極秘です!僕が皆に秘密にしている事とは。

黒羽冥

第1話僕の秘密

僕はとある企業に務めるサラリーマンだ。

実はこの僕には務めている会社で誰にも言えない秘密があるのだ。

今日も今日とて僕はその秘密がバレないように生きている。

「おはよう!磯野君!」

「あ!おはようございます!波野部長!」

「今日は今日で部長の髪は元気そうで。」

「いやぁ、磯野くんはまだ若いし、そんな事気にしなくていいほど生え揃っているじゃないか?」

「いえいえそんな事。」

こんな会話をしてはいるのだが…僕には波野部長にも言えない秘密があったのだ。

「はぁ…今日も疲れたなぁ………。」


会社を終え…僕は家に帰ってきた。

そして今…お風呂を終えたところだ。


「ふぅ……………………。」


鏡を見ている僕。

そこに写った僕は…外出する時とは一味違う見た目になっているのだ。


「はぁ……………。」


鏡を見る度に僕は思う。


「何かが足りないよ………なぁ………。」


いつも思うのだ。

僕には何かが足りてない。

そう…それは。


「髪の毛がほしい………………。」


僕は、そう呟く。

髪がなくても気にしなくてもいいだろ?

きっと皆そう思うのかも知れない。

だが僕にはそうはいかない理由があったんだ。

今の会社の面接時の事…。

僕は寝坊してしまい急いで家を出たのだ。

途中で気がついたのだが…。

僕は休日は『カツラ』というものを装備している。

ちなみに飛ばない努力は必須だ。

故に僕はカツラにキャップはセットなのだ。

これで歩いている分には僕がカツラだと言う事はバレてないはずだ。

こうして帽子こそ被らなかった僕は面接時にもカツラを装備していったのだ。

それから当然の様に社内では僕は髪の毛があるという事になっているのだ。

だがしかし、これだけなら気にする必要もなく堂々と外していても良かった…のだが。

僕には絶対バレたくない一つの問題があったのだ。

それは。


「あ!磯野さん!これからお昼ですか?」

「花沢さん!?」


僕に声をかけてきたのは…社内一の美人で皆の憧れの『花沢加奈』さん。

そう…彼女にだけは僕がヅラだという事がバレる訳にはいかない…だから社内に僕のこの秘密を漏らす事もできなかったのだ。

そして僕は今、その加奈さんに声をかけられたのだ。

僕は一先ず冷静になろうと高鳴る気持ちを落ち着かせようと深い息を吐く。


「ふぅ……あ!花沢さんもこれからご飯??」

「そうよ!磯野君…一緒に食べる??」

「えっ!!??」


僕は、まさかの花沢さんの申し出に驚いてしまう。

僕は焦る。

社内の誰もが羨むようなこの状況に、つい俺の身体は汗ばんできて震えてしまう。


「ねぇ?ダメなの??」

「えっ?い…いいですよ。」


僕はドキドキが止まらない…なぜならこんな素敵な人に一緒に、ご飯を食べようと誘われているのだから。


  花沢さんは素敵すぎる…辺りの人達からも彼女は人当たりもそして性格も良く評判がいい。

そんな彼女に好意を抱いてる男性社員は沢山いる。

僕だって花沢さんに密かに憧れをいだいていたんだ。

こんな素敵な人と僕は付き合いたい。

こんなチャンスは二度と無いかもしれない…チャンスはきっと今だ!!!

僕は自分にそう言い聞かせた。

この皆のいる食堂で…告白しよう。

そして僕達はとても楽しいランチを楽しんだ。

彼女はとても明るく…話題も楽しかった。

僕は彼女とこうして楽しく話しているだけで他の人達の視線も感じ誇らしかった。


自分の事を振り返ると、現在年齢は二十五歳…頭が薄くなったのは二十歳の頃からだ。

昔から女性には縁もなくこれまでずっと一人だった。

運気も薄くこれまでいい事はなかった気がする。

そこにダメ押しの様に運気だけでなく僕の髪の毛も薄くなったんだ。

僕の家は先祖代々髪が薄い家系だった。

だから僕は薄くなってきてからは諦めていた。

僕を知る友人達は同情をしてくれ髪の事には触れてこない。

だが、今の会社には誰一人として僕の髪の秘密を知る者はいない。

だからこそ… 尚更、彼女にだけはバレる訳にはいかないんだ。

だが今はそんな事にとらわれている時では無い。

僕は人生を変える為に一念発起。

ここで、花沢さんに告白するんだ!!!!!

僕は立ち上がる。

この時、僕の手も…そして身体もいつもよりも緊張により汗ばんでいた気がする。


「花沢さん!!!」

「えっ!?磯野君??」

「好きです!!僕と…付き合ってください!!!!!」


僕は手を出し花沢さんに思い切りオジギをする。

その時。

僕の額にも汗は感じていた…それだけにはとどまらず頭からするっと何かが滑った事も感じたのだ。

そして、僕の視界に見覚えのある物が映り込み…そのまま足元に…パサりと落ちる。

僕がそれに気づくには…時間はいらなかった。

どぉっと笑いが起こると言うのはこういう事か…と僕は身をもって知る事になった。

これが…僕の秘密が会社内にバレた瞬間だったのだ。








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