第3話


 あれから、どれくらい経ったのだろう。

 結局、パパもママも、まひるちゃんも死んでしまった。


 みんなを失ってから、僕は途方に暮れていた。

 食欲もなく、歩く気力すらない。

 体力はどんどん落ちて、いつしか泣くことすらできなくなっていた。


 そんなときだった。

 あのひとがやってきた。


「おう、元気か?」


 僕を助けてくれたおじさんだった。


「辛気くせぇ顔してんなぁ」


 ――放っておいてよ。


 ぷいっとそっぽを向く。


「まぁ……大好きな家族が突然いなくなったんだから、落ち込むのは当たり前だ。……ごめんな。おまえの家族のことは、残念だったと思ってるよ」


 ――フン。今さらなんだ。謝られたって、みんなはもう帰ってこない。もうどこかへ行って。僕にかまわないでよ。


 苛立ちながら、僕はおじさんに背を向ける。


 しかし、おじさんは僕のとなりに座ったまま動かずに、さらに続けた。

「だけどな、この国で生きる以上、こういう災害はこれからもたくさんある。そういう場所に、俺らは住んでるんだと、覚悟しなきゃならない」


 ――え……これからも、こんなひどい災害が?


「だからお前の力を貸してほしいんだ」


 ――え?


 僕は顔を上げた。おじさんは、真剣な眼差しで僕を見ていた。


「俺は、おまえの家族のようなひとを、これ以上生み出したくないんだ。おまえのように家族を失って悲しむひとたちを少しでも減らしたい。だからレスキューに入った。おまえはどうだ? お前の家族のように苦しむひとを、助けたいとは思わないか?」


 ――そんなことができるの? 僕に?


「お前ならできるよ。素質がある。お前は、家族のことを最後まで諦めなかったもんな」


 ――もし、そんなことができるのなら。


「どうだ? レイ」


 ――僕は……。


 おじさんを見る。強い眼差しが、僕を射抜く。その目を見て、僕は覚悟を決めた。


「だけどな、レスキューに入ることはとても難しい。相当な努力が必要だ。それでも、頑張れるか?」


 ――どれくらい難しいんだろう。僕に耐えられるのかな。僕にそんな才能があるのかな。


 不安で足がすくむ。


 ――……でも。それでも、あんな思いはもう二度としたくない。だから……やってみせる。


 僕はまっすぐにおじさんを見つめて、返事をした。

 するとおじさんはニッと笑って、僕の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「よし。いい覚悟だ! それならうちに来い」


 こうして僕は、おじさんの家の子になった。

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