第5話 ルーの秘密
母艦に戻った俺とルーは、早速
「よくやった。お前の送って来た戦闘記録を元に、重力子爆弾のトラップを仕掛けた。今回遭遇したアウラレーゼはこのトラップで全滅させた」
「それは良かった」
重力子爆弾とは重力子反応炉の爆縮反応を利用した、いわゆるブラックホール爆弾のことだ。理論上は恒星系一つを吹き飛ばすくらいの威力が出せるらしいが、艦隊に配置されている爆弾の威力は低く抑えてある。そもそも、重力子爆弾は使いどころが難しく実戦で使用する事は想定されていなかったのだ。
「ところで
「三つも? 何でしょうか?」
「一つ目。私は瑠璃、いや、ルー・リーオルの姉だ」
「え?」
「黙っていて悪かったな。私の本名はロー・リーオルだ」
「わかりました……」
と返事をしたものの、納得できている訳ではない。夷守艦長が俺の姉ってことは有り得ない。それはつまり、ルー・リーオルの姉、七次元宇宙を回遊する光るクジラ……エノラの住人って事なのだが、こんな事を素直に受け入れられるかって話だ。
「二つ目だ。ルーの能力を知っているな」
「はい。兵器のハッキングでしょうか。何も使わずコントロールするなど、未だに信じられませんが」
「信じろ。あの娘は我が一族が、大地の女神と呼ばれた古の絶対防衛兵器を模倣して創造したものだ」
「大地の女神? 絶対防衛兵器?」
「そうだ」
「数億年前の先史文明で創造された女神様ですか?」
「そういう言い方もできるだろう」
理解が追い付きそうにない。俺の脳みそが沸騰するのも時間の問題だ。
「三つ目だ。ルーから聞いたと思うが、あのアウラレーゼはルーを狙っている」
「はい」
「つまり、ルーをここに置くとアウラレーゼの断続的な攻撃を受けるという事になる」
「一大事ですね」
「そう、一大事だ。銀河帝国の危機だといっても良いだろう」
帝国の危機……確かにそうかもしれない。ここにいるルーのお陰で。
「そう深刻な顔をするな。ルーの加入で我が艦隊は無敵になったといっても過言ではない。一つ気がかりなのは……お前がルーの機嫌を損ねないかと。艦隊としても帝国としても、それは非常に困るのだ」
「え? 俺次第なんですか?」
「そういう事だ。よろしく頼むぞ」
「よろしくね、お兄ちゃん」
にっこりと笑うルーは俺の腰に抱き付いてきた。そして夷守艦長……いや、ローにも抱き付かれた。
俺がルーとローの二人を満足させれば帝国は安泰なのか?
そしてこの二人は、嫉妬の感情を抱かないのだろうか?
このままだと三角関係は必至である。
俺が悩んでも仕方がない事なのかもしれない。
銀河帝国の命運は俺にかかっているのだ。
【おしまい】
ルーの秘密 暗黒星雲 @darknebula
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
公募玉砕記/暗黒星雲
★35 エッセイ・ノンフィクション 連載中 140話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます