第6話


 次に目を覚ますと、僕はいつもの部屋にいた。


 ――生きてる? ……そうか、僕は、また生き延びてしまったのか。まだあの子には会わせてもらえないのか……。


 まだ生きていることにがっくりしながら身を起こすと、すぐそばにおじさんがいた。


「……おう、レイ。起きたか」


 おじさんが来たってことは、訓練の時間だ。すぐに準備をしないと。


 立ち上がり、いつものように犬舎から出ようとすると、おじさんが静かに僕の背中を叩いた。


「レイ、大丈夫。おまえはな、もう訓練はしなくていいんだ」


 ――え?


「おまえはもう、穏やかに生きていいんだよ」


 ――そんな、どうして。僕はずっと、だれかを助けるために……。


 そう口にしようとして、足に上手く力が入らないことに気が付いた。


 ――あれ?


 歩こうとすると、力が抜けてしまう。そのままこてん、と転がった。


 ――どうしたんだろう……なんか、へんだ。


 頑張って踏ん張って、もう一度立ち上がって一歩を踏み出す。

 辛うじて歩くことはできるけれど、すぐに力が抜けてしまう。


 これでは、足場の悪い災害現場でなにもできない。


「無理するな、レイ。おまえはもう限界なんだ。この十年、よく頑張ったよ。そろそろ潮時だ」


 ――限界?


 おじさんの言葉に愕然とする。


 ――そんな……それじゃあ、僕はもうだれかを助けることはできないの? それなのに、生きなきゃいけないの? 目標もなく、生きなきゃいけないの……? そんなの……僕には無理だ。ひとの役に立てないなら、僕には生きる意味なんて……。


「そう落ち込むな。……そうだ。おまえに会いたいって言ってるひとがいるんだ。ちょっと待ってろよ」

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