ダンジョン配信者の裏の顔

るい

人気ダンジョン配信者が抱える誰にも言えない秘密

「どうも〜、皆さん、おはこんばんにちは、Xです。今日攻略するダンジョンは、『デスパレードの遊園地』。生存確率は、なんと一パーセント以下!」



 人生無理ゲー:嘘乙www

 Xの推しだよ♡:キャーかっこいい!

 とある根暗な学生:危ないよ止めときなよ

 通り杉田:まじ? あの難攻不落のダンジョンを攻略するつもりかよ!



 同接五万人。いいねいいね! こんだけ人が多いと、反応は様々だ。数十分後には、コメント欄を歓声一色に染め上げて見せる。


 Xは、顔を動かして、ダンジョンの内装を、視聴者に映す。


 サーカスのような装飾に、装飾の色が紫に統一されている不気味なダンジョンだ。



 坊主なキリン:まじ、本当ぽくね?

 胸毛がゴリラ:生き残った人の映像を見て来たけど、内部本物だよ!

 アルコールワット:ご武運を乾杯(ビール)



「目標タイムは、十分! レディー、ゴー!」


 Xはダンジョン内を走り始める。


 最高難易度と言われている『デスパレードの遊園地』、このダンジョンが難攻不落と言われている理由の一つに、他のダンジョンでは見ない特殊なトラップがあることだ。


「壁に飾られているピエロ怪しいですね。走りながら、タッチしてみたいと思います!」



 パンツは被り物:(モデレーターによってコメントは消去されました)

 Xの推しだよ♡:私にタッチして♡

 通り杉田:命の賞味期限が近づいている



 コメントは、カオスな状態に包み込まれる


 Xは、にやつきながら、壁に飾られていたピエロにタッチした。


 きた!


 ピエロに触れた瞬間、前方から無数の槍が飛んでくる。


「状態変化『霧』!」


 Xの体は、たちまち霧状になり体の原型を無くす。


 槍は、霧になったXに当たることなく通り過ぎていく。



 アルコールワット:ビビりすぎて、ちびった

 出勤中です:びっくりして、テレビ会議中に立ち上がってしまった

 とある格闘家:おら、ワクワクすっぞ!



 ダンジョン配信者で俺しかできない能力、状態変化。攻撃を避けるという行動をしないで、視聴者にリアルな映像を配信することができる。このクリップが、ネットに投稿されれば......。


『おめでとうございます。視聴者数十万人突破です』


 バズって、同接が跳ね上がる。計算通りだ。


 その後もXは、状態変化を巧みに行い最高同接は、三十万人を突破し、ダンジョンを攻略した。



 Xの推しだよ♡:私の心まで攻略されちゃった

 とある格闘家:今度、武道会に参加しねぇか! おら、おめぇと戦いたくてうずうずしてるぞ!

 とある根暗な学生:明日、勇気出して学校行って見ます



 視聴者の反応は、絶好調だ。見事に歓声で、コメント欄を埋めて見せた。


「最後までご視聴ありがとうございました。また次回お会いしましょう、ほんじゃまーたな!」



 終わる時だけコメントする:お疲れさまでした

 優しい織田信長:お疲れ様、優しく言おう。ホトトギス

 開国できなかったペリー:今日も東京湾の海上から見てた。面白かった! お疲れさんでした!



 Xは、配信を閉じ、大きく深呼吸をした。


「よし、みんないいぞー」


 Xが、そう言うと、配信に映らないように隠れていた、モンスターたちが続々と現れる。


「魔王様。お疲れ様です」


「魔王様。今日もかっこよかったです!」


 道化師に仮装した、人型の魔物である魔族が拍手を送る。


「これで、また冒険者達が、このダンジョンに来るだろう」


 Xは、ダンジョン配信のトップランカー。しかし、その裏の顔は、過疎化して崩壊の危機になっているダンジョンを救う魔族と呼ばれる魔物だった。


 ダンジョンの魔物達は、Xのことを崇拝し『魔王様』と呼んでいる。


「はい! 冒険者が、ダンジョン外から持ってくる装備や道具は全部、ダンジョンを保つための栄養になります!」


「魔王様のおかげで、ダンジョンの崩壊と共に運命を終えずに済みました!」


 ダンジョンは永久的に形を保てる訳ではない。血液が循環して新しくなるように、ダンジョンも定期的に栄養を補給して、形を保つための魔力を循環させないといけないのだ。


 その循環を怠ると、たちまちダンジョンは崩壊。ダンジョンに住む魔物達は、ダンジョンから出れないため、数千の命が一気に失われるのだ。


 俺は、人気配信者の影響力を使い。ダンジョンを崩壊させないために力を貸している。


『ありがとうございます!』


 モンスター達が大きな声を出してお礼を言う。


「よし。俺は、次の過疎化しているダンジョンに向かうことにするよ。また、何かあれば連絡をくれ」


「はい!」


 Xは、ダンジョンを立ち去り、過疎化して崩壊しかけているダンジョンに向かう。


 ダンジョンに住む魔物達を救うために。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンジョン配信者の裏の顔 るい @ikurasyake

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ