第46話 教会にて1
「落ち着きましたか?」
「……はい」
私はあの後再び教会内に入って心を落ち着けていた。神父様に言いたいこと全部吐き出し、お礼を言ってもらったおかげか、自分の罪と向き合えた気がするし、心もずいぶんと軽くなった。
「ありがとうございます。神父様のおかげで心が軽くなったきがします」
「俺からも礼をしよう、神父よルナの心を救ってもらい感謝する」
今まで黙っていたイーターが保護者面してそう言う。
「ちょ、イーターやめてよ恥ずかしい」
「何が恥ずかしいと言うのだ。俺は礼がしたいからしたまでだ」
「ははは、どういたしまして。ルナさんは
「良好かどうかはわかりませんけどね。そう言う神父様はどうなんです?」
私がそう訊くと、神父様は少し言いずらそう口を開く。
「私たちの関係も良好ですよ。ただ……」
「ただ?」
私がそう訊くと、神父様はしばらくの逡巡の後再び口を開いた。
「ルナさん、実は私もこの世界に来てから一度だけ人を殺したことがあるのです」
「え……」
「あれはそう、私がこの教会の神父になってから間もない頃のことでした。夜半にこの教会に押し入り強盗が入ってきたのです」
「強盗……」
「彼は貧民街の者でした。きっと食い扶持を無くしどうしようもなくったのでしょう。彼には悪いことをしてしまいました……」
「でもそれって神父様の正当防衛なわけですよね」
「それを言ったら貴女も同じですよ」
それは確かにそうだ。しかし、それと神父様の
「兎に角、私はその時この世界に来てから初めて
私はゴクリと生唾を飲んだ。
「ヒュームはあっさりと、それこそ飴玉でも喰らうように彼を喰らいました。私はその時の光景を生涯忘れることはないでしょう。今の貴女のようにね、そして誓ったのです。もう二度とヒュームを人殺しのために使わまいと、それから10年以上私はヒュームに人を食べさせていないのです」
「そんな、馬鹿な……」
イーターの奴が驚愕の声をあげる。
「それで、
イーターが神父様に訊く。
「ええ、至って正常です。表向きは、ですが……」
「表向きは、ってどういうことなんです?」
私が神父様にそう訊くと、神父様の代わりにイーターが答える。
「我々
「へぇ~その割にはイーター腹が減ったってうるさい時あるよね」
「そこが問題なのだ。我々は食事を摂らなくても死なない代わりなのか食事をすることへの渇望が特に強いのだ」
「食事しなくても死なないのに?」
「ああ、それが
「
「だからこそ信じられないのだ。10年以上何も食さずにいて、なおかつ正気を保っているという事実がな」
「それは私も同じ思いです。ヒュームは私が訊いても「大丈夫だ」の一点張りでそれ以上は何も語ってはくれないのです」
それはきっと神父様のことを気遣ってのことだと思う。もしくは人を食べたいと口にしたところで神父様はそれを許さないと思っているから口にしないのか、う~む難しいところだ。
私が腕を組みながら考えていると、神父様が私に向かって口を開いた。
「それでなのですが、ルナさん一つお伺いしたいことがあるのですがよろしいですか」
「良いですよ」
「貴女は自身の
言われて私は考える。私は以前サジさんに自身の
「はい、神父様の言う通り、私の
私がそう言うと神父様はしばらく考え込み、やがて口を開いた。
「ルナさん、折り入って貴女にお願いがあります」
私は嫌な予感がした。それは私の身に危険がふりかかるとかそういった類のものではない。ただそれは――
「ヒュームを――私の
私にとってあまり良いとは言えない申し出だった。
姉〇~姉が異世界の人に迷惑をかけているみたいなので、妹の私が責任とって姉を〇します~ ウツロうつつ @tank-u
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