを作った。側近の国はうまくいかず、他の国に飲み込まれたり壊れたりしたが、いつも何人かの民草が生き延びた。
彼らは名君のやり方が古いことに気が付いた。
彼らは間違えた名君を嫌いになった。
名君は、少し年を取った。
やがてうまく国を回す側近が出た。
つまづきながらも若く成長する国を、うらやましく思って国を出る者もいた。
名君はまた少し、年を取った。
けれど名君はまだまだ慕われていたから、うまくいかなくなって時代に取り残されたままで、名君の国は残り続けた。
名君のことを知って、おそろしく思うほかの国もあった。
あんまりに長生きな名君が本当に人かを疑う国もあった。
そんな国の一つに、不思議な力を持つ少年が生まれた。
少年は、人の何倍も力が強くて、妖精と話すことができた。いたずら好きな少年は、大人を驚かせたいあまりに、とある実話を話してしまった。
『神様は名君への祝福に怒って、妖精を人間に生まれ変わらせた』
人々は恐れおののき、少年にこう頼んだ。
「どうか、あの魔王を打ち取ってくれ。きっと生まれつき不思議な力のあるお前は、神様に遣わされてきたのだよ」
とある〇〇の誕生秘話 一華凛≒フェヌグリーク @suzumegi
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