4#本当の真の友達と
「風船割れちゃったーー!!ビックリしたーーー!!風船割れちゃったーー!!」
ハンスの風船を膨らませ割ったグリズリーのコングは、筋肉隆々な巨体を揺らして慌てて走り去って逃げてしまった。
一匹オオカミのハンスは大粒の涙を流して、割れた『友達』の破片を地面に繋げてみた。
割れた風船のオオカミの絵は、真っ二つに引き裂かれてしまった。
引き裂かれた、ハンスの友達・・・
「あおおぉぉぉぉーーーーーん!!!!」
一匹オオカミのハンスは泣きながら、割れた『友達』・・・風船を抱きしめて遠吠えした。
「あおおぉぉぉぉーーーーーん!!!!」
草葉の陰で凝視していた、群れの元仲間達は飽きたのかいつの間にかその場を去っていた。
「俺の友達が死んだ・・・俺の秘密の友達が死んだ・・・」
割れた『友達』・・・風船の破片を掘った茂みの地面に埋めるとその上に小石を奥と、『友達』の墓を作って項垂れてその場を去った。
「さよなら・・・俺の秘密の友達。」
再び孤独となった一匹オオカミのハンスは、群れの元仲間のテリトリーである忌まわしい土地を離れ、流浪の旅に出かけた。
それは、死出の旅になるだろうと悟った。
仲間も居ない。友達は死んだ。
いつ孤独で飢えて死ぬか解らない死出の旅を。
とぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼ・・・
「ねぇ、君。もしかしたら・・・?一匹オオカミ?」
突然、通りすがりの雌オオカミが一匹オオカミのハンスに声をかけてきた。
「なあに?君は?」
一匹オオカミのハンスは、声をかけてきた雌オオカミの片目が潰れていた事にビックリした。
「私ね・・・前いた群れで雄オオカミの集団にいじめられてね。
命からがら逃げてきたの。
貴方も?」
「うん。そうだよ。で、復讐にリーダーオオカミと戦ったら群れ追放されてね・・・」
雄オオカミのハンスは、片目の雌オオカミといろんなことを話した。
独り身の狩りの失敗談や、無論荒野で出逢った『秘密の友達』の紫色の風船の事も。
「私も独りになった時、草原に墜ちてた風船を友達にしてたわ。オオカミの絵の入った黄色い風船。」
「えっ・・・?!」
ハンスは絶句した。
同じ境遇で、同じように拾った風船を友達にしていたオオカミが居たことだ。
しかも、ハンス同様にオオカミの絵の入った風船を友達にしていた事だ。偶然とはいえ、ハンスにとって、この雌オオカミはあの紫色の風船が教えてくれた、真の友達ではないか?と。
「あ、私の名前は『キャシー』。」
「俺は『ハンス』。」
その時、2匹の一匹オオカミに友達を超えた、1つの愛が膨らみ始めた。
お互い、見詰めた。
もうお互い一匹オオカミでは無いことを。
ここにお互いの追い出された群れの知らない、秘密の番が生まれた事を・・・
〜一匹オオカミの秘密〜
〜fin〜
一匹オオカミの秘密 アほリ @ahori1970
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