デートしよう

藤泉都理

デートしよう




 魔女に弟子入りした孫に魔女に秘密で横流ししてもらった、十七歳に若返る薬。

 お互いに引退してのちの熟年結婚。

 もっと早くに出会いたかった。

 なんて、後悔は一度も抱いた事はなかったけれど。

 孫に若返りの薬の存在を聞いて、むくむくと、欲が出た。

 身体の心配をせずに、思いっきり旦那とはしゃぎ回りたい。

 いやだ十七歳の姿を君に見られたくないと逃げ回る旦那を拝み倒して、若返りの薬を飲んでもらい、お互いに十七歳になってデートをスタートさせて、若者が集まる場所へと足を踏み出したのだ。




 こんな姿を君に見せたくなかったのにあんまり見ないでって言うか僕を見ないで。

 なんて、グチグチグチグチまだ言い募っている旦那は、骨と皮とほんのちょっとのお肉しかないんじゃないかしらっていうくらい、全身ガリガリだった。

 何でも、研究家の友達が作った痩せる薬を飲んだら、十七歳の間ずっと、このガリガリの姿のままだったそうだ。

 ガリガリ姿のあなたも素敵よと言っても、見ないでくれの一点張り。

 せっかく若返ったのに、つまんないったらありゃあしない。けど。ここまで嫌がっているのだ。しょうがない。

 家に帰って薬の効果が切れるまで別々の部屋にいようと、旦那を見ないで提案したら、ごめんねと、しょんぼりした声が返って来た。


 ううん、いいよ、戻ったら、またデートしようね。

 うん。







「おじいちゃん。いいじゃん、ガリガリでもなんでも。おばあちゃん。青春を満喫するぞーって張り切ってたのに。めちゃくちゃ調べてデートプランを作り上げてたのに。あーあ。おばあちゃんかわいそう。苦労して手に入れた私もかわいそう」

「ごめんな。でも、だめだ。だって。あんな。あんな、若返っても美人のままのおばあちゃんを、あんなガリガリの僕じゃあ、邪な奴等から守れなかったんだ。危機一髪だったんだ。あれ以上あの場にいたら、あの場にいた老若男女が気持ちを抑えきれずに、立ちはだかる僕を吹き飛ばして、あの手この手を使っておばあちゃんに言い寄っていたに違いない。っく。あそこから逃げるように立ち去るしかできなかった自分が憎らしい。十八だったら、おばあちゃんをスマートにエスコートできたのに。せめて十六。いや。十七歳以外だったら何歳でもいい!百歳でもいい!」

「………おじいちゃん。ほんっっっとに。おばあちゃんにぞっこんだね~」

「もちろん!」

「はいはいごちそうさままんぷくです~」






 後日、おじいちゃんとおばあちゃんは、あの時おばあちゃんが作ったデートプランを平らげるのではなく、体力と身体を考慮してつまみ食いへと変更し、大いに楽しんだそうだ。











(2024.1.15)



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