第37話 配流Ⅲ


中学の授業は一コマ50分。

コマとは一体何のコマだ。

そんなことばかり気になる。


休憩時間は10分しかない。


さて何処へと漂流ながれよう。


太宰府に流れても菅原道真。


宇多天皇の側近として親政を進め。

遣唐使の中断も道真の進言により。

敦仁親王の立太子も自己の退位も。

道真にのみ内意を示したという。

譲位の際には寛平御遺誡を残し。

道真を重く用いるよう諭した。


いいね!心震えるではないか!

後に日本三大怨霊になったとて。


道真の正室はどのようなお方か。

嘸や芯あり鰯やかで有るぞかし。


十二単衣の桂花ちゃんを想像する。

十二単衣はもう少し時代が後だな。

化粧も髪型も中国風であったはず。


それを想像するは自由にして至福。


眉間や頬に紅で描いた文様。

花鈿・花子と言うそうだ。

まさに彼女ではないか!


「にやけてる…」

「なんぞ?」

「不気味!」


不気味の谷の住人どもが五月蝿。


近臣の臣は芯とも書くのである。

側で仕えると書いて側仕と読む。

側仕を影で支えて寄り添う正室。


島田宣来子。

道真の正室。


自らを吉祥女と呼び。


主を看取ること叶わず。

別の土地へと流れて尚。


東風の里の社に今も眠る。


「ちなみ!ナポレオンであるが!」


「相変わらずイッチは話が飛ぶ〜」


東風吹かば匂ひおこせよ梅の花。

主なしとて春な忘れなそってね。


「飛梅とでも呼んでくれ!」


『?』


『そろそろ飛び石連休の季節かあ』


思い浮かべても非モテに予定なし。

我とて人のことを言えた義理なし。


ナポレオンあたりらの話だったな。


功罪こそあれど側近であった男。

ターレランが彼の躍進を支えた。


政治的な面において疑う予知はない。

軍の統率と政治は似て非なるもの。


足りぬ及ばぬを補うための人事。

ターレランはその期待に応えた。


しかし信を持って用いただけ。

そこに信に頼るは王ではない。


皇帝が真に心の拠り所とした人物。


薔薇の名前をその長名に持つ貴婦人。


マリー・ジョゼフ・ローズ・タシェ・ド・ラ・パジュリ。


ジョセフィーヌ。


ナポレオンの最初の妻である。


フランス革命以前。

そして革命以後。


産業革命を追い風に。

世界有数の国力を得た。

大英帝国とそれに習う国。

何れ西欧列強の名立王国。


フランスとは地続き。

四方を囲まれていた。


時風に翻る国旗の軍事侵攻に備え。

可及に軍の組織再編の必要あり。


絶対王政が廃止されたフランス国にあって。軍閥の中でも傑出した軍人であった。ナポレオンが皇帝に擁立された。


その最初の妻であったジョセフィーヌ。婚姻後の正式名はジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ。フランス皇后。


ボナパ貴族出身。出生1763年6月23日。フランス領西インド諸島・マルティニーク島。死去1814年5月29日。享年50歳。


フランス領西インド諸島マルティニーク島に生まれ。祖父の代から母国を離れた。クレオール出身。


結婚前の正式名は、マリー・ジョゼフ・ローズ・タシェ・ド・ラ・パジュリ。


長名からローズと呼ばれた。


貴族出身の娘であり。エキゾチックな美貌の持ち主だったと伝えられる。


そして英国のヴィクトリアかフランスのマリーアントワネットもかくや。そう言われるほど。大変な浪費家でもあった。彼女が美しい貴婦人に成長する頃。生家は貴族といっても名ばかりであり。ひどく困窮していた。


彼女の散在も一因ではないかと言われ。


「思ってた貴婦人と違うぞ!」

「ナポレオンの最愛の妻が!?」

「アントワネットの再来とか!?」


再来というか散財ね。


「さすがにまずいっしょ!」


「まあ確かに山内一豊の妻…」


ツールド功名が辻とは程遠い。


弱冠16歳にして、1779年にアレクサンドル・ド・ボアルネ子爵と結婚。


一男ウジェーヌ、一女オルタンスをなす。しかし子は鎹とはならず。


夫婦仲は壊滅的に悪く。

3年後の1783年に離婚。


前夫のボアルネ子爵。フランス革命中の1794年7月23日の、ギロチンにて処刑。離婚後、ジョセフィーヌはマルティニーク島の実家に戻っていた。


しかし島で多発する暴動に不安を感じ、フランスに戻るが。元夫や友人の助命嘆願が罪に問われ。カルム監獄にて投獄される。獄中にてルイ=ラザール・オッシュ将軍と恋人同士となる。


「さすが変愛の国」


やがてロベスピエールが処刑されたことにより。同年8月3日に釈放。


その後、生活のために総裁政府のポール・バラスの愛人となる。


「ちょっと待て!」

「遍歴追いつかない!」


お前らの恋愛生涯人数を軽く超える。


やがて親友のテレーズ・カバリュス、ジュリエット・レカミエと並ぶ社交界の華となる。


「陽気な未亡人」


パリの社交の場でそう呼ばれた。


この頃に二人は出会った。

一方的なナポレオンの恋情。

ジョセフィーヌは冷めていた。


恋人バラスが奔放な彼女を持て余し。

ナポレオンに押しつけた説もある。


ナポレオン一人が彼女をジョセフィーヌと呼んだ。長名のひとつを文字り。愛情を込めてそう呼んだ。しかし彼女の名前はローズ。その名と薔薇の花をこよなく愛する女性だった。


朗らかでよく笑う気さくな女性。

その性格が伝え記されている。


笑う時は口を開けずに手で隠す。

それは貴族の振舞にはなかった。


貴婦人の所作と社交界で称えられた。


しかし本当は彼女は酷い虫歯があり。

それを隠すための仕草であった。


年下のナポレオンの求婚を受け続けた後。1876年。婚姻を結んだ。


ジョゼフィーヌは少女時代。


「最初の結婚は不幸になるけれど…その後に、貴女は女王以上の存在となりましょう」


歴史上定かな記録ではないが。

占い師に告げられたとされる。


実はナポレオンより6歳年上。

出会った時さばを読んでいた。


結婚時のナポレオンは26歳。

ジョゼフィーヌは32歳だった。


夫は自分より年上の妻を気遣い。

2年上に妻は4歳年下にさばを読み。

ともに28歳で結婚証明書を提出した。


結婚式の後で二人の寝室のベッドに、

飛び込んだのはジョセフィーヌの愛犬。


寝ているナポレオンの足を噛んだ。


犬の名前はフォルチュネ。

幸運という名前であった。


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